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絶望のアルデバラン  作者: 朱華のキキョウ
Chapter1 継ぐもの
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Episode6 新たな街にて桃色に

一ヶ月以上間が空いたのはモチベーションの問題ですので許してください何でもはしません

「そんなに近くは無いと思っていたが……さすがにこれは遠すぎじゃないか?」


 汗を垂らしてバランがそう口にする。


「仕方がないだろう。リンウェリー街からトウスリー街まではかなりの距離がある。我でも時間がかかってしまう」

「こんな遠いとは思わなかった」

「事前に調べておくんだったな」

「旅行じゃねぇんだよ」


 ため息をつき、後頭部を掻くバラン。顔を上げ、目の前の景色に目を向ける。左側には森林があり、その境から左は全て荒野となっている。かなり遠くに街らしきものが目に映るが、それはトウスリー街ではない街だった。


「ったく。いつになったら着くんだよ」

「まぁそう焦るな。焦っては事をし損じてしまうぞ」

「別に事は何もないけどな」

「そう冷たいことを言うな」


 親友のようなやり取りをしながら歩いていると森林の奥に家がポツリと立っているのが目に見えた。


「なんだ?家が見える。だが街は怪物から守るために外壁があるはずだが」

「とにかく行ってみるのが吉だな」


 二人はそう言って森林へと足を向ける。森林へと近づけば近づくほど森林の奥には家が何件も立っていることが見て取れた。

 そして森林の中に入ると直ぐに木が消え、家々が建ち並ぶ場所に出た。


「大きい集落か?」

「そうみたいだな」


 規模はそれほど大きくは無いが、集落としてはとても大きいと言えるほどの場所だった。

 人々が行き交い、自由に生活しているように見えた。


「トウスリー街の近くにこんな集落があったなんてな」

「あぁ。我も見たことがないぞ」


 集落を見て唖然としている二人に初老の男が歩み寄ってきた。


「旅のお方とは随分珍しい。遠路はるばるよう来なさったな」


 とても温厚な初老の男は二人に笑みを見せた。


「かなり大きい集落みたいだが、トウスリー街とは違うのか?」


 バランがどストレートに疑問を投げかける。それに対し初老の男は頷き、集落に体を向けた。


「この集落はちと特殊でな。他の集落とは違い、トウスリー街の管轄下にある出来たてホヤホヤの集落なんだよ」

「出来たてホヤホヤね」


 バランはそう言って家などに目を向ける。確かに使われている木材も比較的綺麗で傷が少なく、腐っている部分もない。


「この集落はここ五十年で作られたのか?」


 アルデの問いに初老の男は頷き返した。


「そうだなぁ。厳密には作られたのは四十二年前だ」

「四十二年前?ほんとに最近だな」

「この集落は他の街から逃げてきた人々を匿ったりもしてる。昔からトウスリー街は難民が多くてな。この集落ができた理由の一つでもある」


 初老の男はそう言いながら歩みを進め、二人を手招きする。バランとアルデは顔を合わせて少し首を傾げてから初老の男を追った。


「それだけの理由でこんな集落を作ったのか?」


 顎に手を当て、バランがまた疑問を投げかける。それに初老の男は少し口ごもった。


「そうだのぉ……」


 初老の男が返答に困っていると、前から少女が走り寄ってきた。


「おじいちゃん!難民の人?」

「おぉ、レンナ。この方々は遠方から来た旅人さんだ」

「旅人?」

「そう。各地を練り歩くちょっと特殊な人のことだ」

「本人いる前でそれ言うか」


 ため息をつくバランにレンナという少女が近づく。


「じゃあじゃあ!お兄さん達は()()()()を知ってるの?」


 その言葉にアルデが眉を顰める。それに気づきながらもバランはレンナの言葉をしなやかに躱した。


「悪いな、俺たちは旅に出たばっかでそこまでよく知らないんだ」

「……そうなんだぁ、残念」

「こらこら、お客人を前にその態度はいけんぞ。さ、お家に帰ってお母さんのお手伝いでもしてきなさい」

「はーい。お兄さんにお姉さん、ばいばーい」


 そう言って手を振り、走り去るレンナ。バランとアルデはその姿をただ目に納めていた。

 それからアルデがバランに耳打ちをした。


「バラン、ここができた他の理由は多分──」

「あぁ、何となくわかってきた。でもまだ確信的じゃない。少し調べてみる必要がある」

「うむ、そうだな」


 初老の男に連れられるまま集落の案内を受けた。

 集落を一通り見て回った後、バランは初老の男に問いかけた。


「ひとつ聞きたいんだが、トウスリー街はどこにある?」

「それならこの道を真っ直ぐ進めば着くぞ」

「わかった。集落の案内まで悪いな」

「気にする事はない。これも長の仕事だ」


 そう言い、胸に手を当てる初老の男。長袖の裾からうっすら覗く傷をバランは見逃さなかった。しかし、それについて初老の男に言及する気はなかった。


「色々世話んなったな」

「ではまたいずれ」


 二人は背を向け、初老の男に示された道を進む。

 初老の男は笑みを崩し、空を見上げた。


「……ここが、運命の分かれ目か」


