第一話 聖女が清らかとは限らないけれど、変態変人は嫌だな
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ルヴィナガルド皇国。
かつて、古より神が君臨して禍々しい魔を滅ぼした。
そして、この地に国を作ることを命じて一人のリーダーを決めてそのリーダーに神の力を分け与えた。
そして、その者は皇帝となり国を栄えさせている。
神の名のもとにすべては平等であり、愛を伝えあいすべてを平和にする。
ルヴィナ教を国教として広めているのである。
「まあ、珍しい話じゃないわな。
国の成り立ちの神話としては」
と、俺は話を聞いてそう答えた。
「そうなのか?」
「俺たちの世界でも、宗教はあるけれどな。
国の成り立ちにかかわる宗教となると、王は神の血をひく。と、いうのはよく聞くぞ」
日本にある日本創世の神話でも、天皇の先祖は神の血をひいている。と、いう逸話がある。嘘か本当化は知らない。あいにくと、俺は神様と出会ったことはない。
魔女やら魔法使いやら異世界人やら魔物やらハーフエルフとかには会ったことがある。
まあ、それはどうでも良い。
「まあ、大昔のほうだと王様が偉いんだぞ。と、いう証明。
その証明になるのは、王様が神様の血族だ。
と、いうことが無難な方法だからな」
と、俺は肩をすくめて言う。
王様だから偉いんだ。と、いうよりも最初は神聖的な存在だ。と、いうのも一つだ。
「まあ、宗教の中にはそういうのはわりとよく聞くぞ。
キリスト教のほうは、そうはきかないけれど信託を聞くとかそういう聖女。聖人というのはわりと聞くな」
聖人で有名と言えば、イエス・キリストだ。
「俺の国でもそういう話はあるな。
とはいえ、今やその天皇……王様みたいな存在だ。
彼らに国政をどうのこうのする権限はないんだけれどな」
と、俺は言う。
「俺の国は基本的に平等なんだ。
昔は、親が農民だったら子供も農民にしかなれない。
と、いうのがあったが、今は違う。親が商人でも、子供が学者になる資格がある。親が、医者でも子供が医者になるとは限らない」
まあ、親が子供の後を継ぐために医者になろうとする。と、いうのはある。ついでに、医者になるために裏口入学があるが、それは置いておく。ただ、間違っても裏口入学は目値をしちゃダメな奴だ。
「とはいえ、皇族は……天皇の一族だぞ。王族みたいなものだ。
特殊でな。国の象徴みたいなもので、外交とかに挨拶をする。
言ってしまえば、政治はできないが国のシンボルにはなっているんだ」
ちなみに、何気に重労働だと俺は思う。
他国に訪問したり、他国の偉い人が来たら挨拶をしたり、されたりする。他にも、ボランティアや何かをしたり、年末年始などの神事などもきっちりとする。
天皇の位を受け継いだら、基本的に死ぬまでずっと続く仕事だ。定年退職も労災もない。そういえば、天皇が引退する。と、いう話題が出ていたが、その結果がどうなったのか? と、いう答えを聞く前に異世界転移をしてしまっていた。
まあ、大変な苦労なんだよな。と、俺はしみじみと思いながら説明をした。
「じゃあ、政はどうしているんだ?」
と、聞いたのはローイだ。そういえば、ローイは貴族とからしい。それを、考えると政治にもそれなりに興味を持つよな。と、俺は納得して説明をする。
「日本は、民主主義だな。
いろんな考え方があるが、俺の世界じゃそれが比較的に主流だな。
政治、つまりは政だな。
その政治を行う人間を多数決で選ぶんだ。
一定の年齢になっていて、数年間のリーダーを決める。で、そのリーダーが数年後には、また選びなおす。と、いうシステムだ」
あいにくと学生なので、そこまで詳しい説明はできないが簡単にいえばそうだ。
