第14話 2日目
「そろそろ、おきなっさい!!」
「ぐぇっ」
美里の声がした瞬間、腹に何が重いものが刺さる。思わず私はうめき声をあげる。恐る恐る目を開けると私の背中の上に美里が乗っていた。どうやら飛び乗った衝撃で私はダメージを受けたらしい。
「おもい…」
「こらーレディーに向かって何言ってんの」
メガネをかけたまま寝ていた私は衝撃でずれてしまったメガネを直しながら言う。美里は美里の方へ寝転んだまま向き直った私の鼻を右手の人差し指を指しながら反論した。
「咲槻が起きないのが悪いんだよ。6時に起きようって約束したじゃん昨日の夜ー」
「え?今何時?」
「もう6時半だよーあと30分で準備できる?」
「よゆー」
いつもならここからあと15分は寝るところだが、みんながいる手前仕方なく体を起こす。
「おはよー」
「おはよ、咲槻ちゃん。よく眠れた?」
「お、おはよーやっと起きたのね」
二段ベッドの下に降りるともうほとんど準備を終えた瑞希ちゃんと心結ちゃんがいた。いつも割とギリギリ狙いの私と違ってしっかりしている。
「15分で準備するから待っててねー」
そう言って私は準備するために部屋の外にある共有の洗面所へと必要な荷物を持って向かう。洗面所に着くと何人かの女子生徒が顔を洗ったり、お肌のケアをしたり忙しそうにしている。私も端っこにあるあいている洗面台に行き顔を洗い始める。
「昨日、寝れた?」
「いやーもうぐっすりよ、起きてようと思ってたんだけど疲れが勝っちゃったみたいでー・・・」
隣の洗面台を使っている他のクラスの名前の知らない2人の会話が聞こえてくる。私たちの部屋も最初は起きてようという作戦だったけど、結局寝てしまった。どこの部屋のグループも同じ感じらしい。
「そういえばさ、昨日知ってる?山登りのときにさー」
「え?なになにー」
洗面台を使い終えた1人がもう1人の準備が終わるまで待つようで話し始める。
「翔奏くんいるじゃん、うちの学年」
「うんうん」
「なんか山頂でダウンしちゃった子がいたらしくてさー翔奏くんその子おんぶして下山したんだって!」
「へーイケメンはやることがちがうねぇ~」
「いやいや、その前にそのおんぶしてもらった子うらやますぎでしょ」
「んーまぁたしかに、仮病だったりしてねw」
「えーなにそれやばいんだけどーサイテーw」
冗談交じりにそう言う2人の会話を聞きながら有名人はいい意味でも悪い意味でも目立ってしまうものだと改めて感じる。そんな会話を聞いているうちに自分のやることは終わったので部屋に戻ることにする。
(このことは心結ちゃんには言わない方がいいかな)
洗面台に自分の忘れ物がないか確認して洗面所をあとにする。時刻は7:40予定よりも10分も早く終わることができたようだ。部屋に帰る途中横切る他の部屋からは話し声や笑い声など、楽しそうな声が聞こえる。
(みんな元気だなー)
少し昨日の疲れが残っている私は他のみんなの元気さに感心した。
「ただいまー」
「あ、おかえり咲槻ーはやかったね」
「言ったでしょ、15分もあればよゆーだって」
「そんなこと言ってた?まぁいいや」
「2人ともしゃべってないで今日で終わりだから、自分の荷物片付けないと」
美里と話していると瑞希ちゃんが話しに入ってきてそう言う。一泊二日の林間学校もあと一日だ。瑞希ちゃんに注意を受けた私たちは「はーい」と気のない返事をして、自分の荷物を片付け始めた。
「よしっ!こんなもんかな、布団も片付けたし、そろそろ良い時間だし食堂行こうか」
「そーだね」
大体の片付けが終わって時間を見ると6:53、食堂までは3分ぐらいでいけるので良い時間だろう。
「え、もうそんな時間?まだ荷物まだ片付け終わってなんだけどー!」
