ヴェゼル王国への進軍
自重無しで!
ヴェゼル軍を退けた後、侵攻して来た方角にあった街や村の様子を手分けして確認した。当たって欲しくない予想は、何故か現実になってしまう。何でだよ?何時も何時も悪い予感ばかり...
ヴェゼル軍の通った後は、建物が崩壊。住民の姿も見えなかった。各地に散らばった仲間達からも同様の連絡を受けている。俺は、街の中で静かに手を合わせた。せめて安らかに。
◇◇◇
その後、ヴェゼル王国に対して大使を送ったんだが、その大使が帰ってくる事は無かった。それを受けて俺達は、ヴェゼル王国へ向かう事を決めた。それに伴いティターン教皇国も派兵を決定した。宣戦布告の際に隣国へ送った大使も未だに戻らない事で、国内の緊張は続いていたが、聖都の守りを固める事で一先ず様子を見る事になったんだ。数日間、移動の準備に当てたが、いよいよ出発の日を迎えた。
「さて、向かいますか!」
「「「進軍開始‼︎ 」」」
何故か俺の掛け声で、ヴェゼル王国へ向かう一団が出発した。先の戦闘での活躍で、神の使徒だと騒いでいたのが原因かな?とにかく国境までに障害物は無い。予定では、1週間程で到着するだろう。時間が出来た俺は、レインにあの時の力について聞いてみた。
「なぁ、レイン。死者の王との戦いの時に使った力は、何だったんだ?」
「アレは、テーテュース様の力よ。私はお会いした時に、力を分けて貰ったみたい。元々私は人間だったでしょ? だから身体の抵抗が、無かったと思っているわ。魔の力と神の力。両方とも使えちゃうのよ!」
そう言うレインは、何故か仁王立ちだ。幼女だから可愛いとしか思えないんだが笑
「そ、そうか。それなら安心だな」
「へへへ。めちゃくちゃ強いんだからね!」
ご満悦なご様子だから放っておこう。そうか。忘れてたけど、レインは元人間だもんな。そう考えたら納得だよ。普通なら最強だろ? どっちの力も使えるなんてさ。
それからの道程は、順調そのものだった。既に崩壊した街や村の瓦礫の撤去も始まっていたし、魔物の姿も全く無かった。野営は、例のテントで快適だしな。ほぼ、予定していた日程で国境に到着した。
◇◇◇
国境には、人影は無い。薄気味悪い雰囲気を感じながらも俺達一団は進む。聖騎士の話では、国境から5日程で王都に到着するはずだ。2匹の神獣に偵察を頼み、精霊達に周囲の警戒を託した。そして2日目の午後、ヴェゼル軍と対面した。見える範囲一面に魔物と兵士が、所在なさげに佇んでいる。
"みんな! 様子見は無しだ! 全力で叩くぞ! "
その一声で遠距離から魔法の一斉斉射が始まった。
先ずは、神獣2匹。
“氷結地獄"・"雷神の一撃"
そして9人の精霊達が続く。
"風の竜巻"・”炎の槍"
”水の刃"・”土塊の砲撃"
”光の熱線"・”闇の幻惑"
”雷の槍"・”氷の吐息"・”荊棘の呪縛"
そして俺とレイン。それにアズミとマリアがぶっ放す!
神聖魔法 "聖なる流星群"
暗黒魔法 ''漆黒の沈黙"
神聖魔法 "聖なる咆哮"
聖魔法 "女神の祝福"
一切の自重無しで放たれた極大の魔法が、ヴェゼル軍を包み込んだ。轟音と共に猛烈な風が辺りを覆った。しばらくして、土煙が無くなった時、そこに存在していたヴェゼル軍の姿は塵となった。俺とマリアは、祈りを捧げる。
"全ての悪意を無に返す。神の名において"
神聖魔法 "永遠の眠り《エバーレイシング》"
2人の放った浄化の光が周囲一帯を眩く包む。
まるで、天に帰るように土地が浄化されて行く。重く感じていた空気が、緩和され全てが終わった事を告げる。
ノームに削れた地形を直してもらい。更に先に進んで行く俺達は、足早に王都へ向かったんだ。
その胸の内に炎を宿して...




