闇に覆われる大地
この物語もいよいよ佳境です。
リンドスラム帝国の国境にたどり着いた俺と神獣は、突然の事に驚愕していた。天からの光を遮るように真っ黒な雲が空を覆ったのだ。何だ? 突然の事に対応できないでいると、闇に覆われた大地から亡者が這い出て来た! これは、クトニウスの力なのか? 慌てて聖属性の結界を構築した俺の頭に声が響く。
”シゲル! 解っていると思うけど、これはクトニウスの力よ。この大陸を冥界と同じ状態にするつもりみたい。だけど安心して! あなた達が浄化した土地は、大丈夫だから。それとあなたの仲間達もね”
良かった。仲間たちは、神の力を頂いているし大丈夫なのは解っていた。土地の浄化が良い方向に働いた事は、何よりの朗報だ。善良な人々が闇に侵されないで欲しいからな。テイア-様達も動いてくれるはずだ。
俺は、今できる事に集中しよう。心を決めて目の前に現れた亡者達を浄化するため魔法を放つ!
神聖魔法 ”光の咆哮”
続いて ”恒星の導き”
放たれた光の奔流が、這い出て来る亡者達を浄化しながら炸裂する! 亡者の後ろに構えるリンドスラムの軍勢に対しては、シルフィ-とサタンが得意の魔法をぶっ放している。その様子を見ながら辺りを確認すると遠く離れた場所に天から雷が落ちているのが見えた。おお! あれは、神の雷だな。ティタ-ンの神々も本気で動き出したようだ。俺は、亡者と土地を浄化しながら真っすぐに進んで行く。そして左腕を掲げた。
”生命の輝き”
太陽神の力を闇の者に。天を覆う暗雲を切り裂くように天上から日の光が辺りを照らす。リンドスラム軍の兵士や魔物達が浄化されていく中、暗黒の結界で自身を守る複数のリッチ達。そいつら目掛けてシルフィ-とサタンが突っ込んでいく。近接でもこの2匹は途轍もなく強いんだよ。伊達に神獣では無い・・。
前方の敵の殲滅に3時間ほどかかったが、国境付近のリンドスラムの軍勢は壊滅。周辺の浄化も出来た。その勢いのまま王都を目指し進むが、未だ辺り一面は邪気を含んだ暗雲の影響で亡者が次々と出て来ていた。この世界は、火葬を行わないので過去に無くなった方だろうか? そんな事を思いながらも亡者と共に土地を浄化し続けていた。王都が見える位置まで赴いた時、大きな気配を感じて注意を向けるとそこには肉体が朽ちているドラゴンが居た。てっきり魔人が出て来るものかと考えていたんだが・・
”主! 此処は私達で相手する!”
シルフィーとサタンが、そのドラゴンへ向けて襲い掛かる! 2匹の神獣のコンビネ-ションで攻撃するんだが、どうも様子がおかしい。2匹も違和感を感じて攻めあぐねている様だ。よく観察すると、ドラゴン周辺に黒い靄が掛かっており攻撃を防がれている! 2匹は魔法で対応するも魔法に対する防御に優れているようで当たる前に相殺されていた。俺は、飛ばれると厄介だから翼に攻撃するべくドラゴンに向かって攻撃を仕掛ける。2匹は不満そうにしているが、ここで時間を掛けている暇はないんだ。神剣の斬撃が、防壁代わりの靄を切り裂く! そこに2匹が攻撃を仕掛けここで初めて攻撃が当たった。絶叫と共に怒りを露わにするドラゴンだが、こうなると2匹の一方的な攻撃が続く。抵抗も空しくドラゴンは沈黙した。
◇◇◇
ドラゴンを倒し土地の浄化も済ませたんだが、俺は疑問を感じていた。確かに普通なら厄介な相手だが、簡単すぎる。各地で起こっている今の状態は、何を意味しているのか? クトニウスの考えが解らない。ペルセポネが、単独で出て来た事もおかしい・・ その疑問も次の瞬間解消された。
”この大陸の人間たちよ! 我は冥界の王 クトニウスである! ”
突如、天にクトニウスの幻影が現れた。多くの人々の犠牲が、クトニウスの復活を早めたのだろうか?
”忌々しい神々よ! 我はお前達を許しはしない! ”
地鳴りと共に水平線の向こうに城の様な影が見える。冥界の城なのだろうか?
”神々に力を貸す者たちよ! 我は此処に居る! 雌雄を決しようぞ! ”
何かの罠なのか? そうは思ったが、ここでクトニウスを討つチャンスではある。少し悩みはしたが、俺は向かう事を選択した。負の連鎖をこれ以上続けさせてはいけないんだ。これまで常に後手ばかりでクトニウスに良いように振り回されて来た。今度はこちらから攻める! 俺の隣でシルフィーとサタンも頷いていた。
◇◇◇
その頃、各地で戦っていたシゲルの仲間達も突如現れたクトニウスの幻影が発した声に耳を傾けていた。
「「「よし! 私達も行くわよ! 」」」
この後、仲間達も含め城へ突入する事になるんだ。これが最後の戦いになるのか・・




