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22 竜祭典開催

 竜祭典開催当日の早朝、店がある広場の遥か上空で、プロシー、ユイ、ロンロ、クリスの四人は鍛錬をしていた。四人だけなのは、コロシアム本戦に向けての特別鍛錬だからだ。”剛気金人纏”を使い、金の鎧姿となったプロシーと、武器を構えた三人の模擬戦は一時間程で終了した。


 地上に降りて、”剛気金人纏”を解除したプロシーは、鍛錬で火照った肌に汗を滴らせる三人を見て。


「ユイ、ロンロ、クリス、お疲れなのだ! 後は本番なのだ! 三人なら大丈夫だと思うが、いざとなれば、アレの使用も可なのだ!」

「いやいや、プロシー。アレは流石に反則だから。まぁ、仮に使う可能性があるとすれば、ヴィクトールさん、ロンロ姉さん、クリス姉さんかな。ヴィクトールさん以外の、竜王の加護を持つ人は出ない事だしね」

「まぁ、何はともあれ、優勝するのは私かな。ユイとクリスには悪いけど、今回は絶対に勝たせて貰うよ」

「ロンロ姉さん、心配は要りませんよ。優勝するのは私ですから。今日は、私と”風銃チャージライフル”の強さを見せてやります」

「姉さん達、私も絶対に負けないわよ。それと、二人ともあの約束は絶対だからね」

「「もちろん」」


 三人は、互いの顔を見ながら例の約束を確認した。三人共やる気満々で、背に激しい豪炎を纏っている様な錯覚を見せる程だ。三人が燃えたぎる中、プロシーが。


「なぁ、約束ってなんなのだ? 何で我輩には教えてくれないのだ?」

「うっ……ぷ、プロシー。お願いだからションボリしないで。時期が来たら、絶対に教えるから、今は聞かないで」


 フワフワの耳を垂らせたプロシーを、優しく抱きしめながら言ったユイ。


「プロシー、ごめんよ。本当はプロシーに隠し事はしたくないんだけど、今回のはちょっとね。ユイの言う通り、いずれプロシーに教えるから、それまで待ってて欲しいんだよ」

「プロシーちゃん、本当にすいません。今はまだ、プロシーちゃんには言えないんです。ですけど、決して悪い話ではないので安心して下さいね」


 プロシーを優しく撫でながら言ったロンロとクリス。プロシーはとりあえず「分かったのだ」と告げ、四人は仲良く広場に作った宿のお風呂に入って、リフレッシュした。


 それから時は経過し、時刻は午前八時になり、プロシー達、町の住民は広場に集まった。


「お前達、もうすぐで竜祭典が開催する。それぞれ役割、休憩時間、自由時間などを決めた訳だが、本番になれば何が起こるか分からない。非常事態や何か問題が起これば、ログアーツで随時俺に連絡するように。俺の話は以上だ。次に、プロシー様にお話をして頂くから、皆しっかり聞くように。では、プロシー様、お願いします」


 皆の前で話を終えたゼダが、隣にいるプロシーを見て告げた。


「了解なのだ。と、言っても、我輩の話は昨日の夜で終わってるのだ。だからとりあえず、各自怪我をしないように気をつけて、今日は皆んなで楽しもうなのだ! 我輩の話はこれで終了なのだ。じゃあ、皆、準備開始なのだ!」

「「「「はい!」」」」


 返事と共に、皆はそれぞれの役割をこなすべく動き出した。ほとんどの者が居なくなった後、ゼダ、リム、リザがコロシアムに出場する三人の前に移動し。


「お前達、しっかりな。決して無理はするなよ」

「ロンロおねえちゃん! クリスおねえちゃん! ユイおねえちゃん! リム、いっぱい、おうえんする! がんばってね!」

「ロンロちゃん、クリスちゃん、ユイちゃん、気をつけてね。私もリムと一緒に応援してるから」

 それぞれ思い思いの言葉を送った。それに対し三人は力強く「任せて!」と返答し、コロシアム会場に移動して行った。


 コロシアム会場は、綺麗なスタジアムの様な感じの造りの建物だ。その規模は二千万人以上を楽々収容出来る程巨大で、中心には円型状の白い台があり、その外側には水の池があり、ガラスの様な透明な物が外周を囲んでいる。


 プロシー、ユイ、ロンロ、クリスがコロシアムの白い台に移動すると、そこには、頭部以外を黒い鎧で纏ったヴィクトールがいた。ヴィクトールは、プロシー達を見かけると、近づいて来て。


