表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/36

29 冥士との戦い

 時は、プロシーとワーバル達五人の冥士が対峙した時に遡る。全長約一キロ程の金の箱の中、”隔離戦闘空間”に閉じ込められた、オリハルコンの鎧を装備するワーバル達は、”剛気金人纏”で金の甲冑姿になっているプロシーに突撃する。


 空中を自在に旋回し、五人で連携しながらの高速肉弾戦。数で押せば何とかなる。という考えではなく、プロシーの力を図る為の戦法。凄まじい速度の休む暇を与えない連続連携攻撃は、間違いなく驚異の攻撃だ。他の者であったならば……。


 五人連携での強力な連続攻撃に、空中に浮遊するプロシーは特に逃げる事も無く、容易く全てを受け流す。プロシーの動きは洗練されたモノで、武道を極めた者の様な風格を感じさせる体捌きだ。ある程度、そんな攻防を繰り返していると、開戦から一度も攻撃をしていなかったプロシーが、攻勢に転じる。


 ほんの一瞬。本当に極わずかな時間に、プロシーは黄金の右拳で、五人全員の腹に強烈なボディーブローをかました。プロシーのあまりの速度に、反応できなかった五人は、強烈な右拳をもろにくらい「っ⁉︎」と、悶絶しながら五人別々の方向に、凄まじい速度で吹き飛ぶ。


 五人共、何とか空中で体勢を立て直したが、その瞬間にプロシーが目の前に現れ、また強烈な打撃を打ち込む。部下筆頭の冥士ワーバルには顔面に右ストレートを、火の冥士ワーザスの腹には左回し蹴りを、氷の冥士ワーゼスには右足で踵落としを、地の冥士ワージルには顔面に左フックを、風の冥士ワーギスには胸に右回し蹴りをかました。


 どれも強烈な一撃であり、ほぼ同時の出来事。先ほどより威力が高い攻撃を受けた五人は「っ⁉︎」と、再び悶絶しながら、狙い澄ました様に一箇所の金の壁に凄まじい速度で飛来し、バァーン! と、激しい衝突音を鳴らして、金の壁に激突した。


 「ぐぅ」と、うつ伏せで倒れながら苦痛の声を上げる五人の冥士に、プロシーはエメラルドに輝く衝撃波の球体”剛気爆裂波”を放つ。凄まじい速度で五人に飛来する破壊をもたらす衝撃波。生身に受ければ、間違いなくほとんどの者を跡形も消し去る一撃。


 衝突して爆発した様に鳴り響く轟音と、”隔離戦闘空間”を軋ませる様な衝撃波の波動、空間全体を覆う様なエメラルドの輝き。エメラルドの輝きが収まり、飲み込まれた五人は消えて無くなったかに見えたが、五人の前には灰色に輝く壁があった。


 灰色の壁が消えると、横一列で両手を前に出している五人の姿が見える。それを確認したプロシーは、上空から楽しげに言う。


「ワーバル、そろそろ本気を見せるのだ! 準備運動はもう終わりなのだ!」

「簡単に言ってくれるな、プロシー。貴様が相手でなければ、先程の攻撃でも十分強力なのだがな。悪いがもう少し、付き合って貰うぞ。こちらにも予定があるのでな。お前達、行くぞ!」

「「「「はっ!」」」」


 ワーバルの指示に、力強い了承の声が響くと、ワーバル達は消える。それを確認したプロシーは、特に動かずその場で止まる。消えたワーバル達は、プロシーの左右に二手に分かれて現れる。

 ワーバル達は、いつの間にか手に持っていた、長さ二メートル程の巨大な黒鎌の刀身に、灰色の気を纏わせ、凄まじい速度で何度も振り抜く。すると、大鎌から高速に飛来してくる三日月状の無数の飛ぶ斬撃。


 対するプロシーは、二本の黄金の剣を具現化して、両手で持つと、刀身にエメラルドの気を纏わせる。プロシーは超高速の二刀流の剣技で、向かってくる斬撃全てを切り裂き霧散させる。


