33 今後について
プロシーが話したい事があると告げてから、時間がかなり経過して現在、昼を少し過ぎた時間帯。ワイダール達の襲撃があった為、二日目の竜祭典は中止。各国から集まっていた者達は、自国へと魔法陣で帰って行った。
ごく一部の者達はカントリーに残り、中枢管理塔最上階、七十階、未だに使われた事がない、竜王達専用の会議場に居る。この場に居るのは、炎竜王ヴァイド、氷竜王ヴィゼ、雷竜王スパール、各国の代表五人、ゼダ、ユイ、ロンロ、クリス、プロシーである。
プロシー達は、大きな黒い円卓に各国別れて座り、ある者達を待っている。各々昼に食べたエメラルドトマト料理の話など、雑談しながら少し待っていると、ギィーと、黒い大きな扉が開く音が聞こえる。
扉から入って来たのは、黄色の髪をした美少年と、茶色の髪をした威厳のある顔をした巨躯の男だ。
「スライ、ガイード、久しぶりなのだ!」
「やぁ、プロシー。元気そうで何よりだよ」
「ん。プロシー、無事で何より」
二人を見たプロシーは、机の上に二本足でちょこんと立ちながら、右手を上げて親しげに挨拶をし、二人も挨拶を返した。彼ら二人が、プロシー達が待っていた風竜王と地竜王である。
風竜王スライは身長百六十センチ程で、黄色の髪をした美少年。にこやかな笑顔が良く似合う、爽やか系である。服装は白衣姿だ。
地竜王ガイードは身長二百二十センチ程の巨漢で、茶色の髪をした威厳のある渋い顔。竜王達の中で、最も風格を感じさせる見た目だ。服装は、黒のローブの様なモノだ。
スパール達に簡単な挨拶を交わし席に着いた二人。すると、スライが口火を切る。
「それでプロシー、僕らに話ってなんだい?」
「我輩が知った、この世界についての話と、今後やって来るだろう、敵についての話。そして、竜王の皆の役目についての確認など、色々あるのだ。我輩の話は、敵だった者から聞いた話でもあるから、話を聞いた後、出来れば皆の意見を聞かせて欲しいのだ」
「分かった。まずは、プロシーの話から聞く」
「了解なのだ。じゃあ、まずは今回襲って来た冥界の冥士達の話からするのだ……」
スパールから先に話す様に促されたプロシーは、自身の知り得る情報を皆に明かした。ワイダール達、冥界の冥士について。ワイダールから聞いた、創造主=神について。竜が神により作られた存在である事について。世界が複数存在する事について。プロシーが気を使え、敵も気を使う事について。この世界の結界について。竜王達の役目について。『探求者』でより分かりやすく纏めた内容を、話して聞かせた。
プロシーの話を驚きながらも、黙って聞いた竜王以外の者達。竜王達は目を閉じて、自身の知り得る情報と、食い違っていないかと、真剣に聞いていた。
「これで、我輩の聞いた話と、我輩の考えは以上なのだ。早速だが、竜王である、スパール、ヴァイド、ヴィゼ、スライ、ガイードの見解と話を聞かせて欲しいのだ」
「竜王を代表して、私が話す。私達がこの世界に来たのは、今から千年程前。私もプロシーと同じ、突如目覚めて、空間で力の使い方を学んだ。ただ、気については知らない。この世界での私達の役目は、プロシーが言っていた通り、結界の維持と世界の驚異の排除。私達は結界の維持の為、ある場所をずっと守ってた。けど、もうあまり意味はない。守ってた”龍脈結晶”にヒビが入りだした。原因は、プロシーが言ってた通りだと思う。神、他の世界、私が創造された事については知らなかった。だけど、そう考えれば辻褄は合う。私は、プロシーの話で合ってると思う」
スパールが、プロシーの話で合っていると肯定した。他の竜王四人も頷き肯定の考えを示した。ただ、スパールの話はまだ終わりではなかった。
「五芒星結界はいずれ壊れる。けど、私達が守る役目の結界はもう一つある」
