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01 入学式と新たなヒロイン

※この作品はフィクションです。作中の考え・思想はあくまでも登場人物のものであり、作者の意見ではありません。作中に暴力的な表現がありますが、犯罪行為、暴力行為を助長する意図はありません。暴力も犯罪も絶対にしてはいけない行為です。また、作中に出ている危険行為は絶対に真似しないでください。



この世界が少女漫画の舞台かもしれないなどという頭のおかしい妄想を抱き始めたのはいつごろだっただろうか。

 おそらくは一年の春。関沢さんに出会ったからだ。

 関沢さんは明るく前向きな性格の美少女で、女嫌いでいつの間にか有名な暗めのイケメンと、中学校が一緒で親友のイケメンとの間でラブコメし始めた。どうやら聞いた話によると女嫌い君は幼いころ出会った初恋の相手らしい。幼いころの女嫌い君は明るく優しい性格だったのだが、ある事件が彼を今の状態にしてしまったのだそうだ。親友イケメン君は関沢さんと気が合いなんでも言い合える相手だったらしいが、本当はずっと関沢さんのことが好きだったとのこと。女嫌い君が現れ焦った彼は関沢さんに思いをつげ、「俺のこと男として見てほしい」などと迫るなどしているらしい。何故私がこんなことを知っているかというと関沢さんのすぐ後ろの席だったため教室内のイベントは目の前で行われるし関沢さんと友達になり、いつの間にか恋の相談をされるようになったからだ。関沢さんはいつも「友達の話なんだけど」と枕詞をつけるが正直そんな状況に置かれているのは関沢さんぐらいなものなのでバレバレである。

 次に気づいたのは先輩のこと。二年の成瀬先輩はもともと内気な性格でおどおどした感じの美少女だった。成瀬先輩はその性格が災いしてたちの悪いクズイケメンに目を付けられ、パシらされたり、セクハラまがいの嫌がらせをうけたり、脅迫まがいの壁ドンを受けたりしていた。そんな成瀬先輩をいつも助けてくれたのは成瀬先輩と同じ部活のメガネ先輩だ。メガネ先輩は助けてくれるが同時に成瀬先輩に少し厳しかった。「いつまでもおどおどするな」とか「一回くらいは自分で何とかできないのか」とか。最初はメガネ先輩のお小言に落ち込んでいた成瀬先輩だったが、ある日勇気を出してパシリを拒否。いらついたクズが成瀬先輩を壁際に追い詰めたところでメガネ先輩が登場しクズを撃退。そして「やればできるじゃないか」と頭をポンとしてくれたらしい。私ならその手を振り払ってしまいそうなものだが。まあ、とにかくそれから成瀬先輩はどんどん変わっていき、クズの呼び出しは拒否、クズに何かされそうになったら人を呼ぶなどして対処するようになった。クズは成瀬先輩に拒否られてから成瀬先輩のことが好きだったことを自覚し、紆余曲折あって成瀬さんに謝罪アンド告白した。謝罪は受け取ってもらえたが告白は失敗し失恋。成瀬先輩はメガネ先輩が卒業するときに告白し今二人はつきあっているらしい。何故私がそんなことを知っているかというと私が成瀬先輩と卒業したメガネ先輩と同じ書道部に所属しているからである。

 そして現在。二年生へと進級した私は新一年生を迎えていた。入学式である。新入生代表の挨拶が始まり私は確信した。一年生の主人公は彼女に違いないと。

 そしてその確信を裏付けるように一学期の中間テストの後、彼女は生徒会室に乗り込んできた。そう、うちの生徒会にはとっておきのキャラが濃いイケメンがいるからである。

 ガラッと勢いよくドアが開き、意思の強そうな目をした彼女は友人らしき女子生徒を連れ立って部屋に入ってきた。

「すみません!生徒会室ってここで合ってますか」

 他に誰も返事をしそうになかったので一番近い位置に座っていた私が返事をする。

「そうですが、何か御用ですか」

「話があるんです!」

と彼女は私のほうへ一歩踏み出す。

「話?学園に対するご意見ならそこに置いてある記入用紙に書いて隣にある議題提出BOXにいれてください。次の会議の時にそのご意見を踏まえて話し合いますので」

 私は入り口近くの机を指さして彼女に説明した。

「なんですかそれ!」

 彼女は私に何か不満があったようで、眉間にしわを寄せている。隣の女子生徒が彼女をなだめるも、彼女は怒髪天を衝くという感じで私に詰め寄った。

「そんなんだからダメなんですよ!あなたも気づいてますよね?内部組と外部組のこと。金持ちだからってそんなに偉いんですか?何で見下されたり意地悪されても我慢しないとダメなんですか?生徒会が生徒の問題を解決してくれるって聞いたから来たのに…これじゃ無駄足です!」

