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5 空間での戦い

 プロシーは存在を自覚してから三日間、戦いと探求の日々を送った。結果から言えば、プロシーはあの後、ティラノより強い九十九体の生物達と戦い勝利して、【ガイアスラ】にやって来たのである。


 二回目からの空間での戦いでは、天の祈願者に声をかければ、魔法陣で一体が現れて一対一で戦う方式だった。


 生物達は、最初のティラノから始まり、狼、熊、蜘蛛、蛇、鬼、猪、カマキリ、蟻、ワシ、ライオン、亀、サソリ、象、などなど様々だった。


 二〜四十九までの生物は、特に問題なく、思考加速で相手の動きがスローモーションに見え、気を纏い身体能力を上昇させたプロシーは相手を一撃で容易に倒した。だが、五十体目からは、少しばかり違った。


 それまでの生物達は、爪や牙での攻撃オンリーだったのだが、五十体目の三メートル程の黒い狼は、口から火の球を出して攻撃してきたのである。その時のプロシーは、まだ、魔力の使い方を理解していなかった。


 プロシーは、迫り来る数多の火球を高速で飛んで躱しながら、ある事を考えたのである。


(魔力のお手本が目の前にいるなら、それを真似れば良いのだ!)と。


 この時から、プロシーは魔力の使い方を覚えた。『気竜眼』で狼を観察し、『探求者』で解析鑑定、探求する事で、魔力の使い方を理解したプロシーは「相手が火なら、我輩は水なのだ!」と思い、空間にある川の中に入り、水の流れとイメージを固めて水の具現化を可能とした。


 ちなみに、プロシーには呼吸の必要がない為、いつまでも川の中にいる事が出来る。川に入ったプロシーのフワフワの体毛は、水に濡れても不思議な事にフワフワのままで、しっとり感が追加されただけだった。


 新たな攻撃方法を得たプロシーは、水の魔力を右手の三本の爪に集め、思いっきり腕を真上から振り抜き、水の属性攻撃、”水爪”を凄まじい速さで放ち、三日月状の水の刃で、周りの木々、狼が四肢に力を入れ口から放った火球、狼を纏めて真っ二つに切り裂いて倒したのである。


 狼を倒した後、狼の炎で火の海となっていた空間だったが、何もなかった様に、元の状態に戻った。恐らく、戦闘が終われば、自動的に治る様になっていたのだろう。この様な光景を見ていたからこそ「ふむふむ。具現化出来る物はいくら壊しても良いのだな!」と、プロシーに間違った常識が刻まれたりした。


 その後、プロシーは空間にある様々な物に触れて、イメージする事で具現化出来る物を増やし、『探求者』で更に気と魔力の使用方法の探求を重ねて、『開拓者』で様々な技能を会得していった。


 この時点でプロシーが可能だった事は下記の通りだ。


 気:”活性” ”気纏” ”圧縮” ”放出” ”性質変化”


 魔力:”圧縮” ”放出” ”形状変化”


 具現:”火” ”水” ”氷” ”地(砂、土、石、岩、木)”


 属性攻撃:”気炎爪” ”気水爪” ”気氷爪” ”気砂爪”


 気と魔力の応用:”具現纏”


 具現纏:気の”性質変化”と”放出”を応用した技能。放出した気を、性質変化で、火などにする事により、具現化した物を纏う事が出来る。


 具現纏はそもそも、気を纏い生身で戦っていたプロシーが、新たな強力な防御法がないかと探求して、可能となった技能である。この方法により、プロシーは気纏と具現纏による、二段階の防御方法を手に入れたのだ。


 プロシーは実際に”気纏”、火纏の”具現纏”をしてみた。プロシーにはダメージはないが身体全体が燃えあがっているように見える状態だった。この状態の便利なところは、範囲、威力を自在に調節する事が可能だった事である。


 プロシーが試しに気、魔力をかなり使うと自身を起点に直径二百メートルぐらいの範囲まで豪炎が広がり、周りの木々全てを燃え散らせた。正に攻防を一体にしたようなものであった。


 ちなみにプロシーが”具現纏”をして周囲を確認出来るのは、『気竜眼』があるからだ。『気竜眼』は空間把握で、プロシーを起点に全周囲を把握する事が出来る。これは能力の範囲内全てに目があるような状態なのだ。プロシーは『気竜眼』があるからこそ、”具現纏”で自身の周りを何かで覆っていようとも、周囲の状況を把握する事が可能なのである。


