俺の天気は晴れのち・・
本編最終話でございます
アドバンと相対するとその実力の底が見えない。神に匹敵するその力に果たして俺の力が通用するのか? 唐突に戦いは、始まる。お互いがその力を計るかのように・・ 無手であるアドバンに対し、俺は右手に鉾、左手は太陽の紋章の付いた籠手だ。2人が衝突する際の衝撃は、大地を震わせる。一瞬でも気を抜けば次の瞬間首が飛ぶ。そんな感覚が、俺を支配していた。
「ほう。ここまで来るだけの力はあるようだな。では、1つギアをあげよう」
アドバンが、呟くように囁きその右手が鋭利な刃物のような形に変容する。その攻撃を鉾で受けた俺は、その衝撃で1メ-トル程飛ばされてしまった。どこまで力を隠しているんだ? そう考えている間にも、次々と斬りかかって来るアドバンの攻撃を受け続ける。両手の感覚が、麻痺してしまいそうだ。このまま受けてばかりでは、いけない! 俺は、内なる力を徐々に開放していく。神々から授けられた力を使い、戦況を五分にまで戻した。表情を変えなかったアドバンが、ニヤリと笑う。
「ほう! 面白い! その力は、奴らの力かね? 」
そう言ったアドバンの身体が膨れ上がり、その姿までもが禍々しく変わる。背中から黒い翼が生え下半身は、蛇の様だ。これが、本来の姿なのだろうか? その威圧感は、先程までとは段違いだ。一瞬で距離を詰められ下半身の攻撃を受けてしまった俺は、壁まで吹き飛ばされる。ぐっ 全く反応できなかった。なんとか立ち上がった俺だが、次々繰り出される攻撃に成す統べもなく抵抗すら許されない。強すぎる・・意識を失いそうになる俺の頭に言葉が届いた。
”諦めてはダメ! その城の中は、冥界と同じなの。今から貴方の仲間達が力を送るから! ”
◇◇◇
その頃、城の外で魔物や魔人と戦っていたシゲルの仲間達にも神の言葉が届いた。
”みんなよく聞いて! 今、シゲルが危ないの! あなた達の力が必要なのよ! ”
その言葉を聞いた皆の身体のアクセサリーが輝きだす。それからの戦いは圧倒的になった。そして、魔人と魔物を退けた彼女らは、1つの意志を持って城の周囲に散らばった。
「「「「大いなる神々の意志がこの大地を照らす。悪なる物に天からの祝福を!! 」」」」
天上結界 ”慈愛の聖母”
その光は、城を包み込む様に展開される。邪悪な意思を跳ね返す様に・・
◇◇◇
”がんばって! あなたは負けない・・” 頭に響くみんなの声。闇の隙間から一筋の光が俺に届いた時、体の内側から力が溢れ出て来た。そうだ! 負けられない。強大な力に身体だけでなく心も負けていた。皆の声に後押しされ、立ち上がる。湧き上がる力と共に俺の身体に神の鎧が纏われた。
「何故だ? 何故神の力がこの中に届く⁈ 」
驚いた様子のアドバンに、俺は攻撃を仕掛けて行く。先程までと違い打ち負けたりはしなかった。1人で戦っているんじゃないんだ。今の俺には、皆が力を与えてくれている。全ての力を出し切るようにアドバンを追い詰めて行く。あれ程、絶望的になった力に対応できた事で、俺は手応えを感じていた。どれだけ打ち合っただろうか・・ 俺の一撃に体制を崩したアドバンの翼に鉾の先が届く。加えて拳をアドバンに叩きこんだ! 吹き飛ぶアドバン。そこに追撃の”流星の一撃”を放つ。初めてダメ-ジを負ったアドバンが、怒り狂ったように攻撃を仕掛けてくる。しかしその攻撃は、今までと違い単調な物だった。俺は、攻撃を受け流しながらチャンスを待った。そして、その瞬間は来る・・ アドバンの動きが止まった一瞬に俺の仕掛けていた遅延発動魔法が展開された。
”神々の意志” 四方から黄金の鎖がアドバンを拘束する。隙を突かれたアドバンに逆らう事は出来なかった。そこに俺は、黄金の鉾を投げた! ”海神の怒り” アドバンの胸に鉾が突き刺さりその身体を光が包んでいく。ギヤァアアアア!!! 悲痛な叫びをあげながらアドバンが、光にのまれていく。これで、終わったのか? そう思った次の瞬間! 城が崩れ出した。このままでは巻き込まれる・・すると左手の太陽の紋章が輝き出した。俺は、それを神の意志だと思い、頭上に左手を突き上げたんだ。そこからまばゆい光が城を貫通し空が見えた! 慌てて空に向かって外に飛び出し下を見ると、崩れるように地中に向かい消えて行く漆黒の城とこちらに手を振る仲間達が居た。
”良くやったわ! 今回の黒幕は、アドバンだったのよ。あいつが、クトニウスを使って自身がこの世界を乗っ取ろうと考えてたらしいわ。ペルセポネは、それを止める為に出て来たみたい。”
そうか、それも愛する夫の為だったのかも知れないな。ふとそう考えたが、俺は考えるのを辞め皆の元に急いだ。
◇◇◇
この戦いの後、天空島から元の大陸に戻り国王としての生活に戻った。勇者3人は、一度日本に帰らせたよ。どんな決断をするにしてもまだ彼らは若い。じっくり考えて結論を出さないとな。
俺の生活は、この後も多忙を極めたけど、愉快な嫁や仲間たちに囲まれてとっても幸せだよ。
「俺の天気は、晴れのち・・ 笑顔に溢れています! 」
12/18
これにて終了。
最後の話まで読んで頂きありがとうございました。多くの方に好まれる作品ではありませんでしたが、初投稿から何とか1つの物語を完結させることが出来たのは、読んで下さる皆さまが居たからでありました。最終話を投稿する時、指が震えて中々押せませんでした。達成感よりも寂しさが込み上げてしまいちょっと泣きそうです。この作品を読んで下さった中の1人でも何かを感じて頂けたならいいのですが・・ 。 全ての皆様に感謝を込めて。 12/18早寝早起きより。




