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14 プロシーの逆鱗

 話を聞いたプロシーは、即座に女性に近づいて。


「リザ! どういう事な⁉︎ リザ、早くこれを食べるのだ」

「い、いいえ、私は大丈夫です。それよりリムを」

「良いから食べるのだ」

「は、はい」


 プロシーの迫力のある声を聞いたリザは、エメラルドトマトを受け取り食べた。すると、リザの手足にあった傷跡が見る見る内に治った。


 リザはリムの母親だ。リザはリス人で、身長は百六十センチ程、栗色の長髪、白雪の様な白い肌、整った顔立ちをしている美人である。服装は半袖半ズボンで、双丘は程よく出ている。


「リザ、何があったのだ? 落ち着いて話すのだ」

「はい。私とリムは昔主人とよく訪れた、町の南にある大きな川に遊びに行ったんです。しばらく私はリムと遊んで居たんですが、突然、鎧姿の者達が大勢現れて、私達に魔法を撃ってきたんです。私は咄嗟の事でリムの盾になる事しかできませんでした。私はその魔法の攻撃を受けて、川に投げ出されました。プロシー様の服のお陰で、私は致命傷は負いませんでした。……私が川から上がった時にはもう、リムはそこにいませんでした。私が川で聞いたのは、あの子の助けを呼ぶ声と、あの子に怒号する男達の声でした。……ぷ、プロシー様、あの子を、リムを助けてください。お願いします」


 大粒の涙を流しながら、頭を下げて言ったリザ。プロシーは飛んで、リザの顔に近づくと、優しくリザの頬に触れて。


「リザ、安心するのだ。リムは必ず我輩が助けるのだ。それで、その男達は何か手がかりになる様な事を言ってなかったのか?」

「……確か、川の中で、『俺達は黒き大鷲だぞ』と言っていた気がします」

「⁉︎ プロシー様、リザの話が本当なら、それは盗賊団の名前です」

「ゼダ、知っているのか?」

「はい。以前、ヴィクトール殿に聞いた事があります。黒き大鷲と名乗る盗賊団が最近現れ、殺傷行為や、略奪などをして問題になっていると。奴らの中には、異能という特殊な力を持っている者達もいるそうで、厄介な存在だと聞いています」

「そうか。……ゼダ、お前達は念の為、町の守りを固めておくのだ。リムは我輩だけで助けに行くのだ」


 話を聞いたプロシーは、そう告げると、飛び立とうとしたが。


「プロシー、待って。私も行くわ」

「私もだよ」

「私もです」

「プロシー様、僭越(せんえつ)ながら私もお供します」


 ユイ、ロンロ、クリス、ゼダが自分も行くと言った。それを聞いたプロシーが四人の方を向くと、四人は思わず息を飲み、冷汗を流した。何故なら、プロシーが途轍もない冷たく重い空気を放っていたからだ。その空気により、ユイ達は重力が何倍にもなった様な錯覚を覚えた。


「今回は誰も連れて行かないのだ。我輩、今回は本気でやるのだ。リムを助けたら、全てを破壊して来るのだ。皆が一緒に来ると、返って危険なのだ。行って来るのだ」


 プロシーは低い声色でそう告げると、”空間転移”で瞬間移動して行った。初めて、プロシーの迫力を感じたユイ達は。


「プロシー、怒ってたわね。凄い迫力だったわ」

「だね。黒き大鷲の運命は決まったよ」

「ですね。ああなったプロシーちゃんを止めれる人はいませんよ」

「プロシー様の全力……考えただけでも恐ろしいな」


 ユイ達はそんな事を言いながら、リムを連れ去った黒き大鷲の盗賊団に同情していた。彼らが怒らせてはならない竜を怒らせた事に。そして、未だ見た事がない、プロシーの全力の攻撃を受ける事に。


***


 広大な樹海の中の南にある、辺りを樹木で覆われた、とある一軒の石で出来た塔の様な建物に、リムを攫った黒き大鷲の盗賊団はいた。彼らは人間の犯罪者の集まりで、荒くれ者の集団だ。その数はざっと百人余りである。


 そんな彼らは、建物の中で薄汚れた机を囲み、酒を飲みながら大いに騒いでいた。


「頭〜あのガキ幾らで売れるんすか? 百万すか? 千万すか?」

「さ〜な。だが、貴族様のご要望だからな。さぞ、高値で買ってくれるんだろうぜ」

「でも、今日はラッキーでしたね! まさか、あんなところに、無防備に金のなるガキが親といるなんて! あの親も中々別嬪そうだったのに、頭が魔法で攻撃しちまうから、きっと死んじまいましたよ。加護無しが頭の攻撃を受けられる訳ないですからね」

