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21 竜祭典開催準備

 皆様に報告します。作者の事情により、しばらくの間、週に一度の投稿になりそうです。

 ヴィクトールに竜祭典の説明を聞いてから、十九日が経過している。現在プロシーは町の家族全員で、中央国であるカントリーに来ている。


 プロシー達は、カントリーに一日前から来ており、竜祭典の店の準備や、打ち合わせなどをしている。コロシアムがあるのは、カントリーの中央の位置で、その周囲は、芝生が綺麗に植えてある広大な広場となっている。


 各国の店はその広場に出す事になっており、全国の人々が竜祭典の準備の為にカントリーに集まっている。様々な人が集まれば、当然、加護無しと蔑む者や、不埒な者もいる訳だが、プロシーの家族に危害を加える者はいない。


 いないと言うよりかは、できないと言う方が正しい。何故なら、各国の精鋭がプロシーの家族を守っているからだ。プロシーの力を理解し、逆鱗に触れたらどうなるかを理解している各国の上層部としては、当然の処置なのだ。故に、危険そうな人物は、町の皆に近づく事はできない。


 もっとも、プロシーの家族達は、皆が気を使える訳で、鍛錬してから、かなりの日数が経った今となっては、守ってもらう必要などなかったりするのだが。


 プロシーは、店の準備を皆に任せて、ゼダと共にカントリーの中枢管理塔に来ている。中枢管理塔は、カントリーを運営する為に必要な様々な機関が集まった場所であり、その重要性から警務部隊が常駐している。建物も立派で、カントリーの中で一番高く、ビルの様な造りになっている為、高層に行けば、カントリー、一帯を見渡す事が可能だ。


 プロシーとゼダは町の代表として、中枢管理塔の最上階の一つ下の六十九階、各国代表者が集う会議室に向かっている。高層の建物や、各区域の移動もそうだったのだが、基本この世界では、多くの転移の魔法陣を地面に刻んで、何時でも転移出来る様にしている。


 プロシー達は、ホテルの様な造りのフロアから、一階の転移の魔法陣のところに行き、全七十箇所ある転移の魔法陣から、会議室のある階に転移した。会議室がある階は、高級ホテルの様な感じだ。プロシー達は扉の前に移動して、ゼダが大きな両開きの黒いドアを開けて、会議室の中に入った。


 会議室は、ホールの様な個室に、一つの大きな円卓が置かれているだけのシンプルな造りだ。ガラスばりの窓からは、絶景を見渡す事が出来る。


 会議室の中には、既に各国の代表者である竜王の加護を持つ者が座っており、その席の後ろに護衛二名が立っていた。プロシーとゼダが入って来たのを確認した代表者五名は立ち上がると。


「「「「「プロシー様、ゼダ殿、お待ちしておりました」」」」」


 一礼しながらそう告げた。礼儀としては、普通に思えるかもしれないが、各国の代表は早々頭を下げたりはしないので、普通の者達が見ればさぞ驚く事だろう。もっとも、相手が超常の存在の竜であるプロシーならば、当然の対応ではあるのだが。


 そんな礼儀正しい挨拶に対し、ゼダの隣を飛んでいるプロシーは。


「皆んな、おはようなのだ! 早速、打ち合わせするのだ!」


 小さな右手を上げて元気に軽い挨拶を返した。それから、各々それぞれの席に座り、プロシーはゼダの席の近くの円卓の上に二本足で立っている。


 皆の準備が出来たのを確認したヴィクトールは。


「では、打ち合わせを開始させて頂きます。まず、先立ってお知らせしていた通り、竜祭典の開催は予定どおり二日間です。開会式はコロシアム会場で、明日の午前九時から始めます。その開会式では、プロシー様より、話をしていただいく予定です。その後、コロシアムの組み合わせ抽選会を行い、決まり次第、順次トーナメント戦を開始します。コロシアムの参加者は、各国代表とゼダ殿の町の代表の計二十一名です。一日目は準々決勝まで行い、二日目は準決勝、決勝、プロシー様と優勝者との戦いを予定しています。コロシアムの対戦ルールですが、基本のコロシアムルールを適用し、制限時間無し、相手をリングアウト、戦闘不能にしたら勝ちとします。尚、相手を死に至らしめる様な攻撃は禁止とします。全てのコロシアムの対戦が終了しましたら、その後は交流会を予定しています。おおよそはこんな感じですが、質問はありますか?」


 ヴィクトールは、そう尋ねると辺りを見回して。


「何もないようですので、これで打ち合わせを終了します。皆さん、お疲れ様でした」

「お疲れなのだ!」

「「「「「お疲れ様でした」」」」」


 各自の挨拶と共に、打ち合わせは直ぐに終わった。しかし、ここからが本番なのである。各代表の者達は、プロシーに我先にと急いで近づいて行くと。


「「「「「プロシー様、お話が!」」」」」


 と、叫んだ。対してプロシーは。


「またなのか? 話すのは良いが、順番を決めて欲しいのだ」

「「「「「はい!」」」」」


 各代表者は、円陣の様な位置で、互いを牽制しながら。


「ここは恐人代表であり、炎竜王の加護を持つ、この俺、ガオウに譲ってもらおう」


 身長四メートルを超える、筋骨隆々で蜥蜴顔の男が、太い腕を組みながら言った。ガオウは、いわゆるリザードマンであり、体つきは人間だが、全身を鱗が覆っており、頭と尻尾が蜥蜴だ。


