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騎士として民草を守るとは

今日も今日とて、ゴケルブルグの騎士団大食堂は大盛況だった。騎士見習いのアルセウスたちには相変わらず端っこしかもらえない肉片や冷めきった風呂しか割り当てがない。

「酒が足りないぞ!早く持ってこい」

とユリシーズが叫んだ。ミルセが頭を掻きながらユリシーズに酒を運んできた。

「お、いつもの神官じゃないんだな」

とユリシーズが言うと

「彼は依頼があるかもしれないということで、パロ神殿に向かっています」

とミルセが答えた。

「熱心なことはいいことだ。民衆から信頼される騎士とはかくあるべきだ」

とユリシーズが言って酒を飲み干してから

「お前らは気に入っているんだぞ」

と言った。そこへ、アルベール・アルバレスゴケルブルグ大公国騎士団団長がやってきて

「新入り、いるか?仕事だ」

と言った。その時、アルセウスがパロ神殿から帰ってきた。ミリアがそれに気が付き

「呼ばれているわ」

と声を掛けた。イルドもその辺から帰ってきて全員が揃ったところを見てアルバレスが

「仕事だ。詳細はこの商人から聞いてくれ」

と言って、騎士団の見回りに行った。

「依頼です。私は、ハウスシュトウゼン商会のギリアン・フリンといいます。依頼状はこちらになります」

と貧相な人間が言って、依頼状を出した。

依頼:南方の街リンドゼンに行く商人の護衛

南方の街リンドゼンに行く隊商の護衛をしてくれないか。

報酬:1人300G+道中の宿泊飲食費

ギリアンの提示した依頼に対して、アルセウスが

「リンドゼン?」

と聞いた。ミリアが

「ゴケルブルグ南方の狩猟が盛んな街よ。わかったわ。いつ出発なの?」

と言ったので、ギリアンが

「明日の朝です。首都南方の門で担当者が待っております」

と答えた。

「まあ、用意するものもないし、別れを惜しんでくれるような情人もいないから、気楽に行こうぜ」

とイルドが笑いながら言うと

「そうだな」

とミルセが言った。

翌朝になり、首都南方の門に着いた。

「おお、新米騎士とは聞いているが、君たちがそうか。私はニスモ・ベンディング。ハウスシュトウゼン商会のリンドゼンなどゴケルブルグ大公国南方の商売を担当している。それでは早速出発しようではないか」

と言って、ニスモ・ベンディングがアルセウスたちを馬車に乗せた。

道中に入り、アルセウスが張り詰めた顔で外を見ていると

「このあたりに出てくる魔物は大したことはない。警戒さえしていれば大丈夫だと思う」

とニスモが笑いながら言った。その時、大型の山猫が道を塞いだ。

「グレイリンクスか。ミリア、弱点は抜けたか?」

とアルセウスが聞くと

「だめね。わからないわ」

と答えた。

「すまん、先手はしくじった」

とミルセが言うと

「私も失敗ね。攻撃は甘んじて受けるわ」

とミリアも言った。グレイリンクスは接近してきて、それぞれ目の前にいたミルセとイルドを攻撃した。連続攻撃の分はどちらも避けた。イルドは

「チッ。だいぶ深手を負ってしまったぜ」

と噛まれたところを擦りながら言ったので

「大丈夫?今すぐ回復するよ」

とアルセウスが言った。彼は《魔法拡大/数》を使い、キュア・ウーンズを唱えた。魔法は大成功であった。ミルセの方は全回復させることができたが、イルドの方はやや威力が足りなかったので、運命を捻じ曲げて強制的に回復させた。ミルセはライジングサンの鎖を鳴らしながら

「キャッツアイで強化して攻撃だ」

と言って、グレイリンクスの片割れに攻撃をした。一撃で倒れた。イルドが意気揚々と

「魔力撃だ」

と言って、残りのグレイリンクスに攻撃を仕掛けた。拳は的確に急所を突き、グレイリンクスは簡単にやられた。グレイリンクスの毛皮と謎の種を入手することができた。アルセウスが