 ワーバル達は即座にプロシーとの距離を詰め、灰色の気を纏わせた大鎌で斬りかかる。五方向から振り下ろされる漆黒の鋭い刃。プロシーは体を捻り反動をつけると、両手を左右に伸ばし、その場で駒の様に高速回転する。黄金の剣での回転斬りは、五人の大鎌を果物を切るかの様に、容易く切り裂き、細切れにすると、竜巻の様な凄まじい風圧で五人を吹き飛ばす。


 空中で体勢を立て直したワーバル達は、一斉にプロシー目掛けて魔法を放つ。雷、氷、風、火、岩、それぞれの塊が凄まじい速度で飛来する。五方向から来る攻撃に、プロシーは黄金の剣を消し、両拳にエメラルドの気を纏うと、五方向に正拳突きの様に拳を放つ。


 すると、プロシーの拳から、轟音と共にエメラルドの閃光が放たれる。特大の閃光は瞬く間にワーバル達と、攻撃を飲み込んだ。ワーバル達が放った攻撃は掻き消えたが、五人は灰色の壁で閃光を防御しており、傷一つつかない。


(ふむふむ。あの灰色の壁は、中々優秀そうな防御なのだ。どれだけ耐えるか実験開始なのだ!)

 ワーバル達との攻防で、好奇心の塊のプロシーの知識欲が大いに刺激され、相手からしたら大変迷惑で、恐ろしい実験が有無を言わせず開始される。


 抵抗されると面倒だと思ったプロシーは、”空間転移”でワーバル以外の四人に瞬時に近づき、ワーバルの後ろに強制転移させ、一箇所に纏めると、実験と言う名の怒涛の攻撃を開始する。


 プロシーは手始めに、右手に青白く輝き雷鳴を響かせる雷の槍、左手に紅蓮に燃え上がる炎の槍を出現させ、ワーバルの灰色の防御壁に向け、高速に投げる。切っ先の鋭い形状の槍は、風を切り裂きながら、一直線に目標に飛来する。プロシーが放った攻撃は、直撃すれば半径一キロ範囲など簡単に吹き飛ばす様な凄まじい威力の槍だ。


 しかし、二本の槍は灰色の壁に触れると、溶かされる様に光となって霧散する。それを見て、面白いと思い、目をキラキラさせるプロシーは、氷、風、岩、銅、銀、金など、次から次へと、あらゆる物を具現化して、投げつけて攻撃する。


 その全ての攻撃が、灰色の防御壁に触れると、溶かされる様に消えて無くなる。


(おお〜良いのだ! あの防御はかなり優秀なのだ! なら、もっと威力を上げるのだ!)


 未知の防御法に、だんだん楽しくなってきたプロシーは、更にギアを上げる。プロシーは黄金の両腕を前に出して、特大の雷、風、炎を合わせた閃光を間髪入れず連続で放つ。その一撃一撃が、間違いなく即死のダメージを与えるに十分な威力を誇る攻撃。


 あまりの範囲の大きさの為か、それ共威力が高すぎたのか分からないが、ワーバル達は全員で協力して防御壁を巨大化させた。五人が力を合わせたのが、功を奏した様で、無事に閃光を防いだワーバル達。


 しかし、そんな事を気にせず、威力を上げて絶え間なく閃光を放ち続けるプロシー。徐々に際限なく上がっていく凄まじい威力に、遂に灰色の壁は耐え切れなくなり、紅蓮の炎に青白い雷を纏わせる、炎風雷閃光は轟音を鳴らしながらワーバル達を飲み込んだ。


 凄まじい破壊の一撃を受けた、五人のオリハルコン装備は一瞬で破壊され、全員が高温で真っ黒に焼かれた。前方に力なく倒れてピクリとも動かないワーバル達。プロシーはその様子を、上空から銀の瞳でジーーと、見つめている。


 ワーバル達が倒れて少しすると、黒焦げになった身体が、灰色に輝き出す。眩い輝きと共に、身体から徐々に人骨と思われる骸骨が宙に浮かぶ。人骨が完全に身体から離れると、黒焦げになっていた身体は、灰となって霧散した。


