我儘
軽い二日酔いから目覚め身体を起こす。
ふう、昨日は少し飲み過ぎてしまったようだ。。。
まあ仕方ない、久々にまんぷくと話し込んでしまい
つい酒が進んでしまった。
だがいい息抜きになった、
「たまにはいいものだな、また暇があれば飲みに行こう」
そう思い私は着替えを済ませ朝食を食べに向かった。
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食堂で朝食を食べている私はまんぷくに言われたあの言葉を思い出していた。
そう私が帰り際に言われたあのセリフ。。。
『どうして○○ちゃんは一週間の期間ルキスラでメイドなんかするんだ?』
この言葉が私の脳裏から離れない。
確かに言われてみればこの時期にメイドを雇うのは少し変である。
さらには一週間という短期の形で雇うメイドだ
別によく考えれば変な事ではない。
短期で雇うメイドなどそこらじゅうに万と程いる。
だがここはザルツ最大を誇る帝国。
求めるならば長期で働ける者を雇うのが当然だと私は思う。
容量が悪ければ周りにも比がでてしまう。
作業効率もぐんと上がるはず。
それなのになぜなのか?
1番手っ取り早いのは○○に聞くのがいい事だが、他人のプライベートに関わる問題だ。
土足で立ち入っていい領域では無い。
「…………」
この時の私はよく分からない感情に支配されていた。
この胸の奥に何かが引っかかるような感覚。
やはり性格なのだうか、真実をその目で確かめなければ気が済まないのだ。
「無粋だが、爺にでも聞いてみるか」
元々○○を連れてきたのは爺だ。
もしかしたら何かわかるかも知れない。
「爺よここにいるか?」
「は、ここに」シュバ
爺はこの城内であれば私の声ひとつで呼び出せてしまう。
主として誇らしいが一体どこから声を聞きつけるのか…
まあ今はそんな事はどうでもいい。
「実はお前に聞きたい事があってだな」
「なんなりとお申し付けください」
「ああ、○○の事なんだが」
「まさか、○○がユリウス様になにか失礼でもなさったのですか…?」
爺の顔が徐々に険しくなっていく、どうやら○○が私に何かしたと思っているのだろう。
まあ仕方ない、彼女のあの姿を見れば誰だってそう思う。
「いや別にそうではない。爺、○○をここへ連れて来たのは確かお前であったな?」
「その通りでございます」
「少し気になってしまってな。一週間という短い期間で働く理由を、爺何か知っているのなら教えてくれないか?」
「……………」
爺は数秒の間沈黙。
まるで言うか言わないかを迷っているこのような。
やはりあまり踏み入り込むべき内容ではなかったのか
そう思い悩んでいるさなか爺が口を開いた。
「ユリウス様はどうやら覚えていらっしゃらないようですね」
覚えていない?一体なのん事だ?
私は爺の言葉にただ困惑を隠せなかった。
「いえ、無理もございませんあの頃のユリウス様は今のユリウス様とは全くの別物でしたので」
「…………」
「少し出しゃばりすぎました、申し訳ございません」
「…いや、爺が謝る事ではない。すまない爺、あの頃私は周りが見えていなかった。そのせいで周りにも迷惑をかけてしまった、もちろん爺お前にも」
あの頃の私はただ野望のために動いていた機械のような存在だった。
皇帝としての仮面をつけ、一人で誰の助けも求めず
そんな私が一体何をしたと言うのだろうか。
考えても思い出すことは出来ない。
「そうですね、確かにあの頃は私もユリウス様には頭を悩ませていました。苦労もしました、大変な事もありましたねぇ」
爺が淡々と話すなか私はその言葉を親身に聞く
あの頃の過ちは二度と起こさぬようにと
そして爺達に二度と迷惑をかけぬようにと
「─────しかしですねユリウス様」
爺は私に微笑みこう言った
「私はユリウス様に仕えてこのかた一度も迷惑と思った事はございませんよ」
その言葉に私は唖然とする。
迷惑だと思ってない?いやそんな事はない。
私の近くに居たのは間違いなく爺だ。
周りよりも一番迷惑がかかった人物だろう。
そんな彼がなぜこのセリフを吐けるのだ。
「なぜ、という顔をなされてますね?
仕方ありません答えを教えて差し上げましょう」
「ああ、なぜなんだ…?」
「それは、家族だからです」
その言葉で全てを理解した。
爺は私が幼い頃から仕えてくれた存在だった。
父上と母上が亡くなっても私の側から離れないでくれた。
その頃は爺が親として接してくれた。
なぜ忘れていたのだろうか。
こんな簡単な事を。
「はは、全く爺には適わないな…」
「それはお互い様ですよ」
いつか爺にはきちんとお礼をしよう。
主と従者であり、親として子でもある存在。
恩返しでは無い。誠意で返していこう。
「爺よ教えてくれ○○の事を。あの頃私が何をしたのかも全てを」
「ええ、分かりました」
そして爺は全てを語り出した。
○○がなぜこの地に訪れたのか、なぜメイドとして働くのか、なぜ私の側で仕える選択をとったのか。
私はただ爺の言葉を黙って聞くのであった。
────いや、言葉を失ってしまったのだ。