第四話 傾国の美女に惚れた男は破滅するというが女だけが悪いわけじゃない
傾国の美女と評される女といえば有名どころでは妲己である。
封神演義という中国伝説のおとぎ話(西遊記、水滸伝と並ぶ有名な話だ)でも時の皇帝が彼女の色香に血迷って彼女の言うがままに政治を行った。
その結果、国は衰退してしまったという話である。
物語ではともかく史実としてこれが全く正しいのかは謎である。
そもそも当時を生きていた人はいない。そして歴史というのは勝てば官軍という言葉を体現している。
勝った方が負けた方がどれだけ悪かったかを書いて自分たちを正当性を主張する。
有名なのでマリーアントワネットだろう。
フランス革命の時に最後に王妃であったというマリーアントワネット。
世間のイメージでは浪費家で派手好きな市民のことを顧みない悪女として描かれているが、実際のところは違ったという。
もちろん王族生まれだったので庶民の暮らしなどは詳しくなかっただろう。だが、当人は至って天真爛漫ながらもクリスチャンとしては真摯だったという。
かの有名な言葉である『パンがなければケーキを食べればよいじゃない』という言葉も実際は当時の新聞記者が王室に対する反感を上げるために捏造した言葉とされている。
革命を引き起こすためには王族を悪者にする必要があったというわけだ。
そのために外国から嫁入りしており国の顔役でもある王妃というのは良いターゲットだったのだろう。
実際のところ処刑される寸前の時にマリーアントワネットは自分を処刑する人の足を踏んでしまったときに謝罪をして思いやりを持って接していたという。
裁判の時も子供の虐待に対しては真正面から否定して母親として失礼と評しており膨張していた国民の母親から擁護されたという話も聞いたことがある。
そのために妲己に関しても実際には違うという。
確かに皇帝が妲己の色香に迷ってしまって政治を誤ったのは事実かもしれない。けれども実際のところ当時の中国で女性が政治にさほど口出しができるほどの頭脳があったとは思えないのも事実。
おそらく妲己はちょっとしたわがまま程度だったのだろう。それを皇帝がなんでもかなえてしまいどんどんと国を衰退させてしまったのだろう。
女性の色香にさまよって自分の仕事をおろそかにして公私混同をしてしまった。
それを考えると行使を分けることができなかった皇帝にも責任があるだろう。
実際のところ、国が滅びたときに皇帝も死んだという。
まあ。国を滅ぼすとなるとその象徴というかトップである王が死ななければならないのだから当然といえる。
何が言いたいかというと傾国の美女に惚れてしまい悪事をしてしまう男。彼らは断じて被害者ではない。
確かに女性が悪いところもあるときもあるだろうが男にも責任がある。
実際のところ、ホステスやキャバ嬢などに入れあげて借金を重ねる男がいる。けれども借金してまで貢ぎ果てでも女性の方はあくまでお仕事でしかないんです。そういう金での対応だったとして男がだました。悪女というが最初からそういうお店にいる女性だということなのだから勝手なことである。
アイドルだってにたようなものでありお金を貢いでもそれでちゃんと当人たちはサービスを受け取っていたのである。なんで自分だけが特別と思ったのかはわからない。
そういった思い込みというのである。そりゃ詐欺師とかそう言うのになれば女の方が悪いだろうが……。
長々と思っているが結論とすると今回の騒動。
オレの呪いも悪いだろうが問題としてあのバカ坊ちゃんが最も問題だと思う。
相手は人間なのだ。
感情がある。
自分の理想通りの人間なんているわけないのだ。
理想に限りなく近い女性はいるが理想通りはいないのだ。
しかもあのバカ坊ちゃんの場合は、理想が高すぎるというか非現実的なのだ。
あのバカ坊ちゃんの理想のお姫様はいつも甘い砂糖が死ばかりを食べているような少女というイメージらしい。出される料理もほぼそんな感じである。
とはいえ、それは健康的にあり得ない。
そしてろくに外出しない環境。
高カロリーの料理ばかりでありこのままだと順調に肥満になる。
オレの場合は呪いの影響で肥満はまだしていないがそれは呪いの影響だ。普通の女性ならば間違いなく体重が増えていただろう。
「本物の女性だったらさぞかし恨まれたんだろうな」
思わずそうつぶやいた。
現実問題、あの環境は不健康だった。
「あのままだと普通の人間ならば髪の毛とか体形とか問題が出てきたんだろうな」
思わずオレはそうつぶやく。
そもそもだ。
あの環境。拉致監禁状態であり軟禁状態にも近い。
食生活も行動も自由を奪われているようなものだ。
それを考えるとさぞかし不満である。
美貌の大敵の一つはほかならぬストレスである。
ストレスが溜まっていけば美しさもなくなるだろうし精神が摩耗する。
最悪、ストレスなどで見た目が損なわれた場合、あのバカ坊ちゃんはどういていたのだろうか? そんな疑問を抱く。
心を病み本当の人形になってしまったらどうするのだろうか?