「……スパール、その結界は、この世界から上の階層世界に行くのを防ぐ結界か?」
「詳しくは分からない。だけど、そうだと思う。その結界は、五芒星結界が完全に壊れた時に現れると聞いてる」
「そうか。今までの話を聞いて、何か質問のある者はいるか?」
プロシーは、皆を見回して尋ねた。すると、エルフの女王シェールが手を挙げた。プロシーはシェールに言う様に促すと。
「プロシー様に質問です。気の力は使えば使う程、力を増すそうですが、その理屈で言えば、数千年生きた者達には絶対に勝てないと思うのですが?」
シェールの意見に確かにと思う一同。たった三ヶ月で異常に強くなったプロシーは別格としても、話を聞くだけでも、絶対に勝てない相手だと思わざる負えない。特に、気を使えるユイ達は、その時間の差が何を意味するのか、良く分かっているだろう。
未知の強大な敵に、ほとんどの者が暗くなる中、プロシーは平然と告げる。
「シェール、その事なら、恐らくだが心配ないのだ」
「? プロシー様、どういう事ですか?」
「我輩達竜は、創造された存在なのだ。スパール達竜王にも、ワイダール達冥士にも、目的があったが、我輩にはないのだ。さっきは言わなかったが、恐らく我輩を創造した天の祈願者に、我輩はこう言われたのだ。我輩の存在が希望になると。我輩はずっと、この言葉の意味について考えて来たのだが、その意味がやっと分かった気がするのだ」
プロシーの言葉に、誰もが真剣に耳を傾ける。プロシーが希望。それはきっと冗談ではないと思う一同。気と言う未知の力をこの世界にもたらし、常識を容易に塗り替えるプロシーならば、きっと何か凄い秘策があるはずだと。
「我輩はきっと、この世界の皆に気を教える為に送られて来たのだ」
「「「「……」」」」
期待しすぎていた故に、あまりの普通すぎる答えに静寂する会議室。プロシーは皆の反応を見て、不満そうに言う。
「我輩の話はまだ終わってないから、そんながっかりした様な顔をしないで欲しいのだ。恐らくだが、我輩は気を操るのに長けた竜だと思うだ」
「プロシー、どういう事?」
「ユイ、我輩の種族はエメラルドドラゴン『気翠玉竜』だろう。ヴァイドが炎竜王、ヴィゼが氷竜王、ガイードが地竜王、スライが風竜王、スパールが雷竜王なのだ。五人は単純に考えて、属性に秀でた力を持つのだろう?」
プロシーの問いにコクリと頷き肯定する竜王達。プロシーは更に続ける。
「で、我輩は『気翠玉竜』、つまりエメラルドの気が特化した竜なのだ。後、秘密にしていたのだが、本来の竜の気とは銀色なのだ」
「え⁉︎ ちょっと、待ってプロシー! 気は一つの存在に一つなんじゃないの?」
「ユイ、基本はそうだと思うのだ。だが、我輩には銀とエメラルドの二つの気が存在してるのだ。ただ、我輩はまだ銀の竜本来の気がどうやっても使えないのだ。それに、ワイダール達と戦って分かった事があるのだ。気とはそれぞれ特有の性質を持つのだ。ワイダール達、灰色の気は冥気、触れたモノを腐敗させる性質があったのだ。それで、我輩のエメラルドの気の性質だが、まだハッキリ分かってはいないが、恐らく触れたモノ全てを活性する事が出来る力だと思うのだ」
プロシーは、これまでの生活を思い出して、自身の気の性質を語った。話を聞いていたユイ達以外の者が、それは普通なのでは? と、疑問に思っていたが、ユイ達は違う。
「プロシーのエメラルドの気の性質が、全てを活性させるモノ。……そうね。私もそう思うわ」
「私もだよ。これで、ようやく謎が解けたね」
「ですね。やっぱり、プロシーちゃんが特別だったんですね」
「流石はプロシー様です」
プロシーの話を理解し、納得した表情のユイ達。そんなユイ達にヴィクトールが問う。
「どういう事? 気は全てを活性出来るんじゃないの?」