「プロシー様、おはようござまいます。ユイ、ロンロ、クリス、おはよう。今日は負けないわよ」


 と、微笑みながら言った。プロシー達も挨拶を返し、三人は「絶対に負けない」と力強く言った。ヴィクトールとプロシー達が話していると。


「お〜こりゃすげぇ〜別嬪さんだなぁ。おい、ヴィクトール、俺に紹介しろよ」

「ジータさん、自重しないと大変な事になりますよ」


 ヴィクトールと同じく、顔以外を黒い鎧で覆った男二人が近づいて来た。先ほどまで、楽しげに話していたヴィクトールは、一気に不快そうな顔になり。


「ジータさん、貴方は本当に凝りませんね。プロシー様の前でなければ、今頃黒焦げですよ」

「ほぉ〜こりゃ〜珍しい事もあるもんだなぁ〜。と、お前をからかうのは、この辺にして。プロシー様、美しいお嬢さん方、私は雷竜術師隊を率いるジータと申します。以後、お見知り置きを」

「プロシー様、皆さん、私は雷竜騎士隊を率いるアークと申します。よろしくお願い致します」


 ジータとアークは、深々と一礼しながら言った。


「ジータ、アークよろしくなのだ! 我輩の名はプロシー、エメラルドドラゴン『気翠玉竜』なのだ!」


 プロシーは片手を上げて、明るく名乗り、ユイ達もそれぞれ名前を名乗り挨拶を返した。それぞれの挨拶を終えた後、ジータがユイ達に近づこうと一歩前に出ると、ニコリと微笑んだヴィクトールが間に入り。


「ジータさん、何をしようとしてます?」

「は? 挨拶を交わしたら、次はログアーツの番号交換に決まってんだろう」

「そんなのは、決まってませんし、魂胆も見え見えですし、三人には既に心に決めた方がいるので、諦めて下さい」

「な⁉︎ ほ、本当なのか⁉︎」

「「「本当です」」」


 ヴィクトールに信じたくない話を聞き、目を大きく開き狼狽しながら尋ねたジータに、事実だと告げたユイ達。それを聞いたジータは、目を閉じて腕を組み、少し考えると、カッ! と目を開け。


「その思い人は俺より良い奴なのか‼︎」

「「「はい」」」

「⁉︎ お、俺よりカッコイイのか‼︎」

「「「はい」」」

「⁉︎ お、お、俺より財力あるのか?」

「「「全てにおいて上です」」」

「……そうですか」


 自信満々で特攻を仕掛けたジータは、コロシアムが始まる前に、心に大ダメージを負った。ワイルドな顔でションボリしているジータの様子からして、彼は恐らく早々に敗退する事だろう。その様子を見ていたヴィクトールは腹を抱えながら、必死に笑うのを我慢し、アークは同情した様な眼差しでジータを見ていた。


 そんな中、三人に思い人がいる事を知ったプロシーは。


「ユイ、ロンロ、クリス、大事な人がいるのだな! 我輩にも紹介して欲しいのだ!」


 自分の事だとは、微塵も考えていない事丸わかりの態度で、明るく尋ねた。だが、それもしょうがないのだ。プロシーには恋愛感情などないのだから。


 その事を理解している三人は、複雑な表情で「今度ね」と伝えた。三人は、こんな事ではヘコタレはしない。プロシーが0歳な事も、普通の感性と違う事も一番理解しているからだ。三人が勝負を仕掛けるのは、プロシーが竜王になり、人の姿になってからなのである。


 それから、更に時は経過し、時刻は午前九時、竜祭典開催の時が訪れた。コロシアム会場には、地面を埋め尽くす様な各国の大勢の人々、竜王の加護を持つ代表四名、そして、激戦が繰り広げられるだろう白い台の上には、トーナメント参加者とプロシーがいる。


 会場の皆が静寂する中、今回の開催に尽力し、主催者のヴィクトールがマイクを持ち。


「では、開催時刻になりましたので、これより竜祭典の開会式を開始します! 司会を担当するのは、今回の主催者の立場にある、サンボルトーグ代表者ヴィクトールです! よろしくお願いします!」


