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20 概要説明

 

 ヴィクトールが準備に二週間費やしてから、更に一週間が経過した。現在ヴィクトールは、加護無しの町の町長ゼダの家にいる。ゼダの家にいるのは、プロシー、ユイ、ロンロ、クリス、ゼダ、ヴィクトールである。


 ヴィクトールは、机の上にパンフレットの様な、様々な内容が書かれた大きな紙を広げると。


「では、これから説明を開始しますね。まず、今回の催しは竜祭典と言う名になりました。参加国は六カ国全てで、ガイアスラのほとんどの人々が参加する予定です。竜祭典の開催日は二十日後になりまして、開催期間は二日です。内容は、各国代表三名によるコロシアムの勝ち抜き戦と、各国それぞれの店を出したお祭りの様な感じです。今のところ、何か質問はありますか?」

「質問なのだ! ヴィクトール、我輩はコロシアムに出れるのか?」


 ロンロの腕の中に居たプロシーが首を傾げながら尋ねた。


「はい、出れますよ。ただ、プロシー様は特別枠の出場になりますので、優勝者との対決になります。それが、精一杯だったんですが、大丈夫ですか?」

「問題ないのだ! 我輩、出れればそれで良いのだ!」


 不安そうな顔で尋ねたヴィクトールに、明るく返答したプロシー。ヴィクトールは「よかったぁ〜」と胸を撫で下ろすと。


「了承して頂けて良かったです。それでなんですけど、コロシアムの出場者と、出す店が決まったら、私に連絡して下さい。一応私が主催者となってますので。それから、店の方は強制ではないので、出したい物があれば出店して下さい。私の話は以上で終わりです」

「ヴィクトール、説明ありがとうなのだ! じゃあ、店の事は皆んなと話すとして、ゼダ、コロシアムの参加者はどうする? 実力順にするか? それとも、参加したい者を募ってその中から決めるか?」

「そうですね。今回の目的は、プロシー様から授かった力を見せる事ですから、強い者を出した方が良いでしょうね。上位の実力の者から募ろうかと思いますが」

「「「ちょっと待った!」」」


 ゼダの話を聞いていたユイ、ロンロ、クリスが叫んだ。ゼダは訝しげな表情で三人を見ると。


「お前達、何だ?」

「町長、コロシアムには私達が出るわ! 実力でも、私達なら問題ないでしょ!」

「……確かにそうだが、俺も出たいからな」

「町長、ここは娘の私達に任せてよ。町長の出番は、次の機会にとっておけば良いよ」

「そうですよ、町長。今回は私達が町長の分まで頑張りますから、町長は見ていて下さい」

「……分かった。お前達に任せる。お前達、町の代表として、しっかりするんだぞ」

「「「はい!」」」


 三人は力強く返事をした。これで、三人がコロシアムに参戦する事が決定し、三人の目的の第一段階がクリアされた。これからが三人の本当の戦いである。そんな訳で、三人が絶対に優勝すると内心で燃えている中。


「じゃあ、話はこの辺で終了なのだ! 話し合いが終わった時は、エメラルドトマトの時間なのだ!」


 そう言ったプロシーは、人数分のエメラルドトマトを具現化して、全員に配ると、皆で美味しそうに食べた。プロシーは何かが終了する度に、こうやってエメラルドトマトを食べているのである。プロシーの一日のエメラルドトマトの摂取量は、およそ千個以上だ。もっとも、夜間の”超速活性”を使った時の消費量が多いだけで、日中はそれほど食べてはいない。


 プロシーの摂取量には劣るが、ユイ達もかなりの数を食べているので、魔力と気力は以前よりかなり上昇している。ヴィクトールも、プロシーと会う事が多かった為に、それなりに食べる機会があり、それなりに上昇している。


 ヴィクトールの魔力ステータスが上がった事で、プロシー達はエメラルドトマトの恩恵を理解している。その為、町の住民達は、以前よりエメラルドトマトを食べる様になった。全ては戦闘の継続力を高める為である。


 そんな訳で、エメラルドトマトの恩恵を知るヴィクトールとしては、このエメラルドトマトを皆に教えるか、秘匿するかを悩んでいたりする。食べるだけで、魔力、体力、傷の回復、魔力と気力が上がるのだから、正に至高の逸品で、その効果を知れば、誰もがエメラルドトマトを求めるのは自明の理だ。


 故に、プロシーに不当な目的で、近づこうとする者が多くなるのは当然な事で、そうなる事を町長やユイ達、町の住民達が望まない事を知るヴィクトールとしては、秘匿よりの考えだ。


 しかし、いざという時を考えると、皆の力を底上げするには、エメラルドトマトは必須な物だ。更に、竜祭典後の世界では、恐らく気が中心となる世界に変わる。そうなると、必然的にプロシーにお願いする事が増える。


 だが、基本としてプロシーは、町の家族の安全を優先する。だからこそ、プロシーは信頼する人物以外に気を教える気はない。危険人物に力を与えるなど、愚行な事だと、プロシーは考えているからだ。


 プロシーがコロシアムへ参戦を熱望したのも、全ては世界の人々への忠告であり、自身が抑止力になる為だ。即ち、家族に手を出す者には、この力が牙を向くと知らしめるのが目的だ。


 この世界の竜王が、世界を守る存在で、基本関与しない竜ならば、プロシーは家族を守る存在で、積極的に関与する竜なのだ。よって、プロシーは世界の人々に牙を向ける可能性がある竜でもある。


 プロシーが一度、その力を行使すれば、人になど止めらる筈もない。止められるとすれば、同じ竜であり、竜の王である五体の竜王達だけだろう。故に、出来るだけプロシーの機嫌を損ねる事態は避けなければならないのだ。