「ちなみに、政治を行う人間でも分野があって、一人だけが決めるんじゃない。いろいろと、役職があるし犯罪者を取り締まるのは別組織で独立をしている。
簡単に言うと、法律を決める。法律を違反した人間を捕まえる。法律を違反した人間を裁く。この三つの組織は完全に独立している」
と、俺はそういう。
「つまり、ついでに政治をする人間は一人じゃないんだよ。リーダーがいるが、リーダーが言ったところで過半数の賛成を取らないとだめだ」
と、俺は説明をする。
「なんだか、時間がかかりそうね」
と、アリスが言う。
「まあ、民主主義の欠点の一つだな。
独裁者はできないが、決めるのに時間がかかる。
また、政治を私利私欲に利用しようとする人間もいる。
まあ、利点しかない問題のないシステムというのは存在はしないさ。
メリットとデメリット。欠点と長所。
二つが組み合わさっている。どちらをどうとるか、そしてその欠点をどうやって補うのか? それらを、考えて人は文明を発展させていくんだと思うぞ。
それに、俺が言ったのは簡単なシステムだ。
そういう詳しいのは政治学を学んでいる大学生かその教授に聞いてくれ」
「大学生?」
「そこからかー」
と、聞き返すローイに俺は言う。
「俺の世界……と、いうよりも日本だな。国によって微妙に違うからさ。
俺たちの世界だと、その年に六歳になる子供から九年間、学校に通って知識を学ぶ。学ぶ内容は、基本として文字の読み書き、数の計算、生物や植物、地理などの自然の仕組み。そして、歴史や地理、社会のシステムを学ぶ。
最初の年は、簡単だが年を重ねるごとに難しくなっていく。
で、最初の六年間で通うのが小学校。その次の年に通うのが中学校。
その後、さらに高等知識を学ぶために高校に通う。俺が、その高校だ。ちなみに、高校に入るには学校ごとにいろんな審査があって、知力や素行捜査がされる。
さらに、高校を卒業したら特殊技能の分野を実践式で学ぶ専門学校。あるいは、さらに専門的な知識を学ぶ大学と通う。それが、日本ではわりと普通だな」
とはいえ、俺ははたして高校を卒業しても大学に入れるのだろうか? 今の状況では、大学ももはや無意味になっている。
「お前たちの国は、勉強好きなんだな」
「いや、単なる裕福なのとか、学歴がものをいうだからだろうなぁ」
と、俺はフィリの言葉にうめく。実際のところ、中学卒業資格だけでまともな仕事に就くことは不可能だ。最低でも高校を卒業するのが、就職するのに必要なのだ。
よほどの特殊な仕事じゃない限り、高校卒業はもはや必要な資格だった。
「まあ、日本の学校は入学するのは大変でも卒業は簡単。と、いうやつもいるな。
少なくとも、高校はそれが多いな」
と、俺は言う。ちゃんと真面目に学校に通っていたらよほどのことがない限りは、退学にも留年にもならないのだ。
「まあ、誰しもにある程度の可能性が用意されているんだよ」
と、俺は言う。
まあ、全ての人間が完全に平等な条件を与えられているわけじゃない。
「けれど、学校に通うのにはお金がかかるのではないのか?」
と、ローイが言う。
「まあな。小学校、中学校までは最低限のお金で基本的には税金で賄われている」
とはいえ、給食費といった代金も要求されているのだ。
「けれど、高校は入学金や授業料がある。
まあ、公立……国が運営を手助けしている学校……代わりに口出しもするけれどな。そこなら、授業料が多少は安くなる。
その代わりに入学するのは厳しいんだけれどな」
更に公立の場合は、県立、市立、国立と三種類がある。それらの違いなどがあると、説明が面倒なのではしょる。
「まあ、学校によって力を入れている分野が違う。
それに、特待生というのもあるからな」
「特待生というと……。
才能を認められた生徒が貴族が支援をして学費を払ってもらうシステムよね」
と、フィリが言う。
「それは、こっちの世界の話だな。