「理想を見て現実をみていないんだよな」
そういったやつはどうやっても幸せになれないのだ。
理想は現実にならないのだ。
理想を努力するのは当然だし追い求めるのも納得だ。
だが、どこかで現実と妥協するべきだろう。
そう本気で思う。
だというのにアイツはそれができていないのだ。
女性は理想通りの相手と思っており理解していない。
「そもそもどんな美人だってトイレに行くし屁をするんだっての」
そう呆れてしまう。
おそらくだがあのバカ坊ちゃんの場合は、たぶんオレが目の前でトイレへ行こうとすることすら認めないかもしれない。
それを考えるとやはり逃げ抱いて正解だった。
そう思いながらオレは歩く。
「しかしどうやるかが問題だな」
そう思っている中でどうにか街が見えてきたのだった。
町へとたどり着いたオレはとりあえずフードをかぶり適当に町中を歩く。
あいにくとあの屋敷から物を手にしてきたが換金はできない。
理由は簡単である。
あの屋敷のものを勝手に監禁したら間違いなくオレは盗人になるからだ。
そのために服だって逃げ出してきたのである。
布の方も元々、捨てる予定らしいしろものだ。この程度ならばなんとかなるだろうという理由だ。とはいえ、お金になるような品を盗むわけにはいかないのだった。
理由は簡単である。
盗めばそれは間違いなく泥棒になってしまうからだ。
相手は貴族である。
この世界の貴族の地位というのはよくわからない。
だが、出会ったことがある王族から察するに身分があれば黒いものも白と主張できる。そんな理不尽なほどの力を持っている様子である。
その相手から物を盗めばいくら異世界人ということから特殊ということもあり守られている立場でもただでは済まないだろう。
牢獄に入れられるならばよいだろうが自分のところで労働で返す。
そういう名目で連れ戻されてしまう可能性だってある。
そうなると後は最悪だ。
逃げないようにもっとひどい監禁状態になりかねない。
借金のかたに結婚させられるという形もあり得る。
まったくもって愛のかけらもない結婚であるがあの脳みそお花畑お坊ちゃんならばこれで君をそばに縫い留めて置ける。
そして自分の恋がいずれ伝わる。
そんなことを言い出しそうで怖い。
あいにくとこの世界では同かは知らないがオレの世界ではそういったことは基本として犯罪ぎりぎりである。
とはいえ、これが業務の借金とかそういったものならばともかくだ。オレが盗みをした場合というとオレの非があるのは否定できないのだ。
いや。強制誘拐と軟禁状態というのははたして悪くないのかというのはおいておく。
とにかく相手に攻められる要素をこれでもかとそぎ落としたい。
この服になるものや食べ物などは幸いだろう。
何とか着の身着のままというかぼろ布をまとって逃げ出しました。
食べ物は食べてしまえば証拠隠滅である。
そうすればこの布について言われてもまさか裸で逃げ出せと? そう言えばさすがに攻める要素としては弱くなるだろう。
後は、ラフェレアに助けを求めれば大丈夫だろう。
さすがに誘拐された場所で逃げ出すためにぼろ布の一枚程度ならば守れるだろう。
それにしても、
「この世界の人間ってまともな奴って少ないのか?」
思わずそうつぶやいてしまった。
今まであったのでまともなのはラフェレアとフィリア。
そしてフルーである。
ローイは今はまともだが初対面の印象は最悪。
アリスは自他ともに認める変人の変態だ。
フィリアの身内やアリスの妹のお姫様は元より後はほとんど迷惑極まりない連中がほとんどだ。明確に犯罪者とされるのはともかく犯罪者扱いされていないやつもいるのが質が悪いとしか言えない。
しかも俺たちが異世界人。
