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EP02 異世界の初仕事。その9

 アインゼルン神殿遺跡に巣食う盗賊共は、アルシュバーン大陸の土着民ヴォイヴォのみで構成された集団のようだ。


 が、そんな土着民ヴォイヴォの中でも厄介な連中ばかりである。


 何せ、別大陸――主にアルシュバーン大陸のお隣の大陸であるミルドバン大陸からやって来た入植者orその子孫ことミルド人などの排斥を目論んでいるらしい種族の文化と歴史を守る純血ヴォイヴォ――純ヴォイヴォなので。


 それはともかく、盗賊団のトップ――つまり頭目が、俺達、何でも屋サキュロ団+αの目の前に現れる。


「ふええ、巨人のように大きな男ッス!」


「ヴォイヴォは男女に問わずミルド人よりも長身だって事は言わずもがな!」


「え、そうなの? だけど、あばら骨が浮き出すほど痩せこけているな」


「だが、両腕、両脚が筋骨隆々という滑稽な姿だァ」


 うーむ、頭目は純ヴォイヴォの印なのかはわからないけど、部下達と同じ中心に大きな目玉とその周囲を囲む六つに小さな目玉という奇妙な絵が描かれた仮面をかぶってはいるが、その身長は三メートル近い上半身裸の巨人のような男である。


 だが、痩せこけてあばら骨がくっきりと浮き出している――が、何故か両腕と両脚が筋骨隆々だ。


 じ、実に奇妙な体格だァ。


「私は力馬鹿の戦士ではない……魔術師だ。故に無駄な筋肉を必要としない身体ないのだ」


「ちょ、そのムキムキの両腕と両脚はなんだよ!」


「目の錯覚である――さて、ソイツは渡さんぞ。ソイツは我らの至宝である故に!」


「わ、わあ、身体の動きが鈍い……違う動かん……ま、まったく、動けんッ!」


 力馬鹿の戦士ではなくて魔術師だから無駄な筋肉を必要としない身体だって!?


 おいおい、それじゃ筋骨隆々の両腕と両脚はなんだよ!


 言ってる事が矛盾しているぞ、お前ッ――う、うう、突然、身体が動かなくなったぞ!


 ヘンテコリンな身体の頭目も奴は魔術師を自称しているし、魔術的な罠を仕掛けていたのかも!?


 で、俺達はまんまと、その罠に――。


「ム、ムムッ……地霊縛呪かな?」


「地霊縛呪?」


「簡単に説明すると、この地の縛れた霊……地縛霊の類を召喚し、対象の身動きを封じる魔術よ」


「へ、へえ、そうなんだ……う、うおーッ! 半透明の無数の手が見えるゥ!」


「地縛霊の腕よ……ったく、ここら辺は多いのよねェ。死後も、この地に留まるヴォイヴォの神官共の霊が! だけど、この程度でアタシを捕えるなんて無駄……無駄無駄無駄ァ!」


「ぬう、流石は竜の乙女! 呆気なく地霊縛呪を解呪してしまうとは――」


 俺の足許には、地面から生えた無数の半透明の腕がッ――こ、これが地霊縛呪とかいう魔術の正体である〝地縛霊〟だ。


 ふむ、アインゼルン神殿遺跡はかつての輝きを失せたとはいえ、場所が場所なだけに留まっているんだろうなぁ地縛霊――神官共の亡霊が。


 さて、盗賊共の頭目が仕掛けた魔術――地霊縛呪をリリムは、まるで何もなかったかのように呆気なく解呪するのだった。


 ちょ、一人だけ動けるようになるとかズルいぞ、おいィ!


「お、おおい、俺も動けるようにしろ!」


「お断りィ~☆ それは自分でやる事ね」


「む、むう……アアアアーッ! お、動けるようになったぞー!」


「あらあら、気合の一声で地縛霊共を追い払うとはねぇ。流石は魔族ってところかしら?」


「知るか、そんな事! とにかく、動けるようになったぜ!」


「なん…だと…!? フン、だが、地縛霊共(やくたたず)を避けたところでコイツを――勇者の剣は易々と手に入れられると思うなッ……喰らえィ!」


 足許に見受けられる地面から生えた半透明の腕――地縛霊共は、案外、気が弱いのかも――。


 何せ、俺が気合の一声――いや、怒鳴り声というか奇声を張りあげた途端、吹き抜けていく風に吹き飛ばされる煙の如く消え失せてしまった事だし。


 まあ、そんなこんなでリリムと同様、地霊縛呪を解呪できた俺だったけど、頭目の野郎が先制攻撃とばかりに放ってきた赤い閃光――魔術攻撃を躱せず直撃を喰らってしまうのだった。


「う、ううッ……ゴホゴホ……酷い煙だなァ!」


「お、無事のようねェ……あ、でも、下着が全部吹っ飛んじゃったみたいね☆」


「あ、ああ、そのようだ。まったく、アイツらの使う魔術は服だけを吹っ飛ばす効果があるようだ。確信したぜ」


 むう、頭目が使う魔術は、盗賊Aが使った魔術と同じくモノかもしれん。


 ったく、純ヴォイヴォが使う魔術ってヤツは、直撃した対象の服だけを吹っ飛ばす効果があるようだ……確信した!


 それはともかく、残った下着が全部、今の魔術攻撃で吹っ飛んでしまったぞ、おいィィ!


「う、どうでもいいけど、スペアに服を持ってないか? 流石に恥ずかしいぞ、俺!」


 わひゃ、なんだかんだと、俺は素っ裸の状態だ……丸見えである!


 か、代わりの服はないのかーッ!


 サキュバスの仲間は元男だし、盗賊共はどいつこいつも野郎ばかりなので、そんな俺をガン見しているーッ! これは恥ずかしすぎるぞー、俺!

 

「うひゅー! もっと見せろよ!」


「おい、見るな! アイツは淫魔とか呼ばれる場合があるサキュバスだぜ。魅了されたら操り人形にされちまう!」


「お、おお!」


「じゃあ、俺の鋼の肉体を代わりに☆」


「あ、それはお断りだー!」


「なんだとー!」


 ううむ、淫魔ねぇ……とにかく、恥ずかしすぎて一歩も動けない……な、なんとかしないと。


「おい、メディエリカ! 失った服のスペアは己の魔力でつくればいいだろうに」


「わ、マリウス、アンタまで素っ裸になってどうするんだ!」


「ハハハ、お前も素っ裸になるか、サマエル? 解放感が凄まじいぞ☆」


「ぜ、全力で断るゥーッ!」


「そうかぁ、それは残念――と頭ン中で着たいと思う服を想像してみろよ? こんな風に」


「お、おお、素っ裸だったマリウスの身体に服が……服がスゥと!」


 わ、マリウスも俺と同じく素っ裸になっている!


 しかも一切、恥ずかしがっている様子はなくむしろ見せつけているような素振りだ。


 く、コイツ……根っからの露出狂なのかも。


 さて、そんな露出癖があるんじゃないかと疑いたくなるマリウスだけど、何が起きたのかわからないほどの刹那の一瞬で着替えを済ませるのだった。


 あ、頭の中で想像した着てみたい服を己の魔力でつくったっていうのか!?

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