第八話 雨降って地固まる……のは、雨が上がってからなんだよね。
第六の呪いはこれで終わりです。次回は、前々から考えて居た仮面のパワーアップ回です。
すったもんやの末に、とりあえずは街の危機は免れた。
とは言え、
「彼らは、言ってしまえば正義のためですからね。
その上、組織と言うか彼らと同じ考えをしている者達は無数に居ます」
と、ラフェレアさんが言った。
魔法使い協会は、どの国家にも所属していないと言う組織だ。
で、国家の中にはフィリアを殺す。
あるいは、軟禁、封印するべきと言う意見もあるらしい。
それを、俺たちは魔法使い協会の部屋で聞かされた。
ちなみに、俺たちとは事情を知っている俺とフルー、そしてローイ。
さらに、薫とフィリだ。
「そうなの?」
「まあな。呪いの魔女王と言うのは、世界中を荒らし回った。
一国を壊滅させた……それどころか、ある一つの大陸を魔の大陸とした。と、されている。その大陸は呪いの魔女王が封印された今も、人間が住めない地となっている」
と、フィリが説明をする。
「まあ、危険視する者も多い」
「質問です」
と、ラフェレアさんの言葉に俺は手を上げて言う。
「……彼らは、どうやってフールがここにいると知ったんですか?」
「私が話した」
「死ね!」
どごす!
と、あっさりと自白した馬鹿を俺は思いっきり蹴り飛ばした。
「お前は何を考えて居るんだ?」
少し考えれば、フルーの事は極秘だと言う事ぐらい解るだろう。これが、五才ぐらいの子供ならまだ許せる……いや、五才でもギリギリアウトだ。
「何を考えて居るんだ?」
「いや、ちょっと街の外にある酒場で飲んでいて……つい、ぽろっと」
「「お前は未成年だろう(でしょう)が!」」
と、ローイの言葉に今度は俺と薫の蹴りが命中する。
容赦ない蹴りに、壁にたたき付けられるローイ。
「未成年ってなに?」
「……あ、こっちの世界ってひょっとして二十歳未満でも飲酒が良いの?」
と、俺は言う。
「ハタチと言うのは、良くわかりませんが……。まあ、十五歳ぐらいから多少はたしなんだりしますよ。得に貴族となりますと、付き合いでお酒を飲んでいることが多く、十三才ぐらいから、たまに飲む事もあります」
と、フルーが言う。
「私はお金が無いので飲んだことはありませんが……」
「そうか……。まあ、俺たちの世界……と、言うよりも俺たちの国だな」
国によったら二十歳未満でも飲酒が良い国と言うのはあるそうだ。とは言え、十五歳は早すぎると言うような気がする。
「なぜだ?」
「健康的な成長を阻害する。と、言う理由だったと思う……」
いや、俺も詳しくは知らないが二十歳未満は飲酒が禁止なのは常識だ。
とにかく、たまに腹を立てて出かけているのは知って居たが、こいつは飲酒していたのか……。と、俺は当たり所が悪かったのか、未だに気絶しているローイを見た。
「まあ、飲酒の方は別に良いんだ」
「良いの?」
俺の言葉に薫が驚いたように言う。
国や地域によったら二十歳未満でも酒を飲む所と言うのはある。
そもそも、日本だって昔は十三歳を超えたらお酒を飲むのが普通と言う風習すらあったと聞く。お酒を飲んでいるだけなら良い。だが、
「だからといって、喋っちゃ行けない事を喋るなよ。
自生が聞く程度に飲んでおけ! それが、お酒を飲む上でのマナーだ」
