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町ごと召喚で呪われ 呪われて美少女になった俺は高校生男子です  作者: 茶山 紅
第七の呪い 不思議の国でも鏡の国でもなく呪いの森の呪い屋娘アリス
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第二話 男にモテても嬉しくないが、同性愛者の女にモテても微妙だ。


 現れたのは一人の少女だった。幸い? な事に、少なくとも上下逆でも裏表でも前後ろ逆な服を着てない少女であった。

 まあ、いささか……いや、かなり少女趣味な服だった。薄めの青いふわりとしたワンピースに白いフリルが特徴的なエプロンがついている。俗に言うエプロンドレス。と、言うやツナのだろう。流れるような長髪は、白雪姫を思わせるような漆黒。いや、肌も白く唇は血のように赤くアリスと言うよりも白雪姫(スノープリンセス)と、言うべきかも知れない。フリルをふんだんに使い、髪の毛にも白いリボンをつけている。

 絵本に出てくる女の子と言う感じであり、フェミニンとも言うべきだろう。

 ただし、体格は少女としてはいささか豊かかもしれない。胸はあるしくびれもある。たしかに、大人の色香が溢れているがそれと同時に少女のようなまだ未成熟の美貌を感じさせる。あえて言うならば、未完成と完成の狭間にある美。と、いうやつだろう。

 そう俺が思っている中で、アリスとオーエムを荒れる少女は、フルーに抱きつく。

 フルーにここまで好意を露わとする人間というのを、俺は初めて見た。

「あの、アリス。苦しいです」

「ん~。フルーちゃんの匂い。ああ、甘くて酔い匂い。

 ああ、汗が流れている。汗の味がする。うふふふ。髪の毛も素敵」

 ……いや、たしかに嫌っていないようだが……。

 なんだろうか? その好意が普通の女の子同士が持ち合う好意とは……方向性が違うような気がする。

 と、言うか変態的な気配すら感じさせる。

「あのー」

 と、薫が話しかける。

 女の園……女子校に通っている薫は、こう言う空気になれている様子にも見えた。

 ……ふと、俺の脳裏に浮かんだのは、女同士の禁断の関係。お姉様とか妹とか……そう言う妖しい関係が脳裏に浮かんだが……、速攻でその可能性を否定して切り捨てる。

 ただ単に、そう言うのは妄想の中だけで十分だと思うからだ。

 百合も薔薇も現実には必要無いとは言わないが、俺の身近にあって欲しいのはただの植物だけで十分だ。まあ、俺の縁が無いところで幸せになるんなら百合だろうが、薔薇だろうが、沈丁花だろうが彼岸花だろうが好きにすればよい。

