イチャイチャ対決が始まりました(1/2)
「あら、クリストフ。あんなところに鳥がとまっているわ。いい声で歌うのね」
「はい、きっとエルフリーデ殿下の美しさを称えているのでしょう」
次の日。エルフリーデ様は、また私の家にやって来た。しかも、グレンと一緒に。どうも、無理やり引っ張ってきたらしい。
「その……今日もいい天気だね」
「……そうだな」
私は、仲良く話すエルフリーデ様とクリストフ兄様を横目に見ながら、グレンに話しかける。
でも、グレンの返事はそっけない。それに私も、昨日と同じような話題しか口にできなかった。
グレンはいつも通りの気難しい顔だ。こうして四人で庭を散歩しているのはエルフリーデ様曰く、「Wデートよ!」らしいのだが、グレンはどうもそれが不満みたいだ。『早く帰りたい』って顔に書いてある気がする。
「ほら、二人とも、そんなお葬式に参列してるみたいな顔じゃ、わたくしたちには勝てなくってよ?」
エルフリーデ様がクリストフ兄様の頬を撫でながら、私たちを茶化してくる。
「いや……別に勝てなくていいんですけど……」
グレンが呆れたように言った。やっぱりこの勝負には、全然乗り気じゃないみたいだ。
でも、それじゃ困る。だって私、たとえ演技でも、グレンと仲良しの恋人になりたかったから。それが二人の仲を深める一歩だ、なんて昨日クリストフ兄様にアドバイスされたからには、余計にだ。
「ねえ、クリストフ。わたくしのこと、どれくらい好き?」
何とかグレンもその気になってくれないかな、って考えていると、エルフリーデ様がクリストフ兄様に甘い声で質問をしているのが聞こえてくる。
「すごく! すごく好きです! このくらい!」
クリストフ兄様は、はしゃいだ声で腕をいっぱいに広げた。でも、エルフリーデ様は満足しなかったみたいだ。
「ふーん。小さいのね」
「じゃ、じゃあ……このくらい!」
クリストフ兄様がジャンプしながら腕で大きな円を描く。
「このくらい! この倍くらい! 三倍、四倍……おわぁ!」
のけぞりながらピョンピョンしていたクリストフ兄様が、バランスを崩して後ろに倒れた。本当に清々しいくらいアホだ。
「大地の大きさと同じってこと? 嬉しいわ!」
でも、エルフリーデ様にとっては大満足の結果だったみたいで、地面に倒れ込んだクリストフ兄様に歓喜して抱きついた。
「……なあ、シンシア。クリストフさんって、昔はもう少しまともだったよな?」
グレンは寝転がりながらイチャイチャしだした二人から、そっと視線を外した。明らかに『見てはいけないもの』扱いだ。
「う、うん……。兄様が変になったの、エルフリーデ様が婚約を解消されてからだったと思うよ」
エルフリーデ様、婚約者に逃げられちゃったんだよね。お相手は名門貴族の令息だったんだけど、エルフリーデ様のワガママさに嫌気が差しちゃったらしい。それで、平民の女の子と駆け落ちしたんだとか。
「エルフリーデ様、すごく怒って……。それを慰めたのがクリストフ兄様だったんだって」
「で、それがきっかけで、あんな風になった、と」
グレンが二人を顎でしゃくる。エルフリーデ様が、クリストフ兄様の暗い色合いの金の髪に頬ずりしているところだった。
「あら、そんなに見つめて、うらやましいの?」
グレンの視線に気付いたエルフリーデ様がこちらを向いた。
「シンシアもグレンに聞いてご覧なさいよ。『私のこと、どれくらい好き?』って」
「えっ、そんな……!」
大胆な提案に、頬が熱くなった。
そんなこと、聞けるわけないじゃない! 恥ずかしい!
そんな風にオロオロしていると、クリストフ兄様と目が合った。兄様は黙って頷く。……『やれ』ってこと?
……そ、そうだよね。しっかり『仲良しの恋人』を演じないと! これも私の恋の成就のためなんだもの! ちょっとくらい思い切ったことをしないと、グレンの心だって動かないよね!
「ね、ねえ、グレン……」
私は自分の靴のつま先を見ながら、必死の思いで切り出した。
「その……わ、わた……私の、こと、す、好き?」
……ああ! しまった! 緊張して、『どれくらい』を抜かしちゃった!
これじゃ、『好き』か『嫌い』の二択みたいになっちゃうじゃん! いや『普通』もあるのかな? でも、三択だろうが、二択だろうが、気まずい質問をしてしまったことには変わりない。
「あ、あの、グレン、違……」
私は、慌てて訂正しようと顔を上げた。でも、次の瞬間には言葉が出て来なくなる。
グレン、どうして顔が赤くなってるの?