瑞希ちゃんの言葉を聞いて私が返事すると、自分の荷物をあさっていた美里が顔を上げて言う。片付けが苦手らしく、行きはカバンに全部入っていたはずの荷物が入らなくなっているらしい。
「このあとも荷物まとめる時間あるみたいだから、今は食堂いくよー」
「はーい…」
私がしおりの日程表を見ながら美里を誘導する。あんまり納得いっていないようだったけど、時間が無いので仕方ない。美里がドアの近くに来たのを確認して4人で食堂に向かって歩き始める。
~食堂到着~
「おーなんか豪華だねー」
食堂につくと朝ご飯がそれぞれのテーブルにもう準備されており、出席番号順に座るようにプレートが置いてあった。
「出席番号順だってー、一旦解散だね」
「そーだねーまたあとでー」
私と美里は出席番号は前後だが、心結ちゃんと瑞希ちゃんとは少し離れているため一旦解散になった。自分の席に移動する途中周りを見てみると、もうほとんど席が埋まっていた。みんな私たちよりも早く食堂に入ってきたらしく、美里の部活仲間らしい人に美里がいつからいるのか話しかけると50分にはもう席についてしゃべっていたようだった。
「はよー」
「おはよー
「おぅ、おはよー」
私と美里が同じテーブルの人たちに挨拶する。そこには悠利が先に席についていて、私たちに挨拶を返してくれる。
「昨日はよく眠れた?」
「いや、あんまりだなー。ベッド硬くなかったか?」
「もう、文句言わないー中学のときから家以外のベッド苦手だよねー」
「しゃーないだろ、これは自分で治せるもんじゃねーんだから」
美里と悠利が座りながら会話をする。それを横で聞きながらボーッとしていると、なんとなく視線を感じた。その方を向いてみると少し離れた席にいる翔奏と目が合う。ひらひらと手を振ってきたので私も振り返した。でもすぐに同じテーブルに座っている翔奏に気がありそうな女の子に話しかけられ、そっちに顔を向けてしまった。
「おはよう!2人とも!!」
「おはよ、朝から元気ねー」
「碧、おはよー」
話しているといつの間にか近くに来ていた碧が私たちに話しかけてくる。
「んふふーいやー昨日の夜は楽しかったねーおかげで元気いっぱいだよー」
「あはは、さすが碧」
「あーおーいー?あんたわかってるの?私まだ許してないからね!」
「ごめんごめん、でも悠利は楽しかったでしょ~?」
そう言って悠利の方を見る碧。それに気づいてそっぽを向きながらこう言った。
「ま、まぁな」
「なにー二人して!私をからかって楽しいか!むぅー」
そう言って美里はぷく~っと口を膨らませる。
「ばっ!?そうじゃねーよ、また別の意味で楽しかったというか、何というか…」
「なによ、何だって言うのよ」
慌てて悠利が訂正しようとするがなんだか歯切れが悪い。おそらく悠利は美里といれたことがうれしかったのだろうが、それを本人に言うのは恥ずかしいらしい。
(素直になれば良いのに…)
はぁーっとため息をつく。まぁそれは美里も同じなのだろうが。
「それはそれで、碧なんで私たちがはぐれたの知ってるの?」
「え?まーそれはなんとなくみんなを見てそうなんじゃないかと」
そう言ってニコッと笑う碧にゾクっと変な感じがした。変なところで勘が良い、碧のそういうところは正直少し、いや普通に怖い。
「はい!みんなちゅうもーく」
そんな会話をしていると時間になったようで、みんなが静かになるのを待って学年主任が前で話始めた。
「林間学校二日目です。昨日の疲れは残っていないかな?」
「「うぇーい」」
学年主任が聞くと、ノリの良い人たちがノリの良い返事をする。
