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第8話 林間学校前夜

まさかの一緒に仕事をすることになった咲槻と翔奏…翔奏に正体がバレていないか内心ヒヤヒヤな咲槻はビクビクしながら教室に入ると━━━━━━━━━━━━━━━


追記;ついに林間学校はじまる!・・・と思いきや、書いてたら前日までで長くなちゃったので一旦切ることにしました。詐欺してごめんなさいm(*_ _)m

柏尾翔奏(かしおかなた)と同じ現場だった日の翌日、私はいつも通り学校へ向かう。しかし、内心は柏尾翔奏にバレたかどうか心配で仕方なかった。


〜学校到着〜


ガラガラガラ


教室の扉を空ける。いつもより教室が騒がしいような気がした。次の瞬間目の前が真っ暗になった。


咲槻(さつき)ー!!ちょっと来て!」


高校で唯一私に話しかけてくれる美里(みさと)が扉を開けた瞬間私に飛びついてきて、そのまま手を引かれ連行される。


「え!?、、ちょ、ちょっと美里ま、待って…」

「いいから来て!」


手を引かれたまま気付くと私は屋上に荷物を持ったまま連れてかれていた。


「えーと、落ち着いた?美里」

「うん、ちょっと待ってね、今呼吸整えるから…」


私は美里が落ち着くのを待ってから質問をした。


「どーしたの?」

「えっと、話せば長くなるんだけど結論を言えば翔奏が幼なじみだってバレた…」

「そっか…え!?バレた?どーして?」

「それはね昨日…」


〜昨日〜


「おはよぉー美里〜今日は相方いなくて寂しいね〜」

「そーなんだよぉー咲槻なんで今日休みなんだろ?」

「さー?あ、そーいえば今日は翔奏くんも休みだね」

「あー、翔奏は今日はなんかアニメ映画の収録らしいよー」

「え?なんであんたがそれ知っての?」


〜現在〜

「と、まぁこんな感じでついポロッと…ね」

「はぁ…」


話を簡潔にまとめれば昨日いつも一緒にいる私がいなかったので、近くの席の人と適当に雑談していた時に話の流れでたまたま聞いていた、柏尾翔奏の予定をついポロッと言ってしまったらしい。


