EP01 転生したらサキュバスでした。その3
「な、何ィィ! 発見できなかった……だと!?」
「あ、はい、兄貴から預かった説明書の通りに探したんスけど……」
「説明書の通り探したって? それは馬鹿の言う事だーッ!」
「兄貴、ゴメンーッ!」
「ナ、ナニを探していたんだぁ?」
「あ、古代遺跡ッスよ。アンタと出会った森ン中にあるらしいんスけど、それが見当たらなくて……」
ふーん、古代遺跡を探していたねぇ……。
さて、今、俺――木村翔太郎がいる女ばかりの村ことサキュロスの村の周辺には、古代遺跡が点在しているそうだ。
もしかすると、地中に古代人が築きあげた都市そのものが、そのまま埋もれていたりして――。
とそんなワケで未発掘状態の古代遺跡も多々――故に、当然とばかりに一攫千金を狙う連中も多いそうだ。
それはともかく、ここは現実世界じゃない……間違いなく幻想世界だ。
何せ、俺の目の前には、二足歩行の喋る兎――要するに、兎の獣人がいるワケで。
「なんだぁ、兎が言葉を喋っちゃ駄目だって言いたいのか、お前?」
「ちょ、俺がまだ何も……」
「お前の目が言っているんだ。それがわかるんだよ……って、お前、君主か? マリウスに続く第二の君主が来たってワケだな」
「はあ、君主ってなんだよ!」
「まあいい。俺達の家に来いよ。仲間は多い方がいいしな」
「は、はあ……」
兎が喋っちゃ駄目だなんて言ってないぞ、おい!
――って、どうでもいいけど、君主ってなんだよ。
ま、それはヤス、それに兄貴と呼ばれている兎獣人について行けばわかるかな……かな?
「ヤス、お帰り~。何か収穫はあったかな、かな?」
「ヤスちゃん、その調子だとしくじったみたいね」
ん、それはともかく、ヤスの家の出入り口の扉が勢いよく開くと、タキシード姿の目つきの悪い背の高い赤い髪の女、それにどこぞの男子高生を連想させるチャック柄のブレザーとスラックスといった格好をした小柄な黒髪の女が飛び出してくる。
んで、動物園にいるパンダなどの珍獣を見るかのような物珍しそうな好奇の視線を俺に向けながら駆け寄ってくるのだった。
ちなみに、前者が二十代後半から三十代前半といったところだろう。
後者は十代後半だな、間違いなく。
「ん、ソイツは俺と同じ君主じゃん! どこから連れてきたんだよ、ヤス!」
「たまたま出会ったんスよ、マリウスさん」
「ふーん、たまたまねぇ。とりあえず、俺の方が大きいな☆」
「わ、わああ、何故、上着を脱ぐんだ!」
「イイじゃん。減るモノじゃないし、見せつけてやりたくなったんだ☆」
「ああ、マリウスさんは露出狂なんです!」
「サマエル、この野郎ッ! 誰が露出狂だァ、この貧乳小娘がァァァ~~~~ッ!!」
「イタタタァ! 殴らないでくださいよォ!」
「…………」
ニヤニヤと笑いながら、タキシード姿の男装女子である赤い髪の女マリウスが、そんなタキシードの上着を突然、脱ぎ始める――ろ、露出狂か、コイツ……変態だーッ!
んで、露わになった赤い髪の女マリウスの淫靡なバストのサイズは間違いなくIとかJカップはあるぞ!
その一方、女子高生のような格好をした黒髪の女ことサマエルは貧乳である――洗濯板、ああ、まな板でもいいな!
ププッ……胸の大きさに格差があるコンビだぜ。
「あ、どうでもいいけど、この人……メディエリスさんじゃないのぉ?」
「お、確かにな! コイツはメディエリスだ」
「メディエリスさん? つーか、誰だよ、ソイツ……」
「おいおい、自分の名前を忘れちまったのかァ? それに俺達の事も忘れちまったのか、お前!」
「メディエリスさん、酷いです! 僕やマリウスさんを……仕事仲間の事を忘れてしまったんですか?」
「むう、何がなんだかさっぱりなんだ……」
「マリウスさん、この人は木村翔太郎って変な名前を名乗っているッス。お知り合いとは別人なんじゃないッスか?」
「別人だと? ハハハ、瓜二つの双子ってか?」
「うーん、間違いなくメディエリスさんだってば!」
「ほえ~……お二人がそう言うのなら間違いないッスね」
「ま、いいや、それはともかく、お前、また胸がでかくなったんじゃないか? ま、今のところ俺の方が勝っているがね☆」
「え、どういう事……う、うおー……なんじゃ、こりゃーッ! 俺の胸が女みたいに肥大化……うわあああ、俺のアレねぇーッ!」
「ん、何をそんなに驚いているんスか? アレがあるワケがないッス。アンタも私達と同じ女魔族の一族であるサキュバスじゃないッスかぁ」」
「うわああああッ! 俺の身体に何が起きたんだーッ!」
俺の容姿はメディエリスという人物とそっくりなのか!?
うぐぐ、その前に俺の身体に異変がッ! む、胸が……これは爆乳なおっぱいではないかァァァ~~~ッ!
オマケに、ズボンの中の手を突っ込んでみると……おおお、俺の大事なアレが……股間にある筈のモノがなくなっているッ!
オマケに、俺の頭には角が……山羊のような角が生えているぞ!
ナ、ナニが起きたワケだ……ど、どういう事だ……頭が混乱するぞーッ!?
お、俺はヤス達と同じサキュバス――女魔族になってしまったようだぞ――い、いつの間にィィ!
「ま、まあ、許そう。俺好みの容貌だし、この巨乳が……イイッ!」
「うへぇ、鏡の前で身体をクネクネさせながら、ニヤニヤ笑っているぞ。記憶はぶっ飛んでいるけど、いつものメディエリスだな」
「まあ、メディエリスさんは元から自己陶酔者だったし、自分の容姿に酔いしれるいるんじゃね?」
「ち、違うってのーッ!」
俺は自己陶酔者ではないゾ!
だが、俺好みの女の姿――女体化した俺自身の姿が、ドーンと目の前の鏡に映ってりゃ、その姿に酔いしれるっての!
え、それはお前だけだって?
む、むう、そう言われると返答に困る……あ、ああ、でも、とりあえず、この姿のままでもいいかなって思い始めたかも。
そんな考えに至った俺は、やはり自己陶酔者なのかもしれないなぁ……。