「ノンノン。ここは海人代表であり、氷竜王の加護を持つ、ミー、ホエールンに譲るんだルン」


 身長五メートルを超える、巨体のクジラ顏の男が言った。ホエールンは、海人のクジラ種の為、この世界の人では一番大きい。ホエールンはクジラが人になった様な姿で、全身紺色の体で、とても柔らかそうな印象を受ける。


「いやいや、ここは空人代表であり、風竜王の加護を持つ、私、ウィンダに譲ってもらう」


 身長百八十センチ程の、ワシ顏の男が言った。ウィンダは空人で、特徴は背に大きな羽があり、この世界で唯一、魔法を使わずに飛べる人種だ。


「いえいえ、ここは森人代表兼、エルフの女王であり、地竜王の加護を持つ、わたくし、シェールに譲って頂きます」


 身長百七十センチ程の、黄緑髮長髪の美女が言った。シェール達エルフは、クリスより耳が長く、皆が美形でスタイル抜群である。自然を愛する彼女達は、風習なのか、皆が緑を主にした民族衣装の様な服を着る。


「まぁまぁ、皆さん落ち着いて下さい。ここは、プロシー様と一番付き合いがある、この私、ヴィクトールに譲って下さい」


 四人を落ち着かせる様な事を言いつつ、一歩も引かないヴィクトール。皆が皆、譲る気はない様子だ。それを見たプロシーは。


「すぐ決まらないなら、我輩は帰るのだ。話はまた明日なのだ。ゼダ、帰るのだ」

「はい、プロシー様」


 プロシーは、ゼダの返事を聞くと、五人が止めようと、何かを言う前に”空間転移”で会議室から消えていった。それを確認した五人は「また、逃げられた」と思いつつ。


「お前達の所為で逃げられたではないか! 俺の予定が台無しだ! 何時も何時も邪魔ばっかりしおって!」

「ユー、何を言ってルン? ユー達が、ミーの邪魔をしてるんだルン!」

「全く、付き会ってられんな。プロシー様がいないなら、私は帰らせてもらう」

「わたくしも帰らせて頂きます」

「はぁ〜。相変わらず、皆さんの波長はあいませんね。では、私も帰りますね」


 ガオウ、ホエールンが他が悪いと言い、ウィンダとシェールはもう用はないと出て行き、何故、いつもこうなるんだと、がっかりしながら言ったヴィクトールであった。


 彼ら、各国の代表は仲が良くない。と、言うよりかは、協調性があまりない。彼らは、それぞれ竜王に選ばれた特別の存在で、プロシーが現れるまでは、竜王に次ぐ強者だった。言わば、五人はライバル関係にあるのである。


 互いに意識し合うのが原因の様で、個人としては友好的な付き合いはしていない。国家としては、様々な共同機関を作り、技術の向上や特産品の流通などの交流はしているのである。


 他の四人と違い、特に意識しないヴィクトールとしては、今回の竜祭典を起点に、各代表者の友好関係を深めたいと考えたりもしているのだが、先ほどの様に、結果は芳しくない。もっとも、現時点の各国の関係は、特に問題ない為、変わる必要性もなかったりする。彼らにとって重要なのは、今後のプロシーとの付き合い方なのだ。


 そんな問題視されているプロシーは、ゼダと共に、皆がいるコロシアムの広場に移動していた。プロシーはゼダと別れ上空を飛行しながら、店の出し物の準備をしている、皆の様子を眺めつつ、危険がないか見回りをした。プロシーがしばらく上空を飛び回っていると。


「プロシー! ちょっと来て〜!」

「ん? ユイ、どうしたのだ?」


 木造の店の前で、エプロン姿のユイに手を振られ呼ばれたプロシーは、”空間転移”でユイの前に移動して尋ねた。ユイは笑顔で。


「実はね、店で出す新作料理を色々作ってみたんだけど、上手く出来たから、プロシーに食べて貰おうかと思ったの」

「新作料理⁉︎ ユイ、我輩、喜んで食べるのだ!」


 新作料理と聞いたプロシーは、銀の瞳をキラキラさせ、尻尾を左右に盛大に振りながら嬉しそうに言った。


「じゃあ、プロシー、こっちよ」


 プロシーはユイに抱っこされ、店の中に入ると、そこには約五十種類の料理と、エプロン姿の町の女性達がいた。プロシーは、ユイに抱っこされながら、様々な料理を女性達に食べさせてもらい「とっても美味しいのだ!」とご満悦で、料理を楽しみ味わった。


