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狐耳の少女ニーナ  作者: プププ
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第1章5話 剣の修行

 クロは腕に力を入れ、筋肉を固くして言った。


「自分を守れるように鍛えないとね」


 可愛い声で尻尾を振ると、目を輝かせたニーナが

ハイと返事をする。ニーナは落ち着かない様子で、

手をグーパーしている。触りたい? とクロと尋ね

た。すると、触りたいです! と即答した。


 ニーナはモミモミと音を立てながら揉む。クロは

小さい手で触られたのを、くすぐったく感じ、言葉

が漏れる。


「くすぐったい」


 ニーナは慌てて触るのをやめて離れた。


「ごめんなさい」


 狐耳が耳の穴を塞ぐように倒れると頭を下げた。

ニーナの頭を、クロが撫でる。


「身を守るための剣の練習をしよう」


 クロはニーナの腰を掴むと、案山子がある、1階

の修行部屋へ移動する。二人は無数の剣が地面に刺

さっているのを見た。


「どれでも良いから剣を持って、構えて」


「はい」


 クロが言うと、ニーナは返事を返し、大き目の剣

を掴み、剣先は下を向き、構えたように見えた。地

面に刺さったままの剣を、必死に引き抜こうとして

いる。


「もうだめです」


 ニーナはポフッと音を立て尻餅をついた。


「これぐらいできないと、自分の身を守れないよ」


 クロが言うとニーナは落ち込み周りを見た、そこ

には木の棒が転がっている。それを指さししゃがみ

込み上目遣いでクロを見る。


「これ使って良いですか?」


(可愛い! ヤバい、結婚したい!)


 クロは獲物を狙う鋭い目のまま、頭を縦に振る。


「構えて、案山子を叩いてみて」


 言われた通りに、ニーナは上下左右に振り回す。


「ニーナ、手本を見せるから見てて」


 ニーナは、クロの手と足の動きなど、体の全体を

観る。すると、クロは人差し指で魔法陣を空中に描

き、魔法陣の真ん中から、全身黒の鎧を着た騎士が

出現した。


「マスターご命令を」


 騎士は敬礼をして、命令を待つ。


「私の攻撃を受けて」


「イエス、サー」


 騎士は剣を前に構え攻撃を待った。クロはニーナ

に見える速度で、騎士の持つ剣を狙う。クロが左右

に分身し、両方が同時に振り下ろす。キィーン! 

耳鳴りのような、剣戟が鳴り響いた。クロと剣先が

光り、剣が虚空を切り裂く。切り裂かれた空間から

光の柱が現れ、騎士を飲み込んだ。数秒後にピカッ

斬撃が鳴り、光が消えると騎士も消えていた。


「案山子で見た通りにやってみて」


 ニーナは頷くと棒を持ち、棒を左右に振り回す。

案山子に棒があたると、 ポフッ 繰り返し可愛い

音が鳴る。それに合わせて、ニーナが可愛い声で言

っていた。


「キンキンキンキンキンキン」


 1時間経過した。


  疲れてきたのか、ニーナが棒を振る速度が、遅

くなっていた。


「ピカッ! ピカッ! ピカッ! ピカッ! ピカッ!」


「ピカー!」


 最後に大きな声を出し操り人形の糸が切られたか

のよう、ニーナは倒れる。


「ニーナ!」


 クロが慌てて近寄ると、白目を向いて気絶してい

た。お姫様抱っこでニーナを家の2階にある医療所

へ運ぶ。


「お主はやりすぎなのじゃ」


 部屋からベルの声が、鳴り響く。


「ごめんなさい」


 ベルがジャンプして、土下座をする。


「謝るなら、わらわではなくニーナにじゃ!」


 クロはニーナの手を掴みながら、必死に謝る。


「ごめんなさい」


 1時間後に目を覚ましたニーナが横を見ると、手

を掴まれたまま、クロに謝られていた。


「1時間も謝るとは本当に大事なのじゃな」


 ベルは笑いながら言っているとクロは起きたばか

りニーナの顔を見た。


「ニーナ! また修行だよ」


「はい」


 クロはニーナを連れて行くと2時間後クロが気絶

したニーナを運んできた。


「おぬし、またか」


 ベルはうんざりしてそう言う。段々と運んで来る

時間が1時間ずつ伸びていた。ベルは疑問に思い、

クロの顔を見た。


「どんな修行をしているのじゃ?」


「修行」


 ベルの問いにクロは考えずに答えると、ベルが顔

を少し赤く染め怒った。


「内容を訊いておるのじゃ!」


 ベルの声が家中に響き渡る。クロは耳を塞ぎなが

ら本当の事を喋る。


「剣の修行で棒を振らせてるだけだよ」


 すると、ベルは口を開けたまま驚いた。


「それだけで気絶するのか!」


 ベルは頭を抱えた。


「あと何回、ここに連れてくるのじゃ?」


「24時間振れるようになるまでかな」


 ベルは口を開けたまま、椅子に座りこんだ。


(ニーナが心配じゃ、ストレスで毛が全部抜けるか

もしれぬ)


