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絶望のアルデバラン  作者: 朱華のキキョウ
Chapter1 継ぐもの
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Episode19 反撃の狼煙

 バランは狙われる理由を一から説明した。

 ポタステート街を一夜にして消し去ったこと、それに至った経緯、そしてこれから先自らが行う業。

 その話に対し、フィスティーナとファルティエラ、リーベットは質問ひとつ漏らすことなくただただ黙って聞き入った。

 リゲルとアトリアも経緯やこれから先のことは聞いていなかったため、静かに聞いていた。

 そして、いつの間にか話は終わり。


「まぁこんな感じだな」

「へぇ、そんなことがあったんだね」

「なんだか、似てる」

「うん、似てる」


 フィスティーナとファルティエラの言葉にアトリアが首を傾げた。


「何が似てるの?」

「バランと」

「フィスティーナとファルティエラ」

「似てる、か」


 バランは一度考え、それから首を横に振って二人の頭を撫でた。


「似てはないな。俺は奴隷じゃなかったし、仲間がいつも守ってくれてた。俺はまだ救われてた側だ」

「バランは控えめ」

「変わらないよ」

「そうか、お前らにもリーベットがいるんだったな」

「ん」

「いる」

「はは、そう言われるとちょっと照れるなぁ」


 撫でていた手を離し、地面に手を着いて体を立たせる。


「と、話はここら辺にしとくか」

「もう行くのか?」

「あぁ、おっさん、あんたは来るのか?」

「昔の友と顔合わせしようと思うたが、悪行働く野郎には顔を合わせる気は無い。お前さんに任せる」

「そうか。アトリア、お前いつまで寝てる気だ、行くぞ」

「え〜、私も行くの?」

「いい女がいるぞ」

「行く!」


 アトリアは飛び起き、すぐにバランの隣に立ち、胸を張って笑みを浮かべた。


「美女が、私を待っている」

「お前バカだろ」

「リーベット、私たちも行こう」

「早く早く」

「そんなに強く引っ張らないで〜」


 今から敵の本陣に乗り込むとは思えないほど空気が和んでいる。リゲルは傍からそれを見てにっこり笑みを浮かべていた。

 それを見てバランが眉を顰め、それを真似てフィスティーナとファルティエラも眉を顰めた。


「何笑ってんだ」

「そうだそうだ」

「気持ち悪い」

「気持ち悪いはいかんじゃろ気持ち悪いは……」


 溜息をつき、リゲルはバランに目を向けた。


「バラン、あやつのこと、頼んだぞ」

「はいはい、テキトーに任されますよ」

「あやつって誰?」


 首を傾げるアトリアを無視してバランはリーベットとそれにへばりついてるフィスティーナとファルティエラに口を開いた。


「さてと、今からお前らが言ってたやつを殴りに行くが、準備はいいな?」

「ぼちぼちね〜」

「大丈夫、頑張ろうねファルティエラ」

「うん、一緒に頑張ろうフィスティーナ」

「あれ、無視?」

「よし、行くぞー」

「「「おー」」」

「ねぇ無視!?」


 声を揃えてバランの後ろをついていく三人にアトリアは涙目で声を荒らげた。

 一方、アルデとガルガンはすぐに地下を脱する。


「急ごう」

「その前にひとつ聞きたいことがある」


 アルデの言葉にガルガンは足を止め、振り返る。


「……連れ去られた奴のことか?」

「そうだ。初耳だからな、ガルガンに妹がいたなんて」

「…血の繋がりは無い、あいつは拾ったんだ」

「拾った?」


 アルデは首を傾げ、ガルガンに問いかける。ガルガンはその問いかけに頷いた。


「アルデがいなくなって一年経った頃、靴すら履いてない奴が路地裏でふらついてたんだ」

「全裸だったということか?」


 アルデの問いかけにガルガンは頷きを返す。


「話しかけても知らんぷり、痩せ細って今にも倒れるんじゃないかと思ってな、その時来てた上着を着せて家に連れて帰って、それから長い間世話をしたんだ。大体三ヶ月がたった頃だ、俺を兄だと言い始めたのは」