 骸骨の目の部分に、灰色の淡い輝きが灯ると。


「先程の一撃、凄まじかったぞ、プロシー。だが、まだ勝ったと思うなよ。勝負はここからだ! はぁぁぁあああああ!」

「「「「はぁぁぁぁぁああああ!」」」」


 叫ぶ五体の骸骨。同時に、五体の骸骨の体が徐々に巨大化して変形していく。プロシーはその場から”空間転移”で瞬時に距離を取り、その様子を観察した。ワーバル達は二十秒程すると、十メートルを超える巨大な骸骨になった。更にその姿は最初の人骨ではなく、白い骨が変形して堅牢な鎧の様になっていた。さながら骨騎士という様な状態になったワーバルが、プロシーを見下ろして言う。


「プロシー、我ら冥士は骨を自在に操る。そして、我らの骨の強度は自身の練気により、上限なく強固になる! これこそが我らの冥士の真の姿! さぁプロシー、第二ラウンドの開始だ!」


 ワーバルの叫びと同時に、ワーバル達五人は消える。真の姿となった五人は、先程までとは、比べ物にならないほど速い。瞬時にプロシーに近づいた五人は、右手の骨をランスの様に尖らせ、灰色の気を纏わせると、五人同時に鋭い突きを放つ。


 五方向から迫る、骨ランスでの超高速の突き。風を切り裂きながら刻一刻と迫る突きに、プロシーは”空間転移”でその場から退避して、ワーバル達から距離を取る。しかし、回避したはずのプロシーの真後ろに、灰色の雷を全身に纏ったワーバルが瞬時に現れ。


「逃がさんぞ、プロシー!」


 叫びと共に灰色の雷を纏った骨ランスで、黄金の背中目掛けて鋭い突き放つ。瞬時に反応したプロシーは、即座に二メートル程の黄金の剣を具現化し、両手で構え刀身にエメラルドの気を纏わせると、高速で右回転して背中に迫る骨ランスに一閃する。


 ギィィィィィィィイーーーーーーン!


 凄まじい金属音が空間に響き、灰色の輝きとエメラルドの輝き、全てを吹き飛ばす大型台風の様な風圧が全方位を襲う。力と力のぶつかり合い。拮抗する力は、いつまでも膠着(こうちゃく)状態を続かせるかに見えたが。


 パリィン! と、金属が折れる音が響き、プロシーの黄金の剣が砕かれた。ワーバルはその勢いのまま、プロシーの黄金の腹に鋭い突きを放つ。凄まじい威力の突きを受けたプロシーは、音速以上の速さで吹き飛ばされ、金の地面に叩きつけられ轟音を鳴らす。


 その刹那、地面に仰向けに倒れるプロシーを囲む様に、瞬時に石の壁がそびえ立つ。その中に上空から大量の水が入れられ、ある程度溜まると冷気の青い閃光が放たれ、プロシーごと大量の水を瞬時に凍らせる。


 一瞬で氷の牢獄に囚われた金の甲冑姿のプロシー。そこに、先程のお返しとばかりに、ワーバル、ワーザス、ワーギスが三人横に並んで、灰色の雷を纏った豪炎の閃光を放つ。特大の閃光はあっという間にプロシーを飲み込んだ。


 轟音を鳴らしながら降り注いだ閃光が終わり、蒸気の様な煙が霧散すると、そこにプロシーの姿はなかった。それを確認したワーバルは周囲を警戒して告げる。


「プロシー、生きているのは分かっているぞ! この場で貴様が死ねば、魂は私の物となるからな! さぁ隠れてないで出て来い!」

「ふむふむ。そういう仕組みなのか。勉強になったのだ」


 プロシーは突如ワーバル達の前に現れると、傷一つついていない黄金鎧姿で、顎に手を当てて告げた。


「プロシー、どうやってあの攻撃を躱した? 確かに貴様はさっきまであの場にいたはずだ」

「内緒なのだ。と、言いたいところだが、そっちが答えるなら教えても良いのだ。ワーバル、お前達冥界の冥士とは何なのだ? 何故、我輩に挑んで来るのだ?」

「……何故、か。プロシー、そんな事は竜である貴様も分かっているはずだ。我ら創造された者は皆、必ず自我と目的を持って生まれる。我らの行動は全て、創造主の望みを叶える為に必要な行動だ。貴様とて同じだろう?」