 ベルは考えながら自分の頭をくしゃくしゃと撫で

る。クロは2時間の間布団の上で休んでいるニーナ

を見続けた。時間立ったあと、ニーナを叩き起こし

案山子の前に連れていく。


 1時間ずつのび、繰り返し時間が過ぎる。6時間

以上振れるようになってからは、ニーナが目を覚ま

すと医療所で3人仲良くご飯を食べるようになる。


 さらに、繰り返し時間が過ぎた。案山子の前に、

24時間気絶しないで、棒を振り回せるようになっ

たニーナがいた。


「ニーナ、そろそろ剣を振ってみてよ」


「はい」


 ニーナが剣を地面から抜き、ゆっくりだが、振り

回せているとクロが魔法陣から黒い騎士を召喚し、

クロは命令する。


「ニーナと戦って」


「わかりました」


 黒い騎士が木刀を持ち、ニーナが持っている剣を

攻撃した。カン! 3回剣戟の音が鳴り響く。する

と、剣戟とは違う音が聞こえる。


「キンキンキン」


 ニーナは自分で言い始めた。黒い騎士は困った顔

で問いかける。


「我との音が気にくわないのか?」


 ニーナは頷きながらも言うのをやめない。


「キンキンキン」


 黒い騎士は、段々と怒り始める。


「少し速くする、だから自分で言うのをやめろ!」


 ニーナの視界から黒い騎士の姿が分裂する。ニー

ナは自分の剣が粉々に折れていくのを見た。急に、

視界が真っ暗になり意識を失った。


 バキッ! ポキッ! バシッ! 音が響きながら

ニーナの体に無数の斬撃の痕がつく。


「安心しろ、みねうちだ」


 黒い騎士が決めポーズをした。ニーナの体はボロ

ボロになり、崩れ落ちる。


「やりすぎだよ」


 クロが後ろから叩き、黒い騎士を魔法陣に送り返

した。泡を吹いて、ニーナは気絶していた。


「体中……傷だらけ……治るかな?」


 クロはニーナの傷が綺麗に治るか心配する。


「心配するより行動」


 お姫様抱っこでニーナを持ち上げると顔を近づけ

ニーナの顔が目の前に来ると聞こえるはずの音が聞

こえない。ニーナから呼吸の音がしなかった。


「息してないよ!」


 クロはニーナの頬を叩き急いで医療所に運んだ。


「ニーナが息してないよ」


「なにしたのじゃ!」


 ベルは驚いたように、ニーナの体を診た。


「どうしてこうなったのじゃ?」


 クロが慌てて答える。


「黒い騎士と修行させたらこうなった」


 ベルが頭を抱えた。


「まだ早すぎるじゃろ」


 ベルの手から白色の丸い光が現れると、ニーナの

体を包み込む。そして、治したことをクロに知らせ

た。ニーナの体から光が消えると、傷が全てなくな

っている。スピーと呼吸の音も聞こえてきた。クロ

は涙を流し、ベルの手を握る。


「ありがとう」


「礼を言われるほどの、ことではないのじゃ」


 クロはベルを抱きしめ、その24時間後。ニーナ

が目を覚ますと周りを見て気分が落ち込む。


「気絶してばっかりでごめんなさい……」


 クロはニーナを慰めるように話しかける。


「やっぱり、ニーナは誰かに守られてないと他の国

で生きていけないかもしれない。だから、契約しよ

うよ!」


 クロの言葉にニーナは頭を悩ませた。


「声が聞こえてまだ駄目って言うんです」


 ニーナはクロの目を見ずに下を向いて話した。


「よし、わかった! 契約の事はもう言わないよ。

それと、今度二人で買い物に行こうか」


 それを聞いたニーナは元気を取り戻し目を輝かせ

た。


「はい」


 ニーナは返事をした後クロの周りをくるくる回り

ベルがクロの言葉を聞き尋ねる。


「お主、もうすぐロリコンに行くのじゃろ? ニー

ナは置いていくのか?」


「え、もうそんなに時間経ってた?」


 クロは腕を組み考える。


「今すぐ買い物に行こう! 服を買って、美味しい

もの食べよう。二人で行くってデートっぽいよね」


「デート! デート!」


 クロの言葉に続けて、ニーナは同じ単語を連呼し

た。


「汚れてるから、着替えてからなのじゃ」


「はい」


 ベルの言葉に、ニーナは返事をする。そして、数

十分が経った。

 クロの家の門が開いており、門の内側にいる3人。


「ニーナ、はぐれないようできる? 無理そうなら

首輪着ける?」


「首輪は嫌です、はぐれません!」


 首輪を着けさせたいクロと首輪を着けたくないニ

ーナの会話が終わり、ニーナは逃げるよう先に門の

外側へ出ると後ろを振り向き、ピンク色のフリフリ

のワンピースが揺れる。


「行ってらっしゃいなのじゃ!」


 お留守番をするベルが、手を振る。


「行ってきます師匠」


 ニーナは笑顔で体全体を揺らすように、手を振り

返し商店街のほうに走る。


「留守は任せた」


「任せるのじゃ」


 クロとベルは互いの手のひらを叩くと、クロはニ

ーナの後を追う。ベルはため息を吐き門を閉める。


(行きたかったのじゃ)

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