第13話 女子会マスター!!
登山と肝試しで疲れた体を癒やす温泉!
突如はじまる、お菓子パティーという名の女子会。
どうやら心結ちゃんは私たちに話したいことがあるようで?――――――――
肝試し終了後、私たちはそれぞれの部屋に帰ってお風呂に入った。お風呂の時間は特に指定されておらず、施設一階にある大浴場に入ることになっていた。この施設は温泉施設としても有名で大浴場には様々な種類の湯船があり、私たち生徒全員が入っても余裕なほどの広さがあった。そんな楽しそうな場所があるためほとんどの生徒は大浴場で疲れを癒やしにいったらしい。もちろん私と美里も大浴場に行って、ジャグジーを楽しんだ。
大浴場から部屋に戻った後、私はベットの上に座りスマホを見ながら船をこいでいた。思っていたよりも疲れているらしい。
ガチャッ
ドアを開ける音で目か覚める。どうやら心結ちゃんと瑞希ちゃんが帰ってきたらしい。まだまだ元気な美里が2人を迎え入れる。心結ちゃんたちは私たちよりも後に肝試しに行ったらしい。
「あ、おかえりー」
「お、ただいまーそっちの方がはやかったんだー」
「今からお風呂?」
「うん、美里ちゃんたちはお風呂はいちゃった?」
「うん!入ってきたよー普通のホテルみたいな大浴場だったよー」
3人の会話を二段ベットの上から眺める。ボーッと覗いていると視線を感じたのか上を見上げた心結ちゃんと目が合った。
「え!?あ、そっか咲槻ちゃんは上のベットで寝るんだったね。」
私がいると思ってなかったのかすごく驚いて声をあげた心結ちゃんに、私も驚いてビクッとなってしまった。ちなみにそれぞれの寝るベットは部屋に入って右手の二段ベットに心結ちゃんと瑞希ちゃん、入って左手の二段ベットに私と美里。私と心結ちゃんがそれぞれの二段ベットの上の段に寝ることになっている。
「ごめん、さっきまで寝かけてて声かけるタイミング失ってた…」
「ああ、違うの肝試しの感覚が残ってて」
心結ちゃんは美里タイプらしく、肝試しが怖かったらしい。よく見ると瑞希ちゃんの腕をあのときの美里のようにがっちりホールドしている。瑞希ちゃんはどこかうれしそうにしているのは気のせいだろう。
「ねね、お風呂入ったら自由時間だし、お菓子パーティーしよ!後ろの畳のところでさ!」
「いいね!楽しそう!」
「じゃ!帰ってくるまでにちょっと準備しとくねー」
「まじ、ありがとー」
「いってくるね」
話しながら準備ができたようで2人は大浴場に向かって行った。それを見送ってから私は夜が長くなりそうだったので一度仮眠をとるためにベットに寝転ろび、目を閉じた。
ーーーーーー…
「おー… おーい、大丈夫?」
「あ、なに?」
「もう、役に入りすぎー」
男の子が私に声をかける。台本を見ていた私は声のする方へ顔を上げる。そこには顔が黒く陰っている男の子が私に笑いかけていた。昔の記憶だろうか、その台本はうっすら記憶に残っている私が劇団にいたころにやった舞台の台本だ。
「いや、ここの気持ちがよく分からなくて考えてたの」
「んー、どれどれ?」
「ここなんだけど…」
「ちょうど俺が相手役だしあの土管を舞台にしてやってみようぜ!」
そう言って私に手を伸ばす。
「うん、そうだね」
私がその手を取りかけたところで、その手を引っ張り上げ私たちは近くの遊具まで走り出す。
ーーーーーー…
「おー… おーい、起きてー咲槻ー」
「ん、んー…」
「こりゃ、だめだ起きないな」
遠くで聞こえる美里の声。私の意識がまた遠のいていく。
「どうしよっか、お菓子パティーはなしにする?」
「いや、そのうち起きるでしょ。先にはじめとこー」
「いいのかな?」
「そんなに心配しなくて大丈夫だよー心結ちゃん、咲槻はそんな心の狭い人じゃないからさー」
私はゆっくり目を開ける。もうお菓子パティーをはじめたのか、チョコレートの匂いがする気がした。
(寝ちゃってた…お菓子パーティーするんだっけか)
そう思いベッドから少し身を乗り出すように部屋の奥にある畳の空間を見る。
「あ、起きた」
それに気づいた美里が声を上げた。
「おはよーって夜だけどw」
「おはよーよく寝れた?ごめんね先にはじめちゃって…」
続けて瑞希ちゃんと心結ちゃんが話す。
「いや、私が寝てたのが悪いし準備も美里に押してけてるし謝るのは私かも」
「そうだぞーほんとにーま、準備っていっても3分もかかってないけどね」
そう言って私の方にウィンクしてくる。
