EP03 導かれし金の亡者達。
「眼鏡をかけたダサ~イ女が目の前にいるぜ!」
「そりゃお前ぢゃ!」
「う、うお、爺さん! いや、神様!」
「フォッフォッフォ、久し振りじゃのう」
「え、三日ぶりだろう? 確か?」
「そうぢゃったじゃのう? ま、とにかく、ここは〝お前が見ている夢の中〟――夢幻世界ぢゃ!」
ん、俺は夢を見ている?
ああ、そうかッ――だから、俺は何もかもが真っ白な空間にいるわねね。
んで、そんな何もかもが真っ白な空間にいる俺の目の前には、大きな鏡がある――二メートルはあるかな?
さて、当然だけど、大きな鏡には、今の俺、木村翔太郎――いや、メディエリカという名の女魔族の一種であるサキュバスの姿が映し出されている。
し、しかし、今の俺――サキュバスのメディエリカは、眼鏡をかけた二十歳くらいの巨乳美人なのだが、とにかく地味でダサいの一言である。
オマケに着てるモノは黒いジャージ上下だ。
おっと、それはともかく、アインゼルン神殿遺跡で出会った謎の爺さん――神様が、俺の背後にいるんだが。
「しかし、こんな場所で出会うとは奇遇ぢゃのう。ああそうか、アインゼルン神殿遺跡で出会った縁かのう?」
「た、多分、そうじゃね?」
「うむ、まあ、そういう事にしておくかのう。さて、こんな場所で出会った縁もある。ソイツの――勇者の剣を扱い方を教えてやろう」
「マ、マジかーッ! え、ええ、ここじゃ夢ン中だろう? 何故、コイツが手許にあるんだ!」
「そりゃ当然じゃろう。ソイツとお前は切っても切れない間柄じゃからのう」
「え、そうなの? うーむ……しかし、どう見たって鉄パイプだ。剣なんかじゃねぇな、これ」
「ソイツは持ち主の趣向に合わせて形状を変えるんぢゃ。さてさて、ソイツを使い方を――と思ったが今は無理のようぢゃ!」
「ちょ、どういう事だよ……わ、わわわーッ!」
お、おいおい、爺さん……いや、神様ァ!
どう見たって鉄パイプにしか見えない手許にあるコイツ――勇者の剣の使い方を教えてやるって言ったクセに、それを反故する気か!
むう、そりゃねぇだろうォ!
と文句を言おうとした矢先に、俺の意識は無限世界から現実世界へと引き戻されてしまうのだった。
「お姉さん、起きてよ! 起きないと……」
「むう、お前は誰だ?」
意識が無限世界から現実世界に戻ったのはいいが、俺はどこにいるんだ……それがさっぱりわからん。
だが、目の前に小柄な黒髪の少年の姿がいる……ええと、どちら様でしょう?
「ぼ、僕に名前は井上春太と言います。気づいたら、ここに……」
「井上俊太? むう、その名前から想像すると、お前、転生者だな……」
「転生者?」
「んー……要するに、お前は死んで、この世界に転生したんだよ……多分な」
「な、なんだってー!」
「なあ、どうでもいいけど、何故、パンツ一丁なんだ、お前ェ?」
少年の名前は井上春太。
コイツ、もしかすると、名前の語呂などから考えて俺と同じく本来いるべき世界で事故等に遭遇して死んで、この異世界リドームアースに転生したモノなのかもしれない。
後、どうでもいいが、何故、パンツ一丁なんだ、コイツ?
「ん、ここはルルルイエ樹海の中にある湖のほとりだったな。もしかして泳いでいたのか? それとも露出が趣味なのかァ☆」
「そ、そんなんじゃない、ふざけないでーッ! 僕は何もしていない……ととと、とにかく、不思議の国のアリスみたいなロリータな格好した赤い髪の年増女とブレザーとスラックスといった男物の学生服っぽい格好した髪の長い女のコに襲われたんだ! で、間一髪のところで逃げて来たんだよ! だから、こんな格好なんだ……」
「むう、それがマリウスとサマエルだな。アイツら、何やってんだよ……」
むう、なんだかんだと、思い出したぞ。
俺はルルルイエ樹海の中にある湖のほとりで昼寝中だったんだ。
呑気だなァって? まあ、特にやる事がなくて暇でね。ヤスと昼寝をするならイイ場所があると言わてて――。
その前にアインゼルン神殿遺跡でアイギス達、他の何でも屋に勇者の剣を奪われそうになって逃げていたんじゃないのかって?
ああ、あれから、なんだかんだと、数日、経っている。
んで、勇者の剣だが、フッ――と俺の身体の中に溶け込むかのように消え失せてしまったせいもあってか、アレを狙ってた連中には〝無くしてしまった〟――と嘘を吐き騙す事が出来たワケだ。
ま、それで上手く逃げ切れたってところか――し、しかし、単純な連中ばかりだなァ。
あんな子供騙しな嘘を信じてしまったワケだしねェ。
さて、春太の奴はマリウスとサマエルに襲われて着ていた服を脱がされたっぽい。
アイツら、一体、何が目的で――。
「んん、そういや、お前、男のままじゃないか! か、身体にどこも変化はないのかァ?」
「な、何も変化なんてないよ。寧ろ、今は服が欲しいかも……」
マリウスとサマエルが、どんな意図で春太を襲ったのかも気になるがけど、そんな春太の奴、ルルルイエ樹海へとやって来たのに、その身に何も変化がない…だと…!?
ここに来るモノは、み~んなルルルイエ樹海内にある湖から湧き出す魔界の瘴気によって魔族になってしまうのでは――。
コ、コイツ……瘴気を跳ね除ける特異体質というヤツなのでは!?