と、俺は言う。
酒乱と言う言葉がある。
人が失敗するのには、酒と女と金である。と、言う言葉がある……そうだ。こいつは、その酒で失敗した。
「まったくです。……今回の処罰として禁酒の呪いをかけます」
「禁酒の呪い?」
ラフェレアさんの言葉に俺はフルーの方を見て聞き返す。
「お酒を飲むと呪いが発動する呪いです。
いろいろありますよ。まあ、禁酒と言うので罰があると言う事だと思います」
と、ローイが言う。
なるほど、わかりやすい。お酒を飲むと暴れたり迷惑をかける人やアル中の人間などにかけるべき呪いかも知れない。
呪いもかけようによったら、薬にもなる。
毒も薄めれば薬にもなる。
呪いも使い方次第で、良い結果を生み出すと言う事であろう。
「……す、すみません」
「一定量のお酒を飲むと、体内のアルコールに反応して雷に打たれるように呪いを与えております。一定量に近づくと、舌が痺れ始めますので……。
たしなむ程度と言う要領をきちんと覚えなさい」
「大丈夫です。
すでに私は酒に酔うことはないでしょう。
なぜなら、ヨシキさんの美しさに酔っているからです」
「……こいつを正気に戻す方法とかありませんか?」
真顔で寝言を言うローイの言葉に俺はラフェレアさんに尋ねるが、
「大丈夫です。ヨシキさんの呪いが解ける時に正気に戻ると思います」
と、フルーがちっとも大丈夫じゃない事を言う。
だから、お前の大丈夫です。は、使いどころがおかしい。
「でも良いじゃないですか。好意を沢山の人から貰っているんですよ。
これってハムレスと言うんですよね」
「……それを言うなら、ハーレムと言うやつじゃないのかしら?」
「どう言う意味だ?」
「沢山の異性に囲まれてその異性が全員、恋愛感情を抱いていると言う状況……かしら?」
「……異性なのか?」
「……難しい問題ね。ちなみに、女性が男性に囲まれているのは正確に言うなら逆ハーレム。男性が女性に囲まれているのがハーレム」
「大丈夫です。どっちも間違っていないと思います」
薫とフィリの会話にフルーが意味のわからない事を言う。
何がどう大丈夫なんだろう?
第一、俺はこの呪いを受けて……からではなく、受ける前から女に告白されたことはないぞ。と、本気で思う。
とにかく、かくして一つの騒動が終わった……のかもしれない。
いや、関係なくなってはいなかった。
と、俺はため息をつく。
なにしろ、仮面は壊れてしまっておりすぐに新しいのは作れないのが現状だ。現在は、フールがくれた異性避けの呪いがかけられている品……俺が昔、百円ショップで購入した鼻眼鏡を身に着けている。
この呪い……傾国の美女と言う呪いのすごさが改めて解った。
「鼻眼鏡を書けていても美人って……すごいな」
鼻眼鏡だぞ。鼻眼鏡。
馬鹿みたいにでかい鼻からは鼻毛のような髭が生えている。
どんな二枚目だろうが、イケメンだろうが……。美女だろうが、美少女だろうが色香のある人間だろうが、鼻眼鏡をつけるとギャグになる。
それが世の中と言う者のはずだ。
なのになぜだ?
俺が……今の俺が鼻眼鏡をつけても、感じられるのは愛嬌のある美貌だ。
なぜだ? なぜなんだろう。
「……呪いが強くなった?」
「いや、そう言う問題じゃなく呪いの問題」
俺の言葉に兄貴がそう言う。
それなら、それで良い……のかな?