(ちょっとキモいw)
「何だ!その苦笑いは!」
その気持ちが顔に出ていたのか美里が頬を膨らませて怒る。
「ふふふ、あはっはっはっは!」
「もう、そんなとこで笑ってないで早く降りといで」
怒った顔を見て笑ってしまった私に少し恥ずかしがりながら美里は二段ベットの上から降りてくるように催促する。
「ごめん、ごめん」
軽く謝りながらその催促に応じる。降りたあと畳の空間に行く前に自分のカバンから持ってきたお菓子をとって、3人の輪に入る。
「よし!全員そろったところで!女子会始めますか!」
「え、もうこれが女子会じゃないの?」
私がそう言うと美里は右手の人差し指だけを立てて顔の横に持っていき、探偵がよくやりそうなポーズでこう言う。
「まだまだ女子会の認識があまいなぁー咲槻は」
「?」
私含め美里以外の4人は首をかしげる。
「瑞希も心結ちゃんも分かってないの!?もう、じゃあ女子会の先輩である私が教えてあげよう!」
今度はめがねをクイッとあげるような仕草をして博士風に言った。
「女子会と言えば!何しなきゃいけない?」
「はい!美里先生!」
「はい!瑞希くん!」
「なんのことかさっぱり分かりません!」
「素直でよろしい!」
目の前で繰り広げられる謎のノリをなんか始まったな…と思いつつ見守る。
(瑞希ちゃんこんなにノリいい子だったのか…)
私が新たな発見に思いを馳せていると横から遠慮がちに手が上がる。
「はい、先生…」
「おっ心結くんなにかな?」
美里がさっきトは違い少し優しい声で返事をする。
「女子会と言えば、恋バナだと思います!」
心結ちゃんが小さい声で、だがはっきりとそう言った。
「心結ちゃん…正解っ!!やっぱり女子会と言えば恋バナだよね!」
「あぁ、そういう」
美里が少しためて正解発表をする。それを聞いて瑞希ちゃんが納得する。
「あ~」
(本当の女子会とは?)
私はそれを聞いてもイマイチぴんと来なかったけど、納得するふりをした。
「恋バナっていっても何を話すの?私はないなそういう話」
「えー2人は?」
美里が心結ちゃんと私に振る。私はふと思いついた恋バナをすることにした。
「あ、私一つあるよ」
「え!?ほんとに!?なんでもっと早く私に言ってくれないかなー協力するのにぃー」
最初に教えてほしかったのか、美里が残念がる。
「いや、私の話じゃなくて…」
そう言って私は美里の方へ視線を送る。
「え”私!?」
私の考えが伝わったのか美里が慌てだした。
「わ、私のことはいいから、自分のこと話しなよー」
「だって私は何もないし、そもそも言い出しっぺから言うべきだと思うなぁ~」
「そーだ、そーだー」
「うん、うん」
なーんて、みたいな感じでもう一度美里を見ていると、続けて瑞希ちゃんと心結ちゃんが賛成する。
「う”ぅー・・・わ、わかった。言うよー私が言い出しっぺだし」
「ふー盛り上がってきたー!」
美里が言う決意を固めると瑞希ちゃんのテンションが爆上がりした。
(深夜テンションになってる?まだ9時ぐらいだよな…)
そう思いスマホの画面を確認する。時刻は8時45分と表示されていた。一応消灯時間が決まっていて、10時にはベッドに入るように言われている。(ベッドに入るように言われているだけで寝ろとは言われていない)
「えっと、好きな人がいて…」
「うんうん」
時間を確認しているうちに美里の恋バナが始まっていた。私以外の2人は前屈みになって話しを聞いている。
「だれなの?」
続きを話し出さない美里に心結ちゃんが先を促す。それでも美里は黙ったままで1人でうなっていた。まだそこまで親しいわけではない2人に話すのをためらっているのか、それともただ恥ずかしいだけなのか、なかなか話し出さない。しばらくの沈黙のあと小さな声で話し始めた。
「私の好きな人は、ゆ、悠利なんだ」
「うん、知ってた」
「えぇ!?知ってた?私そんな顔に出てた?え、悠利にばれてる?もしかして」
あれで気づかれないと思っていたのか、美里が動揺している。
「えー清水くんかーいいね!中学から一緒なんだっけ?」
「え?あ、うん。中学から同じで」
「えーいつから好きになったの?」
「うぇ!?えっと…中学2年くらい?はっきりとはわかんないや」
「うんうん、どんなとこが好きなの?」
「えーっと、優しいとこ、、かな。なんかこれはずい…」
「ほかには?」
「え!?えーっとー」
