第八話 銀薔薇の剣士の助太刀! 助けてくれるのは良いが、俺を口説くな!
「これだけの、人数を相手に勝つつもりか?」
「この世界にあるか、どうか解らないが……。
俺の世界には、こんな情けない言葉がある」
勝ち誇るアーロイドの言葉に俺は不敵な笑みを浮かべたままで言う。
「情けない言葉なのか!?」
と、フィリがツッコミを入れるが、……本当にある意味では情けないんだからしょうがない。そう思いながら、俺はフルーを掴む。
もちろん、フルーが本当に殺されるとは思っていない。あの盗賊たちは、全滅した。文字どおり、全滅であり死滅だ。
とは言え、それはフルーの意志で発動するわけではない。
フルーの生命の危機……瀕死の重傷を負う事で発動する。条件付きのものであり、なおかつ周囲にいる人間の全てを殺すことしか出来ない。俺たちがあの時、無事だったのはとっさに距離を取って有効範囲から逃げたからだ。
ついでに、俺はこいつらが嫌いだが死んでしまえ。と、までは思っていない。あいにくと、平和ボケと言う言葉があるぐらい平和で人道主義(ついでに事なかれ主義の先送り傾向がある)戦争反対国出身なので、敵対するやつは皆殺し。と、言う発想は俺には無い。
別に、話し合えば理解出来る。と、思っていないが……今日だけで一生分の死体を見た気分なので、出来れば見たくないのだ。
あまりの状況なので脳が理解を止めているだけだ。
おそらく、三日も経てば脳が理解を初めて嘔吐を始めるに違いない。
とにかく、曲がりなりにもこんな性格が悪いとは言え、フィリの身内だ。ついでに、盗賊たちならば証拠は残らないが、ここで惨殺死体を作ったら間違いなく殺人事件だ。
たとえ、正当防衛を主張したとしても、過剰防衛にあたりそうだ。
ついでに、フルーの立場てきにも厄介だ。元々は犯罪者予備軍扱いなのだ。たとえ、殺されそうになり呪いとはいえ、これだけの人数を殺した。
そうなれば、さらに評価が悪いものへとなってしまう。
つまり、フルーの呪いは宛にしない。それで、どうするかと言うと、
「逃げるが勝ちだ!」
「本当に情けないわね」
俺が叫び、フルーとフィリの手を掴んで走り出せば、薫が呆れたように言う。
余計なお世話だし、他に方法が思いつかなかったのだ。それこそ、無敵常人とかスーパーヒーローじゃないのだ。戦いで、数の有利は勝敗に思いっきり影響が出る。
つか、普通に負ける。
俺は出口を守っていた店員を思いっきり、跳び蹴りをいれる。
思いっきり、人を一人殺すと言う発言なのに店員は平然としていた。ならば、店員もグルである。ならば、蹴り飛ばしたところで文句を言われる筋合いは無い。
ついでに、蹴り飛ばすとついでにドアもぶち破る。
「修理代は、そこのオッサン達に請求しておいてくれ」
「セコいですね」
俺の発言にフルーがそう言うが、余計なお世話だ。
つか、人を殺そうとしたのだ。財布へどれだけ攻撃をしたところで、良心はまったくもって痛まない。そう思いながら逃げようとするが、
「俺たちは逃げ出した。
……だが、失敗した。と、いうやつだな」
「ゲームじゃないんだから」
俺の言葉に薫が呆れちゃおうに言いながら周囲を見渡す。
どうやら、外にも見張りがいたらしく俺たちは完全に囲まれてしまったのだった。
「おい、おい。こんな町中でか弱い女の子を三人も囲んでいたら、どう考えてもお前らが悪者だぜ」
「オレを女の分類にはいれないのか?」
俺の軽口にフィリが尋ねる。いや、そう言う意味ではない。
「いや。いれてないのは俺だ」
「大丈夫です。外見的にはヨシキさんが一番の美女に見えるはずです」
俺の言葉にフルーがなにが、どう大丈夫なのかわけのわからない事を言う。
ちっとも、嬉しくない。そう思っている中で、
「ふん。あいにくと、我が流派は門下生が多い。
衛兵をいれないようにするのなど、簡単だ」
「その人脈を別の事に使えよ」
自慢げに言うアーロイドの言葉に俺は憮然とツッコミを入れる。どんな手段を使っているかは知らないが、ろくな手段じゃなさそうだ。
もちろん、根拠のないただの偏見というやつだが……。
そう思っている中で、一人の男が襲い掛かってくる。
速い! ……流派を教えていたり伝えている人間はクズだが、少なくとも名を広めているだけはある。
俺はすんでの所で避ける。だが、避けたはずなのに前髪が数本ばかり切れる。
「おい。なんだ? あの拳は?」
風圧でカマイタチを起こして何かを切り裂く。と、言うのは話に聞いたことがある。ただし、それはあくまでも漫画やアニメと言った架空の世界の物語だ。
現実でそんな事が可能なはずはない。普通ならば……、
「おそらく風斬拳だろう。
魔力で拳の周りにカマイタチを纏わせて、相手を殴ると同時に切り裂く拳だ。
たとえ、紙一重で避けたとしてもカマイタチで切り裂かれる。目測よりもさらに大きく避ける必要がある。