 時に、プロシーは戦いと探求だけをしていた訳ではない。ちゃんと休息もしていた。天の祈願者から、魔力と気力は無限ではないと注意されたプロシーのリフレッシュ方法は、活性化したお風呂に入る事である。


 様々な魔力の実験をしたプロシーが、凹んだ地面に入っていたお湯に浸かった時、凄く気持ち良かったので、疲れたらお風呂に入るのがプロシーの日課になった。


 そんなプロシーにはお気に入りの入浴姿勢がある。その姿勢とは、頭だけを地面に乗せ、仰向けの状態でグダ〜〜とお湯に入浴する体勢だ。お湯に入っている時のプロシーは、目を瞑りとても気持ち良さそうに入浴している。正に、可愛さ倍増の光景である。


 それで、プロシーがお風呂を活性させる様になったのは、たまたまお風呂に入っている時、自身を活性させると、お湯も活性し、少しづつだが自身の気と魔力が回復したからだ。


 これにより、気は自身以外も活性させる事が出来ると分かったプロシーは、試しに属性攻撃に気を使うと、気を消費しただけ威力が上昇した。それからは、気と魔力を一緒に使うようになったのである。


 また、火などの具現化した物についてだが、魔力を消費すればするだけ、威力や温度が上昇する事が判明した。プロシーが見た事がない氷を会得したのも、この現象に気づき、水の温度が一定の温度から低下しなかった事を不思議に思い、『探求者』で探求したからである。


 プロシーは戦いの最中、戦った後に、こうして数多の探求を繰り返し、新たな知識と技能を得ていった。


 五十番目の狼までは、一体づつ戦っていたプロシーだが「この先の事を考えると、そろそれ多勢と戦ってみた方が良いのだ」と思い、五十一〜九十までの計四十体と戦う事にした。


 プロシーの意見に、天の祈願者は危険だから止めた方が良いと告げたが、プロシーは「我輩には困難が待ち受けているのだろう? これくらいできないとダメだと思うのだ」と戦いを止めない意思を示した。その言葉に、少し沈黙して了承した天の祈願者は「気をつけてください」と、心配そうに一言告げて戦闘を開始した。


 四十体の生物の種類は、狼、ライオン、カマキリ、プテラノドン、ワシ、亀、サソリ、猪、象、蛇、蜂、鰐、蟻、鬼が複数体だった。大きく堅牢そうな印象を受けるそれぞれの生物は、プロシーを囲むように出現した。


 ”具現纏”を会得したプロシーは、”気炎纏”を使い、二メートル程の赤く燃え盛る豪炎の塊となって戦った。周囲一帯から放たれる、無数の水、砂、岩、火などの属性攻撃を、プロシーは、魔力と気を消費して、更に範囲を広げ温度を上げる事で全て焼却した。


 プロシーは豪炎の中から、”気炎爪”を両手の爪から放ち、三日月状の巨大な炎刃で次々と生物を切り裂き燃え散らせた。順調に進むかに見えた戦いだが、一筋縄ではいかなかった。


 プロシーの鉄壁に思えた”気炎纏”を破る攻撃があったのである。更にその攻撃は、思考加速したプロシーを持ってしても、早いと感じる攻撃で、容易には躱せなかった。


 その攻撃とは、ワシ、ライオン、鬼が放ってきた風の攻撃だ。プロシーは迫り来る風の攻撃を、高速飛行で躱しながら、風について探求しつつ、”気炎爪”で生物を葬った。


 プロシーは暫く躱す、攻撃するといった同じ作業を繰り返して、四十体いた生物も残り十体となった。しかし、残った十体は、簡単にはいかなかった。他の生物は攻撃を躱しながら、遠距離でも”気炎爪”で対処出来たが、残った十体は違った。


 ワシ型の空を飛ぶ三体、ライオン型の三体、鬼型一体は移動速度が速く、”気炎爪”が躱される。鬼一体、サソリ一体、亀一体は防御力が高いのか”気炎爪”が防がれてしまう。


 そんな中、特に動きが速く厄介なのは風属性を持つ、ワシ、ライオン、鬼の三体で、攻撃も風を使ってくるので速い。他のライオンと、ワシは距離を詰めれば”気炎爪”でも倒せるだろうとプロシーは考える。”気炎爪”を防いでくる、鬼、サソリ、亀は、地属性でうまく砂を使って防御力を底上げしていた。

 