「ヴィクトールさん、私もさっきまではそう思ってたわ。けどね、実際は違うの。プロシーはね、皆んなを簡単に活性化出来るけど、私達にはそれができなかったのよ。前までは、力不足だからできないんだと思ってたけど、性質を考えればきっとそうなのよ。私達が出来るのは、自分自身の活性と、石とか武器とか、無機物を活性して硬くする事だけなの」
その話を聞いて、一通り考えた上で、再びシェールが尋ねる。
「プロシー様の力が凄いのは分かりました。ですが、気の活性量についは、何の解決にもなってないと思うのですが?」
「シェール、我輩の話はまだ終わってないから、安心するのだ。その話の前に、先ずはこれを見るのだ」
プロシーはシェールを落ち着かせると、エメラルドの輝きを体全体に纏う。プロシーは、ユイ達の方を見て。
「ユイ、ロンロ、クリス、ゼダ、我輩に触れてみて欲しいのだ」
「「「「え⁉︎」」」」
四人は言われるがままに、プロシーに触れて目を大きく見開き驚く。
「プロシーちゃん、どういう事何ですか? エメラルドの気が鉄の様に硬いですよ」
「クリス、これは金剛闘気なのだ」
「金剛闘気? プロシー、何時の間にこんな技を覚えたんだい?」
「ワイダールと戦ってる時なのだ」
「えっ? プロシー、戦ってる最中に覚えたの?」
「そうなのだ。いや、正確に言えば、ワイダールが使ったから覚えたのだ」
「……それはつまり、プロシー様は相手の使う技を見れば覚える事が出来るという事ですか?」
顎に手を当て話を聞いていたゼダが、考えを纏めて自身の推測を尋ねた。
「多分そうなのだ。ただ、それが誰でも使える気の使い方に限ると思うのだ。ワイダールはあの時、我輩が金剛闘気を会得していたと勘違いしていたが、我輩はワイダールが使ったのを見た瞬間、それが金剛闘気だと理解したのだ。我輩には気を見る事が出来る目『気竜眼』があるのだ。気が見えると言う事は、それがどの様に使われている力なのかも、理解出来るという事なのだ。金剛闘気は、闘気を極めた者が使える様になる奥義らしいが、この通り、我輩は直ぐに会得したのだ。気はかなり奥が深そうだから、もっと色々な力があるかもしれないのだ。我輩の言いたい事が分かるか?」
「私は分かったわよ。プロシーが新たな力を得れれば、今までの様に、プロシーが私達に新たな力を教える事が出来るって事ね」
皆に問いかけたプロシーに、笑顔のユイが答えた。
「ユイ、その通りなのだ。簡単な話、我輩が気を極めた敵と戦えば良いだけなのだ。それと、ここからが本題なのだ。確かにシェールが指摘した通り、数千年生きた者に、気の活性量で勝つ事は不可能だと思うのだ」
プロシーのまさかの言葉に、暗い顔になる竜王以外の者達。プロシーは尚も続ける。
「普通ならの話なのだ。考えるに、我輩は二つの特殊な力を持ってるのだ。まず、一つは”超速活性”。我輩はこの力があるからこそ、短時間の鍛錬で、皆の何十倍もの力が得れるのだ。最も、”超速活性”は、全力疾走の様なモノだから、普通は一分も持たないのだ。長時間使う事を可能にしてるのが、二つ目、エメラルドトマトなのだ! 仮に、敵が”超速活性”を使えるとしても、エメラルドトマトの様な、最高の食べ物がない限り、長時間使う事ができないのだ。この二つが、我輩の強さの秘密なのだ」
そこまで、プロシーの話を黙って聞いていたヴァイドが、立ち上がって叫ぶ。
「プロシー、何となくだが、我は分かったぞ! つまり、”超速活性”を皆が使える様になれば、誰でも直ぐに強くなれるという事だな!」
自信満々の表情で叫んだヴァイド。しかし。
「ヴァイド、それは無理なのだ」
「な⁉︎ どう言う事だ⁉︎」
「我輩も良くは分からないのだが、”超速活性”をユイ達に教える事ができないのだ。我輩は何時も、皆を活性させて、力の使い方を身体に馴染ませて教えるのだが、”超速活性”だけはできなかったのだ」