「朝ご飯が目の前にあってすぐに食べたいのはよくわかりますが、先に今日の予定を話しておきたいと思います。午前中は球技大会をやります。午後は大縄大会です。あーここからの具体的な内容ですがー今から2時間後ご飯食べる時間も含めてね、9:00からこの施設の体育館に集まってもらって開会式始める感じです。なんでご飯食べ終わったら各自自由に部屋に帰ってもらって荷物の整理しといてくださいねーあと…」
その後の学年主任の話は大体こんな感じだ。
整理した荷物は指定の部屋に置いておくので、今日の日程が終わったあとは部屋には戻らないらしい。昨日の昼からの付き合いだが、もう部屋に戻らないのはなんだか名残惜しい感じがする。林間学校の終わりが近づいていることを実感した。
「はい!じゃあお待たせしましたー手を合わせてーいただきます!」
「「いただきます!!」」
学年主任の合図で一斉に朝ご飯を食べ始める。相当お腹がすいていたのか一気に食べる人や朝でお腹がすいていないのかゆっくり食べ始める人、友達と話しながら食べる人など食べ方は人それぞれだ。私はというと、美里と碧の会話を聞きながらたまに振られてくる内容に答えながらご飯を食べた。私は普段
1人で朝ご飯を食べることが多いので、新鮮な感じした。
その後ご飯を食べ終わった人たちから順に食堂から出て行き、部屋に帰っていった。私と美里も食べ終わった後に瑞希ちゃんと心結ちゃんを迎えに行った。
「おーい、2人とも迎えに来たよーん」
「あ、美里、ちょっと待ってね」
「あれ、心結ちゃんはどこ?」
瑞希ちゃんが座っていたテーブルを見渡すと心結ちゃんの姿がないことに気がついて瑞希ちゃんに私が聞く。
「心結は今、食べ終わった食器片付けにいってるよ。もうすぐ帰ってくると思うんだけど…」
そう言って周りを見渡す瑞希ちゃんの視線が止まる。その方を見ると帰ってきた心結ちゃんが笑顔で手を振りながら近づいてきた。
「あ、2人とも迎えに来てくれたの?ありがとー」
「みんなそろったしそろそろ部屋戻ろうか」
美里の合図でみんなで歩き始める。
部屋に戻った後は帰りの荷物の準備がまだ終わっていなかった美里以外は部屋の布団など残りの片付けをした。案外早く終わったので片付けたのを汚してしまわないように気をつけながらくつろいだ。
~体育館集合~
時間が近くなるとみんな自分たちの部屋から出て体育館にぞろぞろと集まってくる。
「よっしゃー咲槻、気合い入れていくよ!」
「えー私すでに昨日の山登りの筋肉痛すごいんだけど」
「それは足でしょ、腕はまだ生きてる」
「えー…」
体育館に到着すると各クラスが出席番号順に整列していた。それにならって私たちも自分の列へと入っていく。美里はやる気満々だ。
「おっすー2人とも準備はいい?」
「もちー肩はしっかり回してきたぜ」
まだしっかり整列していないためか碧が話しかけてきた。横には悠利と翔奏がいて3人一緒に来たことがわかる。美里はドヤっという文字が顔の横に浮かんできそうな勢いで肩をぶん回している。
「あんまはしゃぎすぎてけがすんなよ」
「ぎゃっ、ちょっとせっかくバッチリポニーテール決めてるんだからぐちゃぐちゃにしないでよ」
話ながら頭をなでた悠利に対して美里が文句を言う。なんだかんだうれしそうなのは言わないでおこう。その横でニヤニヤしている碧がいることは言うまでもない。
「はいはい、2人ともイチャつかないのーほら並ぶよー」
「「イチャついてない!!」」
2人仲良く頬を赤くして反論する。全然説得力はない。
「じゃ、俺は前行くわーじゃあね」
「・・・」
翔奏はそう言って自分の順の方へ移動する。言いながら私の方へ手を振ってきたので私も振りかえした。いつもはもっと話してくるのに今日はなんだか静かだ。
(なんかあったのかな?…)
気になって翔奏が移動する方を目線で追いかける。近くの女子から話しかけられてそのまま話し始めた。その様子は普段と変わらないように見えた。