「仕方ねぇだろ。今回の目的はガキだったんだからよ。抵抗されても面倒だからな。それにな、女が欲しけりゃ、奪って来れば良いだけだ。俺達は盗賊なんだからな。欲しいもんは略奪すれば良いんだよ」

「頭、つってもですね。今じゃ、獣人はレアなんですよ。ヴィクトールがあの町に何時現れるか分からない以上、危なくて近づけませんからね」

「まぁ、そう言うな。それにな、今後は安心しろ。貴族様のお陰で、ヴィクトールの予定は把握出来る。あの女が動けない時に、加護無しの町を襲って、好きなだけ女を奪って来れば良い。あの女が気づいた時には、時すでに遅しってな! 本当、貴族様様だぜ!」

「マジすか! 頭、そいつは楽しみですね! こうなったら、今日はもっと飲みやしょう!」

「おお! じゃんじゃん飲め!」


 上機嫌でそんな話をする男達。男達がいるのは、塔の二階の飲み屋の様な部屋である。リムは塔の地下の鉄格子がある牢屋の中に入れられ、体育座りをしながら泣いていた。


「うっうっうっ。お、おかぁさん。こわぃよ。ぷ、プロちゃんにあぃたぁいよ」

「うるせぇーぞ、ガキ! 黙ってろ! またぶたれてぇーのか!」

「ひっ!」


 牢屋の前にいる、見張りのイカツイ顔をした筋骨隆々の男が、牢屋の鉄格子を強く蹴りながら、怒鳴った。リムは恐怖でブルブル震えながら、ボロボロと涙を流している。男が言った通り、リムの可愛らしい顔の右頬に、殴られた様な跡があった。


 牢屋の前には見張りが二人おり、もう一人の気色悪い笑みを浮かべる中年くらいの男が。


「な、なぁ、あの子で遊んで良いか。どうせ売るんだから良いだろ? な」

「おめぇーは相変わらずロリコンの変態野郎だな。俺には全く理解できねぇーよ。まぁ、俺は構わねぇよ。その方がガキも大人しくなんだろ。静かにやれよ」

「へへへ、分かってるよ。さぁ、お嬢ちゃん。お兄さんと遊ぼうね」


 気色悪い男は、牢屋を開けると、ゆっくりリムに向かい進んで行く。それを見たリムは。


「い、いや! こ、こないで! プロちゃん、たすけてー!」

「ははは、助けを呼んでも来るはずは『ズドォォォォオオーン!』」


 轟音と共に、エメラルドの光に飲み込まれた、気色悪い男は、牢屋の右壁と共に跡形もなく消し飛んだ。男が先ほどまで居た場所には、右手を真横に振り切った体勢の、西洋風の銀の鎧姿の者が居た。それを見たリムは。


「プロちゃん!」


 リムは感激した様な表情で叫ぶと、身長百七十センチ程の銀の鎧の者の元へ走って近づいた。そう、銀の鎧はプロシーである。プロシーは”具現纏[+人纏]”を使い、銀の鎧姿になっていたのだ。


 プロシーは鎧姿で、足元に来たリムを抱っこすると。


「リム、遅くなってゴメンなのだ。……怪我をしたのだな。これを食べるのだ」

「うん! プロちゃん、たすけにきてくれて、ありがとう! リムね、きっときてくれるって、しんじてたよ!」


 リムはエメラルドトマトを食べながら、そう笑顔で伝えた。プロシーは銀の手で、リムの頭を優しく撫でながら。


「リムを助けに来るのは当然なのだ。リムは我輩の大事な家族だからな。それでリム、頬の怪我は誰がやったのだ?」

「プロちゃん! あそこのオジちゃんが、リムをブッタの! リム、すごくイタかったの!」

「そうか、あいつか。リム、我輩はちょっと、ここに用があるから、リムは先に魔法陣で町に帰るのだ。帰ったら一緒に遊ぶのだ」

「うん! リム、イエでプロちゃんをまってるね!」


 プロシーは転移の魔法陣を使い、リムを町へ送った。リムが居なくなった瞬間、プロシーは強烈な殺気を出した。突然の事で、腰を抜かしていたイカツイ男は、プロシーの殺気を受け、顔を盛大に青ざめさせ、ガクガクと盛大に震え始めた。


 プロシーは”空間転移”で、瞬時に男の元へ移動すると、左手で男の胸元の服を掴み、持ち上げると。


 バシィン! バシィン! バシィン! バシィン! バシィン! バシィン!