「そうなんだよね。他の気の使い方は、少しすれば身体が感覚として覚えるんだけど、”超速活性”だけは、凄い力って思うだけで、使える様にはならないんだよ」
「もしかすると、”超速活性”は、エメラルドの気を持つプロシーしか、使えないのかもね。気の性質だから、プロシーは使えるんじゃないかな?」
プロシーの説明に、ロンロが実体験を、ユイが憶測を話す。会議室にいるほとんどの者が「それって、強くなる方法がないって事なんじゃ」と、更に不安な表情となる。
「話が脱線したが、我輩の話はまだ終わってないのだ。確かに直ぐに相手より強くなる事は不可能だと、今は言うしかないのだ。しかし、誰も負けるとは言ってないのだ」
プロシーの自信を感じさせる言葉に、全員が食い入る様な目線を向ける。
「皆は何があれば、自身より強い敵に負けないと思う? 力か? 速さか? 活性量か? 魔力か? どれだと考えるのだ?」
プロシーの負けない為に必要なモノは、との問いに、全員が考え出す。沈黙から少しすると、スパールが告げる。
「私は防御力だと思う。相手が強くても、それ以上の防御力があれば、負ける事はない」
「スパールの言う通りなのだ! では、防御力を上げるには何が必要だと思う?」
答えを直ぐには明かさず、皆に考えさせるプロシー。一見時間の無駄にも思うが、これが重要なのである。答えが直ぐに分かれば、直ぐに取りかかれるかもしれないが、それは、答えがある前提の話だ。答えが出ない場合は、自身で考えるしかない。考える力があって、困る事など何もない。寧ろ、答えが無ければ、動けない方がよっぽど問題なのだ。それが意味するのは、答えがない窮地の時、自分の力では打開できないと言う事だから。
皆がそれぞれ、結界? 魔力? 気力? 魔法の才能? 色々な事を考える中、プロシーと一番長い付き合いの黒髪猫耳美少女、ユイが発言する。
「プロシー、私は魔力だと思うわ。どんなに凄い結界でも、魔力がないと維持できないしね」
「ユイ、正解なのだ! 我輩が考えるに、相手の力を上回る魔力と結界があれば、理論上は負けないのだ。ヴァイド、竜王であるヴァイドの魔力は、昔と比べて上がっているか?」
「我か? 良くは覚えていないが、少なくとも上がっている筈だ!」
「ふむ。じゃあ、悪いがヴァイド、魔力を一瞬だけ全開にしてみてくれるか?」
「まぁ良いだろ! お前達、我の魔力は強烈だから、気をしっかり持てよ! はっ!」
プロシーに言われたヴァイドが、魔力を一瞬だけ全開にした。その瞬間、途轍もない魔力が、会議室全体を覆い「何と言う巨大な魔力⁉︎」と、驚愕する竜王とプロシー以外の者達。
「今ので分かったと思うが、竜王であるヴァイドの魔力は凄いのだ。敵の魔力が、ヴァイド以上か以下かは分からないが、少なくとも超えている可能性もあるのだ。更に、敵は気を数千年使っていると考えると、かなりの強さだと考えられるのだ。……皆、そんなに暗い顔をしてはダメなのだ! 我輩の言いたい事は、その魔力と気力を超える、もしくは迫る方法があるという話なのだ!」
プロシーの言葉を聞いて、ハッ! とする皆。皆は思い出す、プロシーが作り出す驚異の食べ物の事を。
「皆、気付いた様だな。そう、我輩にはエメラルドトマトがあるのだ! エメラルドトマトは、体力、気力、魔力の回復だけで無く、魔力と気力もかなり上昇させる事が出来るのだ! そして、エメラルドトマトは、我輩の活性量が上がれば上がる程、美味しも効力も上昇するのだ! つまり、エメラルドトマトがあれば、一気に魔力と気力を上昇させる事が出来るのだ! じゃ、日々エメラルドトマトで高めた、我輩の魔力も披露するのだ!」
