五話
「どぉしよぉぉぉぉ」
家に帰った途端、毛布に包まって呻き声をあげる。
いや、本当にどうしよう。
中学生の時に流れた不名誉な噂程じゃないにしろ、噂として広まってる時点でヤバい。これじゃあクラスで友達出来ないどころか、学年で友達作れないよ、、、。真依ちゃんはクラス離れてるし、移動教室とかで中々会えない。
それに加え、宿泊学習とか、、、無理だよ。友達いない中で一泊二日は私にはまだ早い。
「で、何でめそめそしてる訳?」
部活で少し遅くなっていた悠くんが呆れたように見てくる。
「だって、、、噂流れてるの知ってる?」
「噂?」
怪訝そうに私を見た。
「私と蓮くんが付き合ってるっていう噂」
「はぁ?何でそんな噂が流れるんだよ」
「蓮くんが学校でも私に抱き着いたりしてるから、、、」
「ああ、、、想像つくわ」
目を瞑って何故かうんうんと頷いている悠くん。
納得しないでくれます?
「あれ?二人共どうしたの?そうだ、夜ご飯は期待しててね!」
買い物帰りであろう蓮くんが袋を持ちながら帰宅。今日の夜ご飯は期待しててということで、かなりは元気が出た。
「蓮斗、学校で広まってる噂は知ってるか?」
「噂?知らないよ?」
「お前と未来が付き合ってるっている噂。誰が広めたのか分かんねぇが、大方お前が学校でも未来に抱き着きたりしてるから勘違いした生徒だろう」
「そっかぁ、、、ごめんね」
「それで、蓮斗は少し未来に抱き着いたりするのを自制しろ」
「う〜ん、、、そうだよね」
「友達たくさん作るって決めてるし!」
三角座りをして膝に顔をうずくまる。
蓮くんはキッチンに行って夜ご飯を作り始めた。トントンと心地良い音がする。
しばらくすると良い匂いがしてきた。そういや今日は頑張るって言っていたような。
「噂が本当になれば良いのに、、、」
ぽつりと呟いた言葉は、未来と悠斗の耳には届かなかった。
「今日って何かの記念日だったか?」
「さぁ、、、」
目の前の豪勢な料理に固まってしまう。
炊き立ての白ご飯に、醤油で味付けされた温かいすまし汁。主菜はほくほくとした白身魚の煮付けで、副菜には旬の野菜の和え物と、しっかりと味の染み込んでいそうな大根の煮物が付いている。
それに加え、器や盛り付けといった見栄えまで、しっかりと美しさを意識しているのが伝わり、ここは高級料亭かと錯覚してしまう程だった。
とりあえず「いただきます」
湯気の立つすまし汁を一口すする。
「、、、美味しい」
「良かった!」
出汁が違うのかな?繊細で上品なカツオの香りが口の中から鼻へ抜けていく。
白身魚の煮付けや和え物、煮物も全て、味は薄すぎず濃すぎない丁度良い味付けで、何だか食べているこっちまで格式高くなった心地にされる。
「蓮くんに負けた、、、」
「凄いな、これ。尊敬するよ」
「えへへ、二人に喜んでもらえて良かった〜」
「でも、何で急に豪勢な料理?」
「高校入学おめでとう会、出来なかったから、、、」
蓮くんの笑顔が眩しい。そして優しい!!心の奥がジーンとする。
「何だそれ」
「あとはね、受験お疲れ様会も兼ねて!」
「蓮くん、ありがと〜」
「えへへ」