と、俺は実質で考えて居た。
「なあ。フルー。あの仮面でもうちょっと異性避けの呪いを強力には、出来ないのか?」
と、俺はフルーに尋ねる。
「それには、不満があるんですか?」
「まあ、常に鼻眼鏡を身に着けているというのは何か悲しくなるし……。
これ、パーティー用だから常に身に着けるようには出来てないんだよ」
と、フルーの言葉に言う。
所詮は、百円ショップのパーティーグッズだ。
きちんとした耳は痛くなるし、視界は遮られていてものが醜いし動きにくい。おそらく、呪いを解呪しようとした騒動などに巻きこまれたら、まちがいなく外れて落とす。
「それに、呪いをもうちょっと強力にしたいし……。
どうせ、常に身に着けるなら他にもいろんな効果があっても良いじゃないか。
経費は協会が払うと言っているんだしさ」
と、俺は言う。仮面が壊れたのは協会にも責任があると言う事も手伝って、協会が経費を払うと約束してくれたのである。
どうせなら、いろんな便利な道具が欲しいぐらいである。
「あまり、高すぎると協会も困りますよ」
と、フルーが言えば、
「ああ。大丈夫ですよ。
この私があなたを助けましょう」
と、口説くローイ。
そこに、
「人の兄貴を気安く口説くな。
兄貴を嫁にするのは俺だ」
「そんなわけあるか!」
吉成がそう寝言を言いながら俺に抱きついてきたので、股間に蹴りをいれてやった。
俺は近親相姦の罪を重ねる趣味はないし、そもそも肉体はさておき精神は野郎のつもりだ。俺は嫁になるんではなく、嫁を貰うのがゆめだ。百歩譲る……ほどじゃないが、譲っても嫁になるのはごめんだ。しかも、窓からは心花ちゃんが睨んでいる。……怖い。どうして、自分の家でこんなに精神的に苦労するんだろう? と、俺は涙した。
とにかく、この騒動で俺は仮面を失った。
ただし、そのかわりにローイが多少は大人しくなった。いや、問題児なのは変わっていないが……。
とにかく、その騒動の末に本格的にこいつも変わろうと努力している様子だった。いや、あまり変わっていないような気がするが……。
そう思いながら、俺たちは前へと進んでいく。
近いうちに、仮面のほうはどうするかを決めるらしい。
それはでは、当分は鼻眼鏡だ。
とは言え、鼻眼鏡をつけていても、
「鼻眼鏡をつけているあなたを見て、ときめきました。
付き合ってください」
「そう言われて、付き合う人間がいるなら見て見たいんだけれど……」
「鼻眼鏡をかけていても魅力的なあなた。
そんなあなたは、世界を探してもきっとあなただけでしょう」
「そりゃ、そうだろうな」
「ああ。麗しの君。
いつもの仮面のあなたも素敵だが、その仮面を身に着けたあなたもユーモラスで素敵だ」
「ものは言いようだな。
あと、嬉しくない」
と、口説かれまくりながら断る。
あまりにも口説かれるので学校は休むことにした。
これで、クラスメイトにまで求愛された日にはノイローゼになりそうだ。
そのため、帰り道でそこら中の男に求愛をされ続けて俺は出かけるのを止めた。どうしても、外に出なければならない時以外は、出ないようにしよう。
とは言え、
「由紀。また、ラブレターが届いているぞ。
しかも、お前をみかけて名前だけをしって……由紀じゃなくて、由紀だと、誤解しているやつもいるみたいだ」
「父さんも母さんもなんで、おれだけこんな字にしたんだ? 同じヨシキと読むにしても、吉城とか芳貴とかあっただろうに……」
「美樹とかじゃなくて良かったじゃないか」
性別が無くなった兄貴だけは、そう言うが……。
そう言う問題じゃないと思う。
たしかにそっちの方が字面としては女の子の名前のようだが……。
と、思う。義正とか吉成とかはちゃんとした男の名前だと解るのに……。
一応、両親共に子供には『よし』と言う名前をつけようとしていたらしい。女の子だったら、違ったかも知れないが……。
と、俺は思う。
まあ、とにかくだが……。
「それで、どうやって仮面を手に入れるんだ?」
「それなんですけれど、私の友人に頼もうと思います」
「お前、友人なんていたのか?」
フルーの言葉に俺は思わず叫ぶ。
「由紀。あんた、それは失礼よ」
と、遊びに来ていた薫がツッコミをいれるが……。フルーの身内などの事や環境から考えるに友達がいるようには思えなかったのだ。
いや、フルーが一方的に友人と思っているだけかもしれない。と、思っている中で、
「ああ。あいつか」
と、どうやらローイも心当たりがある様子だった。だが、なぜか顔をしかめていた。