「創造主? ……天の祈願者の事か? ……ワーバル、我輩は別に目的はないのだ。強いて言うなら、自由行動が我輩の目的なのだ」


 久しぶりに天の祈願者の事を思い出し考えるプロシー。よくよく思えば、あんな異常な存在に出会った事は未だにないとプロシーは思う。以前より桁違いに成長した今となっても、勝てる気が全くしない存在。皆から凄いと言われるプロシーの、価値観を作った存在。あの空間での出来事を思い出し「天の祈願者は元気にしてるのだろうか?」と、そんな事を考えるプロシーに、返答を聞いて驚くワーバルは言う。


「⁉︎ ……プロシー、貴様はつくづく異常な存在の様だな。自由行動が目的とは……少しだけ羨ましく思うぞ。さぁ、私は質問に答えた。次はプロシーの番だ」

「分かってるのだ。ワーバル、お前達が攻撃していたのは、我輩であって我輩じゃないのだ」

「? どういう事だ?」

「ワーバルが我輩だと判断したのは、見た目と気が我輩のモノだったからだろう? 理屈は簡単なのだ。あの姿に我輩の気を残して、我輩は転移して気配と姿を消していただけなのだ。つまり、ワーバル達が攻撃したのは、我輩の気が宿った入れ物だったのだ」


 プロシーの説明に、理解が追いつかないワーバル達は頭の中で考える。プロシーの言っている事が分からないのではなく、そんな事が可能なのかと方法を考えているのだ。しばらく考え、ある事を思い出したワーバルは、プロシーに問う。


「プロシー、その技術は、オリハルコンの性質を真似たのか?」

「その通りなのだ。オリハルコンは常に活性化している鉱石。言い換えれば、気を常時保つ事が出来る鉱石なのだ。我輩はただ、その性質を真似ただけの簡単な事なのだ」


 プロシーは大した事がない様に肯定する。しかし、対象的に、ワーバル達はその言葉に内心で驚愕している。性質を真似ただけ。言葉で言えば簡単に聞こえるが、そんな事を出来る者が、はたしてプロシー以外に存在するのかと、思案するワーバル。


 気を離れた場にそのまま保つとは、言葉で言えば容易いが、実際に実行するには困難を極める事なのだ。それも、衝撃化した気では無く、本来の自身の気。その難易度は更に上がり、もはや不可能に思える技術。


 考えても到底理解できないワーバルは、思考するのを止める。ただ、分かっているのは、目の前に存在するのは、そんな事が容易く出来てしまう異常な存在と言うだけ。その事に、冥界の冥士にして、ワイダールの部下筆頭、ワーバルは楽しげに笑う。


 ワーバルの様子に訝しげたプロシーは問う。


「ワーバル、どうしたのだ?」

「いやなに、大した事ではない。ただ、嬉しくな。底が全く見えない貴様と戦える事が、戦士として何よりも楽しいだけだ。さて、話はこの辺にして、第三ラウンドだ。お前達、行くぞ!」

「「「「はっ!」」」」


 真剣さの中に、どこか戦いを楽しむ気持ちを持つワーバル。部下達も言葉には出さないが、戦士として同じ気持ちを抱く。ただ、強い者と戦う。その事が何よりも楽しいと感じる冥士達は、プロシーに瞬時に迫る。


(戦いが楽しいか。……少しだけ分かる気がするのだ)


 ワーバル達の攻撃が迫る中、そんな事を思ったプロシーは、ギアを上げてその心意気に答える。プロシーは黄金の両手両足に、衝撃化したエメラルドの気を纏い、今までとは桁違いの速度で動く。


 プロシーは五人それぞれに、一瞬の間に何十発もの打撃の嵐を浴びせる。プロシーの一撃一撃は、全てを砕き壊す様な正に破壊の化身の様な攻撃。


 あまりの速度に反応ができなかったワーバル達は、全ての攻撃を受け、全身の骨を軽々砕かれ、音速をはるかに越す速度で吹き飛ぶ。


 ドォォォォオオーーン!


