EP01 転生したらサキュバスでした。その6
二足歩行でオマケに喋る兎こと兎獣人の兄貴だけど、ああ見えても魔族なんだろうか?
いや、兄貴の場合は違うような……むう、そこら辺が謎なんだよなぁ。
それにサキュロスの村で唯一、獣型住人でオマケにルルルイエ樹海の湖から湧き出す瘴気によって性転換してしまった俺、ヤス、マリウス、サマエルらとは違い性別が雄のまま変わらないという稀少な存在だったりするようだ。
それはともかく。
今、俺がいるルルルイエ樹海、及び湖、そしてサキュロスの村は、別大陸からやって来た有力者連中の一角であるオルゴニア帝国という帝政国家の支配領土内にあるってワケだ。
兄貴やマリウスから後日、聞いた話だと、〝人間の国〟の中では一、二を争う大国らしい。
さて、考古学者のエリザートだが、そんあオルゴニア帝国の公安省にでもアインゼルン神殿遺跡に巣食う盗賊団の討伐してくれるようにと申請すりゃいいものを何故、兄貴達に――。
ついでにだが、俺はまだ活動の様子を見ちゃいないのでなんとも言えないが、兄貴、ヤス、マリウス、サマエルが中心となって営むなんでも屋ことサキュロ団は、依頼さえあれば、強盗や暗殺といった汚れ事も行うらしい(?)アインゼルン神殿遺跡に巣食っている盗賊団と同じ犯罪者かもしれない存在のようだ。
さらに言えば、元は人間であるが今は魔族である。
故に、盗賊団をアインゼルン神殿遺跡から追い出してくれって依頼なんかしてもいいのかぁ?
ん~……何か裏があるんじゃないのって邪推しちまうぜ。
「ん、どうやら君主がお二人もいらっしゃるようですね。」
「君主って、さっきから何度も聞くけど、一体……」
「メディエリス、お前、忘れたのかァ? 君主っつうのは、俺やお前のような巨乳の女魔族の事を指す言葉を――。」
「え、そうなのか!? 胸がデカいほど偉い……ってか?」
「そうなんスよ! ちなみに、私みたいな中途半端な大きさのサキュバスが多いんスけどね」
「うう、他の女魔族はともかく、サキュバスの間では、貧乳は雑魚とかカス呼ばわりされるんだよね……」
「ハハハ、お前はどんなに努力しても、それ以上は大きくはならねぇんじゃないか、サマエル?」
「ううう、うっさいなぁッ!」
むう、胸の大きさで階級が決まる社会なのかよ、ここは!?
とりあえず、俺はこの巨乳のおかげで君主――上位階級にいられそうだな☆
ああ、ちなみに、ヤスやサマエルの胸の大きさは、俺の見た目だと、多分75~80センチくらいだから、AカップかBカップだろう。
うーむ、申しワケがないけど、とても君主とは言い難い大きさだ。
「さてと、アインゼルン神殿から盗賊共を追い出す依頼は請け負うが、なんだかんだと報酬についても気になっている」
「報酬ですか? はい、貨幣ならある程度……それじゃ、これくらいでどうしょう?」
「ふむ、銀貨三十枚か……ま、イイか。」
「銀貨……は、初めて見るぞ!」
「メディエリスさん、それも忘れたんスかぁ? それはここら辺で流通している誰もが知る通貨ッスよ。あ、ちなみに、価値的には当然、金貨には劣るッスけど、銀貨は三十枚もあれば、一ヶ月は余裕で暮らせるッス。ま、贅沢さえしなければの話ッスけどね」
「は、はあ、そうなんだ……」
ここは異世界ではあるが、なんだかんだと、通貨は存在しているようだ……ま、当然だろう。
ちなみに、銅貨、銀貨、金貨以外にもルビーやサファイアといった宝石を加工してつくられた貨幣もあるようだ。
「よし、早速、件のアインゼルン神殿遺跡へ出張るぞ。んで、メンバーは俺、それにマリウスとサマエル、それにヤスとメディエリス、お前で決まりだな。」
「えええ、俺も!」
件のアインゼルン神殿遺跡へ出張るのはいいけど、俺も一緒かよ……む、むう、仕方がないなぁ……。
「あ、そういえば、私の兄——いえ、ライバルのエディスンが他の何でも屋だったか騎士団にも依頼しているかもしれません」
「な、なんだってー! むう、それじゃ俺達のとってもライバルが立ちはだかる可能性があるなぁ」
「ラ、ライバルかぁ……例の騎士団みたいなモノかな?」
「うん、そうッス。サキュロスの村には、私達以外の何でも屋が……あ、言い忘れたッス。ライバルはインキュロスの連中の可能性もあるッスね」
「ああ、あのクソ野郎共か! むう、アイツらだったら負けたくねぇぞ、マジで!」
「マリウス、そのインキュロスの連中とは一体?」
「ルルルイエ樹海の北にある五千年樹の周辺を根城にしている男魔族の事さ。俺は気にしちゃいねぇが兄貴はアイツらの事を蛇蝎の如く嫌っているんだ」
「ちょっとした因縁があるっぽいッスからねぇ……」
「同じサキュロスの村の仲間ではあるが、アイツらはいけ好かねぇ……あああ、苛々するぜぇーッ!」
「男魔族……インキュバスかぁ、やっぱり男女どっちも存在するようだな。魔族とはいえ」
へえ、魔族の中には、なんだかんだと、男性型も存在するようだ――まあ、当然だろう。
自然の摂理ってヤツだな。
それはともかく、エリザベートの兄が他の何でも屋にアインゼル神殿遺跡に巣食う盗賊共を追い払うように――と依頼しているかもしれないそうだ。
そんなワケで兄貴が苛立っている――同業者であり、オマケにライバルと遭遇する可能性もあるし、そりゃ苛立つし、焦るだろう。
オマケに、何かしらの因縁もあるようだ。