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23 コロシアム本戦1

 

 ユイとゼダが向かい合って対峙していると。


「では、第一回戦、ユイさんVSジータさんの勝負を開始したいと思います! 両者準備は良いですね!」

「ええ!」

「ああ!」


 返事と共に武器を構える両者。ユイは黒いオーバーコートを纏い黒い剣を構え、ジータは全身黒い鎧姿で、長さ二メートル程の黒い杖を構えた。杖の先端近くには黒い宝玉の様な物が付いている。


「両者問題ない様ですので、三カウントで開始します! 三、二、一、fight!」

「『大雷装纏』! 『雷槍』!」


 先手必勝の考えのジータは、全身に大量の青白い雷を纏わせ、肉体強化をすると、猛スピードでユイを中心として、左に旋回し始め、黒い杖から雷の槍を無数に放った。


 高速で旋回しながら放たれた無数の雷の槍は、ユイの逃げ場を無くす様に全方位から飛来した。対するユイは”剛気纏”を使うと、衝撃化した青く輝く気を、漆黒の剣に纏わせ、超高速の剣技で容易く無数の雷の槍を切り裂き霧散させた。


 ユイのあまりの速度に驚く、対戦相手のジータと会場中の人々。ほとんどの者が、ユイの動きが全く見えず、何をしたのかも分からず驚愕の顔をしている。


(くっ! 何て速度だ! ありゃ、近づかせたら、俺の終わりだ!)


 そう考えたジータは、旋回戦法から、距離を取る戦法に変え、『飛翔』の魔法を使い上空に飛ぶと、上空からユイに黒い杖を向け。


「『雷砲』!」


 雷上級魔法『雷砲』を放った。『雷砲』は、雷の閃光を放つ魔法で、青白い雷の塊が、猛スピードで一直戦にユイに襲い掛かる。ゼダの放った閃光は、瞬時にユイの眼前へ迫ったが、直撃する寸前、ユイの姿が消えた。


 だが、ユイの姿が消えた事を知るのは、”気配感知”を使っているプロシー、ロンロ、クリス、町の者達、何とか動きを把握出来た竜王の加護持ちくらいだ。他の者は、閃光の威力で舞い上がった土埃を見て「あの可愛い子終わったな」「ジータさんの勝ちね」など、騒ついている。


 それは、ジータも同様で。


「ふぅ〜、やりすぎちまったか?」

「何を?」

「⁉︎ 『ズドン!』ぐぅあああああああ『ドォォォオオオオオン‼︎』」


 突如、上空に居たゼダの背後に現れたユイは、ゼダが振り向いた瞬間、強烈な右ストレートを、ゼダの腹に食らわせた。強烈な拳打を受けたゼダは、くの字に折れ曲がりながら、猛スピードで白い台に落下して行き、台に衝突すると、凄まじいクレーターを作り、轟音を響かせ、大量の土煙を上げた。


「う〜ん。やりすぎたかな? まぁ、ヴィクトールさんの許可は取ったから、いっか」


 上空から下の状況を見たユイは、呑気そうな感じに言った。一瞬の出来事で、ほとんどの者が唖然とする中、実況席のプロシーがマイクを持ち。


「ユイ、加減し過ぎなのだ! もうちょっと力を入れても、死なないから大丈夫なのだ!」

「そう? 分かったわ、プロシー。次からはもうちょっと、力を使うわ」


 二人の何ともない様な会話を聞いた、会場のほとんどの者が、また目を大きく開けて驚く。信じられない速度で動いていたのに、本気ではなかった事実に。


 そして、会場にいる者達はプロシーの言葉を思い出す。「加護が全ての世界が終わり、自分の家族はここにいる者達より強い」という言葉を。正に、今この瞬間、それがハッタリではなく、真実だと証明された。


 もはや、誰もが加護無しとバカにする事はできないだろう。何故なら、ジータは普通の加護持ちの中では、最強クラスの実力者だからだ。それは、世界の人々が周知する事で、そんなジータを、容易く倒せる力を持った者達に、喧嘩を売るバカは居ないというものだ。