 そんな轟音を鳴らし、金の壁に激突したワーバル達。ほんの一瞬の出来事。たった少しの間に、五人全員がほとんどの骨を砕かれ、全員が力なく前のめりに倒れ戦闘不能状態に陥いる。


(ぐっ! ……凄まじい攻撃だった。動きが全く掴めないとは。プロシー、凄まじい力を持った竜か。流石は特別な存在だ。だが、まだだ! まだ終われん!)


 ワーバルはそう思い、残った力を振り絞り、自身の再生に力を注いでいると、轟音を響かせながら、死をもたらす特大のエメラルドの閃光が、光速の速さで飛来する。


 プロシーの凄まじい拳速により放たれた五つの閃光。それは、倒れて瀕死の状態の五人の冥士に、止めをさす為の一撃。エメラルドの閃光は即座にワーバル達を飲み込む。防御など許さない、間違いなく即死の攻撃……のはずだった。


 ワーバルの部下達の体は消えたが、ワーバルだけは激しい灰色の輝きを放ち、プロシーの攻撃に耐えたのだ。驚く事はそれだけではない。間違いなく先程より、ワーバルの力が急激に上がっている。


 プロシーは上空から、輝き続けるワーバルを観察する。少しすると、ワーバルの体がバキバキと音を鳴らし、更に巨大に変化して行く。約十秒程経過すると、灰色の輝きが収まった。そこに居たのは、体長二十メートル程の骨騎士姿のワーバルだ。先程と違うのは、大きさだけではない。腕が片方五本に増えており、全体が堅牢そうな角張った印象に変わった。


 プロシーがマジマジと観察していると、ワーバルが口を開く。


「プロシー、先程は見事な一撃だったぞ。だが、私はまだ生きている。さぁ、最終ラウンドだ! 貴様に我ら冥士の底力を見せよう! 行くぞ!」


 叫んだ後、ワーバルは瞬時に距離を詰め、灰色の気を纏った十本の拳で、凄まじいラッシュを放つ。対するプロシーも、拳にエメラルドの気を纏わせ、真っ向から迎え撃つ。ワーバルが腕の数を有効に使った連打、プロシーが速度での回転数を上げた連打。


 一瞬の内に何十発もの拳を放ち合う両者。互いの拳と拳を衝突させ、その度に轟音と衝撃波が発生し、空間内を灰色とエメラルドの光が覆う。打ち合う度に、空間内に花火の様な綺麗な光景が広がる。


 約一分間で、千発以上の拳打のやり取りを交わした時、それまで互角だった均衡が崩れる。押し出したのは「はぁぁああああ!」と叫ぶながら灰色の雷を纏い出したワーバル。徐々にワーバルの回転数が上昇して行き、プロシーが徐々に後退させられ押される。


(ここまで歯ごたえがある戦いは、雷虎以来なのだ。……良し! 我輩も全力で行くのだ!)


 幾えもの拳打を交わしながら、ワーバルを強敵と認めたプロシーは、”空間転移”で瞬時に距離を取る。離れた位置に移動したプロシー目掛けて、ワーバルは即座に突撃するが、突如吹き出した凄まじい暴風に吹き飛ばされた。


 ワーバルが空中で体勢を立て直し見たのは、体長二十メートルを優に超える巨大な金竜だ。ワーバルを吹き飛ばした暴風は、金竜の背にある巨大な黄金の翼が羽ばたいた時の風圧である。


 ただそこにいるだけの巨大な金竜。未だに特に何もしていないが、その姿が現れただけで、空間全体に凄まじいプレッシャーを放つ圧倒的存在感。ただ羽ばたくだけで、全てを吹き飛ばしてしまう様な暴風が吹き荒れる。


(これが竜。プロシーの本当の力か。なんという凄まじい練気。ただ目の前にいるだけで死を予感させられる。本能が今すぐに逃げろと警報を鳴らす。……間違いなく私に勝ち目はない。だが、先に逝ったあの者達の為、目的の為にもやらねばならない! 行くぞ! これが、私の最後の戦いだ!)