プロシーは日頃抑えている魔力を解放した。その刹那、ヴァイド以上の魔力の奔流が、会場を覆う。これには流石の竜王達も驚きを隠せない表情だ。プロシーは直ぐに、魔力を抑える。プロシーの力を目の当たりにし、静まる会議室。
そして彼らは内心で思う。確かに、プロシーの存在は、天の祈願者が言っていた通り希望だと。全ての者に気を教える事が出来、”超速活性”と言う短時間で急激に強くなる力を持ち、エメラルドトマトと言う、反則にしか思えない食べ物を作り出す存在。間違いなくプロシーは、どこまでも強くなれる存在だと、誰もが理解する。
だが、頭では理解しても、その事に納得出来ない者もいる。それは、この世界の絶対強者の一人。炎竜王ヴァイドだ。ヴァイドは真剣な表情でプロシーに言う。
「プロシーの潜在能力は認める。だが、我の方がプロシーより強いぞ! 竜王である我の方が、プロシーより強いに決まっている!」
「ヴァイド、我輩は別に、竜王より強いとは考えてはいないのだ。ただ、竜王の誰と戦っても負ける事はないのだ。我輩の命は、我輩だけのモノじゃないから、我輩は誰にも負けないのだ」
「ならばプロシー、我と勝負だ。お前が言う、気の力を炎竜王である我に見せよ!」
「ヴァイド、落ち着く。プロシーと戦ってはダメ。それに忘れた? 竜王は」
「スパール、竜王は竜王と戦ってはならない。が、竜と戦ってはダメとは言われてないぞ。それにだ、お前達も気になってるのではないか? 我ら竜王と、気を使う竜であるプロシー、どちらが強いのか? 更に言えば、今後プロシーと同じ力を持つ者達が現れる。ならば、プロシーと戦って、その力を把握する方が得策だと我は思うぞ。何より、我は、我より弱い者から力を授かりたくはない! 先の話を纏めて考えれば、プロシーが我ら竜王を戦力として数えているのは明白だ! 我は、力無き者には協力せん! どうする、プロシー! 我と戦う覚悟はあるか!」
今までのお調子者の様な雰囲気ではなく、竜王としての威厳を感じさせるヴァイドの問い。ヴァイドの言っている事は、的を射ていた。プロシーは、皆を守る戦力として、強大な力を持つ竜王を味方にしたかったのだ。だからこそプロシーは、自身の知る話を聞かせ、力を見せた。
だが、やはり竜王は一筋縄ではいかない。そう思ったプロシーは、鎮まり返り緊張感高まる中、ヴァイドの銀の瞳を、自身の銀の瞳で真っ直ぐ見て答える。
「分かったのだ。我輩はヴァイドと戦うのだ。ただ、お願いがあるのだ。我輩が勝ったら、皆を守る為、我輩に協力すると約束して欲しいのだ」
「良いぞ! 我に勝てれば、その望みを叶えてやろう! そうだな、我とプロシーの戦いは一週間後だ! それまでに、出来るだけ力を高める事だ! 言っておくがプロシー、我の力は凄まじいぞ!」
「そんな事は知ってるのだ。で、一週間後、どこで戦うのだ?」
「場所は我が用意しよう。一週間後の早朝、我の住む【フロンパルド】に来るが良い! そこで、我に力を見せよ!」
「了解なのだ」
会議室の皆が見守る中、気翠玉竜プロシーと炎竜王ヴァイドの戦いが決まった。ほとんどの者が、プロシーを心配する眼差しで見る中、純白の美しい長髪をなびかせるスパールが立ち上がり発言する。
「その戦い、私も立ち会う。ヴァイド、異論は認めない」
「妾もぞ」
「僕もさ」
「自分も」
スパールに続き、ヴィゼ、スライ、ガイードが立ち上がり、戦いに立ち会うと言う。訝しげに思うヴァイドが、スパール達を見て問う。
「お前達、どういうつもりだ?」
「別に。ただ、戦いを見るだけ。ヴァイドも言ってた。プロシーの力を見た方が良いって。それに、万一の時は、私が戦いを止める。プロシーは大事。失う訳にはいかない」
「ふん! 勝手にしろ! だが、止めに入る時は、相応の覚悟をしろ! 今回の我は本気だ!」
「ヴァイド、その時は妾も本気で行く。貴様の猪口才な炎など、妾が全て凍らせてくれる」