「ん? あら? キャー。こっちにも素敵な子」

 と、アリスと思われる少女は声をかけられてようやっとフルー以外に気付いたらしい。そう言うと、俺に思いっきり抱きついてきた。

 豊満ではないが、けして貧相ではない。そんな柔らかい胸が俺に触れる。

「うふふ。しみ一つ無く傷一つも無い肌に、芸術品のような四肢。

 理想的な体着きに問題一つもない顔立ち。

 まさしく美の化身。

 フルーちゃんも魅力的だけれど、こっちは完成された美貌。

 ああ、すて……ん? この感じ」

 と、ぺたぺたと触れて居たアリス(推測)が、ふと顔を怪訝にするとじっと俺を見て、

「あなた、呪われている?」

「ああ、そうだ」

 と、言う。

「呪いで性別が変わっていて……念のために言うなら、男だ」

 その言葉にアリス(推測)は、しばらく目をぱちくりさせた後、

「素敵。全人類の男が女になれば良いのに」

「「「良くねえよ」」」

 歓喜に震えつつ叫んだ内容に、フルーとアリス(推測)以外が、思わず声を上げていた。


 アリスはどうやら、同性愛者だったらしい。

 ……そう言うのは、出会う前に知識として教えて欲しかった。と、俺は思う。

 別に俺は、同性愛者を否定する訳じゃ無い。理解出来ると思っているわけでもないが、そう言う人間なら人間だと前もって知っていたいのだ。

「しかし、変わった呪いね。

 かなり緻密な技術は一言で言うなら芸術とでも言うべきかしらね?」

 と、俺を観察するアリス。

 ちなみに、アリスにとって偽物の女性(俺の事だ)でも、かまわないらしい。

 俺の胸までもみし抱こうとしたので、俺はそれを止めた。

 あいにくと、女ではないが胸をもまれて喜ぶ性癖はない。いや、気持ち良いらしいが、俺にそんな快感を覚えるつもりはない。

「うーん。この呪いを完全に固形化するには」

「するな!」

 と、俺はハリセンでひっぱたく。

 その瞬間に、アリスが被っていたデッカいシルクハットが落ちる。

 このシルクハットは呪いを解析する力を持っているシルクハットらしい。

 変なデザインであり、緑色の巨大な帽子は微妙にメルヘンチックな印象だ。なによりも、特徴は顔の半分を覆っている大きさであり、目だしの部分もある。

 あえて言うなら、顔を半分隠すための仮面にもなっているシルクハットだ。

 何となくだが、俺は不思議の国のアリスに出てくる頭のおかしいいかれた帽子屋を思い出した。まあ、口に出して言ったりはしない。

 言った所で、不思議の国のアリスの話なんて薫にしか伝わらないだろうが……。

「えー。じゃあ、なんで来たんですか?

 私と女同士の恋人になるために来てくれたと思ったのに」

「違う!」

 と、俺は叫ぶ。なんでわざわざ女になってまで女の同性愛者との恋人にならなければならないんだ? いや、そう言う人生を送る人間も居ないわけではないかもしれないが、そんな人生を送るほど、俺の人生はおかしくなっていない。

 ……だいぶとち狂った人生を送っているような気がしないわけではないが……。

 それは、あえて考えないでおく。

 とにかく、

「そっちではありません。異性に恋愛感情を抱かれなくなる。

 正確に言えば、嫌われるようにする呪いの品を欲しいのです。

 出来ましたら、他にも魔法付与(エンチャント)をお願いしたいんです」

 魔法付与(エンチャント)とは、無機物に魔法をかけて魔法の道具にするやつだ。ゲームで言う所の魔法道具(マジック・アイテム)とか、そう言った代物らしい。

「まあ、良いですよ。

 どんなのが良いですか? ひと睨みで相手を石化させて命を奪うやつとか? それとも、相手を蛙にしてしまうのにしますか?

 それとも、近づいて来た男の股間を腐らせるのにしますか?」

「最後の一つが凶悪すぎやしないか!?」

「いや、上の二つも凶悪だと思うけれど……」

 思わず叫べば、薫がそう叫ぶ。

 だが、男(現在は肉体性別が女性とは言え)として、最後の一つは凶悪だと主張をしたいのだ。つか、

「いや、家には父親もいるし弟と兄もいるんだ」

 まあ、弟はともかくとして兄貴ははたしてその呪いの対象になるかはわからない。あと、父親も怪しい。だが、もしも腐らせてしまったら……。

 その場合は、腹を切ってわびても駄目だろう。と、俺は本気で思う。


「どっちかと言うと、そう言う一撃必殺とかの攻撃よりも補佐とかが助かるんだけれどな。たとえば、相手が敵対意識を持っているか、持っていないか。それが解るとかさ?」

 別に相手の心を読みたい。と、言う意味ではない。

 だが、敵対意識を持っているかそうではないか? とか、その程度の補佐程度で良いのだ。どうせ、身に着け続ける羽目になるのである。

「それなら、人の心が解るとかはどうなんでしょうか?」

 と、シャルフが寝言を言う。

「そんなもん、いらん」

 と、俺は切って捨てる。

 人の心が解る。

 俺を人間不信にでもしたいのか? と、本気で思う。

 人間は本音と建て前で生きて居る。

 生きていく上で、どうやっても人間は多少なりと嘘をつく。

 余命があとわずかな患者だが、患者を傷つけないように必ず治る。と、嘘をつく事だってあるし、そもそも子供に野菜をちゃんと食べないともったいないお化けが出るぞ。とか、そう言うのだって嘘だ。

 まあ、その程度ならば本音が見え透いたとしてもたいした者ではないだろう。

 だが、人間と言うのはそうそう綺麗な者ではない。

 その程度の事くらい、十五年以上も生きて居れば嫌でも解る世界の常識だ。

 世界とは不条理で理不尽で、汚く醜い。だからこそ、美しく楽しいのかもしれないが……。人間には打算がある。

 たとえば、友達と言っておきながらそれは純粋な友情と言う訳では無い。たとえば、本音で言えば不愉快や不快感を隠して居る。あるいは、何かの打算があっての付き合いかも知れない。疑い続ければ、いくらでも疑えると言うのが世の中だ。

