第4話 人気若手俳優
屋上で出会った、柏尾翔奏は最近人気の若手俳優だった。その事実に驚く咲槻出会ったが、さらに驚くことに美里は柏尾翔奏の幼馴染であった。そして何故か美里は2人を合わせようと必死で…
「俺の名前は、柏尾 翔奏!よろしく!覚えてろよー!」
屋上であったあの日から柏尾 翔奏という名前が頭に引っかかる。昔にどこかで聞いたことある名前…のような気がする。
「皆さんもうすぐ梅雨ですねぇー 梅雨入りの準備はできましたか?まっ、そんなことはさておき…今日は来月から始まる新ドラマの紹介です!そのドラマはこちら!…」
いつものように朝のニュース番組をみる。
(そーいえばもうそんな時期か…最近ドラマみてないなぁー久々に録画でもしてみるかなぁ〜)
そんないつもの朝を過ごす私の目に思わぬ名前が飛び込んできた。
「そんな新ドラマの主演は最近じわじわと人気が出てきている若手俳優!柏尾 翔奏さんです!」
「あー、この子ねぇ〜最近よく何かしらドラマに出てますよね、うちの娘もかっこいいかっこいいって言っててもう、お父さん悲しい!」
(え、…えぇーーーーーーーーーーー!!!!!!)
画面に映し出された写真と、その下にある名前を見て驚いた。危うく飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
「ちょ、これは早く学校行って美里に確認しないと…」
私は机の端に置いてあったメガネを掴み取り、慌てて家を出る。
〜数時間後(学校にて)〜
「あら?おっはよー咲槻今日は早いのね。いっつもギリギリで来るのに」
「ちょっと、美里、これうちのクラスにいる柏尾 翔奏だよね?」
私はあらかじめ用意しておいたスマホの画面を美里に見せる。
「え?あ、うんそーだよ?ほら、あそこにいるじゃん。てか、今まで知らなかったの?(笑)ほんと、あんたって他人にどんだけ興味無いのよ(笑)」
「いや、まぁあ自己紹介の時間コソッと読書するくらいには興味無いけど…って!今はそんなことどーでもよくて!なんで誰も騒がないの?芸能人がいるのに」
バカにされたのは気に食わないが、他人に興味無いのは事実なのでそこはスルーし、素朴な疑問をぶつける。
「いやいやいや、4月とか学校始まって間もない頃はだいぶ騒いでたよ?主に女子が。でもその後すぐ、abilityが始まって完全にそっちに興味が移った感じだったかなぁー」
「は、はぁ…そー、なん、だ…」
『ability』の影響力に驚き半分関心半分の気持ちでいる私に美里が続ける。
「あーでも〜今もほら、あんな感じでうちの学校限定でファンクラブ的なのがあるらしいよ?」
柏尾 翔奏の少し離れたところに群がる、学年バラバラの女子たちを指さし美里が言った。
「へぇ〜…」
(結構人気あんだなぁー)
群がる女子の量を見ながら思ってたよりも人気があることに関心していると美里が疑問を私に投げかける。
「てか、なんでそんなの気になんの?今まで全く知らなかっなのに急に。前からテレビで結構名前出てたはずだけど?」
「え?いや、前にたまたま屋上で会って急に自己紹介とかされるから、頭に名前が残っててさ」
私がことの経緯を説明する。それを聞いた美里は少し不服そうに
「なーんだ、他人に興味無いあんたが恋でもしたのかと思った〜」
と言った。それを聞いてすかさず私はこう返す。
「そんなわけあるわけないじゃん(笑)」
〜キーンコーンカーンコーン〜
チャイムが鳴る。
「あ、チャイム鳴った。席戻るねぇー」
「うん。」
美里が席に帰っていくのを見送りながら、さっき美里が指さした女子たちが群がっていた方を見る。そこにはさすがに女子たちの姿はなく、全員教室に戻ったようだった。
〜その日のお昼休み〜
今日は美里とお昼を食べる。
