第1章4話地図
「おっと、国のことを教えるのを忘れておった」
ベルは地図を取りに行くため部屋をでると数十秒
で部屋に戻ってくる。
すると、コタツの上に地図を広げた。
地図の右側にある、家が円形に囲まれている場所
を指す。
「今いるのがここじゃ」
ニーナは指された場所を見る。
「東の国で名前はクロム、今いる場所が首都クロム
なのじゃ! 一部の人と獣人しか住めないが、観光
のためなら種族は関係なくなるのじゃ! 生き物を
売買するのは、この国だけなのじゃ! それと、東
側の川と雪あと、森と海の境目までがこの国じゃ!
地図には書いておらぬが、この国の領土には沢山の
村や町があるのじゃ!」
ニーナが地図を見て説明を聞いているとニーナと
地図の間からクロの顔が割り込んでくる。
「勇者は私だよ、召喚術師で物理もいけるよ」
自分のほっぺに人差し指を向けてアピールする。
「無視して良いのじゃ」
ベルがクロを地図の上から追い払うと、ニーナは
黒い瞳を輝かせながらベルの方を向く。
「なんで人と獣人しか住めないの?」
首を傾げながら、ベルに疑問をぶつけた。
「私が人間で、嫁が妖狐だったから。それと、奴隷
制もあるよ、貴族の人たちが、欲しいって言うから
許可してる」
ニーナの疑問と訊いていない事を、クロが答え、
喋り終えるのを確認したベルは地図の左側を指す。
「ここはクロが行った西の国クリニア、他の国から
追い出された者が集まる国で川があり二手に分かれ
ておる。西側が森で、東側には描かれておらぬが小
さい町があって、北には山があり、山からは川が流
れておるのじゃ! 川は中央で別れてその中に首都
クリニアがあり、そこを超えると川は合流しておる
のじゃ! 西側の森へ行くには首都クリニアを通る
か山を迂回しかないのぉう。勇者はブラインと言う
者でそやつの家は青と白のしまもようの家じゃ!」
ベルが次の国を指さそうとすると……。
「クロムを東にずっと行くと森があって、通り抜け
るとすぐだよ。森にいた狐娘が行方不明だって、そ
のことを喋るリスから聞いたブラインが、私に慌て
ながら訊いてきたよ。それで、1か月後ロリコンに
勇者が集まることになった」
ベルの説明を邪魔するようにクロが話した。
クロが森にある木を指す。
「ここは、リスが住んでいる木」
言い終えると、木とクリニアの間に挟まれている
家を、トントンと叩く。
「ここは私が嫁のために建てた家なんだよ。すごい
でしょ」
クロの自慢話を聞いたニーナは、くるみ割り人形
みたく目を丸くしパチパチと手を叩きながら言う。
スゴイ、スゴイと繰り返した。
ベルは、クロとニーナのやり取りを無視すると、
地図の真ん中を指す。
「中央の国がロリコンじゃ! 中央の勇者と契約し
た幼女か勇者の昔からの仲間のみが住める国で、勇
者の家は桃色の盾を逆さにしたような家なのじゃ!
山に囲まれており、他の国へ行くには、それぞれの
坑道を通るか、山を登るぐらいしかないのう。鉱山
もあって鉱石とかが盛んじゃ! それと、地図には
書いておらぬが、首都ロリコンの上空には魔王城が
あるのじゃ!」
「魔王城ってなに?」
ニーナは魔王城という言葉に興味が湧いた。
「魔王城には魔王と魔物が住んでおるのじゃ。それ
と、魔王は優しいのじゃ」
ベルの説明が終え、クロが付け足すように話す。
「勇者の名前はヨウジョイノチで、魔王の名前はモ
ナーミだよ」
クロが喋り、ベルは呆れながら注意する。
「説明の邪魔しないで欲しいのじゃ」
クロがフフフと笑いながら、立ち上がると上から目
線で一言を威張りながら言う。
「付け足しただけだよ」
ニーナは二人の言い争いを止めるために間にはいり
喧嘩はだめー! と頬を膨らませ怒りながら言うと
二人はニーナの頭を撫でながら同時に、喧嘩してな
いよ! 二人は笑顔でそう言った。その後、ベルは
地図の下側を指す。
「ここが南の国ユリン。南側が海で描いてはおらぬ
が東側と西側と北側は村が沢山あってのう。首都は
ユリンで、中央にあり機械が盛んでのぉう、この国
は機械を作れるものだけが住める国なのじゃ! 真
ん中の煙突がある建物がユリンの家。それと、この
国だけは夜があって、空が暗く星が綺麗に見える時
間があるのじゃ!」
ベルが説明を終えた直後に、クロが付け足す。
「勇者の名前は……ユリノだよ!」
今のをスルーしたベルは地図の上側を指した。
「ここが北の国クリーム勇者はクリムじゃ! ハァ
ハァ……今度は言わせないのじゃ!」
勇者の名前を早口で言い、息を切らせたベル。
「ずっと雪が降っていて北側と西側、南側は山で、
東側は雪原で真ん中に首都クリームがあるんだよ。
首都は温かくて暮らしやすいよ。クリームは魔法を
使えるものしか住めない国なんだよね。左上の端っ
この塔が、クリムの住んでいる家だよ。それにして
も、国を守るためとは言え、国全体吹雪にするとか
やりすぎだよね。他の国に、雪の影響がでないよう
にするために太陽をずっと照らして、西と中央、東