 笑顔で挨拶したヴィクトールに、会場から盛大な拍手と歓声が送られた。


「皆さん、ありがとうございます! それでは、簡単に予定を説明させて頂きます! 竜祭典の開催は二日間で、メインはコロシアム会場で行われる、各代表二十一名による試合です! 他にも、コロシアム会場の外の広場では、思考を凝らした様々なお店が出ていますので、そちらもお楽しみ下さい! それでは、今大会を開催するきっかけになった、エメラルドドラゴン『気翠玉竜』である、プロシー様からお話をして頂きます! プロシー様、お願いします!」


 ヴィクトールから小さな手でマイクを受け取ったプロシーは。


「我輩が紹介にあったプロシーなのだ! 我輩から皆に伝えたい事は、二つあるのだ! 一つ、我輩は家族を傷つける者は、誰であれ許さないのだ! 家族を傷つけた者は、二ヶ月程前、我輩が吹き飛ばした樹海と同じ運命を辿る事になるから、注意するのだ! 二つ、この世界では、加護が全てと考えているようだが、もうそれは終わったのだ! 我輩の家族は皆、新しい力を使うのだ! 今回の竜祭典が開催されたのも、それをこの世界の皆に見せる為なのだ! そんな訳だから、今後は我輩の家族を加護無しとバカにしない方が良いのだ! 我輩の家族は、ここに集まった者達より、強いとここで断言するのだ! そして、我輩達は竜祭典が終わったら、各国に旅行しに行く予定だから、その時はよろしくなのだ! 最後に、絶対にないと思っているが、我輩の家族に手を出したらこうするのだ!」


 プロシーは、”剛気金人纏”を使い、瞬時に金の鎧姿になると、黄金の右手を真上に上げて、特大のエメラルドの閃光を轟音と共に上空に放った。その凄まじい閃光は、激しい突風を会場中に発生させ、コロシアムの為に貼ってあった結界と、中央国カントリーを守る結界を、最も簡単に破壊し、流星の様に、何処までも上に登って行った。


 会場のほとんどの者がそのありえない威力に唖然とする中、”剛気金人纏”を解除したプロシーは、明るく告げる。


「分かったと思うが、我輩には国の結界など無いも等しいのだ! 皆が我輩の家族と友好的に接してくれれば良いが、危害を加えようとしたり、敵対する事があれば、我輩はこの力を躊躇なく振るうから注意して欲しいのだ! それから、我輩達は無理難題を言ったり、無闇に破壊活動をしないから、安心するのだ! 我輩の目的は、家族の皆が楽しく暮らせる事だが、ヴィクトールの様に、良い人物がいる事も理解しているから、我輩の家族と仲良くする気がある者は歓迎するのだ! これで、我輩の話は終わるのだ!」


 プロシーは楽しげに言うと、ヴィクトールにマイクを返した。会場にいるプロシーの家族達は「さすがプロシー様だ!」「カッコイイ!」「しびれるぜ!」「プロシー様、最高!」などなど喜んで騒ぎ、その他の者は「や、やべぇ。マジすげぇ」「あ、あれが竜の力」「お、俺、これからは注意する」など驚きと不安の混ざった様な表情で言い、プロシーの力に畏怖し、それぞれ、不用意な事をしないと心に刻んだ。


 それは、各代表の者達も同じで、直にプロシーの力を目の当たりにし、不用意な発言、交渉の難しさ、プロシーの危険度などを改めて理解した。会場のほとんどの者が、プロシーを敵に回したら死と認識する中、未だに全力ではない事を知るユイ、ロンロ、クリス、町の住民達、ヴィクトールは、プロシーが全力を出したらどうなるんだろうと少し考え、考えるのを止めた。何となく、世界が滅びそうな気がした為に。


 一方、会場の人々に恐怖を植え付けたプロシーは「これで、我輩の仕事のほとんどが終わったのだ」と、非常に満足して、ユイに抱かれ、三人に気持ち良さそうにモフモフされている。その光景を見た会場中が「う、羨ましい」と思い、プロシー達に注目していた。


 もちろん、男達は超絶美女と美少女のユイ、ロンロ、クリスの柔らかいモノに挟まれてるプロシーに、女達は信じられない可愛らしさを誇る、プロシーを抱きしめているユイ達に「その場所代わってくれ」と思っている。


 会場中のほとんどの者が、もうプロシーを恐れていない。見た目とは、正に天が授けた絶対のステータスなのだろう。プロシーが普通の竜の様な畏怖する姿ならば、間違いなく会場中の皆は表情を青ざめさせ、我先にと逃げるか、ブルブル震えるだろうから。