 そうボソッと声にする初老の男に女が歩み寄る。


「あら、もう行ってしまったの?ご飯でもご馳走しようかと思ったのだけれど」

「……皆を集めてくれ」


 突然告げられた言葉に女は顔つきを変え、とても真剣な顔になる。それから初老の男に恐る恐るといった様子で問いかけた。


「……遂に来てしまったのね」

「あぁ。この時が」


 女は頷き、集落の住人を集め始めた。

 そんなことが行われていることを知らず、二人は林道を進み、外壁の門の前に辿り着いた。


「さすがは第三都市と呼ばれるだけはあるな」


 バランが感心していると鎧を着た人が歩み寄ってきた。


「お前たち、何の用だ」


 明らかに門番のような見た目をした鎧姿の人はバランとアルデにそう問いかける。


「我らは旅人だ。この街を訪れたのは気まぐれだ」

「旅の者か、少し待て」


 そう言って鎧姿の人は足早に門の所へと進む。そして鎧姿の人は槍を持って二人の前に立った。


「どちらかで構わない。力を示してもらいたい」

「力を示す?なんでだ?」


 バランの問いに鎧姿の人は親切にも答えてくれた。


「我々の街、トウスリー街は第三都市。そして強盤の都市とも呼ばれている。そのため、街への出入りを許すにはそれ相応の力がなければならない。街の威厳を保つためでもあり、その人自身の保全にも関わる問題だ」

「それならなんでどっちかでいいんだ?」

「トウスリー街には何人もの旅人が訪れた。二人、もしくは三人以上で旅をしている者は基本的に一人行動を行わないという統計が取られている。だからどちらか片方で構わないんだ」

「そういうことね」


 バランはその話を聞いたあと、アルデに目を向ける。アルデは仕方ないといった表情で鎧姿の人の前に立った。


「では、よろしく頼む」

「試験開始だ」


 その言葉の直後、鎧姿の人は素早く槍を突き出した。しかし、アルデには当たらず空を突いた。


「 ”バン” 」


 アルデの口から放たれた言葉は鎧姿の人の動きを止める。鎧姿の人は体を動かそうと試みるが、全くもって動く気配もなく、すぐに諦めた。


「降参しよう。その力があればこの街での生活も恐らく大丈夫だろう」


 その言葉を聞き、アルデは魔法を解く。体が動くようになった鎧姿の人はすぐさま踵を返し、門へと歩みを進める。

 しばらくすると、門が音を立てて内側に開いていく。それから鎧姿の人は二人に近づき軽く一礼した。


「ようこそ、力の象徴トウスリー街へ」


 歓迎の言葉を受け、二人は街へ歩み出した。

 二人が街に入ったのを確認し、門はゆっくりと閉じられた。


「さすがは第三都市と言われるだけの大きさはあるな」

「大きさの違いはよくわからんが、確かにデカイな」


 外部の街に出向いたことの無いバランは首を傾げる。それを横目にアルデは微笑んで歩みを進めた。


「ならば、ここは我が先導するとしよう」


 アルデはバランの前に立ち、振り返ってとてもいい笑顔でそう口にする。

 バランはそんなアルデに少し呆気に取られたが、直ぐにため息をついて口を開いた。


「しゃーねぇな。今回だけ特別に引っ張られてやるよ」


 その言葉にアルデはムッとし、少し不機嫌そうに口を開く。


「この先も汝の知らない街を訪れるんだ。これから先も我が先導する」

「大丈夫だよ。知らない街だったとしてもある程度はなんとかなる。そう毎度毎度迷惑かけられんしな」


 バランはそう言いながらアルデの横を通り過ぎる。アルデは頬を膨らませ、さらに不機嫌そうな顔をしてバランの腕を掴み、抱きしめた。


「我が先導すると言っている」


 グイッと後方に引き寄せられるバラン。バランスを崩し転けそうになるもなんとか堪え、アルデの方を見た。

 その時、自分の腕がアルデの女性を主張する部分に埋もれているのを見て完全に呆気に取られてしまった。


「知らない街の知識がないうちは我の言うことを聞け。分かったな?」


 アルデの言葉にバランは返答を返さない。アルデは眉を顰め、首を傾げた。


「どうしたバラン?なにかおかしなことでもあったか?」


 少しの間固まっていたバランはハッとし、アルデに目を向ける。


 ──こいつ、まさか気にしないタチか?抵抗がない?わけでは無さそうだが、というか俺こんなこと考えるんだな。一応自分でも分かるぐらい精神ズタボロにはなったんだが


「おいバラン、なんとか言ったらどうだ?」


 考え事を中断させるようにアルデの言葉が頭にスっと入ってくる。


「あぁ、すまない。まぁそうだな、ちょっとだけなら任せてやるよ」

「なんだその態度は」


 バランはアルデから少しだけ視線を外した。


 ──アルデが気にしないなら……良い、のか?変に俺だけ意識するのは少し違うか?さすがに俺も男だし、照れくさいんだが、まぁとにかく気にしなくていいか……


 アルデはまた首を傾げ、バランの腕に目を落とす。それからアルデはゆっくりとバランの腕を離した。


「さぁ、そろそろ行こう」

「あ?どこに行くんだ?」

「そ、そうだなぁ……」


 突然辿々しくなるアルデにバランはハテナを浮かべながら歩みを進めるアルデのあとを歩いた。

 その時、バランは気づかなかった。アルデの耳が微かに染まっていることを。

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