やりにくいもんだな
魔人が変化しドラゴンの姿を見た俺は、驚きで固まってしまった。禍々しい邪気に包まれてはいるが、俺はこいつを知っている。
「おいっ お前なんでここに居るんだ!」
「は?何を言っている?我はお前の事など知らぬ!」
「何言ってるんだ?お前は、あの山で俺達が助けただろ?」
そう、ウェスタ-ランド皇国の雪山で、魔道具で邪気に侵されていたあのスノ-ドラゴンだったんだよ。
あの時、自分の住む山に帰ったはずなんだが・・・・
「訳の分からぬことをぬかしよって! 死ね!」そう言いながら、ブレスが来る!
俺は神剣でブレスを斬りながら言う。
「おい!ホントにわからないのか? 邪気に侵されて自我を失ったのか?」
「おかしなことを言うな!!」尻尾を振り回しながら更に攻撃を仕掛けてくるスノ-ドラゴン。
ダメだ。完全に自我を失っている。あの時心を通わせたんだ。できることなら殺さずに助けたい。だが今のこいつの力は上位の魔人だ。気を抜いたらこちらがやられてしまう。俺の動揺を見抜いたのかドラゴンの攻撃が勢いを増す。しまった そう思った時には一撃を喰らってしまった。吹っ飛ばされた俺は、建物に直撃する。更にブレスが追い打ちをかけてきたが、何とか障壁で防いだ。ちっ あばらが何本か持っていかれたか? 治癒魔法をかけながら 距離をとる。やりにくい相手だ。冥界神がこれも狙ってやっているなら大したもんだ。ちきしょう。知っている相手が敵に回るとこれ程厄介なのか・・・
こいつの能力はペルセポネのあの雪に似ている。溢れ出る冷気に触れると触れた部分が溶けるんだよ。
全く似なくて良いところなんだがな。近寄れないなら捕まえるしかないが、その図体に似合わず早い。
俺は神剣に神気を纏わせスノ-ドラゴンを吹き飛ばす。ここでミュ-から念話が来た。
”私が抑えるよ? 捕まえたら何とかなる?”
”ああ そうしてくれると助かる”
俺は、冷気が身体に触れるのを覚悟し 接近戦を挑む。俺が近づくのを防ぐように横凪の一撃が来るがそれをあえて受ける形をとった。ちぃぃッ 受けた場所が邪気に侵食される。じくじくと痛みを伴うが、ここは我慢だ。その時、ミュ-の荊棘の呪縛がスノ-ドラゴンの動きを止める。
よしっ! ナイスミュ-! 俺は、痛む腕に神気を纏い侵食を浄化しながら結界魔法を発動する。
”聖なる花園” 一面に花が咲き誇りスノ-ドラゴンを包み込む。
その中で苦しそうに暴れまわるスノ-ドラゴン。魔人化するほどの邪気だ そう簡単には浄化されない。
ここで更に、”光の咆哮”を重ねて放つ。
「おい お前は邪気に負けないだろ? 思い出せ!あの時もお前は戦っていたはずだ!!」
そうこいつは初めて出会った時も戦っていたんだ。そして俺達に離れろと言った。優しい奴なんだ。大丈夫、絶対負けない!!
俺がスノ-ドラゴンの様子を伺っている間に、眷属どもはうちのメンバ-に倒されたようだ。皆 笑顔でスノ-ドラゴンを見守っている。
どれぐらい時間が経ったのだろうか....
唐突にその時間は終わる。一際大きな光が辺りを包み込んだ。その光が収まった時 真っ白なそう 真っ白な.....
女の子が! って だから誰だよ⁉︎ 何が起こったらそうなるんだよ! 意味がわからん!
「えーと。すまん 誰だ ちみわ」
「私は.... だれ?」 ・・・・
おいっ! 漫才じゃないんだから!
あーなんか色々台無しだよ。さっきまですっごい良い話だったろ?どうすんだよー
ガックリ肩を落とす俺を幼女達が、励ます様に頭を撫でている。絵面も悪いよ?
そんな訳で 魔人との戦いは 意味不明な終わりを迎えた。その少女は、うちのメンバーに服を着せられてニコニコ笑っている。さてと、この後俺が動き出すまでしばらくかかった。
落ち着いて話を聞いたが、記憶喪失のようなんだ。だが、此処に置いて置く訳にも行かずこの後も連れて行く事になった。面倒は、アズミがみるらしい。一応、教師だしな。
俺達は 邪気で満たされた土地を浄化しながら先に進む。どうなりますやら・・・