心結ちゃんが詰め寄る。ふわふわした雰囲気の子なのにこういう話題のときはまるで記者のようになるのか、面白い子だ。そんなことを考えていると美里がこちらを泣きそうな目で見ていた。まるで助けてとでも言いたげだ。
「あー、心結ちゃん…」
「ご、ごめんなさい。私恋バナ大好きで…ついつい興奮しちゃうんだよーごめんね美里ちゃん」
「あ、うん大丈夫、ごめん私も慣れてなくて…」
声をかけると我に返ったのか、いつもの感じに戻った。その後も申し訳なさそうにしている心結ちゃんを見て、美里は代わりに…と言い始めた。
「じゃあさ、心結ちゃんはそんな話しないの?初恋でもいいからさー」
美里が期待のまなざしでそう言うと心結ちゃんの顔がどんどん赤くなっていく。なにかを思い出して恥ずかしがっているようなそんな感じだ。過去の恋が黒歴史みたいなもんなのだろうか。
(無理に話す必要はないし、止めるか)
美里も深夜テンション気味になっているらしく、止まりそうになかった。そう思い私が口を挟もうとすると先に瑞希ちゃんがしゃべりだした。
「やっぱ、ないんじゃない?私もないしー…」
「だよ…」
「瑞希ちゃん大丈夫、もともと3人に相談しようと思ってたし。あのね、私、」
瑞希ちゃんに私も賛同しようとすると心結ちゃん自ら話し始めた。私たち3人はその様子を静かに見守る。
「あの、2人に言うのはなんかずるい気がするんだけど…」
「ずるい?」
不思議な言い回しに美里が反応する。私も心の中でそう言う。
「うん、だって私の気になる人はね、、柏尾くんなんだ」
「え!?あいつなの!?」
私と美里よりも先に瑞希ちゃんが反応する。聞いている感じ瑞希ちゃんは相当翔奏が嫌いらしい。
「翔奏かー、わかる、わかるよ」
「おー王道って感じだね?」
遅れて美里と私も反応する。美里の反応は少し微妙な感じだ。今までもこんな感じで協力を迫られたことがあるのだろう。人気者の幼なじみも楽ではない。
「「………」」
少し沈黙が流れる。
「いつ好きになったの?」
瑞希ちゃんはともかく美里も意識がどこかへいったように黙ったままだったので、私が質問する。
「え、えーっと、前から気になってたんだけどね。柏尾くんかっこいいし…」
「うんうんそれで?」
やっと意識が戻ってきた美里が相づちをうつ。
「みんなにやさしいし、今日だって私が山頂で倒れちゃったのを助けてくれたし。帰りおんぶしてくれたし…」
心結ちゃんの頬が段々と赤くなる。見ているだけでこっちが恥ずかしくなるようなその顔はまさに恋する女の子だった。
「くー、翔奏もすみに置けないなー」
「ごめんね、びっくりしたよね。あ、でも協力してとか言うつもりじゃないから気にしないでね」
「びっくりはしたけど、謝んないでいいよ。慣れてるし」
さっきの沈黙が嘘のように美里が復活し、いつもの感じで会話している。
(さっきおかしかったのはびっくりしたからなんかな?)
そんなことを思いながら2人の会話に耳を傾ける。しかし、ただ1人その事実を受け止められない人がこの中にいた。そう、さっきから黙っている瑞希ちゃんだ。
「心結、今すぐ思い直して、、あいつを好きになってもいいことなんてないから!めんどくさいだけだから!」
生き返った瑞希ちゃんは必死に心結ちゃんを説得しようと試みる。
「なんで?いい人じゃん、それに好きになるのは私の勝手でしょ?」
「そーだけどー」
普段の教室にいるイメージとは今は立場が逆転しているようで、心結ちゃんが動じすに瑞希ちゃんを論破した。論破された瑞希ちゃんは黙り込んでしまった。
「誰を好きになるかは本人の自由だし、私はいいと思うよ。翔奏」
「美里ちゃんは幼なじみだからいいとして、咲槻ちゃんはもう下の名前で呼び捨てなんだねーいいなー」
心結ちゃんが私に羨ましさと嫉妬を混じらせた視線を向ける。
「私の場合はたまたま縁があっただけだよ、美里が居なかったら私もふたりと同じ感じだと思うよ?」
「それでも、うらやましいよー」
その嫉妬の視線に少しビビってしまった私は訂正をいれる。やはり有名人と仲がいい?のはすごいことだと実感した。すると横でぼそぼそと美里が何かを言っているのに気がついた。
「あー…咲槻は私がいなくても勝手に仲良くなってたと思うよ」
「ん?なんて?」
「あ、いやなんでもない」
「?」
美里が横からぼそっと意味深なことを言う。それに私が反応すると適当にはぐらかされた。
「もう、わかった。こうなったらトコトン応援する!」