 ユイは見事に、プロシーの目的を果たしたと言って良い、素晴らしい試合をした。また一つ、プロシーが関わった事で、この世界の常識が崩壊した。


 しばし、会場が静寂に包まれていると、上空にいるユイが、実況担当のエリザを見て。


「あの〜勝負はついたと思うんですけど」

「え? あ、は、はい! ジータさんが戦闘不能になりましたので、第一試合勝者は、ユイさんです! 会場の皆さん! 先ほどのユイさんの動きが、見えましたでしょうか! 可憐な猫美少女ユイさんの見かけからは、信じられない速度とその力! これがプロシー様のおっしゃった、加護ではない新たな力なのでしょうか! 仮にそうだとしますと、他の二名、ロンロさんとクリスさんの試合も大いに注目です! では、係りの皆さん! 第二試合の準備をお願いします!」


 エリザの言葉と共に、係り員は準備に動き出した。


「では、準備の間、実況席にいるプロシー様に、真相を聞いてみたいと思います! あれ? プロシー様は?」

「エリザおねえちゃん! プロちゃんなら、ユイおねえちゃんのところなの!」

「⁉︎ い、いつの間に。……ね、ねぇ貴方も、ユイさんと同じ力が使えるの?」

「うん! リムもつかえるし、マチのみんなも、つかえるよ!」


 エリザに尋ねられたリザの膝の上に座っているリムは、可愛らしい笑顔で元気に答えた。その言葉を聞いた会場の人々は「あんな小さい可愛らしい子まで」「恐るべし、プロシー様」などなど、大いに騒ついた。


「お嬢ちゃん、答えてくれてありがとうね! では、次にお母さんにお尋ねします! ズバリ、プロシー様から授かった力の正体とは、何ですか!」

「それはですね」

「それは?」

「ひ・み・つ・です」


 大人の色気を漂わせた、栗色長髪のリス人美女、リザのウインクしながらの言葉によって、男達のハートはズキュン! と、撃ち抜かれ、精神は暴走モードに移った様で、様々な席から奇声が聞こえてきた。同性であるはずの女性達も、何故か頬を赤めている。


 そんな中、実況魂故か、いち早く立ち直ったエリザが。


「それは何故ですか?」

「秘密なモノは秘密なのだ! 詮索は危険を極めるが、エリザはそれでも聞きたいのか?」

「⁉︎ い、いいえ! 結構です!」


 リザへの質問を、”空間転移”で机の上に瞬間移動してきたプロシーが答え、危険に踏み込む覚悟があるのかと尋ねると、エリザは首を盛大に横に振りながら遠慮した。


 別に気の事を教えても、何ら問題ないのだが、プロシー達は意図して隠している。不思議な力だと各国の人々に思わせ、事実を知らせなければ、不用意な行動を制限出来るだろうと、考えているからだ。恐らく、今後危険はないだろうとプロシー達も思うのだが、念には念を入れた行動なのである。


 それから、リングの整備は終わり、次々と試合が進んで行き、ロンロの出番、第五試合になった。ロンロはユイ達から応援されながら、リングの上に向かった。


 ロンロもユイと同じ、黒いオーバーコートを纏い、右手には、武器の黒の薙刀を持っている。ロンロが移動し終わると、既に対戦相手の全身白スーツを着た男が、手ぶらで立っていた。


 ロンロがリングに来た事を確認した白スーツ男、ゾルシュはロンロの全身を見てニヤッと笑うと。


「これはこれは、凄まじい巨乳で美人さんだ。よければ、俺と付き合いませんか?」

「悪いけど、私には既に、愛している存在がいるから、遠慮するよ」

「つれないなぁ。でも、そこがまたそそるぅ。そうだ! 俺が貴方に勝ったら、俺と付き合ってくれますか?」

「付き合わないし、私は負けないよ。絶対に優勝しないといけないからね」

「まぁ、良いです。話は試合が終わった後に、またしましょうか」


 ゾルシュは余裕そうに笑いながら告げた。ロンロはその様子にも、特に気にした様子がなく、自然体だ。


 二人に確認を取ったエリザが。


「では、第五試合、ロンロさんVSゾルシュさんの試合を開始したいと思います! 三、二、一、fight!」


 エリザの合図と共に、ロンロの足元に白い魔法陣が浮かんだ。その魔法陣から、おびただしい数の鎖が出現し、あっという間に、ロンロの体を蛇が巻きつく様に、鎖がグルグル巻きつき、ロンロは十字架で磔にされた様な状態になった。


