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町ごと召喚で呪われ 呪われて美少女になった俺は高校生男子です  作者: 茶山 紅
第十の呪い 呪われた街と傾国の美女と悲恋の乙女
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十二の呪い オレはお姫様じゃないしあいつは王子様じゃない


「とにかくだ。

 このままだとたとえ家に帰ったとしてもまた誘拐される。

 迷惑極まりないんだよ」

 そうオレはうめくように言いながら肉を食べる。

「二度とあそこには戻りたくない」

「そんなにつらかったのか?」

「服はこっちが望んでいないのにめちゃくちゃ少女趣味のドレス。

 しかも肌触りとか装飾品だけはめっちゃ上等。

 あれでいくらかかっているのか想像するだけで庶民には心臓がいたいね」

 そう答える。

 おそらくあいつは大枚をオレにつぎ込んでいる。

「正直、それの責任をとれと言われてお金を要求されたら臓物を売るしかオレには方法が思いつかないね」

 責任して嫁になれと言われることは呪いからないだろうと思う。

 とはいえ、それでも返金を求められたら内臓をうるしかない。

「向こうが勝手に渡してきたからさすがに大丈夫だと思うが……」

「それだけじゃない。

 用意される食べ物もやたらとお菓子ばっかりだ。

 甘ったるい砂糖たっぷりのお菓子ばかりだ。

 お菓子以外は軽食のサンドイッチやおしゃれなサラダという理由。

 オレは肉が食べたいんだよ! 肉が!

 おしゃれな料理じゃなくて腹にがつんとおなかに貯まる料理が食べたいんだよ。

 牛丼とか肉じゃがとかすき焼きとかそういう和食じゃなくてもよいから!」

 そう叫ぶ。

 そしてやってきた厚切り肉のステーキをかぶりつく。

 礼儀作法とかマナーとかは興味はない。

 もちろんわきまえているが、今はどうでもよい。

「あー、うめえ」

 口いっぱいに広がる肉汁。下味としてつけられた塩とこしょう。それだけではなくて様々な調味料を混ぜ合わせ肉汁と油と煮詰めたソース。

 それらが口の中で広がり体に染み渡る。

「そもそも……本物の女だって肉を食べるだろうに」

 そうあきれたようにつぶやく。

 確かに世の中にはベジタリアン。菜食主義者といって肉を食べない人もいる。けれども多種多様だ。チーズや牛乳といった肉じゃないものなら食べるという人。魚も食べるという人もいる。けれども徹底した人はそれらの動物性タンパク質をとることを嫌がる。