 それぞれを探求しながらプロシーは思考した。


(安全そうな位置から攻撃を仕掛けて、三十体は問題なかったが、後の十体は面倒なのだ。特に風を使う三体が面倒なのだ。風の攻撃もあの速さだと相当な威力があると考えられるのだ。距離を詰めて戦うにも近づくと躱せるかは微妙なところなのだ。さて、どうするか)


 プロシーは風属性の三体から距離をとり、空を飛び攻撃を躱しながら思考していると、『開拓者』により新たに出来る事が二つ増えた。


 一つ目は、魔力で風の具現化が可能となったこと。二つ目は鬼、サソリ、亀が使っている防御法だ。三体は大量の砂を圧縮して密度をあげ、それを重ね合わせる事で、強固な防御力を誇っていたのだ。プロシーは「これなら風の攻撃も防げそうなのだ」と考えた。


 プロシーは”気炎纏”を解除して、”気砂纏”を纏う。大量の砂を魔力で圧縮し重ね合せ周囲二メートルの範囲に纏った。気でさらに活性化させた為、より強固な防御力となった。プロシーは砂を全身に纏っている状態だが、不思議と身体への重さの負荷はなかった。


 プロシーが、試しに攻撃を避けずに当たってみると、若干の衝撃はあったが、風、火、岩の攻撃を完全に防ぐ事に成功した。


 強固な防御法を得たプロシーは、砂の塊の前方をランスのように尖った状態に変化し、空中の風属性のワシに向かい一直線に突進する。ワシや他の生物から攻撃されても避ける事なく、全てをガン! ガン! ガン! と重音と共に弾いた。


 プロシーは風で更に速度をあげて、一直線に進みワシに突撃する。プロシーの速度が凄まじく、ワシは回避することができずに貫かれ光となり霧散した。プロシーはそのまま、残りのワシ二体、ライオン三体、風属性の鬼一体も同じように高速の突撃で貫いた。


 残り地属性の三体になり、プロシーは空中で”気砂纏”を解除し、ただの”気纏”になった。プロシーは前の攻撃では防がれたが、風の具現化が可能になった事で、”気炎爪”の強化を試す事にしたのである。


 プロシーは迫ってくる岩の攻撃を躱しながら、右の爪に火を、左の爪に風を準備し同時に、”気炎爪”、”気風爪”を放った。すると、考えた通り合わさり”気炎風爪”になった。”気炎風爪”は炎を風で更に強化して威力、速度、攻撃範囲が格段にまし、大きな豪炎の刃と化し難なく砂の防御を突破し鬼、サソリ、亀をズバン! と切り裂いた。切断された鬼、サソリ、亀は豪炎により一瞬で燃え散った。


 四十体との戦闘に勝利し、残るは十体となったプロシーは、気、魔力について現状の確認、探求をした。


 プロシーは地面に二本足で立ち、目を瞑りながら自身の出来る事を確認していると、一つ思いついた事があった。魔力で”形状変化”が可能なら、気でも可能ではないかと思ったのだ。イメージしながら探求していくと、『開拓者』により気の”形状変化”が可能となった。


 プロシーは気の”形状変化”が可能となった事で、”具現纏”を強化する方法を探求した。現時点の”具現纏”はあくまで一つの大きな塊でしかなく、多少の形状変化しかできない。故にもっと自在に使える方法を探求した。プロシーが自分の体を動かす感じのイメージで探求していると、『開拓者』により、”具現纏[+竜纏]”が可能となった。


 プロシーは試しに範囲二メートルの”気砂竜纏”をする。今までは圧縮した砂の塊だったものが、プロシー自身の体と同じく二メートルの砂の竜の形となった。”気砂竜纏”の利点はプロシーが近接戦闘をする事が可能となった事である。今まではあくまで、遠距離主体の属性攻撃で戦ってきたが、それはダメージを受けない様にする為だった。


 だが、この”気砂竜纏”を使えば、高い防御力が保てる為、相手の攻撃を気にせずに接近して攻撃する事も可能になった。何よりプロシーの欠点の一つの、リーチの短さを補う事が出来たこと、鋭い砂爪で攻撃出来る様になったのは、戦闘においてとても大きい事だった。


 暫く”気砂竜纏”を試したプロシーには嬉しい発見があった。それはこの状態の砂爪のままで”気砂爪”を放てた事である。今までは自身の爪に魔力を集中させて使っていたが、この状態で放てる用になった事で攻撃範囲が格段に広がったのだ。これで爪を使った各属性遠距離攻撃を強化する事にも成功した。