「今日は部活の子達と食べなくていいの?」
「うん、毎日食べるのはねー。集合するのとかめんどいし。どーせ部活で毎日会うんだしそんときに喋りたいことは喋れるしね〜」
「ふーん…」
美里は私に気を使っているのかいないのか…微妙にこちらの顔色をうかがいながら、話してくる。別に気にしなくていいのに…
「ま!この話はこれくらいにして…」
気分を変えるように拍手をしながら美里が言う。
「今日の朝の話だけどさ、気になるなら話してみる?柏尾翔奏と。私紹介したげるよ?」
「え、なんで?」
突然の提案に驚いている私を見て、イタズラっぽく笑いながら美里は続ける。
「なんでって翔奏のこと気になってんじゃないの?私そいつと幼なじみなんだよねぇー」
「いや、いいよ。やめて変なことすんの…てゆーか幼なじみだったんだね」
「あっれー?あんま驚いてない?結構な告白だと思ったんだけどなぁー」
「いや、これでも結構驚いてはいるよ?」
「うっそー」
驚きよりも先にあれと喋るという嫌悪感の方が先に来た私の顔はあまり驚いてないように見えたらしい。急な話でつい、ボーッとしてしまった私を他所に美里は話を続ける。
「1回話してみるだけでもいいじゃん!どう?ねぇ、聞いてる?おーい、咲槻さーん…」
(そっか…幼なじみだったのか、だからあの時美里って一瞬いいかけてたのか…でも、なんで西条さんって上の名前で呼んだんだろ?)
と私はあれと屋上で会って会話した時のことを思い出す。
「んで、どーなの咲槻〜」
「そんなことより、幼なじみなのにどーしてあっちは上の名前で呼んでんの?美里のこと」
私が純粋な疑問をぶつけると美里は素直に答えた。
「えーっとね…それはさ、だってめんどいじゃん?見たでしょ今日のファンたち。あれ絶対嫉妬でめんどくなるやつだよ。だから決めたの、2人で」
「知らない人のふりをするって?」
「そう、面倒くさくなる前に。」
(まぁ、その気持ちは分からなくもない…)
確かによくある恋愛ものの漫画やアニメの世界ではあんな感じのファンたちは、仲の良い女子に厳しい傾向にある。ま、現実世界ではわかんないけどね。
そんなことを考えているとまだ私とアイツを喋らせることを諦めていない美里がしつこくこう言う。
「私の話はいいからさ、1回!1回でいいから喋ってみてよー」
「やだよ。」
「えー、なんでぇ〜」
「なんでも。」
なかなか諦めない美里に呆れながら返事を返す私はふと思いついた次なる疑問をぶつける。
「私にはそれ教えていいの?」
「え?あー、咲槻はいいの。そういうの興味無さそうだし、もしあっても絶対嫉妬しないタイプでしょ?」
「んー、まぁそーだね」
「それにめっちゃ口堅そーだもん」
たった数週間という短い付き合いではあるが、気付かないうちに私のことはある程度信頼してくれているらしい。そう思うと少し嬉しかった。
「てゆーか!さっきから話しそらしすぎ!1回だけだから喋ってみてよぉー」
「絶対!無理!」
「えぇー、2人には仲良くなって欲しいのに…」
私が今までで1番強く断ると不服そうではあるが一応は諦めてくれた。
〜次の日の朝〜
「はい!今からLHR始めます!あいさーつ」
「起立!礼!」
「「おはようございまーす!」」
今日は週に一回あるLHRの日。委員長の合図で全員が挨拶をする。私はいつもこの時声は出さずに口パクで済ませる。全員が席に座るのを確認すると、担任の先生が話し始めた。
「えー、それでは今日は1年生1学期最大の行事、林間学校についてお話します。」
「やったー、俺めっちゃ楽しみにしてたんだよねぇー」
「だねだね!やっぱさ林間学校ってさみんなのこと知れて仲良くなれるから楽しみだよねぇー」
担任の言葉を聞いて教室がザワザワし始める。やはりみんな行事は楽しみなものだ。私はというと、1人静かに本を読んでいた。