第1章14話クロムへ帰還
荒野を歩く、黒い狐娘と黒髪の少女他には誰もい
ない。それを確認すると盗賊が一人近づいて行く。
「やぁやぁ! ここら辺危険だよ、悪い盗賊がでる
かもしれないよ、だから一緒に安全な家で暮らさな
い?」
身長が170cm、コートとズボン、シャツが赤
で染まっている、赤髪の短髪で顔面偏差値は普通の
女性がクロとニーナの前に立ちふさがり、ナイフを
左手に構え、右手はコートの外ポケットに入ってい
る。
ニーナを見て、ナイフをポケットにしまい、ゆっ
くり近づくと、近くで観察する。
「君はユリノの仲間で名前……確かルゥだっけ?」
クロは思い出しながら、名前を当てようとする。
せぇいかいー! ルゥは拍手をすると、良いのを上
げるよ! と右手で持っているものを見せる。
くにゃくにゃ曲がる、薄い棒みたいな物がでてき
た。これはユリノ様が作った、拘束具四肢トレ~ル
だよ。と説明をして使って上げる。と悪魔のような
笑顔で言った。
ニーナの右肩に当たると棒は一週する。すると、
血が流れずに、腕が落ちた。腕が地面にぶつかると
痛みを感じ声を出した。取れた部分は魔法でできた
異次元のせいで見えない。自分の落ちた腕を見て動
かすと、離れているのに動いていた。
「これだとあまり、拘束になってないよ?」
ニーナが余裕の表情を見せると、まだまだこれか
らが本番! とルゥが追い討ちをかける。
肩に巻き付いている棒のスイッチを押すと異次元
は消え、肩と腕の繋ぎ目は柔らかい物が被さってい
た。ニーナは腕を動かそうとするが、駄目だった。
絶望の表情を見せて座り、手が……と腕を大事に抱
きかかえる。ルゥはその隙を狙ってもう片方の腕も
同じようにする。
「ざぁんねんだけどぉー、もぉう繋がらないよぉ」
ニーナはその言葉を聞き、やられたーと仰向きに
倒れクロを見る。
このボタンを押せば元通り安全だよ。とルゥはク
ロの耳に囁き、話しを終えた彼女は鞄をコートの内
側から出した。
「こちらは最新の鞄だよ。彼女の腕とかを、入れて
おくのに便利。」
鞄をクロに渡すと、ニーナの方へ行く。そして、
足の付け根を2ヶ所、肩と同じように分断した。
クロに足を渡すと、バイバイと手を振りルゥはロ
リコンの方向へ移動する。足と腕を失ったニーナに
は、クロという希望があった。ルゥがいなくなると
体を揺らしうつ伏せになり、体をクネクネと動かし
クロのもとへ少しずつ這って進む。その姿を見たク
ロは変わり果てたニーナを持ち上げ、お腹を見ると
服は汚れ、地面を擦ったので血も出ていた。
「治せなくて、ごめんね……」
クロが俯くと安心させようとニーナは涙を滴しな
がら笑顔で、一人で動きにくいけど大丈夫ですと言
った。
ニーナの痩せ我慢を見抜いたクロは地面に置くと
歩き始める。するとニーナは、待って! と必死に
呼び体を地面に擦り後を追う。どんどん距離は離さ
れ、数分後には黒い粒に見えるぐらい離れていた。
ニーナはブツブツと呪文のような独り言を言い続
け、心が限界を迎えている。そして、心が折れたニ
ーナは、近くに段差がある場所を見つけ、上の方に
クネクネと移動する。
受け身をする手もなければ、着地するための足も
ない。クロは後ろのニーナが消えたのにビックリす
ると、道を急いで戻った。そして、少し高いところ
にいるのを見つけると、ニーナがまっ逆さまに落ち
た。クロは走り、真下まで移動すると受け止める。
「なんで……受け止めたの? 楽にさせてよ……」
ニーナにはもう希望がない。すべてを諦め、力を
抜き、舌を噛もうとする。クロがニーナの口に手を
入れて防ぎ、切断した道具と右腕を本体にくっつけ
ボタンを押す。ニーナは自分の腕を見ると、動かせ
ている。そして、残りも全て元に戻される。えぇ?
ニーナは驚き、嬉しさで目から水が垂れる。
「嘘ついてごめんね」
クロが治ったニーナを抱きしめると、バカバカと
ニーナが優しく叩く。クロが離すとニーナは自力で
立とうとするが、感覚を忘れていてすぐに転ぶ。
「後で歩く練習しようね?」
クロが誘いニーナが頷くのを確認すると抱っこを
して坑道まで一直線に走る。
(ゴブリンがいるのかな?)
クロはそう思いながら前へ進むと見えたのは反対
側の入り口にいたはずの、オーク達だった。
「ブヒヒヒ、東の国から来る勇者様を通すだけで我
ら部隊のレベルが上がるまたとないチャンスだ!