 と、何度も何度も男の右の頬を平手で強打した。その度に男は「い、イテェ!」「や、止めてくれ!」「謝るから、止めてくれよぉ!」と泣きながら叫ぶが、プロシーは止めない。およそ百回ほど打つと、プロシーは男を離した。プロシーの絶妙に加減された平手打ちを受けた、イカツイ男の頬は盛大に腫れ上がり、醜い顔になった。


 離された男は、壁に背をつけながら、恐怖で表情を引き攣らせて。


「た、頼む。こ、殺さないでくれ。め、命令だったんだ。お、俺は悪くないんだ」

「そんなの関係ないのだ。お前達は、我輩の大事な者を傷つけた。お前達はもう、ただの排除対象なのだ」

「ひ、ひぃ、い、いやだー『ズバァーン!』」


 プロシーから逃げようと、背を向け走り出した男に、プロシーの右手から放たれた、エメラルドに輝く小さな球体、”爆裂波”が男を襲った。エメラルドの球体は男に衝突すると、地下室一帯を、エメラルドの光が覆い、爆発したように衝撃が弾け飛び、地下室にある全てを木っ端微塵に吹き飛ばした。


 その影響で、三階建ての塔は見る見るうちに倒壊していき、大量の砂埃が舞った。瓦礫の山となった塔の跡地から、続々と、難を逃れた男達が這い出て来ると。


「な、何があった! 敵襲か⁉︎ 野郎ども、無事か!」

「へ、へい。頭、何とか無事でさ」

「な、なんだったんでしょうね」

「お前が、ここの責任者か?」


 大勢の男達の前に突如現れたプロシーが、頭と呼ばれるスキンヘッドの大男を右手で指指して尋ねた。男達は、突然の事に一瞬目を大きく見開き驚いたが、直ぐに武器を構えると、頭の大男が。


「これはてめぇーがやったのか!」

「そうだが? 何か、問題あったか?」

「あるに決まってんだろ! ふざけやがって! おい、野郎ども! このイカれた奴をやっちまえ!」

「「「「おう! 『雷装纏』!」」」」


 部下の男達は、叫ぶと共に、雷中級魔法の『雷装纏』を使い、自身の体を雷で強化した。身体中に雷を帯びさせた部下達は銀剣を構えて、プロシーに突撃した。青白い雷を纏った男達の動きは早く、即座にプロシーに近づくと、七人の男が全方位から突き刺す構えで突っ込んだ。


 プロシーに徐々に雷を帯びた銀の刃が迫り、後数センチで当たるというところで、プロシーが突如目の前から消えた。その突然の事に反応できなかった男達は、互いに銀の刃を体に突き刺し合い、六人の男が鮮血を出しながら死んだ。


 男達は「あの野郎、何処に行きやがった!」と怒号しながら、プロシーを探す為、キョロキョロ辺りを見回した。


「それで、そこのお前が責任者なのか?」

「⁉︎ あの野郎、飛んでやがる! 野郎ども、魔法を食らわせてやれ!」

「「「「おう! 『雷球』! 『雷槍』!」」」」


 男達は、遥か上空のプロシーに右手を向け、雷初級魔法の『雷球』、雷中級魔法の『雷槍』の魔法名を叫んだ。青白く輝く一メートル程の雷の球体と、二メートル程の長さの先端が鋭利な雷の槍が、プロシーに飛来する。


 プロシーは迫り来る無数の雷に、右拳に衝撃化したエメラルドの気を纏わせ、体をひねり、打ち出す構えを取ると、下の男達に向け、空手の正拳突きの様に右拳を打ち出した。


 すると、プロシーの拳から巨大なエメラルドの閃光が超高速で放たれ、瞬く間に雷と部下の男達を飲み込んだ。巨大な閃光は飲み込んだ無数の雷と、八十名以上の男達を一瞬で消し去り、轟音と共に、大地に大きな穴をあけた。