 ちょっとこの主人公ヒステリックな感じするな、などと考えていると生徒会室の奥で優雅にお茶を飲んでいた生徒会長が近づいて来た。

「駄犬がキャンキャンよく吠えるな。だから外部組は嫌いなんだ。品がない」

 この生徒会長は自分の親が偉いから自分も偉いと思っている典型的なおぼっちゃまで、生徒会室に高級志向のティーセットとお茶入れのプロである自宅のメイドさんを持ち込み、ろくに仕事をせず、いつも人を見下しながら優雅気取って足汲んで茶をしばいている。

彼は内部生の意見しか聞かず、外部生は話す価値もないとこき下ろしてくる。

そんな生徒会長がいる生徒会に何を期待しても無駄だと私は思うのだが、今まで読んできた少女漫画を参考にすればこれは俺様会長が主人公と交流を持つことで徐々に考えが変わり、この馬鹿にあるかないかはわからないがなんかこう悩み的なのを主人公に解決してもらって、最終的にゴールインする流れだろう。

と、にらみ合い喧嘩しそうなピリピリした雰囲気を漂わせている目の前の二人組を見ながら考えていると、「まあまあ。そのへんにしとこか」と似非関西弁が聞こえた。

来た。噛ませ犬候補。俺様バ会長と主人公を取り合うであろう優男風のイケメン。似非関西弁腹黒副会長だ。

彼はバ会長と違い仕事をする人だ。いつもバ会長のフォローにまわり、その物腰の柔らかさで生徒のみならず先生の人気も高い。しかし、よく見ると微妙に目が笑っていなかったり、女子生徒にもらったお菓子をこっそり捨てていたりと、何かと闇が深そうなムーブを見せてくる。偏見かもしれないが、誰にでも優しく、誰からも評判がよく、というのもいかにも危険人物らしい。ということは、似非関西弁腹黒副会長ではなく、似非関西弁闇深副会長だったか…!

 その副会長はいつも通り優しい笑顔で二人をなだめた後、主人公に対してこう言った。

「そんなに熱心に学園のこと、考えてくれはるなんて嬉しいわぁ。そやなぁ。じゃ、清水さんも生徒会に入ったらどやろうか。ちょうど書記次長が空いてたと思うんやけど…黒川さん。そうでしたよね」

「え?ええ、まあ。でも、会計次長も空いてますよ。」

 ちなみに私は書記長をしている黒川である。正直、主人公の面倒を見るということはバ会長と似非関西弁との接触が増えることに他ならないのでご遠慮したいところである。

 バ会長が猛反対している。キャンキャン、よく吠えるぜ。

「ああ!そやったねぇ。長谷部くんはどう思う?」

 副会長は奥に向かって話しかける。そこには領収書の整理をしている男子生徒が座っていた。長谷部君だ。

 長谷部君とは会計長をしている二年生で、内部組だが外部生に対して別にどうこういうことはなく非常にフラットに接してくれるので、主人公ともすぐ打ち解けるだろう。モーマンタイだ。

 バ会長が猛反対しているが、副会長に相手にされていない。血統書付きの駄犬だな。

「僕は大丈夫ですけど、やっぱり書記次長のほうが良いんじゃないですかね。黒川さんのほうが何かと話しやすいでしょうし。」

 何でだよ!?裏切りおって。たった今、喧嘩しそうになってたのに何が話しやすいの?

 バ会長が何か言っている。おい!もっと頑張れよ。ドーベルマンみたいにきりっとかっこよく決めて見せろ。

「どうかな?清水さん。」

 清水さんはお得意の意思の強そうな瞳でこちらを見据え、よく通る声で返事をした。

「入ります!書記次長としてこれからよろしくお願いします!」

 なんでやねん!


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