この世界では後ろ盾も戸籍も身分も何もない。
行ってしまえば死んだところで文句を言う国も何もないという状況なのが質が悪い。
幸いなのが魔法協会が理性がある善良な人が見ていること。そして一つの大きめの街という形なので秘密裏に隠されるということがされていないということである。
とはいえ、それでもこうして明確に自由を与えられている。
ひょっとしたら知らないだけで他にも事情がある可能性がある。
まあ。とにかくそれを今は考えてもしょうがないのは事実であった。
どうにかこうにか町へとたどり着く。
否応なく俺は一目がついてしまう。
まあ。当然といえば当然だろう。
ボロボロの布を巻き付けたような服を着た仮面をつけてハリセンをもった女。
当然、目立つ。
現代日本でも奇異な見た目の部類に入るこの姿は異世界でも奇異の部類に入るらしい。
まあ。この外見が普通と判断される世界というのもいかがなものかと思う。そんな現代日本だったら通報間違いなしの奇異な恰好。
そんな恰好をしているというのに男たちはオレを見て頬を染めるのだ。
呪いの恐ろしさにオレは呆れてしまう。
いや。何に対して呆れているのかと聞かれたら困るのだけれどな。
そう思いつつも俺は魔法協会を探す。
一応、オレは呪われている。
まさかそう簡単にあのバカ貴族に引き渡したりしないだろう。
何しろ俺の呪いは経国の美女だ。
下手に俺を手に入れようとしたならば自分やその周辺を滅ぼしかねない。
何しろ経国の美女として少なくとも俺の世界で有名な妲己。
あの美女は本当に国を滅ぼしたというか時代を一つ、終わらせたほどだ。
しかも彼女の場合は天性のものというか時代の流れというのもあったと思う。けれども俺の場合は呪いだ。
呪いの影響というのはまごう事なき事実。
その事実を無視できないし否定できない事実。
その呪いがこれからどんな作用をするかはわからない。
最悪、一人の美女を狙って肉親、身内で骨肉争うような修羅場の血みどろというのは嫌だ。前に見たドラマなどで父親の不倫相手に惚れてしまった息子というようなドラマがあった。あらすじだけで胃もたれするような話だったので見なかったが……。
現状でそれが笑い話にならない実現ありえない話である。
貴族というのが俺達の世界みたいに一応の爵位というか肩書だけ。そんな存在ではないということはわかっていた。
おそらく貴族には地位と立場それ相応がある。
本物のその貴族だ。
黒を白といえば白としてしまう。
そこまでじゃないにしてもそれも不可能じゃないとありえない事実。
それを考えるというのもあったというわけだった。
それを考えると俺は間違っても地位や立場がある人間の元にいくわけにはいかない。
そうなれば俺の呪いがさらに強化される可能性が高いというわけだ。
それを考えると無視できないのも事実である。
とはいえ、
「その理屈を聞いて理解してくれるとは思えないんだよな」
そうオレはため息交じりにつぶやく。
そう思いながら町中を歩いているがそれでも俺を見る男はいる。
つか、何人かが口説いてきている。
どれも無視して歩いて行っているが、
「おい。いい加減にしろよ」
きわめてしつこい男がつかみかかってきた。
「そんな姿をしているんだからよ。
まともな服を着てまともな飯を食べたいだろ。
一緒に行けばそれをしてやると言っているだろ」
そう男が怒鳴るように詰め寄ってきた。
厄介だな。そう思っていた中で声をかけてきたのだった。
余談ですがマリーアントワネットのパンがないなら~の言葉はデマらしいんですよね。調べるとマリーアントワネットは決して悪女じゃなかったです。時代が悪かった。ただそれだけ