 その信じられない様な光景を見た、唯一の生き残りである、頭と呼ばれていたスキンヘッドの大男は、腰を抜かして顔を青ざめさせて、ブルブル震えていた。


 プロシーは恐怖で震え上がる男の元へ、”空間転移”で瞬間移動すると、男を見下ろして問う。


「最後に聞くが、お前達は何故、リムを(さら)ったのだ?」

「き、き、き、きき、貴族に、頼まれたんです。じゅ、獣人の可愛い幼女が居たら、つ、連れて来いと。そ、そしたら、か、金を払うと」

「そうか。それで、その貴族とは何処の誰なのだ?」

「わ、わかりません。お、俺は手紙でやり取りをしただけです。た、ただ、貴族はサンボルトーグに住んでいます」

「分かったのだ。情報感謝するのだ」


 プロシーはそう告げると、男の胸ぐらを右手で掴み、勢い良く上空に放り投げた。男は音速以上の速さで、真上に投げられ、空気を切り裂きながら、流星の様に一直戦に突き進んでいく。


 男は「あああああああ」と、悲鳴を上げながらおよそ上空一万メートルの位置まで上昇すると、勢いが無くなり、落下を始めた。あまりの速度にイカツイ顔を涙と鼻水で盛大に濡らした大男は、『飛翔』の魔法を使い、上空に浮いた。


(た、助かった。これで、あの化け物から逃げられる)


 男は遥か上空でそう思った。怒った竜、プロシーから逃げられると。だが、男は直ぐに、その考えが間違いだと知る。


 何故なら、上空一万メートルにいる男の直ぐ近くに、十メートルを超える巨大な銀竜が居たからだ。銀竜は鋭利な牙と鋭利な三本の爪、背中の大きな二対の翼、太く長い大きな尻尾がある、誰が見ても畏怖するであろう、巨大な竜の姿だ。


 竜の翼の羽ばたきで、大いに体勢を崩しながら、その姿を見た男は「竜⁉︎ 何故竜がここに⁉︎」と目を大きく開き驚いていたが。


「お前は特別に、我輩の全力で排除するのだ。誰にも見せてない攻撃だから、感謝して欲しいのだ」


 と、全くありがたく無い事を言うプロシー。それを聞いた大男は。


(な⁉︎ あ、あの声は、さっきの化け物⁉︎ 竜だったのか……。つーか、さっきまでの攻撃は、本気じゃなかったのかよ⁉︎ じょ、冗談じゃねー! 死んでたまるか!)


 そう考えた男は、雷上級魔法の『大雷装纏』を使い、大量の青白い雷を自身に纏わせ体を強化すると、全速力で下に降下していった。男は音速を優に超えて、超高速で逃げた。


 それを見たプロシーは「丁度良いのだ! ついでに、樹海も吹っ飛ばすのだ!」と思い、銀竜の口を大きく開き、轟音と共に眼前に巨大なエメラルドの球体を作った。


 銀竜は男が逃げた真下を向き、特大のエメラルドの閃光を放った。その一撃は光速の一撃で、瞬く間に逃げた男を飲み込み、正に神罰の様に地上に降り注いだ。閃光は地上に衝突すると、爆発した様に衝撃が拡大し、樹海の全てを消しとばし、周囲にあるもの全てを破壊した。


 プロシーの閃光により、樹海があった広大な大地は、広大な川へと変わり、地形が大きく変わった。”剛気銀竜纏”を解除して、その光景に満足したプロシーは、転移の魔法陣で町に帰って行った。

 凄まじい破壊をもたらした、プロシーの”具現纏[+竜纏]”だが、普段プロシーは使ったりしないのである。何故なら、加減ができないからだ。プロシーの竜の姿をするのが原因かはわからないが、全く加減できないのである。その為、日頃は使っていない。あくまで、今回の様に、プロシーの逆鱗に触れた時にしか使わないのだ。


 そんな訳で、普段のプロシーは、リムを助けた時に使っていた”具現纏[+人纏]”を使っている。こっちは不思議な事に加減は自在に出来るのだが、全力を出す事ができないのだ。最大の力の七割を出すのがやっとなのである。もっとも、それでもプロシーは、十分に強い為に、何の問題もないが。


 そんなプロシーが町に帰ると、町の住民全員が外に居た。プロシーはユイ達に飛んで近づくと、不思議そうに首を傾げて。


「皆、どうしたのだ? 何で、外に出ているのだ?」

「……プロシー、私達、巨大なエメラルドの閃光を見たんだけど、あれってプロシーよね」

「そうだが、何か問題あったか?」


 呆れた様な表情で尋ねてきたユイに、プロシーは再度首を傾げて聞いた。


「はぁ〜やっぱり、そうよね。プロシー、皆んなが外に居るのは、凄まじい地震があったからなのよ。プロシーが放った閃光の影響のね」

「……ああ〜そういう事なのか。我輩、そこまでは考えてなかったのだ。ゴメンなのだ」

「まぁ、びっくりしただけだから、良いんだけどね。プロシー、全部終わったの?」

「う〜む、一応は終わったのだ。だが、奴らに依頼した貴族がいるらしいのだ。だから、安心とは言えないのだ。今後、皆が外に行く時には、戦闘が出来る者をつけないと危ないと思うのだ。ゼダ、そういう事だから、決め事を頼むのだ」

