三話
鏡合わせのような双子の男の子。それが私の幼馴染だった。
いつから一緒にいたのか、正確には分からないけれど物心がついた頃にはすで彼らと知り合いになっていた。最初のうちは二人の世界に到底入れてもらえる訳もなく、何となく同じ場所にいて二人と一人で遊ぶようなものだった。その関係性が変わるきっかけなどなかったし、そんな二人が仲良くしている光景を遠くから見るの楽しかった。
「あの、いっしょにあそばない?」
「おまえも、ひとりであそぶのはいやだろ」
「ふたりがいいなら、、、」
そうしている内に、二人は私という異物を受け入れてくれて、二人の世界に加えてくれるようになった。大人達が勝手に決めた許嫁なんて正直どうでも良くて、私はただ二人と過ごすことが出来る。それだけで良かった。
「ねぇ、これは本当に必要なの?」
「必要!」
二人が同時に言う。試着室で二人が持ってきた服を着ているが、自分では似合っているのか似合っていないのか分からない。問答無用でショッピングモールに連れて来られて今に至る。
二人と同居を初めて三週間が経つ。今のところ二人との同居は学校ではバレていない。
二人は学校で自分達がどれだけ注目を浴びているか知っているもんね。
ショッピングモールに来たのは来月の宿泊学習の為の用意、、、らしい。
「お前の生活能力の無さはどうにかしないとな」
「まさか未来ちゃんの持ってる服が少なかったなんて、、、」
「何で二人も一緒に、、、」
「俺達が見てねぇと、何かに襲われでもしたどうするんだ」
「人を変質者吸引器みたいに、、、」
「あながち間違ってはねぇな」
「うーん、否定出来ないのが辛い」
「でも、三人で一緒に暮らせるなんて夢みたい、、、!お揃いのパジャマ買おうね!」
何だか目にも止まらぬ速さで話が進んでいっているような気がする。
家に帰り、ソファに身を沈める。
「宿泊学習、楽しみだね!」
目をきらきらと輝かせた蓮くんが腕に抱き着いてきて、少し机が揺れた。華奢で可憐な蓮くんだが、意外と力が強いのだ。
「部屋は男女別らしいな」
「いや、当たり前でしょ!?」
「僕、バスは未来ちゃんの隣に座りたい」
「、、、私が他の女子から目の敵にされる」
「んなもん、無視しとけば良いだろ」
「無視出来たら気にしてないの!」
「僕達と一緒にいるの、、、嫌?」
「そういう訳じゃないけど、、、」
「じゃあ何も問題ねぇな」
「僕と悠斗と未来ちゃん。三人でずーっと一緒だね!」
砂糖菓子のようなとろけるような笑みで嬉しそうに呟く蓮くん。甘ったるい瞳の奥から底知れぬ闇を感じて、背筋に一筋汗を垂らす。悠くんも悠くんでじっと獲物を狙うような目付きで私を見ないでほしい。心做しか腕に絡み付く力が強まった気がするが気付かないフリをしておいた。
今、この場面をクラスの子達に見られていたら確実に私の学校生活が終わっていた。
「そうだ!今度一緒に指輪見に行こうよ」
「、、、え?」
何を思ったか蓮くんが指輪を見に行くのを提案した。あまりにも唐突過ぎて悠くんなんか飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになっている。
「蓮斗、、、お前」
「良いでしょ?未来ちゃん。僕と結婚してよ」
「、、、、、、」
完全にフリーズした私を置いて話し始める蓮くん。
「蓮斗、お前なぁ。未来も困ってるだろ、、、それに、そういう話は」
「悠斗も急がないと僕に未来ちゃん取られちゃうよ?」
珍しく蓮くんが悠くんを煽る。ぷるぷると少し震えている悠くん。そして石像のように固まる私。