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 第4話 迷宮で美少女がピンチにおちいるのを見るのは良いが実体験は勘弁だ

遅くなりました。しばらく更新が止まります。


「なんだ? これは?」

 俺は体を見回すと、周囲にある闇が俺の体を縛り上げている。

「魔法?」

 と、俺が声を上げる中で剣士が近づいて俺の頬を撫でる。

 ぞわりとした悪寒を覚える。

 なんというか恐怖と言うか、悪寒と言うか吐き気だ。

 優しく撫でていると言うのに、悪意をもたれているほうがマシなぐらいだ。

 何かを語りかけている様子だが、それに関して善意は感じない。

 そんな中で二人は何かを話し合っている。

 そんな中で俺の周囲の闇が俺の体を包み込み、動けなくなる。

 そしてそのまま俺の体……と、言うか俺の体を包み込んでいる暗闇が宙に浮かぶ。

 宙に浮いた体はぷよぷよと二人の後をついていく。

「……ヤバいな」

 俺はそう呟く。

 どうやら、あいつらは言葉が通じないらしい。

 おそらく、俺の言葉も相手には意味不明な音にしか聞こえない可能性も高い。

 異世界なのだ。言語が日本語ではないのは驚かない。

 ひょっとしたら、フルーと言葉が伝わっていたのは無理が無いのかも知れない。

 そう思う中で、彼等は先へと進む。

 さて、どうしたものか?

 俺はいろいろと考える。

 現在の俺は捕まっている状態だ。

 だが、だからといって相手を悪い奴と言う確信はない。

 たとえば、俺を保護の目的だ。言葉が通じないので無理矢理に包み込むと言う選択を選んだ善人と言う可能性も無いわけではない。

 無いわけではないのだが、どうやっても良い人間と言う印象を持てないのだ。

 そもそも、黒ずくめで顔も隠して居る人間なんて良い印象は持てない。

 そう思っている中だった。

 全身鎧の人物? が現れた。

 疑問形なのは、その鎧の人物には意志と言うのが感じられなかった。いや、意志と言うよりも生きて居る気配が感じられなかった。

 全身が鎧であり、肌もまったく見えない。俺はゲームで見た動く鎧リビング・メイルを思い出した。体全体を覆う鎧だけでうごくモンスターだ。

 そう思っている中で、剣士がすっとその動く鎧(推測)へと斬りかかる。

 鎧を切り裂く事なんて出来るのか? と、俺は疑問を抱く。

 アニメや漫画で鉄をも切り裂く剣を持った凄腕の剣士と言うのは存在する。だが、それはアニメや漫画ぐらいだ。実際に鉄の鎧を切り裂ける剣と剣士なんてそうそう居ない。と、言うかいたら鎧の意味なんてない。ただの全身に着こんだ重しでしかない。

 そう思っている中で剣士は一気に斬りかかる。刃が鎧にぶつかった瞬間だった。ぐにゃりと剣からどす黒い炎がわき上がった。

「なっ!」

 驚く中で刃に触れた鎧の部分がドロドロと溶けていく。そして、そのまま剣士は相手を焼き切るように切り落とす。

 がらん! がらん!  と、言う音と共に鎧が地面に落下して派手な音が響き渡る。

「ずげっ」

 容赦ない攻撃に俺は思わず呻く。

 そんな中で、鎧は迷い無く剣士へと手にして居る剣を振りあげた。


 片手が無い状態だと言うのに鎧は顔色、一つ変えずに斬りかかる鎧。やっぱりその戦いの最中に着られた腕の部分から切り口が現れる。

 その切り口は空洞だった。

 血も一滴も流れていない。空洞の鎧は鎧の重さを気にした様子もなく、剣士と斬り合いをしている。……いや、本当に気にしていないのだろう。

 正体は間違いなく動く鎧リビング・メイルなのだろう。いや、その呼び名が正しいのかどうかまではわからないが……。

 そう思っている中で剣がどんどんと炎を浴びせながら斬りかかる。

 それに何より気になるのは、そばに居る魔法使いだ。

 なにやら先ほどから何かを口にして居る。なんて言っているのかはわからないが、それが声援と言う印象は感じさせない。

 呪文を唱えている感じだ。

 そして、それが正解だとすぐにわかった。

 何か一声、大きな声で唱えた瞬間だった。

 鉄製の鎧があっという間に錆びていくとやがて塵へとなっていく。

「うわぁ。すげえ」

 どんな魔法かまでは解らないが、鎧をあっという間に錆びて塵にしてしまうとは……。

 だが、それと同時にゾッとした寒気を覚える。

 どうやら中身は無かった空洞の鎧だったようだが……。万が一にでも鎧の中に中身があったとしたらどうなっていたのだろうか?