の国には夜が1回もこなくなったんだよ。ずっと昼
で晴の天気だよ! 本当に迷惑だよね?」
ベルに言うところを取られたクロは、ベルが言う
はずだったところを取った。
「これで説明は終わりじゃ」
ベルがそういうと地図をしまいに部屋をでる。そ
して、クロはベルが出たのを確認して、あぐらを組
んで座った
「勇者の事詳しく知りたい?」
ニーナの顔を見て、手招きをした。
「知りたいです」
返事を返しクロの前に移動すると、クロが自分の
足をポンと2度叩くのを見た。
「座って良いんですか?」
クロがニーナの問いに首を縦に振ると、それをみ
たニーナは座って、足を前に伸ばす。
「私の能力から、説明しようかな……召喚術師だか
ら色々な種類の生き物を召喚できるんだよね。能力
は【クルーエルブラッド】剣が出てきて、生命力が
ギリギリまで減るけどその分、身体能力が上昇する
んだよね。次の能力は【ベルセルクリリース】これ
は生命力全快で回復した分、身体能力が上昇で合わ
さるとやばい。さらに断罪の一閃で相手は消滅って
すごいでしょ?」
「スゴイデス」
クロが自分の能力のすごさを言い終えると、ニー
ナはロボットのように返した。
「ブラインの能力は……」
アイテム量産、空を飛ぶ、障害物を潜り、加速し
時間を戻し、止め、進めるのも自在。ランダムで相
手の背後に瞬間移動する。独楽を回した感じの高速
回転、透視もできる。さらに体が自動で動く自動化
や、自動で銃の照準が敵に合って銃が自動で撃つ。
相手の姿を真似できたり、相手を固定できる。さら
に、脳内のマップに敵を自動で表示させたり、自分
の体を透明化にしたりもできる。
簡単に言うとFPSのチートを能力にしたもの。
そんな内容の話をしたが、ニーナは長すぎて眠っ
ていた。
「聞いてた?」
クロの声でニーナは目を覚ます。
「長いと眠くなるのかな? 次からは簡潔に説明し
てあげる」
ニーナはクロの言葉を聞き、頷く。
「ヨウジョイノチの能力は、自分と契約者全員を守
る薄い膜を張るんだよ。食べ物を口に入れたとき毒
とか辛味だけを浄化したり、転移の光とかが体の中
に入るのを弾いたりするらしい。転移の光が膜に当
たると、弾かれて狙った場所と違う場所に移動した
りするんだって。しかも、その膜は絶対に破れない
から、剣で斬ろうとしても弾かれるんだよね」
「でもね、ヨウジョイノチは幼女と昔の仲間以外に
契約しないと決めてるって言ってたよ」
クロは一人で喋り、座っているニーナを抱きつき
クンカクンカと匂いを嗅いだ。
「クリムは魔法が使えてスゴイ。嫁に子供を産ませ
るのを手伝ってくれた」
「ユリノは機械がすごくて、嫁の血を採取するのを
やってくれた」
ニーナは二人の説明が一瞬で終わったのを疑問に
思い、それだけ? とクロを問い詰めた。
ニーナが頭をクロに擦り付けると、クロは観念し
たのか話し始める。
「私の嫁に、あの二人は自分の子を産んでくれって
頼んだんだよね。嫁が手伝ってくれたから良いよっ
ていったんだよ。それで二人が、どっちが先に産ん
でもらうか争いになって、争うのを見た嫁が森に帰
ったんだよね、その後戻って来なかった。ちなみに
私と嫁の子供がベルなんだ」
クロが話しを終えるとニーナは頷き、子供を産む
方法を訊くとクロが喋る。
「愛してる二人の血とクリムの魔法で作った液体を
産みたい方に飲ませるだけだよ。毛の色とかはクリ
ムが魔法を使う時に自由に決められるよ。そんなこ
と訊いてどうするの?」
ニーナの疑問にクロは答え、逆に質問をすると、
俯きながら、訊いてみただけ! と答えを返した。
クロが今度は長く、二人の説明を始める。
「クリムは天候を操り回復魔法も使えて状態異常を
なんでも治せたり、攻撃魔法も強い、状態異常を使
えたりもするから、強くてスゴイ」
「ユリノはロボットや役に立つ機械を作って、異次
元の空間を作ったりするんだよ。なんでも収納でき
る鞄とかも作るんだよ。あの二人もすごいよね」
二人の説明が終わると、加護の話を始めた。
「勇者全員にある加護は、不老不死と全ての状態異
常を無効化なんだよね。さらに、生命力が無くなっ
て死んだとしても、町にある復活ポイントで生き返
るんだよ。勇者と契約すると勇者の仲間になれるん
だよ。効果は勇者の加護と同じだし、自分の国に住
んでいる人全員と契約をしてる」
クロがニーナを仲間にしたいのか、宗教勧誘のよ
うに責めてくる。
「契約しないと死んだらお終いだよ? 良いの?
生きていたいよね?」
クロは涙を流しながら言うと、ニーナの髪にクロ
の涙が触れて、クロが泣いていることにニーナは気
付く。
「契約」
ニーナが話している途中、頭痛がしたのか頭を押
さえた。
(まだはやい、契約するでない)
ニーナの頭の中に声が響く。
「大丈夫? 頭が痛いの?」
クロは心配そうに、ニーナの頭を撫でながら、頭
の上に涙をこぼした。
「契約しない」
ニーナが宣言すると、クロは涙を拭き、ニーナを
立たせてから、立ち上がる。