 全ての料理を残さず平らげたプロシーに、抱っこしているユイは。


「どう、プロシー。どれが一番美味しかった?」

「ユイ、全部美味しかったのだ! ただ、我輩のお気に入りは、エメラルドトマト煮込みのハンバーグなのだ!」

「やっぱり! プロシーならこれが好きなんじゃないかと思ってたわ! じゃあ、店の看板メニューはこの料理で決まりね! プロシー、ありがとうね」

「ユイ、お礼を言うのは我輩の方なのだ。皆んなありがとうなのだ!」


 プロシーは、皆を見つつお礼を言った。お礼を言われた女性達は「あ〜頑張った甲斐があるわ〜」「全くね。プロシー様に喜んで貰えるなんて最高よ」などなど、嬉しそうに感想を語っていた。


 プロシーが店の中で皆と触れ合っていると、カランカラン! とドアが開く音が聞こえて。


「プロちゃん! リムとあそぼ!」

「リム、走ると危ないわよ」


 リス人のリムとリザの親子が入ってきた。ユイの腕の中から出たプロシーは、リムに近づくと。

「リム、何して遊ぶのだ?」

「リムね、プロちゃんとシャテキとか、ナゲナワがしたいの」

「分かったのだ! ユイ、我輩リムと遊びに行って来るが、ユイはどうする?」

「そうね……。料理のメニューも決まったし、私も行くわ」

「じゃ、一緒に行くのだ」


 プロシー、ユイ、リム、リザは店を出て、準備しているもう一つの店に行った。プロシー達の出し物は、料理屋と遊戯場である。


 遊技場に移動したプロシー達が見たのは。


「甘いです! 甘すぎです! そんな配置では、簡単に撃ち抜けますよ! もっと、難易度を上げて下さい!」


 射的用の銃で、全てを撃ち抜き駄目出しをするクリスと。


「せいや! 『ズドォン‼︎』あっ……力入れすぎちゃったよ」


 剛気纏状態の右正拳突きで、パンチングマシンを木っ端微塵に破壊したロンロだった。二人は一応、出し物の最終確認作業をしているのだが、自分達の力を制限してないので、確認には向かないのである。


 それでも二人が確認してるのは、少しでも側に居たいと思っている、町の男達の要望だからだ。男達はどれだけ大変な目にあおうとも、二人の近くにいれる道を選ぶのだ。


 プロシー、ユイ、リム、リザは、そんなロンロ、クリス、男達を眺めつつも、輪投げ、ダルマ落とし、玉入れなどの、様々な遊戯で楽しんだ。


 それから時は経ち、辺りが暗くなり月明かりが綺麗に建物に差し込む頃、プロシーと町の全員は、店のすぐ近くでバーベキューとキャンプファイヤーをして、大いに盛り上がっていた。プロシー達の準備はきっちり終わり、後は開催を待つのみだ。


 皆が楽しんだ後、全員でキャンプファイヤーを囲んで丸太に座った。そして、プロシーが上空に数多の”爆裂波”を放ち、夜空に綺麗なエメラルドの花火を打ち上げると、上空から皆を見て。


「皆んな作業お疲れなのだ! 後は本番を待つだけなのだ! ユイ、ロンロ、クリス! 我輩は三人の誰かが優勝すると思ってるのだ! この世界の常識を壊す為にも、頑張って欲しいのだ!」「「「任せて! 絶対に優勝する!」」」

「三人とも、その意気なのだ! それから、皆に言っておくのだ! 竜祭典が終わったら、我輩は皆で各国に旅行しようと思ってるのだ! これからは、加護を持つ者に遠慮する必要はないのだ! 皆の事は我輩が守るし、敵が現れれば、我輩がブッ飛ばすのだ! だから、皆で楽しい旅行に行こうなのだ‼︎」

「「「おお!」」」


 町の皆は右手を上げて、楽しそうに叫んだ。皆の意見を聞いたプロシーは、喜びを表すかの様に、盛大に”爆裂波”を上空に放ち、カントリーの夜空を幻想的な光景に変えた。その光景は、他の国の者達も見ており、皆が上空を見上げ、綺麗な景色を楽しんだのだった。


 ***


 プロシー達が盛大に楽しんでいる頃、カントリー内のとある建物に集っている集団がいた。その中の如何にも、偉そうな雰囲気の男が壇上に立ちながら。


「我が同志諸君! ここに集ってもらえた事、感謝する! いよいよ、我らが表に出る時が来た! 諸君の活躍次第で、今後の世界は変わる! この世界が我らのモノになるかは、諸君の頑張りに掛かっている! だが、達成は困難を極める! 諸君も見ただろう、新たな竜の存在を! しかし、我らにはあの方々が付いている! 皆一丸となって、頑張ろうではないか!」

「「「おお!」」」


 鎧を纏ったイカツイ男達が力強く叫んだ。


「諸君、感謝する! では、これで解散するが、くれぐれも不用意な行動は避けて欲しい! 作戦開始は、各自のログアーツに合図を送ってからだ! それでは解散!」


 壇上の男の言葉と共に、男達は部屋から出て行った。かくして、様々な思惑が交差する竜祭典の前夜が過ぎて行くのだった。

 次回、来週の土曜日に投稿予定です。

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