こっちの方は、わかりやすく言うと国や学校側が学費などを一部を免除してくれるんだ。まあ、免除したお金を後で返さなければいけない場合もあるんだけれどな」
と、俺は言う。
「で、特待生になる条件もいろいろとある。
たとえば、成績優秀な生徒だ。ただし、その場合は成績で常に一定の水準をクリアしていないといけない。と、いう決まりがある」
と、俺は説明をする。
まあ、あいにくと平凡な高校に通う平凡な成績の俺には縁がないのでわからない。
「後は、スポーツや芸術関係だな。
例えば、絵を描くのが上手。あるいは、運動神経が優秀。
で、スポーツや美術。そういう関係に力を入れている学校。
その学校ならば、そういう生徒を特待生にするというのもある」
と、俺は説明をする。
「優秀な生徒はそれほど、多くないけれどな。
けれど、家柄やそういうスポンサーを見つける。
その可能性は、多いはずだぞ。
で、親が犯罪者とかそういうのでいじめをするのはよくない。と、言われている」
まあ、そう言ったところで偏見がないわけではない。俺の世界でも、犯罪者の家族が身内に犯罪者が出た。と、いう理由で家に人殺しなどの罵詈雑言の張り紙などを張られて、追い出されてしまう。と、いう話を聞く。
遺族や被害者にとっては、坊主が憎ければ袈裟まで憎い。と、いう心理なのかもしれない。とはいえ、
「まあ、警戒したり嫌悪を抱くな。とまでは言わない。
感情なんて理性だけですべてが制御しきれるとは思わないからな。
けれどだ。あのフルーを殺してしまえ! その発想は狂気すら感じるね」
フルーを殺せ! と、思う人達の考えはまるで操られているように思う。
「複雑なことを言うわね」
と、アリスは言う。
「まあ、けれど……。
未曾有の大災害だったというのもあるんでしょうね。
けれど、一つの仮説に真実味が出る話ね」
どういう意味だ?
と、俺はアリスを見る。
「あたしは呪い屋でね。
呪いについて詳しく調べているわ。
特に呪いの魔女王についてもね」
と、アリスは言う。
「呪いの魔女王は世界各地に呪いをしている。
いまだに残っている呪いもあるわ。
けれど、死に際に残したという呪い。
その呪いの規模や魔力の威力。
それを考えると、自分が復活するようにした呪いだけじゃないの。
世界中を飲み込むような呪いをかけていると思うのよ」
「世界中ね」
その言葉に俺もある可能性を思い至る。
「つまり、精神操作系の呪いか?」
「精神操作だと?」
俺の言葉にローイが驚きの声を上げる。
「そうだ。
おそらく、呪いの魔女王に対する反感を持つ者。
それは、反感を強く持ちフルーへの嫌悪や殺意を増幅させる。
そして、呪いの魔女王を崇拝している者たちは、さらに崇拝する。
争いが繰り広げられれば、血が流れ怨みや憎しみがはびこる。
それが、負の感情があつまり呪いの魔女王にとって有利になる。
と、いう可能性があるというわけだ」
と、俺は冷静に言う。
「それは、あたしも同感ね。
そういう仮説よ。
あたしが平気なのは、聖淑女の力でしょうね」
「聖淑女?」
淑女って性格か? お前は? と、俺は内心であきれる。
「うちの血族で代々に、少女一人に受け継がれる加護よ。
あらゆる呪いの力を弾き飛ばすという力。
ま、その身から呪いから守るというものなんだけれどね。
おかげで、家じゃ軟禁生活。
家出するのも大変だったわよ。
計画して、十年もかかったわ」
「お前、実はすごく重要人物なんじゃ」
と、俺は思わず言う。
実際に、ローイとフィリがあんぐりと口を開けている。
「くだらないわよ。
そもそも、そんな加護しかみていない家なんてごめんよ。
あたしというのをきちんと見てくれる場所がいいわ」
と、アリスは言う。
まあ、俺からしたらどう転んでもアリスは変態変人だと断言できるものだった。




