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11 話題の議題

※この作品はフィクションです。作中の考え・思想はあくまでも登場人物のものであり、作者の意見ではありません。作中に暴力的な表現がありますが、犯罪行為、暴力行為を助長する意図はありません。暴力も犯罪も絶対にしてはいけない行為です。また、作中に出ている危険行為は絶対に真似しないでください。



生徒会では相変わらず、清水さんと会長の言い争いが勃発していた。初めは止めに入っていた私も一週間以上たつと段々慣れてきて、今は彼らの言い合いをバックグラウンド再生して生徒会の仕事をしている。

「おっと」

 わたしが議題提出BOXの中身を確認して声を出すと、長谷部君が近づいて来た。

「何かあったんですか」

「これ、見て。」

 私は長谷部君に紙を渡す。その紙は本来学校生活に関する意見や疑問が描かれているものなのだが、今回はそうではなかった。

「小鳥遊桐雄先生を告発します。小鳥遊桐雄は女子生徒に手を出しているセクハラ教師です。小鳥遊桐雄を断罪してください」

 あいつ、またなんかやらかしたのか?という疑問を持つ私と違い、長谷部君は眉間にしわを寄せこう言った。

「趣味の悪いいたずら、ですね。」

「いたずら、で済ませていい問題かな。一応、先生たちに伝えておいたほうが良いんじゃない?勇気を持った告発が無駄になったらいやだし。」

「…必要ないとは思いますが、確かに、小鳥遊先生に恨みを持った人物がいることは確かですから、伝えたほうがいいのかもしれませんね」

 長谷部君は私に紙を渡すと、副会長を呼んでくると席を離れた。副会長は誰にでもあたりが良いので、教師陣と話がある時は彼に行ってもらうのだ。

 長谷部君が副会長を呼んでくると、言い争いをしていた会長と清水さんも寄ってきた。紙を呼んで、顔に不快感を表している。

「小鳥遊先生がセクハラなんてありえないですよ」

 清水さんは非難めいた口調で私に言った。私に言われても困るのだが。

「小鳥遊先生は小鳥遊グループの一人息子だぞ。女子生徒に手を出さずとも女には困るまい」

 バ会長はバ会長らしい家柄目線で物を言っている。清水さんは何か言い返そうとしたが、すぐに同調した。

「その言い分はどうかと思いますけど、小鳥遊先生は見た目も性格も良いし、女性に好かれそうですよね」

「いやあ、意外と女子高生好きかもよ。小鳥遊グループの一人息子なのに教師をしているわけだし、年下、それも十代の女の子が好きで高校教師になったのかも」

 私が油を注ぐと火は一気に燃え上がった。

「なんてこというんですか!私、黒川さんのこと見損ないました!」

 清水さんが私のことを尊敬していた節がないので、現状維持って感じがする。

 バ会長もヒートアップし私に向かってこれだから下賤のものはなどと私を侮蔑した。

 副会長はいつも通り穏やかな笑みをたたえながら私に反論する。

「この学園は小鳥遊グループの運営やからねえ。小鳥遊先生が教師になったんはいずれ運営に携わるためやと僕は思うけどねぇ」

「ま、私のうがった見方はともかく、これお願いしますね」

 私は紙を副会長に渡す。

「わかりました。いってきますぅ」

 副会長が生徒会室を出て行く。

 生徒会のみんなは副会長が戻ってくるまで、そわそわしていた。副会長が帰ってきて、あの紙は生徒のいたずらということで話がついたと教えてくれた。おそらく女子生徒からモテている先生へのねたみか、先生に振られてしまった女子生徒のちょっとした復讐心によるものだろうということになったらしい。最後にこの問題は他言無用と言い含められたと副会長は私たちに言った。

「もちろんです。あんなにいい先生の評価を下げることなんてしません」

と言ったのは清水さん。

「言われなくとも。あのようなウソの告発を広めるような下品な真似はしない」

 と頷いたのはバ会長。

「はい。僕もでたらめな噂を広める気はありません」

 と返事をしたのは長谷部君だ。

「黒川さんもいいよね」

 副会長は私に確認する。

「はいはい。おっけーおっけー」

 と気のない返事をすると清水さんに睨まれた。



 帰り際、私は男子寮の近くにある林の散策コースを歩いていた。この先の人気のないベンチで待ち合わせをしているのだ。

 見知った人影が見えたので手を上げる。

「よっす。よっす。今話題のセクハラ教師さん」

「しっ。人に聞かれたらどうするんだ」

 そう。私が待ち合わせしていたのは噂の教師、小鳥遊桐雄だった。

 パリッとしたグレーの背広に茶目っ気があるネクタイ。すらっとした長身でいわゆる細マッチョ。清潔感のあるおしゃれ短髪。さわやかな整った顔立ち。休み時間には授業の質問というていで女子生徒にまとわりつかれている人気の英語教師だ。以外にも男子生徒にも好かれている。その人柄かあるいは小鳥遊が男子寮に住んでいて世俗から離れた聖人のようにみえるからだろう。そう、彼が修行僧、生臭坊主だ。

「火のないところに煙は立たぬといいますからなぁ。」

 私が軽蔑のまなざしを送ると、小鳥遊は慌てて答える。

「本当だ!僕は何もしてない。君に誓って!」

 私の手を小鳥遊はがっしりと掴んだ。そして僕を信じてくれと見つめてくる。熱い視線付きで。気持ち悪い。

「私に誓われても困るんですけど」

 私は小鳥遊の手をはがして――私は大体の人間よりもフィジカルが強い――小鳥遊の肩を押した。小鳥遊は後ろのベンチに倒れるようにして座る。

「ま、調べればそれはわかるから別にどうでもいいとして。とりあえず、防犯カメラ見せてよ。昨日箱の中身を回収した後から今日回収するときまでのやつ。」

 私がそう言うと小鳥遊は少し驚いた顔をした。

「君の仕業じゃなかったのか?」

「いやいや。私には何の得もないし?ちょっと職員室を騒がしくしたってどうしようもない。私ならそんな回りくどいことしないで自分で報復しますよ。おじさんは、よく理解してるはずですけど?」

 私は小鳥遊の足を踏んだ。小鳥遊が「いっ」と声を漏らした。

「う、ああ、まあ、そうだな」

「で、カメラ、見せてくれますよね」

「ああ、もちろんだ。手に入れたら連絡するから、またここで――」

 私は小鳥遊の言葉を遮って言う。

「手に入れたら封筒に入れて郵便受けに入れといてください。私の部屋番号ご存知ですもんね。連絡もしなくていいです。」

「手に入らなかったら?」

「手に入れてください。じゃ、私はこれで」

 私は小鳥遊を置いて、さっさと寮に帰った。小鳥遊は私が出会った人間うち一番嫌いな人間なので当然あたりも強くなる。ホントにクズパイセンよりも嫌いなのだ。できれば二度と会いたくないが、そうもいかないのが悩ましいところである。


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