 あの剣士が斬りかかってきた時は、まだ中身が空洞と言う保証は無かった。だが、あの剣士は躊躇無くあの片手を切り落とした。

 相手が生きた人間じゃないと言う確信を持っていたと言う可能性もある。なにしろ、ここは俺の知らない未知が溢れた異世界だ。

 俺には解らない手段で相手の正体を見極める事が出来てもおかしくない。

 だが、

「……やっぱり善人には思えねえな」

 ぼそりと俺は呟くが剣士も魔法使いも気にした様子ではない。

 ……まあ、おそらく俺の言葉は意味が伝わってないのだろう。

 とにかく、俺の中でこの二人は悪人疑惑が高まっていく。

 さて……この状況では俺はどうすれば良いのだろうか?

 逃げ出した方が良いだろうが……。

 あの躊躇の無さを考えると、逃げだそうとした事を敵対行為と判断されそうだ。

 そしてその場合、今のように生け捕りを続けると言う保証は無い。

 ヘタすれば殺されるかもしれない。

 もちろん、死ぬ可能性はある事は解っていた。

 だが、死ぬとはっきりと解っている状態で死ぬ事を選ぶほど馬鹿じゃないし、自殺願望はない。無事に逃げれる状況を見極める場合も大切だ。

 少なくとも、こいつらと一緒ならば先ほどの動く鎧リビング・メイルに襲われる心配は無いだろう。そして、他にも敵がいるとしたらそれはピンチでもあるがチャンスでもある。先ほどのような動く鎧リビング・メイルばかりとは限らない。

 フルーが言っていた伝説の道具を守るための道具だ。

 相応しい所有者かどうか見極めるためのぶんがこの程度で終わるとは思えない。

 おそらく、なにかしらの罠がまだまだある。

 そして、そこにこそ俺が逃げ出すチャンスがあるはずだ。

 俺はそう思いながら、様子見を決める。そして、次に考えるのはフルーのことだ。

 あの天性のどじっ子魔女ッ子を地で行くフルーが、あんなのと戦ったら……。

 俺の脳裏に浮かんだのは、ドジをやって自滅するフルーの姿……。

 あいつ……死んだりしないだろうな。と、俺は心配したのだった。


 俺が心配している中でも、何体ものモンスターと呼ぶべき存在は現れた。

 動く岩の彫像、推定ガーゴイル。動く骨の骸骨人間スケルトン。その集団を見ている内に、俺は出てくる敵のパターンが何となく解ってきた。

 全て生きて居ないのだ。

 ガーゴイルや動く鎧リビングメイル骸骨人間スケルトンは全て生きて居ない。生物とは言えないだろう。

 ……俺はフルーが言っていた言葉を思い出す。

 この迷宮を作った物は、伝説の道具を持つに相応しい使用者を待つための場所でもある。

 てっきり戦闘能力を確かめていると思っていたが……。そうではないかもしれない。……まあ、あるいはこの草一本も生えていない場所に生きて居る生物を放置しても一年後には飢え死にの死体。数十年後にいは朽ちた骨か乾燥干物しか残らない。と、言うオチが待っているから、そう言った無生物だけを選んだと言う可能性もあるが……。

 ひょっとしたら……相手を倒すのでは、先に進めないのではないのだろうか?

 そうひょっとしたら魔法で相手を破壊するのではなく無効化する。ただの石像に戻したり、骸骨を元の屍にして埋葬する。鎧を元の普通の鎧にする。そうする事によって正しい道が現れるのではないのか?

 あの罠もひょっとしたら最初の落とし穴は注意深さの確認であり、一定以上進めば問答無用で迷宮になるようになっていたのかもしれない。

 落とし穴はただの冗談だったかもしれない。それにしては、しゃれにならない底の深さだったけれど……。

 フルーがときたまに吐いていた毒から察するに、かなり作った人は良い性格をしていた様子だ。断じて、邪悪な魔女を倒した聖人君主ではなさそうだ。

 フルーが時たまに漏らしていた毒から察するに、この迷宮を作った人物も正義感で行動したわけでは無さそうだ。断じて、特撮ヒーローの主人公みたいに、誰かを傷つけるやつを許さねえ! と、言う熱血漢ではなさそうだ。

 むしろ、個人的な理由で動いていた様子である。

 まあ、何者でも俺としてはかまわない。俺としての問題は、脱出する方法だ。

 俺の推測と言うか仮説が正解だった場合、一緒に行動している俺も出られないと言う事だ。そうなれば、俺はどうなるかはわからない。

 この魔法使いと剣士が食料を持って来ているかは謎だが、俺にも分けてくれる保証はない。ゲームと違って旅をするのは食料が必要だ。

 ゲームのキャラクターは二十四時間、不眠復旧で活動可能。薬を飲めば、体力も魔力も回復しますよ。と、言う存在だが実際にそんな人間がいるわけない。

 まあ、この魔法の世界ならば食事を必要としない存在がいてもおかしくないだろうが……。あいにくと、俺は食事を要求するし目の前の二人も食事を要求する可能性が高い。

 まあ、旅慣れた様子とフルーと違ってしっかりした態度。

 それから考えるに、携帯食料ぐらい持って居るだろう。だが、持ち運びできる量には限度がある。ゲームみたいに無限に広がる四次元カバンを持っているわけではないのだ。

 いや、魔法で亜空間にしまうとかは可能かも知れないけれど……。

 とにかく、万が一にでも食料の保存に心配が産まれた場合はどうなるか?