「はい。プロシー様、お任せください。しかし、プロシー様のお力はやはり凄まじいですな。私ども一同、驚嘆しました」


 ゼダの言葉に続き「流石はプロシー様です!」「あの閃光は綺麗で凄かったです!」などなど、住民達が嬉々として感想を言った。皆んなが喜んでいるのを見たプロシーは。


「そうか! じゃあ、もっと本気を出せば良かったのだ!」

「「「「え?」」」」

「皆、どうしたのだ?」

「え〜と、プロシー、さっきの一撃は全力じゃなかったの?」

「あれは、”剛気纏”での全力なのだ。我輩は”超気纏”が出来るから、我輩の全力はあの程度ではないのだ。さっきは被害を抑える為に、”剛気纏”に止めただけなのだ」

「「「「そうですか」」」」


 住民達は改めて理解した。自分達を守ると言った存在が、どれだけ凄まじい力を持っているかを。そして、そんなプロシーに出会えた事に、改めて感謝した住民達であった。


 皆がそんな考えをしていると、テコテコ駆けて来たリムが。


「プロちゃん! おかえり! いっしょにあそぼう!」

「リム、了解なのだ!」

「プロシー様、この度は、娘を救っていただきありがとうございました」


 リムの後を歩いて着いて来たリザが、深々と頭を下げて言った。リムの位置に移動して、一緒にじゃれ合っているプロシーは、リザを見上げて。


「リザ、気にしなくて良いのだ! この町の皆は我輩の家族なのだ! 家族は助けるのが当たり前なのだ!」

「……はい。その、プロシー様。良ければですけど、私と」

「「「リザさん、待った!」」」


 頬を赤く染めながら、何かを言いかけたリザを、ユイ、ロンロ、クリスが止めた。三人はリザを連行して遠くに移動すると、何やら言い合いをしていた。


 プロシーは「何なのだ?」と疑問に覚えながらも、リムや他の子供達と戯れていると、リムが。

「プロちゃん。これは、たすけてくれたおれい」

「「「「ああ! リム、ズルい!」」」」


 リムがプロシーの頬にキスをしたのを見た、ユイ、ロンロ、クリス、リザは即座に移動してくるとそんな事を叫んだ。リムはユイ達を見ると微笑んで。


「おねえちゃん、おかあさん。リムね。しょうらいは、プロちゃんとけっこんするの。リムはプロちゃんの、およめさんになるの」

「「「「な⁉︎ 何のためらいもなく言うなんて、リム、恐ろしい子」」」」


 ユイ達は、リムの堂々とした発言を聞いて、戦慄しながらそんな事を言った。少し顎に手を置き、真剣な表情で考えたユイは。


「プロシー、こっちに来て」

「どうしたのだ?」


 プロシーは不思議に思いながらも、ユイの腕の中に移動した。潤んだ瞳で、頬を赤く染めたユイは。


「ぷ、プロシー。これは何時ものお礼だから」

「「「あ⁉︎」」」

「くぅぅぅ、こうなったら、私も」

「うぅぅぅ、わ、私も、負けませんよ」


 ユイに続き、ロンロとクリスが、それに感化されたリザが、頬を赤らめながら、プロシーの頬にキスをした。一方、キスされたプロシーは「皆、何がしたいのだ? 結婚とは何なのだ?」と、不思議そうにしながらも「楽しそうだから良いのだ」と思っていた。


 そんなユイ達の行動を見ていた、ゼダ達町の住民の男達が「プロシー様、娘達をよろしくお願いします」「町長、そんな〜〜〜」「お、俺のユイが〜〜〜」「ぼ、僕のロンロさんが〜〜〜」「俺のアイドルのクリスが〜〜〜〜」「リザさん、密かに狙ってたのに〜〜〜」「プロシー様、羨ましすぎる〜〜〜」などなど様々な感想を言っていた。


 その後、落ち込んだ男達を励まし、皆んなで昼食を食べに、食堂に向かったプロシー達であった。

 次回、水曜の十八時頃に投稿予定です。

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