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狐耳の少女ニーナ  作者: プププ
15/57

第1章15話ニーナの部屋

 ベルとニーナは互いに向き合い、足があるベルは

あぐらをかいて、足と足の隙間に入るよう四肢が無

いニーナを入れ、抱き締める。


 クロが手足を回収すると、体をもとに戻そうと近

づき、満足したアリスはお礼を言い、風呂場を後に

し、それに続き、関わりたくないが、問題を起こし

そうなので、エルは追いかけるように出る。


 ベルは抱いているニーナを離す気がなく、入って

から1時間が経過していた。クロが引き離そうと力

ずくでニーナを解放しようとしている。


「のぼせてるよー」


 ベルに知らせるが離すどころか、腕だけだったの

が足も締まる。顔が真っ赤のニーナは頭をフラフラ

させ、離れている四肢が痙攣し涎をベルの体に滴す

と、意識を失った。


 クロに叩かれたベルは、ニーナを持ち上げて姿を

みると、ニーナの身体中から体液が大量に流れてい

て、脱水症状を起こしていた。


 ベルは持っている病人を急いで脱衣所に運び、魔

法で水を作り、胃の中に流し込む。青い光を手に纏

い、おでこや脇の下、くびすじと足のつけねを順番

に当てた。


 その手はひんやりしていて、触ったところには光

が残り、数分間緩やかに冷やし続ける。ニーナの容

態が落ち着いたところで医療所に移動する。


 四肢を持ったクロがそこに行くと、べルが涙を流

し謝っているのを見る。その先にはニーナが目を覚

ましていて、笑顔で大丈夫と言っていた。


 クロも謝りながら四肢をもとに戻し、頭にキスを

すると、おやすみと去っていく。ベルは自分の頭を

冷やそうとニーナをベッドに寝かしたまま、医療所

を出ると枕を持っているアリスとすれ違う。


 医療所に侵入したアリスは、寝ている布団に潜り

込み、枕とニーナをすり替えた。抱きながら自分の

部屋に戻っていると、エルと遭遇。


「まさか誘拐?」


 エルが警戒して叫ぼうとする。しかし、これ私の

枕! とアリスは苦しい言い訳をしたことに、叫ぶ

のをやめた。


「出来の良い枕ですね!」


 エルは疑うこともなくニーナのいる医療所に向か

っていく。そして、布団の膨らみにベルから教わっ

た子守唄を、エルが聞かせて過ごした。


 見張りのような少女を回避したアリスは、ニーナ

を自分の部屋に連れ込むと抱き枕として使い、熟睡

する。抱かれているニーナの顔は、幸せな夢を見て

いる顔だった。


 数時間後に目を覚ましたアリスは、調理場に移動

し、料理を作る。ブラインとリスが食べに来ると、

医療所によっていた、3人もやってきた。


「ニーナまだ寝てるんだよ」


 布団の膨らみで、そこにいると思ったエルが口に

するとアリスと寝ていたから、医療所にいるはずが

ない!とリスが断言した。


 全員の視線がアリスに向こうとするが、すでに料

理を持っていなくなっている。いつも通りに、ベル

が料理を作った。


 部屋に戻ったアリスはニーナを起こし、ご飯を口

移しで食べさせようとする。


(餌付けで心をゲット作戦効くかな?)


 アリスはそう思いながら、口を出し結果を待つ。

お腹が空いていたニーナは、口移しで食べると心が

揺らいだ。食べ終わると、扉からコンコンと音がし

てクロがアリスの部屋に突入してくる。


 ニーナを見ているとアリスに懐いている感じがし

た。良い匂いの部屋をあげるから、今度からそこで

寝て? とクロはニーナに取引を持ちかける。


 自分の部屋が貰えて、嬉しそうにハイと言ったニ

ーナを嫁が住んでいた部屋の前にクロは連れていき

ここの部屋だよ! と扉に指を指す。


「扉を開けるよ」


 クロがニーナに同意を求め、はい! と答えを聞

くと、ゆっくりと扉を開きアロマの香りが部屋から

出てきた。二人は部屋の中に入る。


 クロは状態異常が効かないので良い匂いがする!