「そうそう。その時は僕の風で炎を押し潰すよ。僕の風は特別だからね」
「自分の鉄壁の守りは、ヴァイドの炎など通しはしない」
ヴァイドの言葉に、それぞれ、自分が上だと返答する竜王達。どうやら彼らは、プロシーを守る考えの様だ。
「揃いも揃って、バカ者共め! 我が勝つに決まっておると言うのに!」
「「「「バカはお前だ! この竜王の恥さらし!」」」」
「何だとぉおお⁉︎ 寛大な我だが、もう怒ったぞ! このバカ共め! 千年ぶりに、あの時の決着をここでつけてやるぞ!」
「望むところ。ヴァイドなんて瞬殺する」
「妾が永遠に凍らせてくれるわ」
「僕の風で全身を切り裂かれたい様だね」
「自分の大地の力で炎ごと圧し潰す」
一箇所に集まり、互いに睨み合い、一触即発の雰囲気の竜王達。そんな一方、我関せずという感じのプロシーは、竜王以外の皆にエメラルドトマトを配り、ユイに抱かれ嬉しそうに食べていた。その光景を先ほどからチラチラ見ていたヴァイドが、我慢できなくなり叫ぶ。
「おい、プロシー! 何を呑気に食べている! 元はと言えば、お前の所為だぞ!」
「? 何言ってるのだ、ヴァイド? 我輩はヴァイドが言っていた通り、力を蓄えてるところなのだ。これもある意味の鍛錬だから、邪魔しないで欲しいのだ」
そう言ったプロシーは、次々エメラルドトマトを具現化して、美味しそうに食す。その光景に我慢できなくなったヴァイド以外の竜王が、プロシーの前に瞬時に移動して「私も欲しい」「妾も」「僕も」「自分も」と、プロシーにエメラルドトマトを要求して、プロシーは「沢山食べると良いのだ」と明るく言って、大量のエメラルドトマトを渡した。
「美味しい。病みつきになる美味しさ」
「妾はもう、これ無しでは生きていけんぞ」
「いや〜何度食べても飽きないよね〜。あっ、プロシー。前に貰った種がもう直ぐ尽きそうだから、新しいのを貰っても良いかな?」
「自分も後少しで種が無くなりそうだ。補充をお願いしたい」
「了解なのだ。後で沢山渡すのだ」
エメラルドトマトにご満悦のスパール、ヴィゼ、スライ、ガイード。スライとガイードの話を聞いていた、スパールとヴィゼが怪訝そうに二人を見ていると、視線に気がついたスライが笑いながら告げる。
「いや〜実はね、プロシーと始めて会った時にさ、僕に食事何て必要ないって言ったら、エメラルドトマトが美味しいから食べてみろって言われて、食べてみたらもう凄く美味しくってさ〜。それで、毎日食べたいって言ったら、プロシーが僕の為に畑と種を作って置いて行ってくれたんだよね〜。お陰で毎日エメラルドトマトを食べる事が出来てたんだよ〜」
「自分もスライと一緒だ。今では、毎日の様にエメラルドトマトを食べている。エメラルドトマトは、至高の食べ物だ。間違いない」
二人の話に「え⁉︎ エメラルドトマトがあるなんて、聞いてないんですけど⁉︎」と、目線で尋ねるウィンダとシェール。「あっ、これ秘密にしてたんだったぁ〜」「思わず言ってしまったな」と、視線を理解し何でもない様に言った二人。きっとスライとガイードは、自分の分が減るのが嫌だったのだろう。
その後、二人の話を聞いたスパールとヴィゼを始めとして、各国代表の者達が、プロシーに毎日エメラルドトマトを食べたいと懇願して、プロシーは「了解なのだ!」と、エメラルドトマトを食べながら、元気に了承した。竜王四人をあっという間に虜にしたエメラルドトマト。結婚したければ相手の胃袋を掴むべし、とは良く言われるが、正にそんな感じの状態である。四人が必死にプロシーを守ろうとするのも、良く分かると言うものだ。もっとも、スパールとヴィゼは、それだけではないのだが。