「そうか、我が知らぬのも頷けるな」

「あぁ……急ごう」

「そうだな」


 梯子を登り、外へと向かう。入口を塞がっている木の板に手をかける。その時、二人の耳に甲高い声が響いた。


「この声……!」


 ガルガンは木の板を力強く押し退け、すぐに外に出る。

 そしてガルガンが目の当たりにしたのは、泣きじゃくる少女一人と、その目の前に倒れるディルベッドだった。


「ディルベッド!」


 ガルガンはすぐに駆け寄る。しかし、ディルベッドは既に大量に出血し、息絶えていた。


「……おに、ちゃ……」

「……もう一人はどうした」


 ガルガンがそう言うと、少女は震えた指で木箱を差した。そこには涙を必死に堪え、震えていた。


「……そうか」


 一瞬手を握り締め、直ぐに笑顔を浮かべて少女の頭を撫でた。


「命懸けでお前たちを守ったんだな」


 少女は感情の起伏を抑えきれず、勢いよくガルガンの脚に抱きついた。


「……任せろ、仇はとる」


 少女の頭から退けられた手を握り締められ、血がぽたぽたと垂れていた。


「行くぞ、ガルガン。急いだ方がいい」

「……あぁ、そうだな。俺が帰ってくるまで、木箱のところで一緒に隠れてな」


 ガルガンの言葉に頷きを返し、少女は急いで木箱まで走った。


「……行こう」

「ガルガン、怒る気持ちはわかるが、今は抑えろ。判断を誤るぞ」

「……わかってる」


 ガルガンはそう答えながらも歯を食いしばり、走り出した。その後ろをついて行くアルデもまた怒りを浮かべていた。

 地面を踏み締める音が木霊す。やけに静かで不気味な街中、その静けさの先にある大きく立派な城。その目の前でバランは笑みを浮かべていた。


「近くで見ると余計に立派に見える城だな」

「実際に立派だよね、ファルティエラ」

「うん、ちゃんと立派だね、フィスティーナ」

「ほんと、立派よね……無駄に」


 ため息と共に言葉を吐くアトリア。その隣でリーベットが気だるそうに頭を搔く。


「ここからどうするの?まさか無策で突っ込むとか言わないよね。そういうの面倒だから嫌なんだけど」


 その言葉に首を傾げたバラン。それに合わせてファルティエラとフィスティーナも首を傾げた。


「何寝ぼけたこと言ってんだ?」

「そーだそーだ」

「リーベットそーだ(?)」

「……え、嘘でしょ?」


 顔を顰めるアトリアに釣られるようにリーベットも顰め面を浮かべた。


「……脳筋って、意味がよくわからないと思ってたけど、ようやく理解できたよ」


 呆れてため息をついている横では既に突入態勢に入っていた。


「そんじゃ行くぞ」

「頑張ろうね、ファルティエラ」

「そうだね、フィスティーナ」

「ねぇ、せめて三秒数えて──」


 言葉を遮るようにどデカい音が街を震わせる。

 ガラガラと崩れる城の壁、立ち込める煙を切るように歩みを進める。


「邪魔するぞ〜」

「……もうダメだこの人」

「リーベット、諦めよう。多分もう手遅れよ」

「邪魔する〜」

「邪魔邪魔〜」


 煙の中から姿を現すバラン達、それを見るや否や、城で警備をしていた鎧を着た人物が大声を上げた。


「敵襲ー!敵襲だー!」


 その声に鎧を着た人物達がどんどんと集まってくる。


「敵は五人!」

「奴らは……!」

「フィスティーナとファルティエラとリーベット、それにカルミアまで!」

「叛逆か!?」


 騒ぎ立てる警備員達にバランは耳に小指を突っ込む。


「うるせぇな、ちっとは静かにしたらどうなんだよ」

「仕方ないよ、壁壊して侵入なんて敵意しかないから」

「……ん?」


 何か殺気を感じ、隣に目を向けるバラン。そこには拳を強く握り締め、歯を食いしばりとてつもない顔をしているアトリアが立っていた。


「……誰がカルミアだって?その名前で呼ばないでって、何度も言ったのに……いい加減にしなさいよ!」

「う、うわあああああ!」


 バキバキと音を立て、地面から氷の柱が突き出す。その柱は勢いよく警備員に突き刺さり、鎧を貫通した。


「全員戦闘態勢!」


 鎧のぶつかる音と共に警備員達が武器を構えた。それを前にしてため息をつくリーベットとは真逆に、バランは笑みを浮かべていた。


「いいね!楽しくなってきたぜ!」

「もう嫌なんだけどホントに……帰りたい」

「一瞬で片付けよ、ファルティエラ」

「うん、すぐに始末しようフィスティーナ」


 アトリアの攻撃を合図にバラン達は武器を構えた。


「さぁ、殺し合おうぜ、死んでも死ななくてもなぁ!」

「突撃ぃー!」


 バランと一人の警備員の声が合図となり、全員が攻撃を始めた。

 城を超え、街を超え、集落までにも音が響く。しかし、その音は集落の人達には届かない。もうそこに、集落はないのだから。


「……さてさてと、ぼちぼち力、見せてもらおっか〜」

「姉さん、別に見方は人それぞれだけどさ──」


 ” 姉さん ” と呼ぶ人物がため息と同時に頭を搔く。そして目の前の ”姉さん ” と呼ばれている人物に言葉をかけた。


「流石にそれは下品だと思うよ」


 目の前にいる ” 姉さん ” と呼ばれる人物は壁に取り付けられた看板を太ももとふくらはぎで挟み、ぶらぶらとぶら下がっていた。手をだらーんと下に伸ばし、髪も重力で下へと広がる。太ももとふくらはぎで挟んでいるスカートも前の方は重力によって下に落ち、黒のセクシーな下着を露出させていた。


「ええやん別に、誰にも見られへんやん」

「ここにいるの、姉さん一人だけじゃないんだよ?」

「うちとおるんは可愛い可愛い自慢の弟やしええんやで〜」

「……こっちが良くないのに」

「なんか言うた?」

「何も言ってないよ」


 色々な意味で苦労していた ” 姉さん ” と呼ぶ人物であった。

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