 それを見たゾルシュが高笑いしながら。


「はっはっはっ! どうですかロンロさん! これが俺の異能『鎖操師』の力です! 俺は自在に伸縮自在の鎖を具現化する事が出来る! 更に、魔法陣をあらかじめ仕掛けておけば、こんな応用が出来るんですよ! 如何に貴方方が早く動け様とも、捕まえてしまえば無意味! おっと、卑怯とは言わないで下さいよ! これも、ルールで正当化されてますからね! さぁどうします! 私に降参しますか?」

「いや、降参はしないよ。それに、魔法陣が足元にある事は、最初から知ってたしね」


 普通に考えれば敗戦濃厚の中、ロンロは平然と告げた。それを聞いたゾルシュは、戯言と嘲笑うかの様な表情で。


「ふふふ、負け惜しみですか? そんな状態の貴方に何ができるんですか?」

「そうだね。私に出来るのは、君を倒す事かな。それに私は、町の皆の代表で出ているからね。私達の力がどれぐらいか見せる必要があったんだよ。むん! 『パリィン!』どうだい? これで、私の言う事は信じてもらえたかな?」


 ”剛気纏”状態になったロンロが、力を入れると、おびただしい量の鎖は、全て薄いガラスの様に簡単に砕けちった。はたまた唖然とする、会場中の人々と、驚愕の表情をしているゾルシュ。


 そんなゾルシュに、ロンロは微笑みながら。


「じゃあ、こっちから行っても良いかい?」

「⁉︎ くっ、くぅそそおおおおお‼︎」


 立場が反転したゾルシュは、叫ぶながら両手をロンロに向け、大量の鎖を高速に打ち出した。無数に迫る鎖に対し、ロンロは薙刀を両手で持ち、体を右に捻り構えると、勢い良く真横に振り抜き、一閃した。


 その一撃は、気を纏わせた訳でも、技でもない、純粋な力での一刀。超高速で放たれたその一撃は、凄まじい衝撃波となり、前方に強烈な暴風を巻き起こした。


 ロンロに向かっていた無数の鎖は、暴風により全て弾き返され、ゾルシュに向かう。ゾルシュは衝突寸前のところで、何とか鎖を消して、直撃を避けた。


 冷や汗を大量に流し、「はぁはぁはぁ」と呼吸を荒げているゾルシュに、ロンロは。


「君も加護持ちなんだから『雷装纏』を使えるんじゃないのかい? まぁ、使わないのなら、それでも良いけどね」

「っ! バカにしやがって! 望み通り使ってやるよ! 『雷装纏』! くらぇええええ‼︎」


 ゾルシュは雷を纏い肉体強化をすると、大量の鎖を右手に具現化し、鞭の様にロンロに攻撃した。


 それを見たロンロは、特に焦った様子がなく、軽々攻撃を躱しながら告げる。


「いや、別に君をバカにした訳じゃないんだよ。コロシアムだから、相手の全力を見たかっただけなんだよ。傷つけたのなら悪かったね」

「その余裕が! バカにしてるって言うんだよぉぉぉおお‼︎」

「それを言うなら、最初の君だって同じだったけど?」

「うるさぁぁぁぁああああい‼︎」


 ロンロに正論を返されたゾルシュは、怒りで顔を真っ赤にして激昂した。怒る狂うゾルシュの鎖の鞭の様な攻撃を、素早く動き華麗に躱すロンロは「やれやれ、そろそろ終わらせようか」と内心で思うと、ギアを上げる。


 ロンロはゾルシュの視界から消えると、瞬時にゾルシュの真横に現れ、モデルの様に長く綺麗な白い足で、高速の左回し蹴りをゾルシュの腹に叩き込んだ。


 強烈な一撃を受けたゾルシュは、「っ!」と、悶絶しながらくの字になり、凄まじい速度で吹き飛んで行くと、リング外側の結界にバァーン! と、衝突音を鳴らしながら激突して、力なく下にある水池に落ちて行った。


 はたまた一瞬の出来事で、理解が追いつかない会場の人々は呆然とした。そんな中、ロンロが係員に。


「え〜と、早く彼を助けてあげた方が良いと思うけど?」

「「「あ⁉︎」」」


 ロンロに言われた係員は、急いでゾルシュを救助に向かった。その言葉で、ハッ! と、我に返ったエリザがマイクを持ち。


「な、何と言う事でしょう! ユイさんと同じく、ロンロさんの動きも、早すぎて全く見えません! どうやら、プロシー様から授かった力を持つ、家族の皆さんは、皆さんが凄まじい強者の様です! 第五試合は、銀髪クール系美人、ロンロさんの見事な場外勝利でした! プロシー様、ロンロさんに何か一言ありますか?」