ほかは通すな!」
オーク達は喜び東側の警戒をしている。そんな中
西側から二人が通ろうとした。終わっていることを
しらないオーク達は二人を通すと魔王の使いが来る
まで見張りを続けていた。
【来たのは数日後であった】
坑道を抜け、クロムの入り口まで行くと、自分の
家まで直行した。門を開けると、ベルと置いてきた
少女が出てきた。
二人の服装は白の半ズボンと、白の無地に狐が描
かれたシャツでお揃いだった。
「おかえりなさい」
二人が挨拶をすると、ただいまと返した。ニーナ
は上手く歩けずに転びながら、師匠! と笑顔でエ
ルを抱きしめる。
クロとベルは、は? と意表を突かれ、エルは抱
きしめられながら、自己紹介をした。どういこと?
ベルはクロに訊く。すると、クロもベルに、語尾変
えた? と質問する。同時に、いろいろあったと答
えた。
ベルの語尾変だよって言ったら、そうかのぉう?
と言った後から、語尾が消えたとエルが報告した。
教えたからそっちの詳細も教えて! と知りたそう
に尋ねる。催眠にかかりやすくなって、忘れやすく
なっただけかな? とクロは簡潔にまとめて、喋っ
た。
その話を聞いたエルがお座りと叫ぶが、ニーナは
座らない。全然だめじゃん……と落ち込むが、クロ
がお座りと言うと、足をプルプルさせて座った。
まだ動かしなれていないニーナは、そのまま後ろ
に倒れこみ、立ち上がろうと必死に四肢を動かす。
ベルとエルは、どうしたの? と心配そうに見守
る。クロがニーナを抱え家の中にはいると、エルは
ついていき、ベルはその場で泣き崩れた。
二人は風呂に入ろうと移動する。脱衣所でクロが
服を脱がすと、ベルが入ってきたと同時に服を脱ぎ
捨て、脱がされたニーナを奪い風呂の扉を開けた。
「だれですか?」
知らない人に連れて行かれると、クンクンと匂い
を嗅いだ。懐かしいような、幸せな感じの安心する
匂いがして、思いだそうとするが、頭にモヤモヤが
かかった感じになり、ボーっとベルを眺めた。
ニーナの傷を見たベルは白い光を当て傷を治す。
「お主の師匠じゃ!」
この語尾に聞き覚えがあるニーナは、師匠と言い
抱きついた。すると、クロが四肢トレールを持って
現れる。
なんじゃ? それは? とベルが触り確認すると
クロは使ってあげるとベルに言いニーナに近づく。
「師匠! たすけて!」
ニーナの叫びはベルに届いたが手遅れで、四肢が
同じように取れる。だが、今度はちゃんと動くよう
になっていた。
クロがベルに、ニーナを洗ってとお願いする。
「わかったが元に戻るのか?」
ベルが心配そうに言うとクロは頷いた。あれ?
とニーナは四肢の感覚があることで嬉しくなる。ベ
ルがニーナ本体を洗うと、クロは四肢を順番に洗っ
た。
(それにしても……あの道具はどうなっておるのじ
ゃ?)
考えはするが、構造がわからないので、ベルは触
れるのを避けた。ベルが本体を抱きしめ湯舟の中に
入ると、クロも四肢を湯舟の中にゆっくりと1本ず
ついれた。
四肢が全部沈むと、1本を拾い湯舟の中でくすぐ
り始めた。くすぐったいのか、本体がビクビクと震
えそれをベルは必死に抑える。
「温まらないとだめなのじゃ!」
ベルがニーナに注意をすると、視線をクロに向け
くすぐっているのを見る。そして、やめるのじゃ!
とクロに注意すると、やめたふりをする。
触られるのが終わって、安心したニーナに不意打
ちで、くすぐりが再開され、クロの攻撃で力が抜け
たニーナは、プルプルと体を震わせ体を預けた。
震えに気付いたベルは、湯舟の色が少し変わって
いるのを確認し、風呂の水を浄化の魔法でもとに戻
す。そのことは、ニーナとベル以外は気付かない。
エルが風呂に入ってくるとその後ろに誰かいる。
「泊まりに来たよ」
アリスだった。3人が風呂に入っている時、アリ
スとブラインが、泊まりに来た! と家に入りエル
が案内したと説明する。
アリスとエルは体を洗い、湯舟にはいるとクロに
手招きをされ近づくと、動く四肢があり二人はキモ
ッと叫ぶがクロが触ると、ニーナが笑い声を出す。
その反応を見て、ニーナの四肢が無いのを確認する
と、どういう状況か理解した。
「これ一人一本ずつ?」
アリスが訊きながら右手と右足を持って、触り始
めた。スベスベでプニプニ、小さくて可愛いとアリ
スは感想を述べると右手をしゃぶり、右足を舐めま
わした。
アリスの奇行を見たエルは、近づかないようにしよ
うと心に決めた。