和やかな会議室の雰囲気に、一人取り残されている赤髪の男。昼食にエメラルドトマト料理を食べた為、その美味しさを理解しているヴァイド。しかし、彼は先程、自身より弱い者の力は授かりたくないと言ってしまった。変にプライドが高いヴァイドは、意地でも自分の言った言葉は、撤回したりしないのである。
「ぐぬぬぬぬ」と、天井を見上げ内心で葛藤しているヴァイドを見かねて、プロシーが「ヴァイド、一緒に食べようなのだ!」と、ヴァイドの前に転移してエメラルドトマトを差し出した。内心では、嬉しかったヴァイドなのだが「ふん! 施しは受けん! 我は帰る!」と言って、転移の魔法陣で帰ってしまった。その行動を見て「う〜ん、ヴァイドは面倒な奴なのだ」と、思ったプロシーであった。
ヴァイドが帰った後、暫くエメラルドトマトを堪能した一同は、仕切り直してもう一度話し合いを開始した。
「話が中断になったが、今までの話を纏めると、今後やって来るであろう敵に向けて、我輩達は対策をしないといけないのだ。そこで、我輩に出来るのは、皆にエメラルドトマトを食べさせて、魔力と気力を底上げすること。それと、気を教える事なのだ。ただ、この二つを闇雲に与えると大変な事になると思うのだ」
「プロシー、どういう事?」
「ユイ、考えてみるのだ。気もエメラルドトマトも、個人に与える恩恵は凄いと思うのだ。それを、考え無しで皆に教えるとするだろう。すると、その利点に気づいて、色々と悪さをしようと考える人も出てくると思わないか?」
プロシーの言葉に、そんな事はない! と、言える者はいない。皆が確かにその通りだと思う。プロシーは尚も続ける。
「知恵があるという事は、様々な事を考えられるという事なのだ。だから、よ〜く考えてから行動しないと、手遅れになるのだ。それでだが、この件は各代表の五人に任せるのだ。全員に与えるのも、厳選するのも自由なのだ。ただし、五人の意見が一致する事が条件だから、よく話し会うのだぞ。我輩の話しは終わりなのだ!」
「あの〜プロシー様? なぜ、私達に任せるんですか?」
「ん? ヴィクトール、そんなの決まってるのだ。我輩は家族を守り、スパール達竜王は世界を守り、ヴィクトール達がそれぞれの人を守るからなのだ。互いに争いたいなら、それでも構わないが、どうせなら全ての国で協力した方が良いと思うのだ。どのみち、脅威が来るのは事実だから、全国共通の新たな制度でも作れば良いと、我輩は思っているのだ。まぁ、何を選ぶかはヴィクトール達次第なのだ」
プロシーの意見を聞いた、代表五人は顔を見合わせた。そして、それぞれ何かを感じ取った様に頷き合う。以前ならば、プロシーが言った事は絶対に通らなかっただろう。
しかし、今は状況も考え方も違う。今回のワイダール達の襲撃で、彼らは協力し、助け合う事の大事さを知った。そんな彼らだからこそ、全国で協力する道を選択する事が出来る。五人それぞれが、協力の道を選ぶと内心で決めている。
今後、各国の関係性、あり方は大きく変わるだろう。彼らが目指すのは、互いに歩み寄り、絆を深め助け合う新体制。恐らく、簡単には行かないだろうが、きっと、今よりより良いモノとなる。そう思わずにはいられない代表達であった。
そんな風に思っている代表達を見て、机の上で尻尾を左右に振り、非常に満足そうにしているプロシーは、思い出した様に告げる。
「そう言えば忘れていたが、各国の結界は我輩が貼り直すから、国にいる間は安心して暮らせると思うのだ。それと、一応相談事があれば聞くから、ログアーツの番号交換しようなのだ」
プロシーの言葉に「はい! ありがとうございます!」と返答した代表達。プロシーと代表達が番号交換しているのを、羨ましそうに見ていたスパール、ヴィゼを始め、スライとガイードとも番号交換をしたプロシーであった。
その後、各自で様々な話し合いをして、複数の約束を交わしたプロシー達は、解散してそれぞれの場所に帰って行ったのだった。