 その事を理解しているからこそ、ヴィクトールは細心の注意でプロシーに接する事を心がけている。ただ、最近のヴィクトールは、プロシーと共にいる事が多かった為か、大分親しげになっているが。


 そんなヴィクトールは、エメラルドトマトを食べ終わると、机の上で猫のように丸まり、ロンロにモフモフされているプロシーを見て。


「プロシー様。その〜抱っこしてみたいんですけど、良いですか?」

「ん? 我輩は別に構わないのだ。⁉︎ ろ、ロンロ、どうしたのだ?」


 プロシーがゆっくり立ち上がり、ヴィクトールの元へ移動しようとした時、ロンロがガシッ! と、両腕で抱きしめ、プロシーを巨大で柔らかな双丘に埋めた。町のロンロに惚れている男達が今のプロシーを見たら「羨ましいー‼︎ 俺と変わってくれー‼︎」と叫ぶ事間違いなしである。


 ロンロはプロシーの顔を上から覗き込むと、ニッコリ微笑み。


「プロシー、今は私が一緒にいる時間だよ。最近のプロシーは、色々と忙しかったから、触れ合う時間がなくて、私は寂しかったんだよ」

「そうなのか? でも、あれなのだ。ヴィクトールにはお世話になってるのだ。だから、出来るだけ恩返しを」

「プロシー、大丈夫だよ。ヴィクトールはそんな事は気にしないからね。それに、ヴィクトール。私達の気持ちは覚えてるよね」


 ロンロはヴィクトールの目を、真剣な眼差しで見て尋ねた。


「……覚えてるわ。けど、ちょっとぐらい良いじゃない。プロシー様に触れてるのは、私だけじゃないでしょ?」

「そうだよ。けどね、最近のヴィクトールのプロシーを見る目は、私達と同じような気がするんだけど、私の気のせいだったかい?」

「⁉︎ き、気のせいよ! そ、そうだわ! 私これから用事があったの! なので、私はこの辺で失礼しますね!」


 綺麗な顔を真っ赤にしたヴィクトールは、狼狽しながら席から立ち上がりそう言うと、逃げるように家から出て行った。その様子を見たユイ、ロンロ、クリスは「黒だ」と、判断して、ヴィクトールをプロシーを狙うライバルであると認識した。


 自分を狙う者が着々と現れている事を、まだ知らないプロシーは、柔らかいモノに挟まれながら「ロンロとヴィクトールの様子が変なのだ。何かあったのか?」と疑問に思いつつも、何となく深いれしない方が良さそうだと思い、見守る事にしたのであった。


 それから、プロシー達は会議室に移動し、町の住民全員と竜祭典の話し合いをした。そんな事をプロシー達がしている中、ロンロに指摘されたヴィクトールは、町の直ぐ近くの森におり、木に背をつけ座りながら考えていた。


(私がロンロ達と一緒ですって……そんなはずはないわ! 私は可愛いと思ってるだけ! 好意は抱いているけど、恋愛感情ではないわ! きっとそうよ!)


 そう、自分に言い聞かせるヴィクトールだった。彼女はサンボルトーグ中の人間、いや、世界中の人間に憧れられる美女である。その美貌もそうだが、誰にでも優しい人柄、能力の高さ、頼もしさなども相まって、その人気は老若男女問わず、数多のファンクラブがある程凄まじい。


 世間からは、非の打ち所がない完璧美人と思われている彼女だが、未だに恋をした事がない。友人は数多におり、プロポーズされた事も星の数ほどあるのだが、誰も特別だと思える人は居なかった。


 そんな彼女だからこそ、初めて特別だったと思える相手が、人ではない竜だとは認められないのである。プロシーも人に慣れる可能性があるが、実際に慣れるかは分からない。真面目な性格の彼女には、世界の常識を全く気にしない、ユイ、ロンロ、クリスの様に、自分の気持ちを素直にする事は難しいのだ。


 と、いう訳で、素直に慣れず、悩む事がまた一つ増えたヴィクトールが、立ち上がりサンボルトーグに帰ろうとしたその時、『ピピピピ』と、ログアーツの着信音が鳴り響いた。


「どうしたの?」

『ヴィクトール様、また、魔物が複数の町に出現しました!』

「またなのね。分かったわ。私が動くから、私のログアーツに詳細を送って」

『はい! ヴィクトール様、お気をつけて』


 通話を終え、詳細を確認したヴィクトールは、魔物の討伐の為に動き出した。魔物の町への襲撃は、今始まった事ではない。約二週間前から発生する様になり、その度に各国の防衛の者、戦闘力が高い者達が対処に当たっている。


 本来、町は結界で守られている為、結界が破壊されない限り、魔物が内部に侵入する事はありえないのだが、何故か内部に侵入する事態が多発している。もっとも、国、町の結界はそこまで万能な結界ではないので、内部から魔物の召喚などされれば対処できないのである。


 その点、プロシーが貼った結界は、許可してない者を全てを拒絶し、制限する万能な結界だ。プロシーの結界は、その強度も言わずもがなで、プロシー以上の力がない限り破壊する事は不可能なのである。


 故に、ヴィクトール達、各国の上層部としては、プロシーに気に入られ、結界や様々な恩恵を受けたいのが、本音なのである。今回の竜祭典の開催が決定したのも、その思惑があるからこそであり、プロシーから授かる力を確認する為でもあるのだ。


 そんな各国の思惑が重なり、開催する事が決定した竜祭典の出し物を、皆で楽しく会議するプロシー達であった。

 次回、一週間後の土曜日、投稿予定です。

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