 けれどもその代わりに植物性タンパク質。

 つまり豆や豆腐と言った代物を食べたりしている。

 生きていく上ではタンパク質は必要ということだ。

 特にオレみたいに成長期となるとだ。しかもあの食生活はそういった健康面は全く考えていなかったことがわかる。やたらと砂糖を与えられたお菓子中心の食生活。

「糖尿病にして殺したいのかと思ったね」

 そう言いながらオレは添えられた野菜を食べた。

「そもそもオレは日本人。

 やっぱり米、味噌、醤油が食べたい」

「それはわかるわね」

 オレの言葉に薫はそう言って同意してくれた。


「まあ。異世界だし別に味噌と醤油や米が手に入らない。

 それに関してはしょうがないと思っているけれどな。

 せめてタンパク質ぐらい用意してほしいもんだと思ったんだよ。

 いや。野菜などちゃんとした料理を出してほしいんだよ。

 あいつが用意したのは全部が菓子だ。

 オレを殺したいのかと思ったね」

「確かにそれは問題だな」

 オレの言葉にフィリが同意する。

「格闘家として体が資本というのもあるだろう。

 だが、それがなくても食事に三食をお菓子ばかりにするというのは愚行だ。

 不健康なことだということは医学の知識がない素人でもわかる」

「そもそもお菓子。それも砂糖を使ったのは高級品だというのにな」

 ローイも同意する。

「そうなのか?」

「庶民がめったに手に入らない。と、まではいわない。

 だが、甘味というか娯楽で食べるとなるとめったに砂糖を大量に使ったものというのはそうそうないな。あったとしてもさほど手間がかからない品。

 飴などがほとんどだ。

 ヨシキの言うような菓子の類いはそれこそ貴族。それも財力と地位がある貴族じゃなければ日常的に用意することは難しい」

「ヨシキさんにしっかりとお金をかけていたんですね!」

 ローイの言葉にフールが笑顔で言うが、

「どうせお金をかけるならば生活環境をオレが望む環境にしてほしいね。

 それこそそんなお金の使い方じゃなくてオレが食べやすい料理を用意してほしい。

 そもそも幸せにしたい相手の幸せを決めつけている時点で幸せになんてでいないね」

 オレはそうきっぱりと吐き捨てた。

「どういう意味よ?」

「そのまんまだよ。

 たとえばそうだな。恋人に誕生日プレゼントを送ることにした。

 一人の男は雑誌……まあ。要するにいろんなところから情報をまとめて大勢の顔も知らない女の子が最もほしがっているアクセサリーを用意した。

 ある男はどんなのがほしいのかを尋ねた。装飾品ならばどんなのがほしいのか。どんな色が好きなのか。どんなのだと使いやすいか。それを聞いてリストバンド……まあ。腕につけるタオルを用意した。

 そこでプレゼントを贈られた女だがスポーツ……運動が好きでアクセサリーに興味がない。それと金属アレルギーほどじゃないが金属の品にかぶれやすい体質があった」

 アレルギーというのがこの世界の概念にあるかは知らないがそうオレは言う。

「アレルギー?」

「拒否反応だな。食べるとかゆくなったり息が出来なくなったり心臓が止まったりする。薬とかで治ったり好き嫌いじゃない。多いのが食べ物……小麦や卵、牛乳などが有名だけれどな。まあ。アレルギーじゃないから苦手という感じだ。