「ま、それは仕方ないね。もっと気をつけないと秘密事は」

「いやまぁ、バレたらバレたでいいかとも思ってたんだけどね、それからはもうクラス全員から質問攻撃で大変だったんだからぁ〜」

「まぁ、仕方ないよねそれは(笑)それでさっき教室が騒がしかったんだね。」

「笑い事じゃない!それでさっきなんか…」


長いので割愛するが、まとめると昨日発覚した驚きの事実を確かめようと今日は登校して来た柏尾翔奏と美里を黒板の前に立たせて質問大会が行われていたらしい。


「もう、朝から翔奏のファンクラブの子が私をすごい目で見るんだから…」

「ま、これからしばらくは大変だろうけど…良かったんじゃない?バレて」

「なんで?」

「だって2人とも窮屈そうだったし、名前だって下の名前で何回も呼びそうなってたじゃん」


純粋に2人には自然体でいて欲しいと、なぜかそう思った。

その時屋上のドアを開ける音が聞こえた。


ガチャっ


音のした方を見ると柏尾翔奏とその後ろにいつも一緒にいる男子2人がいた。どうやら逃げてきたらしい。


「おい!美里ー!1人だけ逃げるなんてずりぃぞー!」

「うわっ、なんで来たの?誰かにつけられてないでしょうね!」


美里と柏尾翔奏が近付きながら会話する。それをボーッと見ていた私の横に遅れてきた男子2人が来た。


「ホント仲良いよなアイツら」

「中学の時もあんな感じだったよね〜君もそう思うでしょ?」

「え!?、私?はぁ、まぁ、そう思う…かな?」

「お前以外誰がいるんだよ(笑)あ、俺、清水悠利(しみずゆうり)!よろしく!」


そう言って手を差し出す。すると横からもう1人の男子も自己紹介し始めた。


「それと、僕は緑川碧(みどりかわあおい)だよ〜よろしく〜」

「えっと、よろしく…」


そう言いながら2人と握手する。そんなやり取りをしている間に美里と柏尾翔奏の言い争いも終わったらしい。


「あー、咲槻が握手してる!全然人に興味無いあの咲槻が!」

「え!?ダメなの?って!興味が無いわけじゃないって!アハハハ」


美里と喋っている間になんだか笑えてきて思わず笑ってしまった。それを見た柏尾翔奏がこっちを見てまたあの時の変なボーッとしてる顔をした。


「悠利と碧!咲槻になんもしてないでしょうね?この子人見知りだからあんまガツガツ行かないでよ〜」

「あ、そーなの?でもなんか大丈夫そうじゃん?て、ん?翔奏大丈夫か?なんかボーッとしてっけど」

「え?あ、おぅ、なんの話しだっけ?(笑)」

「ホントに大丈夫?昨日の仕事で何かあったの?」


緑川碧が心配してそう言う。どうやら緑川碧はお母さん的立ち位置らしい。この2人の世話は大変そうだと思った。


「ホントに大丈夫だってー」

「ホントに?」

「ホントホント〜」


その会話を聞きながらふとスマホの画面を見ると、そろそろ朝礼が始まりそうな時間になっていた。


「あ、そろそろ時間やばい!行こ、美里」

「え?うわ!マジじゃん翔奏達も!行くよ〜」


階段をかけおりる。教室に入るとチャイムがなり始めたタイミングだったこともあり、質問隊も撤収していた。


キーンコーンカーンコーン


「ふぅー間に合った〜、みんなにはバレちゃったけど、これで隠す必要無くなったから咲槻も翔奏と仲良くなってね?」

「えぇー…」



その日から美里と私、柏尾翔奏、清水悠利、緑川碧の5人はなんだかんだ一緒にいることが多くなった。昼休みは質問隊を避けるため、屋上へ行き一緒に昼ごはんを食べたりした。そうするうちに少しずつ私も3人とよく喋るようになっていった。最初君付けだった呼び方も、指摘されてたった2、3日で呼び捨てに矯正されるくらいには仲良くなっていた。最近の男子高校生は距離の詰め方が上手いのだなと思った。