「化けて出てこられたら堪ったもんじゃない。埋葬しておくよ」

と言って、お墓を建てた。そして、手を合わせてからさきに進んだ。


夜になり、夜営を張った。交代で見張っていた。夜が更け、アルセウスとミルセの見張り番のとき、ブラッドリングが2体襲ってきた。

「ブラッドリングか。起こそう」

とアルセウスが言うと

「了解」

と言って、ミルセが2人を起こした。

「んぅ。何よぉ」

とミリアが目をこすりながら言うと

「敵襲だ」

とミルセが言った。

「敵襲?何が襲ってきたの?」

とミリアが目をこすりながら聞くと

「ブラッドリングとのことだ」

とミルセが言った。

「ん、ちょっと弱点までは思い出せないわ。すぐ行くわ」

とミリアが言って、イルドが起きてきたのに気がついた。

「敵襲だな」

とイルドが言うと

「敵襲だ」

とミルセが言った。そして、3人が並び立って出た。

「よし、先手が取れた」

とミルセが言うと

「そう。なら、攻撃よろしく」

とアルセウスが言った。

「イルドは人間でしょ?暗闇じゃ見えないからライトを行使するわ」

と言ってミリアがイルドのアイアンボックスにライトを行使した。魔法は成功し、イルドの拳は光った。

「しゃ。なら、魔力撃だぜ」

と言ってイルドは近接した。拳は正拳を突き、一撃でブラッドリングを倒した。

「俺はダメージを余計に貰いたくないから近接しないぜ」

とミルセが言うと

「それでいいぜ」

とイルドが言って、避ける態勢に入った。実際、ブラッドリングの攻撃を紙一重のところで躱した。そして、再び魔力撃を加えた。急所を外したらしく、致命傷にはならなかった。もともと死んでいるが。ミルセが

「それなら、とどめを刺すぜ」

と言って、前線に躍り出た。急所を外したが、致命傷になりブラッドリングは肉塊へと成り果てた。

「これでどうだ!」

とミルセがチェーンを軋ませながら言うと

「はいはい。それじゃあ、剥ぎ取りと埋葬だよ」

とアルセウスが言った。しかし、何も剥ぎ取れなかった。アルセウスは簡易な墓を建てて、ブラッドリングの冥福を祈った。


翌朝になり、ニスモが起きてきて

「おはよう。今日も護衛をよろしく」

と言った。アルセウスが意気揚々と前に出た。

しばらく歩いていると、大型のランタンが落ちているのを発見した。

「なんだろうこれは?」

とミルセが掴み上げながら言うと

「ああ、それは太陽のランタンだな。全周20mを明るく照らすアイテムだ。ただし、油を2倍量消費する」

とニスモが幌から顔を出しながら言った。

「いいアイテムじゃん。アルセウス、持っておいてくれる?」

とミリアが言うと

「たしかにこれがあれば、暗いからと言ってライトを行使する必要がなくなるな」

とイルドが言った。アルセウスが

「わかったよ。俺が持っておくよ」

と言って、ミルセからランタンを受け取った。


夜になった。ミルセが夜営付近を巡回していると、魔符が落ちているのに気がついた。拾ってから

「三日月の紋章が入った魔符だな。なんだろうこれは?」

と言った。そして、テントに戻ってからアルセウスに

「こんな物を拾った」

と言った。アルセウスはじっくりとながめてから

「月光の魔符だな。破れば精神抵抗が一時的に上がるやつだ」

と言った。

「ほう。精神抵抗は俺とイルドが低いからこの2人で分けるぜ」

とミルセが言って、月光の魔符Ⅰを取った。


翌日になり、隊商はリンドゼンに向かって再び進み始めた。しばらく進んだところで、植物に道を塞がれた。

「おわ。これは魔物かな?」

とニスモが言うと

「ダンシングソーンみたいですね。刈り取ってきます」

とアルセウスが言って、全員に行く手を阻むダンシングソーンを刈るように指示を出した。

「弱点は炎属性ダメージ+3点」

とアルセウスが言うと

「そうなのね。でも、特に炎属性ダメージを出せる人もいないし」

とミリアが言って、先手を取った。

「まずはフィールド・プロテクションだよ」

と言って、アルセウスがフィールド・プロテクションを行使した。

「これなら、精神抵抗を抜けるかもしれない。スパークだ」

とイルドが言って、スパークを行使した。魔力が精神抵抗を上回り、ヒットした。想像以上にクリティカルになり、深手を追わせることができた。

「よし、それなら、エネルギー・ボルトよ」

とミリアが言って、エネルギー・ボルトを行使した。魔力が精神抵抗を上回り、ヒットした。深手にはならなかったが、倒すには十分であった。

「なら、俺も攻撃だ」

と言って、ミルセが突っ込んでいった。ライジングサンの鎖を軋ませ、殴った一撃はクリティカルになり、ダンシングソーンを倒すのに十分であった。

「排除完了」

とアルセウスが言って、馬車の方を振り返った。

「さて、剥ぎ取りだ」

と言って、ミルセが剥ぎ取りをしたが、何も手に入れられなかった。


夜になり、夜営を張った。アルセウスが見回りをしているとき、ヘルメットが落ちているのに気がついた。

「おや、ヘルメットか。セーフティメットか。いいアイテムだな。ミルセが持つといいかもしれない」

と言って、持ち上げた。そして、夜営のテントに戻ってから

「ミルセ。いいアイテムが落ちていた」

と言った。

「お、なんだ?」

とミルセが聞くと

「セーフティメットだ。大ダメージを1回だけ無効化することができる」

とアルセウスが答えた。

「いいアイテムだな。ありがとう」

とミルセが言って、着用した。


4日目の朝になった。ニスモが

「もうすぐリンドゼンだよ」

と言ったので

「そうなんですね。近いですね」

とイルドが言った。

そして、11時頃、リンドゼン北方の門に到着した。門番が

「ハウスシュトウゼン商会か。荷改をするから、馬車はこっちだ。それと護衛の騎士と商会の人間は蛮族が化けている可能性があるから、こちらでサーチ・バルバロスを受けてから街の中に入ってくれ」