 様々な確認、探求をしていると新たな発見があった。プロシーは以前、気の”圧縮”を出来るようになっていたが、効率が悪く使っていなかった。だが、再度気の”圧縮”を使ってみると、最初使った時より大幅に気の消費量が削減されていたのだ。


 恐らく長い事”気纏”を使っていた事で、気の使用法が上達したと考えられる。思えば、”気纏”も初期の頃と比較すれば、身体能力の上昇量も上がっていた。気は使えば、使う程に徐々に熟練して気の消費量の低下、活性効果が上昇する事が分かった。


 プロシーは気の”圧縮”が効率的に使えるようになった為、”気纏”状態で更に全身に気を放出し圧縮を試みた。するとプロシーのエメラルドの体毛の輝きが更に増し、”気纏”は”剛気纏”となり身体能力、反応速度、自然治癒力も相当上昇した。


 ”剛気纏”状態で飛行すると今までの速さの四倍ぐらい速くなり、もはや超高速移動のような速度で、普通の知覚速度では視認する事が不可能な速度になった。攻撃力、防御力も相当上昇している為、この状態のままでも十分安心して戦闘可能な程強力になっていた。


 ”剛気纏”状態になった事で、”気炎爪”などの攻撃力、速度が大幅に上がり、”剛気炎爪”となった。更に”剛気纏”が出来る様になった為、”具現纏[+竜纏]”が強化され、”剛気砂竜纏”などになれるようになった。


 ”剛気砂竜纏”は以前の”気砂竜纏”より、攻撃力、防御力、速度が格段に増しており、非常に強力になった。試しにこの状態で右腕を全力で振り抜くと、その風圧により衝撃波の様なものが発生して、前方にあった木々を木っ端微塵に破壊した。


 気の”形状変化”、”圧縮”により戦闘能力は大幅に上がったが、プロシーは満足せずに魔力の放出について思考する。


(移動速度、近距離での攻撃力、防御力、遠距離での攻撃力も上がったが、もう少し遠距離攻撃を増やしたいのだ。『探求者』の思考加速でも視認出来ない程の速さを持った敵用に、遠距離広範囲攻撃が欲しいのだ)


 プロシーは前回の戦いで速度の脅威を感じた為に、見えなくても当たる可能性のある攻撃を探求した。やろうと思えば、全広範囲属性攻撃は可能なのだが、気と魔力をほぼ使いきるようなものなので使えない。もし、使用して躱されでもしたら、生身で戦うはめになる為、敗北は確実だからだ。


 暫く広範囲攻撃の方法を探求して、開拓者により答えが出た。その方法は”息吹”だ。”息吹”は今まで倒してきた生物達の魔力の使い方である。今までの生物達は、体内で魔力を具現化してから放出して攻撃してきていた。”息吹”は体内から魔力を放出する力と、吐く息を合わせて、速度と威力を上げるという方法で、攻撃範囲も魔力の消費で調節可能だった。


 それからプロシーは一体ずつ生物を倒していき、九十九体まで倒す事に成功した。九一〜九十八の生物は火、風、氷の属性の内の一つを持った生物だった。ただ九十九体目だけは違った。九十九体目は三つの頭を持つケルベロスの様な生物で、それぞれの頭が火、風、氷の違う属性を持っていた。だが、懸念していたプロシーの知覚速度を超える相手はいなかった為、”剛気竜纏”が出来るようになった、プロシーを苦戦させる生物はいなかった。


 最後の百体目に備え、お湯に入りグタ〜とゆっくり浸かっているプロシーは、目を閉じてこの空間で過ごしたこと、百体目の生物のこと、外の世界について思考する。


(遂に後一体を残すのみとなったのだ。ここで過ごす間に沢山の生物と戦った事で、戦闘についてはそれなりに熟練したが、外の知識は何もないのだ。外の世界はどうなっているのだ? どんな知識高い者がいて、どんな物があるのだ? ここのようにいきなり、殺意剥き出しで突っ込んでくるのか? 面倒な事もありそうだが、良い物を沢山発見出来れば良いのだ。まぁ〜それは百体目を倒せればの話なのだ。……何か嫌〜な予感がするのだ。間違いなく百体目は強敵のような気がするのだ)


 様々な事を思考しながら、最後の戦いに向けて回復するまでゆっくりするプロシーであった。

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