「あるのだ! ロンロ、良い回し蹴りだったが、捻りの角度が少し甘かったのだ! そこを修正すれば、もっと威力が上がるのだ!」

「了解だよ、師匠! 次は気をつけるよ」


 プロシーのアドバイスに、笑顔で返答したロンロ。それを聞いた会場の者達は、決まり手が回し蹴りだと知り、尚、威力を追求するのかと戦慄した表情で、プロシーとロンロを見ていた。


 試合は更に進み、クリスの出番の第七試合。ユイ達に声援を受けながら、リングに上がったクリス。クリスも、ユイ達と同様、黒いオーバーコートを纏い、手には黒い”風銃チャージライフル”を持っている。


 クリスがリングで待っていると、対戦相手の森人のエルフ、地竜魔法団隊長ハーリンが移動して来た。ハーリンはやはり、緑を主にした民族衣装の様な格好で、美形のイケメンである。


 ハーリンはクリスを見ると、どこか優しそうな瞳で。


「ゼルシュ様のお嬢様が相手か。クリスさんと言ったね。もし、【アーオムル】に来る事があれば、私の元に来てくれないか。君の父上の形見を預かってるんだ」

「⁉︎ ……そうなんですか。ハーリンさんでしたね。その際は必ずお伺いします。ハーリンさん、今日はよろしくお願いします」

「ああ、よろしく。ゼルシュ様のお子さんだけあって、礼儀正しいね。だが、私も責任ある立場だからね、ただでは負けないよ」

「はい。私も負けれない理由があるので、勝たせてもらいます」


 二人が和やかな話を終わらせた後、実況のエリザが。


「では、第七試合、クリスさんVSハーリンさんの試合を開始したいと思います! 三、二、一、fight!」


「『砂塵縛鎖』! 『砂針千弾』! 『岩槍』! 『大岩弾』! ……」


 ハーリンは開始と同時に、約三十種類の魔法を放った。森人エルフは、簡単に言えば魔法の天才達だ。ほとんどの者が全属性の魔法適性が高く、術式を理解する事にも長けている為、紋章魔法を必要としない種族だ。


 そんな魔法の天才の攻撃に対し、異能『狙撃者』を持つ、天性の狙撃者クリスは、”剛気纏”になり、”剛天駆”で上空後ろに後退すると、風銃チャージライフルを地面に向けて構え、大量の気と魔力を流し、そのまま引き金を引いた。


 すると、銃口から凄まじい爆風が巨大な固まりとなって放たれ、ハーリンが放った様々な魔法の全てを、大型台風の猛威の如く、跡形も無く吹き飛ばした。


 ハーリンは凄まじい暴風に、腕を顔の前に出し、顔を塞いで屈むと、吹き飛ばされながらも、何とかリングアウトを免れた。


 リングギリギリで地に蹲るハーリンに、複雑な表情のクリスは。


「ハーリンさん、負けを認めて貰えますか。私は父様の知り合いに、なるべく攻撃はしたくありません」

「……そうだね。私の魔法は君の銃の前では無力の様だ。全く、その銃は、とんでもない代物だ。エリザさん、私は棄権するよ」


 立ち上がったハーリンは、やれやれといった感じでそう告げた。


「分かりました! ハーリンさんの棄権を承認して、クリスさんの勝ちとします! 皆さん見ましたか! ハーリンさんの前方全てを埋め尽くす様な、数多の魔法を一撃で吹き飛ばしたあの銃の威力を! どうやら、プロシー様の家族の方達の使う武器も、ただの武器ではない様です! プロシー様、クリスさんに一言ありますか?」

「う〜ん、戦いの感想は無いが、クリス! やっぱり、”風銃チャージライフル”は強力すぎるのだ! そのままだと加減が難しいだろうから、グレードダウンした銃を作るか?」

「プロシーちゃん、大丈夫ですよ! いざとなれば、殴打武器として使いますから!」

「そうか! その手があったな! じゃあ、頑張るのだ!」

「了解です!」


 楽しそうに、物騒な会話を交わすプロシーとクリスであった。二人の武器話は、大抵物騒極まりないのである。


 プロシーの家族、ユイ、ロンロ、クリスの第一試合が終わり、会場中のほとんどの者が、その圧倒的な力に驚愕する中、試合は次ぎへと進んで行くのだった。

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