 会場がザワザワと騒がしい中、マイクを持ったヴィクトールが。


「え〜プロシー様、為になるお話、ありがとうございました! それでは、これで開会式を終わります! 続いて、コロシアムのトーナメント表のクジ引きに移ります! 係りの皆さんは準備をお願いします!」


 ヴィクトールの言葉の後、黒い箱とホワイトボードの様なモノを係りの者が運んできた。それから、参加者は黒い箱からクジを引き、ホワイトボードに書かれたトーナメント表に番号と名前が刻まれた。


 全ての準備が整うと、係員がホワイトボードに内蔵されているボタンを操作した。すると、会場全体に見える様に透明なスクロール画面が空中に現れ、いつの間にか、会場の実況席の机の上に移動していたプロシーが、小さな手でマイクを掴み、楽しげに尻尾を左右に振りながら。


「お〜ユイが一番、ロンロが九番、クリスが十三番、ヴィクトールが二十番なのだ! 皆、頑張るのだぞ〜!」

「あの〜ここは実況役の私の席なんですけど〜」


 アイドルの様なヒラヒラフワフワな格好をした、人間の黒髪ロング美少女が気まずそうに尋ねた。プロシーは、その美少女を見て首をかしげがら。


「ダメなのか?」

「い、いいえ! どうぞ、何時までも居て下さい!」


 可愛く尋ねられた美少女は、目をハートマークにして了承した。その答えを聞いたプロシーは。


「ありがとうなのだ! リム、リザ、許可が出たからこっちに来るのだ!」

「うん! リム、プロちゃんと、おねえちゃんたちをおうえんする!」

「い、良いんですかね」

「リザ心配はいらないのだ! 良いって言われたのだ! それに、ここが一番良い席なのだ!」


 リザはプロシーが瞬時に作った椅子に座り、リザの膝の上にリムが座る形になった。実況の美少女は、プロシーが側にいれば文句はない様で、特に苦言を言わなかった。もっとも、プロシーに文句を言える様な存在は皆無に近いのだが。


 プロシーから、マイクを返された美少女は、気をとり直し、立ち上がると。


「え〜それでは、トーナメントの組み合わせ発表を開始したいと思います〜! と、その前に、今回の実況を担当するのは、サンボルトーグ広報担当、エリザです〜! 皆さん、よろしくね! では、開始します! 一番、プロシー様の家族であり、猫人のユイさん! 二番、雷竜術師隊総隊長のジータさん! ……九番、プロシー様の家族であり、狼人のロンロさん! 十番、カントリー所属竜闘士である、鎖使いのゾルシュさん! ……十三番、プロシー様の家族であり、ハーフエルフのクリスさん! 十四番、地竜魔法団隊長のハーリンさん! 十五番、雷竜騎士隊総隊長のアークさん! ……十九番、海上隊隊長、シャールズさん! 二十番、我らがアイドル、完璧美女ヴィクトール様! ……以上になりますが、どの組み合わせも好カードで見ものです! 早速、第一試合、ユイさんVSジータさんの試合を開始したいと思いますので、他の出場者の皆様は、リングの外の待機場に移動して下さい!」


 エリザのアナウンスに従い、出場者が待機場に移動を開始する中。


「ユイと当たるのは、準々決勝だね。私と当たる前に、負けちゃダメだよ」

「任せて。ロンロ姉さんこそ、負けないでね」

「ユイちゃん、頑張って下さいね。応援してますよ」

「クリス姉さん、ありがとう。頑張るわ」

「ユイ、ジータさんなんて、ボコボコにして構わないから、遠慮せずにやっちゃって」

「ヴィクトールさん、了解よ」


 微笑みながら、言葉を交わしたユイ達。会場からも、ユイへの声援が大音声で響き渡る。それを見て聞いたジータは、隣のアークに。


「なぁアーク。何故、誰も俺の応援をしてくれねーんだろーな?」

「……ジータさん、組み合わせが悪いです。こればっかりはしょうがないと思いますよ」

「……どうしようもないか。良いぜ! こうなったら、ヒール役をやってやるぜ!」


 世の理不尽に触れたジータは、「やったるぜ!」と目をギラギラさせ、非常にやる気満々である。それからリングの上は、ユイとジータだけになり、試合開始のゴングを待つのだった。

 次回も来週土曜日に投稿予定です。

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