俺、生まれ変わったら【カーテン】になってやんの…
……俺は、カーテン。
モスグリーンを基調とした、水玉模様の遮光カーテンである。
昔、俺は人間だった。
名前は忘れたが、好奇心旺盛な男だった。
何らかの事故で命を落としたとき、俺は願った。
「生まれ変わったら、カーテンになりたい」
そう願ったのには、理由がある。
俺には見たい場所があったのだが、そこはカーテンで遮られていたのだ。
見たかった何かも、場所も、色も、何一つ覚えていないのに…執着心だけは忘れていなかった。
どうしても見たいという執念と、見ることが出来なかった無念が、いつまでも心に残っていた。
願いが叶ったのだと喜んだ瞬間は、確かにあった。
だが、しかし。
―――ま、これでいっか
俺を買ったのは、だらしないおばさんだった。
全然見たいと思えない、魅力のかけらもない女だった。
俺は願った。
「一刻も早く、生まれ変わりたい」
そう願ってしまうのは、当然である。
引越し以来一度も掃除をしない上に、ゴミ捨てすらせず、晴れた日でもカーテンを開けようともしない。
腐敗臭がキツく、抜け毛が絡みつき、時に惣菜の汁がついた手を拭い…地獄でしかなかった。
恐ろしい願いをしてしまった事と、願いが叶ってしまった事が、いつまでも心をえぐり続けた。
……願いが叶ってしまって、もう…何年、たっただろう?
―――ちょ…窓、まどあけてっ!!!
勢いよく俺を開けたのは、マスクと防護服姿のおじさんだった。
いわゆるゴミ屋敷専門の、プロの掃除屋だった。
俺は願った。
「ゴミひとつない、きれいな部屋にしてくれ」
そう願ったのには、理由があった。
俺はすさまじい量のゴミに埋もれて、身動き一つできない状態になっていたのだ。
カーテンとしてこの部屋にやってきて以来、一度も風を受けて揺れた経験がない。
カーテンとして生まれたからには、せめて一度くらい風を感じてみたい。
……ああ、今、まさに、窓が開いて、風が。
―――うわっ、このカーテン、とろけてる!!
16年前の、うどんつゆが。
毎日せっせと汚れた指を拭いていた、地道な努力が。
俺のカーテンとしての姿を…蝕んでいた。
俺の願いも…むなしく。
腐って、干からびて、カビだらけになった何かのたっぷり詰まったゴミ袋に…押し込まれていく。
俺の体が、ただのゴミの塊になっていく。
ああ、次に・・・生まれ変わったならば。
おれは・・・
・・・
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なお、2024/2月の投稿作品はすべて生まれ変わりをテーマにしています。
他にもおかしなモノに生まれ変わってしまった人のお話を書いているので、気が向いたら見てね!!
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