 そもそも、深層心理の中には自分ですら気づいて居ない自分が居るのだ。

「せいぜい、敵対意識があるかないか。

 それぐらいで十分だよ。つか、これも冗談だし」

 と、俺は言う。

 考えて言ってよかったが、あまり過剰なものはいらない。

「ただ、呪いの解呪屋の手伝いをするんだ。

 ……そうだな。呪いの核を見つけ出せると助かるな」

 と、俺は考えながら言う。

 呪いの核が見つかれば、そこをハリセンで叩けば良い。

 それは助かる。

「えー。それだけ? 目についた男の性別を変える呪いとか」

「お前。そんな呪いの品を俺に身に着けさせて、どんな状況を生み出したいんだ?」

 ただでさえ、今の俺の住んでいる街は呪われまくっているんだ。

 これ以上、余計な呪いを蔓延らせる趣味なんぞ無い。

「じゃあ、ストーカーを撃退する呪い」

「……ちょっと良いな。それ」

 と、真剣に考えてしまう。

「ストーカーの玉を腐らせて激痛と共に無くしてしまうという」

「うん。やっぱりいらない」

 そこまでやるつもりはない。

 彼らもある意味では被害者なのだ。

 ……俺も被害者だと思うが……。

「ところで、予算は」

 と、アリスが言う。……こいつ、まともな質問も出来たんだな。と、俺は思った。


 予算は前もって貰っていた金額である。

「元々、迷惑料変わりに貰っているやつでね。

 使いきってくれてかまわない。ただ、オーバーされても困るけれど」

 おつりは返すように! と、わりとセコいことを言われたのだ。

「うーん。これなら、そうね。

 どれだけ異性から嫌われる呪いを強力にするかにも違うわね」

「あー、それはわりと強力で。

 どうせ、焼け石に水のようなものだし」

 と、俺は言う。

「まあ、たしかにあの呪いの魔女王の呪い。

 それを、完全に中和する呪いは無理ね。

 なんとか、騒動を抑え込むぐらいかしらね」

 と、アリスが言う。

 そして、

「うーん。それじゃ、予算範囲内でどうにかできるようにしたら……。

 やっぱり、呪いの核を見極めるのをつけるのが限界ね」

「あと、簡単に外れないようにしてくれ」

 そもそも、新しく購入する必要が出たのもそれが原因だし……。と、俺が言えば、

「了解。それじゃ、半日ぐらいはまってね」

 と、アリスは言うと屋上へと向かい始めた。

「大丈夫なのか?」

「大丈夫です。変わった性格ですが、良い人ですよ。

 出会い頭に、スカートをめくって胸をもみ砕いて服を脱がしてベッドに引きずり込もうとしますが、殺そうとはしませんでした」

『『『…………』』』

 なんと言えばよいんだろう? と、フルーの言葉は沈黙した。

「お前……念のために言うけれど……。

 一線を越えてはいないよな?」

 と、俺は確認する。

 いや、まあ……超えていてもそれはフルーの自由だと思うが……。

 得に困りはしない気がするが、うん。まあ、確認はしておきたい。

「一線ってなんの線ですか? 何を超えるんですか?」

 いや、解って無い様子だが……。

 まあ、考えるのを止めよう。

「まあ、しばらくは工房(アトリエ)に籠もってでなくなりますよ。

 アトリエに入ると仕事が終わるまで、寝食を忘れるんです」

「以外と職人気質……」

 フルーの言葉に俺は思わず呟く。

 不真面目と言うか、自分本意と思いきやきちんと仕事をするらしい。

 そして、仕事などには妥協をしないらしい。

「問題は仕事がいつになったら終わるのかが分からない。

 と、言う事でしょうか?」

「おい」

 フルーの言葉に俺たちはツッコミを入れる。

「大丈夫です。台所も食料貯蔵庫の場所も解っています。

 それに、呪いの森にでも食べる事が出来るものだってあります。

 食べても軽い呪いなので、私でも一週間もすれば呪いを解くことが出来ます」

「それ、大丈夫なのか?」

 フルーの言葉に俺はツッコミを入れる。

 余談であるが、貯蔵庫にあったのはお菓子ばかりであった。

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