と思うがニーナは違った。ニーナの鼻から脳へ、口

から肺へ、皮膚から吸収され、イライラや不安が消

えた。すると、顔色が悪くなり、息切れをし、めま

いが起こり、壁にもたれかかった。


「大丈夫? 掃除しとくから、寝とけば?」


 クロの言葉に、ニーナは反応できていない。ニー

ナは部屋の真ん中に匂いの発生源である、3メート

ルぐらいある熊のぬいぐるみのベッドを見た。さら

に、その上の天井にも同じ熊のぬいぐるみが固定さ

れている。


 この熊のぬいぐるみのベッドは、クロの嫁がいつ

も悩んでいるために作られた。ユリノが熊のぬいぐ

るみの本体を作り、クリムが汚れをアロマの香りに

変換する、魔法をかけて完成したベッドだ。


「誰も部屋を掃除していなかったから、熊が代わり

に埃を吸ったのかな?」


 クロは独り言を呟き、気分が悪そうに見えるニー

ナを、熊のベッドにうつ伏せで寝かせると、ベッド

に吸い込まれるように、ニーナの形を残しながら沈

んでいく。さらに、ニーナの形をした穴を埋めるよ

うに、上からクマのぬいぐるみが押しつぶす。


 クリムの魔法のおかげでニーナは息ができて、ふ

わふわしてて気持ちいいと、押しつぶされているニ

ーナは、さっきの症状が嘘みたいに眠る。ぬいぐる

みが落ちるのを確認すると、クロは部屋の掃除を始

めた。


 部屋の掃除が終わると、熊のぬいぐるみから良い

匂いがしてきたので、おやすみとクロは挨拶し部屋

から退出する。


 ベッドがニーナの体をほぐすように、優しくマッ

サージをしていた。寝ているニーナは気持ちよさそ

うに口が緩み、そこから涎が垂れる。熊のベッドが

唾液を吸収し、水と汚れに分離、水は対象の胃に転

移し、汚れは吸収しアロマの香りを発生させる。ニ

ーナはそれを吸い込み、循環する。さらに、体が熱

くなり汗が流れ、肌の新陳代謝も行われた。古い角

質と汗も、涎と同じように分離され水と香りを同じ

ように発生させる。


 気持ちよさで、体から力が抜けると、下からも汚

れをだした。それも変換され、ニーナの体にまとわ

りつく。


 時間が経過し、ニーナの体は痙攣していた。そし

て8時間立ったのか目覚ましのようにチーン! と

鳴り、押しつぶしていた熊のぬいぐるみが、元の位

置に戻っていく。


 沈んだニーナがトースターのように跳ね上がると

熊のベッドが元に戻り、沈まなくなっていた。ニー

ナの身体は、新しい肌で輝き体温はあがり、体全体

が少し赤くなっており、眠りについている。


 クロが8時間を数えていたのか、トン! トン!

と叩き、部屋に入る。手には掛け布団を持っていて

それをニーナにかぶせ立ち去った。


 クロが部屋から出るのをみた何者かが、掛かって

いない扉の鍵を開けようと、ガチャガチャ! 音を

たてた。


「私の物なのにこんな鍵をして閉じ込めるなんて!

勇者クロ! 許さないわ!」


 何故か取っ手を握って確かめもせずに、鍵穴をい

じっている。


 1時間後、そろそろ開いたかな? と思ったのか

扉を開けた。ニーナの部屋に入ったのはアリスだっ

た。


「綺麗な部屋だ! 私の恋人はどこかな?」


 部屋の中を真ん中には近づかず、物色するように

探す。あの子の服かな? とタンスの中身をみて、

色々ある! タンスを漁り匂いを嗅ぐ、ぬいぐるみ

が沢山! と机の上をみる。物色を終えたアリスは

真ん中のベッドに近づく。


「みぃつぅけぇたぁ! わぁ!」


 起こさないよう、ゆっくりと低い声で言い、アリ

スは布団の中に潜り込み、ニーナの顔を見ると、苦

しそうに顔を少し赤くしているのを見た。


 アリスが顔をペロッと舐めると、ニーナの体はビ

クッと反応する。風邪かな? 私の所為かな……と

アリスは気にする。そして緑色の光がニーナの全身

を包み、ニーナの状態異常をとる。


「弱みに付け込む女は、良い女になれないわ!」


 アリスはニーナの頭を撫で、部屋から去っていっ

た。


「誰かいるの?」


 今は誰もいない部屋で、ニーナは寝言のように言

う。


 2時間後、ニーナは目を覚まし、疲れが取れ、考

え事は全て忘れていた。部屋に入ってそれからどう

なったのか覚えてなく、服も新品のようになってい

て、状況の整理がつくとニーナは部屋を見渡した。


「わぁ! きれいな部屋だぁ! 私のへやー」


 部屋の周りを駆けまわり、たんすとかは荒らされ

ていたが喜んでいる。


 クロには優しくされてるけどアリスさんも良いと

心が揺らぎ、スライムが残した置き土産の催眠術が

発動した。


 催眠状態のニーナは体を揺らしながら、家を出る

と北へ行き、国の門を抜け、雪が見えるまで進み、

見えたら雪のほうへ移動し、吹雪がニーナを襲うが

正気が無い彼女は前へ歩み続ける。


 クリームの門を通り過ぎると、頭がパンッと弾け

る感覚になり、頭の中が真っ白になると、ニーナは

雪の上で体を前のめりに倒した。


 パプリカの赤がニーナを見て、見たことあるやつ

だ! と思い、クリムの家へ報告しに行く。パプリ

カ3人とクリムが戻った時には、何もなくなってい

る。


「あれ? いなくなってる! なんで?」


 赤が戸惑っていると、クリムは人の形をした雪を

みつけた。この形……まさか……ニーナかな? と

思うが、ありえないって! と考えるのをやめる。


 クロ達は、ニーナが居なくなったことに気付き、

クロム全体を探す。すると、北へ歩いて行ったと目

撃情報を聞く。アリスとブラインを先頭に、クロの

上にはリスが乗り、ベルとエルも後ろに並ぶ。ニー

ナの残り香をアリスは嗅ぎとり、匂いがする方向へ

進む。他の者はそれを頼りに、列をなしていた。



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