 どっちが喜ばれると思う」

「後者ですね」

「そうだ。そりゃ確かに最大多数の人気の品というのも高確率で正解だろう。

 けれども相手と話し合って幸せに……大勢の誰かを幸せにするんじゃなくて誰か一人だけならばその人の話をきくべきだ。

 それで相手が喜ぶことをする。それが一番だろう」

 まあ。サプライズをしてほしいというのもあるだろうがそれは付き合いの長さで出来ることだったりするのだから……。


「まあ。あのバカ坊ちゃんは自分があげたいだけで喜んでほしいという考えすらないな。

 相手のことを何も考えていない。

 あいつは理想の女という人形にプレゼントをあげているだけだ」

 そう俺は切って捨てる。

「多少はまともな脳みそがあたら食生活を普通、もう少しは健康を考えるものだ。

 それにあの使用人の連中も何を考えていているんだよ」

 忌々しげに俺はうめく。

「普通、あんな食生活に料理を作っている料理人ぐらいが栄養バランスに対して何かしらいうだろ。それともこの世界には基本的な栄養についての知識もないのか?」

 そう怒鳴るように言う俺に、

「馬鹿にするな。多少はある。

 肉だけ食べても健康に悪い。野菜も果物もバランスよく食べるべきだ。

 その程度の知識はプロの料理人じゃなくてもあるものだ。

 まあ。家庭によって肉がそう簡単に手に入らないというのもあるが……」

「今回のは違うだろ」

 ローイの言葉に野菜のポタージュスープを飲みながら俺はにらむ。

「あれだけ無駄に豪華な装飾品をいらないといっているのに渡したんだ。

 それならばきちんとした食事ぐらい用意できるだろ。

 別に和食と言うのは無理だろうが」

 そう俺は言う。

「まあ。言いたいことはわかる」

 俺の言葉にローイは言う。

「とにかくなんとかしないとまた無理にでもさらうぞ」

「だろうなぁ。

 ありゃどう考えてもやばいやつだ。

 俺が逃げ出したのだってプラス思考に考えてまた誘拐しそうだ」

 そうため息交じりに言う。

 やっかいなのがそこなのだ。

「何しろ俺は家柄云々じゃない。

 この世界に存在しないはずの存在。

 人権も国籍もなにもない。

 誘拐したって国が文句を言うというわけじゃない。

 ついでに言うと親は魚だし」

 そうため息交じりに言う。

「とはいえ、お前をそのままさらわれてしまうというのは困るのは事実だ」

 そうフィリが言えば、

「確かに僕とて貴方を独り占めされるなんて言うのは」

「呪われているバカはさておいて」

 ローイの言葉を遮りフィリが続ける。

「呪いを解綬するために必要な魔法道具はお前のものだ。

 お前以外が持つことも出来ない品だ。

 だから呪いをどうにかするのにはお前が必要なんだ」

 すがすがしいまでの友情も人情もないただの利害の理由。

 とはいえ、それは事実だ。何より、

「確かにそこを指摘すれば相手が貴族だろうが説得できるな」

 そう俺は言う。

 感情論なら無視されるだろうがこういった理由ならば別だ。

 そもそもこの世界としても呪いの魔女王には悩んでいる。

 だとしたら説得の切り札になるというわけだ。


「とはいえ、問題はあのバカの頭の中だろ。

 あいつはたぶん何を言われても自分の都合のよいようにしか解釈しないぞ」

 ため息交じりに俺はそうつぶやく。

 事実、あのバカは何を言っても自分の都合のようにしか聞かない。

 おそらく不愉快や邪魔と思ったら何も考えずに排除するタイプである。

 そう指摘する。

「そもそも、こうなるともう廃嫡というか跡継ぎにはしないほうがよいんじゃないのか?

 適当などっか田舎に療養させたほうがよいだろうに」

 そうローイが言う。

「いや。一応、体調が悪いからと」

「ああ。すまん。療養には二種類の意味が貴族にはあるんだよ。

 一つは実際に体が弱いから体調回復をさせるための一般的な療養。

 だが、もう一つ……そいつが家の存続に邪魔。家名を汚す。

 そういった不都合な存在と判断されて外に出せない。

 そう判断した場合の対処だ。

 家の名前だけあるが権力を取り上げて実質などに監禁状態。

 つまり療養というなの監禁だな」

 そうローイが言う。

「まあ。普通ならば教会などで神に仕える。

 そういう立場にして権力を与えないでいる。

 そういった方法をとるのが普通だ。

 それだって罰になるんだよ。

 権力はないし食生活は不自由。自分のことは自分でする。

 けれどもまだ寝食には困らないし天寿は全うできる。

 真面目にすればそこそこの地位などもある。

 だが、療養は違う」

 そうローイは言う。

「監禁しているから地位もないし使用人はいるがその質は他のやつが管理をしている。

 それこそ人が全くいない囚人当然の扱いもありえる。

 それと場合によったら食事に毒をもる。

 そういったこともできる。

 療養させるというのはうまく矯正させればよいが……。

 できなければ殺します。そういった対応でもあるからな」

 ぞっとした恐怖を俺と薫は覚えた。

「まあ。そっちの世界ではないみたいだけれど……。

 貴族が考えなければいえないのはまず家の存続。

 けれども問題児をいつまでも抱えておればその家も潰れる。

 林檎の腐った部分をいつまでも保存できない。

 早めに切り捨てないとね」

 そうアリスが言う。

「事実、あたしも似たようなもんだったしね。

 ただあたしの場合は希少なスキルがあったから……。

 捨てるわけにはいかないという理由でしょうね」

「まあ。アリスの法は確かに変人ですが……。

 とはいえ、人様に致命的な迷惑をかけていませんよ。

 ある意味、家を捨てることで家から離れていますし」

 そうアリスの言葉にフルーが言う。

「異世界ギャップ」

 俺はそううめきながらもポトフを飲み込んだのだった。


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