「ほんと?」
そんなやりとりをしている間に、瑞希ちゃんは覚悟を決めたらしい。心結ちゃんの顔がぱっと明るくなる。
「お!瑞希そのいきだ!」
美里が合いの手をいれる。
「2人も応援するんだよ?わかってる?」
「まぁ、聞いちゃったし応援してもいいよね?美里」
「う、うんそうだね。ここまで来たら応援しますか」
また美里は意味深な態度を取る。
「ごめんね2人とも、きっと他にもいっぱい柏尾くんが好きな人はいっぱいいるのに…なんか私だけズルしてるみたい」
「いや、全然むしろ謝るのは私たち以外の翔奏のこと好きな人にじゃない?w」
「たしかに、でも気にしなくていいのよ。そういうのはきっと運なんだし」
心結ちゃんの罪悪感が少しでも和らげばと私がそう言うと瑞希ちゃんが賛同する。心結ちゃんは少し困ったような、柔らかい笑みを浮かべてこう言った。
「んふふ、そうだね。ありがとう」
かわいい子は応援したくなるものだな、と私も笑い返す。さっきまで意味深な態度を取っていた美里もいつもの人なつっこい笑みで話しの輪に入っていた。
「よしっ!そろそろ10時だし、お開きにしようか」
ついつい楽しくなっていたらしい。いつの間にか4人の真ん中に広げたお菓子は無くなり、時刻も消灯時間の10時を示していた。4人それぞれで持ってきたお菓子のゴミを袋に入れていく。
「ふわぁ~」
「咲槻ちゃんずっと眠そうだねー」
あくびをしていた私を見ていた瑞希ちゃんがそう言う。
「あー普段あんまり運動しないから、思ったより疲れてるのかも。明日もドッヂボール大会だし、早めに寝よかなー」
「うんうん、そうしなー今日の心結みたいになったら大変だし」
「あ!だめだめー!咲槻は私とおしゃべりするの!」
「えー…」
美里が子供みたいなわがままを言う。私も休日の前日は夜更かしゲームなどで夜更かしすることも多いが、さすがに今日はしんどいなと感じる。
(そういえば肝試しのときから私との思い出がどうのってずっと言ってるなー)
「なーに子供みたいなこと言ってんの」
「あイタ!?」
そんなことを考えているとその会話を聞いていた瑞希ちゃんが美里にチョップしながら言う。まるで保護者のようだ。
「それで夜更かしして今日の心結みたいになったら、困るのは美里でしょ」
「う゛、そーだけどー」
そう言って美里は口を尖らせた。
「とりあえず、歯ブラシとか寝る準備しない?準備したら美里ちゃんも眠くなるかも出し」
「さんせーい」
心結ちゃんがナイスアイディアを出してくれた。私はそれに賛同する。
「わかったよー」
仕方なく美里も同意するとみんなそれぞれ寝る準備を始める。その間今日の肝試しの話をしたり、さっきの心結ちゃんの恋の作戦を考えたりと楽しい時間を過ごした。
「じゃ、おやすみー」
「「おやすみー」」
瑞希ちゃんのおやすみに残りの3人が返事をする。美里も寝る気になったのかベッドに入ったようだった。
「あ、明日って何時起きだっけ」
「えーっとたしか7時から朝食だったはず…」
「じゃあ、準備とかもろもろ含めて6時くらいに起きる?」
「うん、そうだね。ちょうどいいかも」
「オッケーじゃあ6時にアラームセットしとく~」
美里の疑問に私が返事すると瑞希ちゃんが起きる時間を設定してくれた。さすが保護者。心結ちゃんも賛同する。美里も軽く返事をしてスマホを操作し始めた。私もそれに倣いスマホのアラームを6時にセットする。
「じゃおやすみー」
「はーい」
準備が終わったのか瑞希ちゃんがもう一度おやすみを言う。私は一人暮らしだからおやすみを言うのはなんだか久々な気がする。案外寂しいと思っていたりするのだろうか?
(猫でも飼おうかな)
そんなことを考えて私は目をつぶる。
その後は一瞬で寝てしまった。自分が思っていたよりも疲れていたのだろう。他のみんなも静かに寝ていたようで疲れがあったのは間違いないと思う。完全に寝てしまう瞬間美里に名前を呼ばれた気がしたがきっと気のせいだ。
ピピピピッ!ピピピピッ!
目覚ましの音が鳴る。4人全員が同じ時間に設定したせいでいつもより4倍うるさいように感じる。
「んー…」
私は目覚ましを止めて猫のような体勢で伸びをする。目を開ける気力がなく、そのまま目を閉じた状態でまた夢の中へ入っていく。周りではみんな動き出したのか布団がすれる特有の音と朝特有のかれた声で「おはよう」と言うみんなの声が聞こえた。