 答え、食料を減らす。そして、その場合最も減らされるのが捕虜(推測)である俺だ。まあ、実際に手も足も動かさない蓑虫状態の俺だ。動いてないので腹は減っていないので、少しぐらい減らされたとしても文句は無い。

 だが、本当に危機的状態となれば食事抜きもありえる。

 そして、いざとなれば……人肉料理の材料にされる可能性も高い。いくら何でも人肉食いをするとは思えないが……。危機的状況では人間は何をしでかすかわからない。昔、海賊は生き延びるために船を危険に陥れた元凶を殺して食べた。と、言う話を聞いた事がある。善人か悪人か……俺を保護したのか、それとも生け捕りにしたのか? 理由も解らないが、とにかく悪人疑惑がある以上、離れた方が良さそうだ。と、俺は思っていた。


 そのチャンスはわりとすぐに訪れた。

 通った先に少しばかり広い袋小路の部屋に訪れたのだ。ただし、その部屋には宝箱も何も無いその環境で突如としてドアが出来て密室空間となる。

 そんな中、突如として大量に現れた漆黒の不気味な存在。あえて言うならば、スライムと呼ぶに相応しい不気味な集合体は一気に襲い掛かる。

 それは魔法使いと剣士だけではなく俺にまで襲い掛かって来る。

 その黒いスライムもどきはどうやら、魔法を打ち消す力があるらしい。

 剣で斬りかかれば、剣が溶けて行く。魔法使いが使った魔法? も、問答無用で打ち消しているらしい。そして、俺を覆っている黒い繭のようなものも触れた瞬間に消えて行く。

 俺はやがて繭が解けて、俺は着地する。……俺に近づいてくる。おそらく、仮面や俺にかかっている呪いに引き寄せられているらしい。

 だが、俺に触れたとしても俺の性別が元に戻る様子はない。

 ここで男に戻ってくれれば助かるのだが……。 

 そんな中で一気に襲い掛かるスライム達を俺は放り投げる。……こいつらは生きて居るのかそれとも、擬似的な生物なのか? と、言うかどんな生き物なのかは解らないが……。

 とにかく、俺はスライムをたたき直しながら二人から離れる。万が一にでも、俺を巻きこむような大技を使わないかと言う心配。

 そして、俺が邪魔をしないためだ。

 あまり良い印象を持っていなかったが、あくまでまだ可能性だ。

 そして平和な日本の一般的な高校生が邪魔をしない保証は無い。

 空手をやっていてそこそこに強いつもりだが、弱いつもりもない。けれど、実戦経験はないのだ。試合と実戦は違うのだ。

 ルール無用の実戦形式となると、空手のルール違反はない。

 ついでに、俺はスライムと戦った覚えは無い。

 あいつらがあるのか無いのかはしらないが、スライムと言えば雑魚の代名詞だ。

 経験をしている可能性は高いと俺はふんでいる。

 そう思っていた時だった。

 スライムの一体が剣士にぶつかる。それと同時に剣士の顔が露わとなる。

「うげ」

 俺は思わず声を上げた。

 何しろ、現れた顔は一言で言えば醜いと言える顔だ。顔中に広がっている真っ赤な大やけどの顔は皮膚がめくり上がり水ぶくれでふくれあがっており、醜いとしか言えない。

 そして、それは顔だけではなかった。黒いマントの下には鎧も着てない動きやすい服。だが、その服から現れる肌は一言で言えば、火傷だらけであり包帯が巻いてる。包帯だらけだが、男だろうと言う事は解る。

 だが俺が気になったのは、火傷の範囲が広すぎる事だ。

 火傷とは軽傷でも範囲が広ければ、命に関わると聞いた事がある。

 体の三分の一以上が火傷を負っている場合、その人物はしぬはずだ。

 そして、続いて露わとなった黒マント姿の魔法使い。

 まず目が突いたのは、懐にあるペンダントだ。薄暗い室内でも不気味に輝いている紫色の宝石が突いているペンダントだ。

 そしてビックリしたのは、魔法使いの外見だ。服装が奇抜というわけではない。やせ細っており骨と皮だけのような体だ。

 まるで人骨標本に皮膚を貼り付けて生きていくのに必要な内臓をつけたような人物だ。 性別は解らないが、不気味と言う印象しか無い。

 驚いていると、その魔法使いの方が俺を見た。そして、俺へと向かって何かを呟いた。いや、呟いたと言うよりも呪文を唱えている様子だった。その瞬間だった。

 突如として、俺の体に激痛が走る。俺を使って何かをしようとしている!? 俺がそう思った瞬間にスライム達の動きが変わった。


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