ギルド長からの依頼
何だろね?
翌朝、俺達は ギルドには向かわず、バッカスの街を出るために馬車に乗っていた。
昨日のギルド長からの依頼は、王都に行くまでに山があるんだが、その山にどうも魔物が住み着いているようなんだ。調査に赴いた冒険者が 軒並み行方不明になっていて 危険と判断するもバッカスの街には実力のある冒険者がいない。それに銀級冒険者のライドも俺達が倒してしまった。そこで ギルド長直々に実力者だと判断された俺達に白羽の矢が立った。調査及び可能なら原因の排除が依頼内容だ。相手次第では、金級に昇格もあり得るらしい。スピ-ド出世はお約束だな。
コトコトと馬車に揺られ目的地の近くにある村までたどり着いた俺達は、その村の人たちに 山の話を聞きに回った。
「すみません どなたか あの山についてお話をお伺いできませんか?」
「ああ それなら 狩人のボブ爺さんに聞くと言い。」
そこでボブ爺さんなる人物に話を聞きに行くことになった。
聞いた家にたどり着いた俺達は 声を掛ける
「すみませ-ん。ボブさん おられますか-」
「ん?だれだ?アンタ達。獲物なら最近取れていない。よそへ行ってくれ」
「ああ 違います。獲物が取れてないって話にも繋がりますが、山に詳しい人の話が聞きたくて」
そして ボブ爺さんから 山の事を聞いた。何かが住み着いたのは、今から1か月ほど前。それからの山は、動物たちの姿が見えなくなってしまった。時折、獣ではない恐ろしい鳴き声が聞こえる。何人か俺達と同じように山に入った人間もその誰もが帰ってこない。
恐ろしくて村を出ていく者も多く困っている。ボブ爺さん自身もこのまま獲物が取れないと生活ができないと肩を落としながら話してくれた。
状況から判断するに魔物が住み着いたのは間違いないだろう。それも捕食者だな。山中の動物が食べられているか 隠れているのかは判断できないが。これ以上の情報は無かったが、とにかく山に入ってみる事にした。
山頂に向かって歩みを進めていた俺達は、注意深く山の中を観察していた。うん。動物の微かな気配は感じられる。たぶん天敵となるその謎の魔物から身を守るために 隠れているんだな。良かった 原因を排除できたとしても生き物の居なくなった山は いずれ枯れて行ってしまう。そうなると麓も生活に困ることになるからな。
その後、山の中腹あたりで今日は野営する事に。朝 バッカスを出て村に着いたのが昼だったからな、調査を焦っても仕方ないし 何より野営がしたいというみんなの意見がありまして・・・
俺は 適当な場所にテントを出す。見た目は4.5人用。しかし あらビックリ 中に入ると空間拡張されておりホテルもびっくりの個室まで完備されております。なんて事でしょう!とかやっている俺を皆が生暖かい目で見守っている。まぁあれだ。なんか すみませんでした・・・///
夜は 街で買った食材でバ-べキュウなどしながら穏やかな時間を過ごした。緊張感の全くない俺達。
嫁たちも俺が対処できない相手なら自分たちはもちろん誰も生き残れないでしょ?ってさ。
1人シグルドが酒はないのかぁあああと騒いでいたが 仕事中だと叱っておいた。流石はドワ-フ。空気が読めない。まぁ彼らは 仕事しながら酒飲むんだが。
夜は、シルフィ-とサタンに任せ 俺達は早めに休んだ。魔物の姿も確認できなかったんだ。
翌朝 調査再開だ。気配は感じていたんだ。原因はこれだろうと。 山頂付近まで到着した時に その気配の者だと思われる魔物が居た。そうドラゴンだ。この世界では 竜をドラゴンと呼ぶ。俺達の世界の火竜は
こちらでは ファイヤ-ドラゴン。そのまんまだけどな。で目の前に居るのは そのファイヤ-ドラゴンなんだが・・・・様子がおかしい。何か苦しんでいるようなので よく観察すると 足の付け根部分から邪気と思われる黒い霧の様なものが出ている。どうするか?
「おい 大丈夫か?」
「な、なんだお前たちは すぐに離れろ!今の私は自我を制御できない。グワァアアア!!!!!」
そう叫んだドラゴンの肌が 元々は赤い色だったんだが、黒く変色していく。禍々しオ-ラを纏い俺達を襲って来た。俺は皆を下がらせた。どうも気に入ってしまったんだ。このドラゴン俺達に離れろと言った。
絶対悪い奴じゃない。俺以外が戦うと倒しちゃうだろう。邪気に侵されてるとはいえ 実力は俺達には敵わないからな。
向かってくるドラゴンを 障壁で止め 神気を纏わせた腕で殴る。吹っ飛ばされたドラゴンが、岩壁にめり込んだところで ”荊棘の呪縛”で捕まえる。うごけないドラゴンに神聖魔法
”完全なる静寂”を放ち 邪気に侵された身体ごと包み込む。
ギィヤァアアアアアア と咆哮をあげながら 暴れまわるドラゴンだったが、邪気が浄化されていくと
徐々に収まってきた。完全に邪気が浄化された後。
「はぁはぁ 我はなにを?! ここは・・・。そうか 我はあの者に・・・」
「そろそろ 落ち着いたか? 邪気は浄化したから 大丈夫だと思うんだが。」
「お主が我を助けてくれたのか?すまぬ。先ほどまで意識が・・・」
とここで 落ち着いたドラゴンから事情を聞いたんだ。このドラゴンは ファイヤ-ドラゴンのドワ-ナ。住んでいた山で、人間に襲われた。普段人間など敵ではないドワ-ナは油断していたんだ。突然動きを封じられ何かを撃ち込まれたんだそうだ。それからは、意識が飛んだりして気が付いたらこの山だったそうだ。闇に捕らわれそうになるたびに抵抗していたようだがついに今日耐えられなくなったところで俺達が来た。
タイミングばっちりだったな。
すっかり良くなったドラゴンは元々住んでいた場所へ帰るようだ。帰り際に牙を1本と鱗を数枚置いていった。お礼のつもりらしい。俺達に感謝をいい飛び立っていった。 うん やっぱり良い奴だ。
原因を取り除いた俺達は、村でその旨を伝えた後、バッカスの街へ帰った。