 自身を鼓舞したワーバルは、灰色の雷を全身に纏い、吹き荒れる暴風の中、一直線に流星の如く突き進む。何とか黄金の竜に近づいたワーバルは、十本の腕を一つに合わせ、細く長い大きなランスに変化させる。灰色の雷を纏わせた巨大な骨ランスで、黄金の竜を貫こうとしたワーバル。


 しかし、ワーバルが近づいた瞬間、神速の速度の黄金の右爪が真横から一閃される。振り抜かれし、あらゆるモノを切り裂きそうな鋭さの金の爪は、果物でも切るかの様に、容易く骨のランスを切り裂き、ワーバルの下半身を全て消し飛ばす。


 黄金の竜の腕が振り抜かれると、凄まじい風圧が空間全体に吹き荒れ、ワーバルは「ぐぅああああああああああ!」と、苦痛の声を上げながら、光速を超える速度で吹き飛ばされる。ワーバルはあまりの風圧で体勢を立て直す事もできず。


 ドォォォォォォォオオオオオーン!


 と、凄まじい轟音を響かせながら、黄金の壁に衝突した。たった一撃で、戦闘不能に近い状態に追い込まれたワーバルは、空中に浮きながら、全力で再生に力を注ぐ。徐々に骨を再生させるワーバル。


 だが、そんなワーバルに、死を予感させる巨大な三本の金の刃が暴風と共に飛来する。黄金の竜が、左腕を真上から振り下ろし放った”剛気金爪”。放たれし黄金の三日月状の刃に、ワーバルは回復を諦めて、ありったけの力で、巨大な骨の壁を前方に作る。


 更に骨の壁に灰色の気を纏わせ、今可能な最大の防御を築き上げたワーバル。これなら何とか耐えらるはず。そう思ったワーバル。


 けれど、黄金の竜となったプロシーの一撃は、生半可なモノではなかった。ワーバル頼みの全力の防御壁を、紙を切るかの様に、容易く切り裂いた三本の金の刃は、その勢い止まる事なく、ワーバルを切り刻んだ。


 神速で飛来する攻撃を、回避する事などできなかったワーバルは、頭と胴体の一部が残る状態となった。それでも、最後の力を振り絞り、急いで回復しようとするワーバル。そんなワーバルに、止めの一撃が、黄金の竜の口から放たれる。


 黄金の竜の顎が大きく開き放たれた、超特大のエメラルドの閃光。”隔離戦闘空間”全方位に逃げ場なく飛来する破壊の一撃。どんな防御も逃げる事も許さない様な、神速の一撃を見たワーバルは回復を止める。


(『蓄積師』発動。これで私の役目も、命も終わりだな。……凄まじい力を宿した、竜のプロシーか。……これ程の強大な力で、竜王でないのだから信じがたいな。竜王とはどれ程の力を宿した存在なのか。……結局、プロシー相手には、私は全く歯が立たなかったな。だが、戦士として、圧倒的強者と戦えた事は誇りに思う。……我が主人、ワイダール様。後の事はお願いします)


 ワーバルがそう思ったのと同時に、衝撃波の閃光はワーバルを呑み込んだ。プロシーの閃光は金の壁に轟音と共に衝突して、少し経つと霧散していった。プロシーのエメラルドの閃光を受けたワーバルは跡形も無く消し飛んでいた。


 それを確認したプロシーは”剛気金竜纏”と『隔離戦闘空間』を解除して考える。


(ワーバル、冥界の冥士か。中々強い者達だったのだ。色々有益な情報を得れたのだ。おかげで我輩の気にも、新たな可能性が出来たのだ。さて、ユイ達に合流するのだ)


 プロシーは考えを纏めると、ログアーツで位置情報を調べ、”空間転移”でユイ達の元へ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