「そーいえばさ、この屋上って結構風通しも良くて景色もいいのになんで人来ないんだ?」

「確かにー、気になるね」

「そだな」

「あ、それ私も気になってた」


悠利の疑問にそれぞれ反応を返す。ただ1人美里だけはその答えを知っているようで、ドヤ顔で話し始める。


「あー、それはね、この学校表向きには屋上解放してないんだって」

「え、なんで?」


私が聞き返すと美里が話の続きをする。


「この学校って割と近い芸能事務所多くて、たまに翔奏みたいな有名人が通ったりするからその人たちの逃げ場として開けてはいるらしいよ?」

「なんでお前がそんなこと知ってだよ」


今度は翔奏が聞き返す。


「あー、それは私のお姉ちゃんがここ通ってた時に誰かは聞いてないけど有名人と仲良かったらしくて一緒に屋上使ってたって聞いたから」

「ほぇー、姉妹で有名人と仲良いとか逆にすごいな」

「なんの逆よ(笑)」

「え?それはあれだよあれ」


美里に詰め寄られて悠利が困っていると碧が悠利と美里を引き剥がしながら言う。


「確かに、有名人にとってはありがたいね〜」

「でも、ずっとバレてないのすごいね、普通誰かしらにはバレそうじゃない?」

「なんでだろーなーなんか仕掛けがあるのかもな」


バレにくい構造に学校なっているのかもしれないなと私は思った。でも今こうして楽しく昼ごはんを食べられていることには変わりないのでその疑問は置いておくことにした。


「そんなことより!明日から林間学校だね!みんな準備できてる?」


美里が気分を帰るようにパンッと手を叩いてそう言った。


「もちろん!出来てるぜ!」

「うん、準備万端!」


悠利と碧が返事をする。


「うぇ!?お前らもう準備できてんのかよー俺は忙しくて全然出来てねぇ…あ、でも母さんが必要なもの買い揃えてくれてたような…」

「有名人は辛いねぇー」


翔奏と美里が会話する。


「あ、私も全然準備してない…(笑)」

「え!?うそぉー咲槻はそーゆーのあらかじめちゃんと準備する派だと思ってたー」

「いやー、いつもはするんだけどね。最近何かと忙しくて…」


そう、いつもならこういう系は必ず前日までに準備をしておくのだが、今回は収録が色々重なって準備する時間がなかったのだ。


「そっかー、大丈夫?私手伝おうか?」

「大丈夫大丈夫、今日はバイトもないし帰ってから時間あるから」

「そーいえば、一人暮らしなんだっけ?大変だな」

「うん、まぁねー」


翔奏が質問する。私は適当に返事をしてお弁当に残っている最後の卵焼きを口に入れる。ふと、近くに置いてあったスマホを見ると昼休みが終わりそうな時間だった。


「あ、そろそろ時間やばいよ。降りよっか」

「そだね。ほら、のんびりしてないでいくよ!男子ども!」




〜終礼〜


「はーい、じゃあ明日はその冊子の日程で行くからくれぐれも遅れないように!集合時間いつもの学校の時間より早いから気をつけろよー」

「「はーい」」


明日に向けてテンション上げあげのクラスのみんなが元気よく返事をする。私はせっせと帰る準備を進めていた。なんたって準備を何一つしていないので早く帰る必要があったからだ。

そして帰りの挨拶をする直前、先生が思い出したように言った。


「あ、その冊子に山登りメンバーとか、活動班こっちが勝手に決めて表にしといたから明日までに各自確認しといてくれ。んじゃさようなら!」

「「さようなら」」


全員で挨拶をして、いつもならワラワラと教室からみんな出ていくが帰り際に先生が言った班のメンバーが気になるのか皆近くの人で集まって冊子を見ていた。そんなみんなを横目に私は教室を出ていく。すぐ後ろから美里も出てきた。


「咲槻ー、今日こそは一緒に帰ろ!今日はバイトとか言い訳させないよぉ〜」

「えぇーでも方向違うでしょ?」

「え?何言っての?中央公園の方でしょ?私もその方面だ・か・ら!」

「え!そうなの?」


人差し指を立て、横に振りながらそういう美里にてっきり逆方面だと思っていた私は驚いた。


「今まで何回も言おうとしたのに咲槻があまりにも急いでたから言うタイミング逃してたの」

「ご、ごめん…」


美里が少しほっぺをふくらませて怒る。私は今までの行動を反省するとともに美里謝った。すると美里は満面の笑みでこう言った。


「んじゃ、罰として今日は一緒に帰ろーね!」

「わ、分かりました…」


もうこれは逃れられないと悟った私は仕方なく承諾した。そもそもなんでそんなに一緒に帰りたくなかったのか、その理由も忘れていたので特に断る理由もなかったのだ。


「やったー!このまま勢いで咲槻の家行っていい?」

「それはダメー」

「えー、ちょっとくらいいいじゃーん!私と咲槻の仲でしょー?」

「私と美里って何の仲よw何がなんでも家はダーメ。今日は明日の準備もしないといけないしね」


校舎の玄関から出て校門に向かう。高校に入学してから初めて誰かと一緒に帰る。いつからか忘れていた友達とおしゃべりをしながら帰る、そんな当たり前の楽しさが私にとっては特別だった。