と言って、門の脇の小屋を指差した。そして、ライフォス神官が

「サーチ・バルバロスだ。行使したが、特に蛮族が紛れ込んでいるということはなかった。それでは、街の中にどうぞ」

と言って、扉を指差した。アルセウスが出ようとしたとき

「おや、パロの神官か。珍しいな」

と聖印を見ながら言った。

「そうなのかな?」

とアルセウスが頭をかきながら言うと

「珍しい。それでは、ゆっくりと過ごしてくれ。引き止めて悪かったな」

とライフォス神官が言って笑った。

門内に入り

「大した脅威もなく無事にたどり着くことができました。これもガメル様のお導きでしょうね」

とニスモが笑顔で言った。

「ありがとうございます」

とミリアが言ってあたりを見渡すと

「宿なら《蒼き雷迅亭》を用意してある。そこで泊まってくれるといい」

とニスモが言ってから

「明日の昼過ぎに出立する。帰りも護衛を頼む」

と言った。


翌日の昼。

「やあやあ。それじゃあ、出立しようか」

とニスモが言って出立した。

街から程々に離れたところで豚に乗った蛮族に道を塞がれた。蛮族たちは汎用蛮族語で

「命が惜しけりゃ荷物をおいていけ」

と言うのでアルセウスが

「ホッグフッドだ。魔法ダメージが弱点らしい」

と交易共通語で言った。

「頼んだよ」

とニスモが言ったのを背中で聞きながら4人はホッグフッドの前に出た。

「先手なら取ったぞ」

とミルセが言って、ガッツポーズをしたので

「わかったよ。スパークだ」

とイルドが言って、スパークを詠唱した。正中線に入った魔法はホッグフッドと豚をあっという間に引き裂いた。

「よっしゃ」

とイルドが言って、剥ぎ取りをした。汚いフードと安い肉が結構手に入った。

「よし、化けて出ないように埋葬しよう」

とアルセウスが言って、簡易なお墓を建てた。


夜になり、夜営を設営した。交代の時間に、ラマのような幻獣が現れた。

「なんだ?敵か?」

とイルドが言って、構えると

「アクリスだ。弱点は物理ダメージ」

とアルセウスが言った。

「先手は取った」

とミルセが言って、構えると

「よし、精神抵抗も高くないみたいだしな」

と言ってイルドがスパークを唱えた。見事に決まり倒せた。

「そんなに敵愾心を顕にしなくても良かったのに」

とアルセウスが言うと

「そうなのか?」

とイルドが言って、剥ぎ取りをした。白い毛皮が取れた。

「よっしゃ」

とイルドが言うと

「化けて出ないように埋葬しよう」

とアルセウスが言って埋葬した。


翌朝になり、ゴケルブルグに向かう馬車が動き始めた。しばらく進んだところで、ハンガーが落ちているのに気がついた。イルドが拾って

「何だこのハンガー?」

と言った。

「それは太陽神のハンガーだな。洗濯物が一瞬で乾く」

とニスモが言うと

「一応持っておこう」

とアルセウスが言った。


夜になり夜営の準備をしているときにランタンを掘り当てた。

「太陽のランタンだな」

と拾い上げたミルセが言うと

「2つはいらないね。ニスモさん、買ってください」

とアルセウスが言った。

「買うよ」

とニスモが言って商談がまとまった。


翌朝になり、再び進み始めた。しばらく進んだところで、袋に引っかかった。

「これは?」

と袋を拾い上げたアルセウスが言うと

「中身を失礼……魔香水だね」

とニスモが中身を見ていった。

「魔香水……そうなんですね」

とミリアが言うと

「持っておこう」

とアルセウスが言った。


夜になり、夜営の準備をしているとまた月光の魔符を拾った。

「おんなじ分配でいい?」

とアルセウスが聞くと

「いいよ」

とミルセが言った。


そして、4日目の11時、ゴケルブルグの南門にたどり着いた。

「ハウスシュトウゼン商会か。5日前にリンドゼンに向かったという記録がある。それを基にすると、リンドゼンにむかったのだな。蛮族が紛れ込んでいるかライフォス神官に聞くから待っていろ」

と門番が言って、ライフォス神官を呼んだ。

「サーチ・バルバロスです……どうやら紛れ込んでいないようです。それではどうぞ」

とライフォス神官が言って、全員を門の中にいれた。

騎士団の居るところへ帰るとミハエルが迎えた。

「新米、やるじゃねえか」

と言って、猪の脚肉をわたし

「今回の依頼達成の報酬だ」

と言って、微笑んだ。


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