「ふふふふ」

「なにー、変な顔して笑って。やっぱり私と帰って正解でしょ?」

「うん!正解だった。ありがとう、誘ってくれて」

「え、なんか照れるじゃん…」


珍しく素直に満面の笑みで笑う私を見て、美里は少し戸惑っていた。私がabilityの人達以外でこんなに心を開けているのは美里だけだろう。美里はどう思っているか分からないが、少なくとも私は美里を親友に近い存在だと思っている…と思う。(友達が他に居ないからかもしれないが…)


「あ、そーいえばさ咲槻はさ、男ども3人のことどー思ってるの?ほら、私が半ば無理やり一緒にいさせた感じあるし迷惑とか思ってたら申し訳ないって言うか…」

「今更?w大丈夫だよ。逆に感謝してるくらいだから、私に人と関わる機会をくれて」

「なに~?どーゆー意味?」

「さぁーねー」


校門を出て駅へ向かう。その間いつも教室でする話をしながら笑い合う。これが普通の人の日常なのだ。私とはもう一生無縁だと思っていた。


(まさかまたこんな日常を過ごせるなんて…)


今の仕事を始めたとき、いやそれよりも前から私は普通の人と同じようには生きていけないと自分を守るために諦めていたのに…


「おい!」


そんな事を考えながら歩いていると美里が急に私の腕を引っ張った。


「うわぁ!?なに?」

「何?じゃないでしょ!?」


どうやらぼーっとしていて赤信号でちょうど車が来たときに渡りそうになっていたらしい。


「ご、ごめん。ボーッとしてたw助けてくれてありがと」

「ちょっと~ボーっとしてたじゃないでしょ!?あんたいっつもこんなんなの!?危なすぎでしょ!」

「いつもはこんなんじゃないけど…たまたま?w」

「笑い事じゃないっての!もう!」


バシッ!


そう言って私を軽く叩いた。美里は本気で心配してくれているらしい。こんなに心配してくれる友達なんてそうそうできないだろう。


「いたぁ!ごめんって~」


叩かれた私は感謝の意味も込めてもう一度謝る。すると横から聞き覚えのある男の声が聞こえた。


「美里は咲槻のお母さんだね」

「はぁ、お母さんにもなるわこんな子と一緒にいたら…今日一緒に帰るって言っといてホント良かったぁ~」


気がつくと周りにはいつもの男子三人組がいた。その時気づいたが、私の腕を引っ張って助けてくれたのは美里ではなく少し前に合流していた翔奏だったらしい。


「マジでごめんって、これから気をつけるから~…えーっと、そろそろ離してくれない?」

「あ、ごめん!」


私を引っ張って助けてくれたあとからずっと腕を掴まれていた。さすがに離してほしかったので私がそう言うとすぐに離してくれた。


「さ!みんな信号青になったよ、いこーか!」


碧が話題を変えるようにそう言って横断歩道を渡り始める。後を追うように私達も渡り始める。


「でも、ホント危なかったよなさっき」

「だねぇ〜僕らが声かけても気づかないなんて一体どんな考えごとしてたんだか」


悠利が改めてさっきのことを言うと、それに返事をするように私の顔を覗き込みながら碧が言う。流石に謝るのが疲れた私は少し呆れた風に言う。


「はいはい、みんな心配してくれてありがとう。これからは気をつけるから!!」


そう言って早足で駅に向かって歩き始める。


「あ、待って咲槻!」

「おい!待てよ!また飛び出すかもしれないだろ〜」


美里と翔奏がそう言って私と同じように早歩きを始める。碧と悠利も後に続く。その後は問題なく帰宅した。私以外の4人は私が降りる駅の一つ次の駅が最寄駅だと知り、一駅しか違わないのに今まで登下校の時一度も会わなかったことに全員が驚いた。帰宅後は明日の準備に追われ一瞬で時間は過ぎた。せっかくの休みなのに全然ゆっくりできず、寝る前に少し悲しい気持ちになったのはここだけの話だ。

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