他にもいろんな拳がある。ただの格闘技だと思うな」
「余計なところで、ファンタジーな」
ゲームでいうならば、マジックポイントを消費するかわりに拳に様々な属性や要素を組み合わせると言う技だろう。魔法と剣についでに呪いの世界らしい技だが……。
敵対されるとちっとも楽しくないし、面白く無い。
そう思いながら、俺たちは周囲を見る。技こそ、教わらなかったがどんな技があるのかを知って居るフィリは瞬時に相手の攻撃がどんなものかを見極めている。
たいして、下手に違う格闘技がなれている薫はやばい。俺の方は、相手がなぜか動きがわるいので、大丈夫なのだが薫の方はくせで、攻撃を紙一重に避けてしまっている。
紙一重でよけるのには、理由がある。大きく動くというのは、無駄に体力を使うし反撃するのにも攻撃が避けられる可能性がある。
対して、紙一重に避けた場合は動きに無駄がないので体力の消費が低い。さらに、近場からの反撃なので対応がすぐに動けないと言う利点がある。
そのために、格闘技をしている人間は攻撃を大ぶりではなく小ぶりで……。紙一重で避ける癖がある。それは、長い間、格闘技をしている人間ならばもはや体に染みついたものだ。とっさの動きは、体が覚えている習慣で反応する。
フルーは呪文を唱えているが、……やっぱり成功していない。
「おい。フルー。絶対に俺たちを巻きこむなよ」
「大丈夫です。今日はまだ魔法が成功していません」
「ちっとも大丈夫じゃねえだろ」
フルーの言葉に俺がそう怒鳴り返した時だった。
「ちょっと、待った」
と、言う声が響いたのは……。
「だ、誰だ?」
うわ。なんて、テンプレな。と、思わず思いたくなるような発言をしながらあたりを見渡すアーロイドとその部下。いや、部下じゃなくて弟子たちか……。
そう思っていると、
「あそこだ!」
と、アーロイドが指さす。
こう言う場合、高い場所から誰かが現れると言うのが俺たちの世界のお約束だが……。どうやら、この世界でもそのお約束は健在らしい。
そして、指さした先……民家の屋根の上に立つのは一人の男。……日曜の朝に現れるヒーローのようだが……テレビの中ならともかく、現実ならば少なくともその言えの持ち主から文句が言われそうだ。
そんな事を思う中で、銀色に輝く何かがばらまかれる。
手に取ってみると、それは薔薇の花ビラだ。キラキラと輝く銀色の花ビラ。一見すると、作り物のようだが手に取ってみれば、それが自然の花ビラだと言うことがわかる。
そう思っている中で、その銀色の薔薇の花吹雪と言ういささか、神経を疑うものを捲き散らせながら、そいつは名乗りを上げた。
「そこまでだ!」
そう言って宣言したのは、どこかで見たようなイケメンだった。銀色の花ビラとは違う輝きを放つかるく癖がある金髪にきらりと輝く白い歯。
イケメンの見本市のような人物。たしか、あれは……、
「か弱い美女を集団で痛めつけるような行い。
このシャルフ=マニーロ=カスケイドが許さない」
そう言うと、ぶわりと飛び降りる。しゅたっと着地するのはアクション俳優かはたまた、物語に出てくる王子様か……。
とは言え、
「大丈夫ですか。美しい人」
と、俺の手を取って言うのは止めて欲しい。
「心配するのは、むしろフルーか薫にしろ。
俺はまだそれほど、怪我はしてないだろうが」
と、俺は冷たく言う。あからさまにフルーが狙われているし、薫はすでに怪我をしている事はっきりと解る状態だ。
だというのに、たいして怪我をしていない俺の心配をするとは……。
「ああ。なんて、優しいんだ。あなたの心の美しさが外見にも現れているんですね。
まさしく、内面が外見にも出ると言う事でしょう」
「そうだとしたら、俺は男に見えてほしいね」
シャルフなんたらの言葉に俺は冷たく言う。
つか、俺の内面は変わっていない。男のままなのだ。
「照れ屋な人だ。まあ、そちらのお嬢さんたちも大丈夫ですか」
そう言って笑うシャルフ。
「き、きさまは……銀薔薇のシャルフ!?
なぜ、我々の邪魔をする?」
と、アーロイドがそう叫ぶ。
「ふっ。美しい女性を集団で痛めつけられようとしている。
それを見て見ぬふりをするようなことなど、出来るわけ無いだろう」
きらり。と、白い歯を煌めかせ銀色の薔薇をばらまきながら言う。
「なにを言うか!?
我々が正義だ。そこの娘は、呪いの姫君なんだぞ。
いずれ、このままでは災厄を生み出すだけの女なんぞ殺すべきだ」
シャルフの言葉にアーロイドはそう言ってフルーを指さした。
しばらくの沈黙が走る。どうやら、俺や薫は知らないが、フィリが恥ずかしい二つ名を知っていたり、この展開から察するにこのシャルフと言う男は、かなり名を馳せているらしい。それも、行動やら顔ではなく実力で名を上げているようだ。
この状況で自信満々にやって来たのだから、そうなのだろう。……実は、噂だけのかっこつけと言う可能性もあるのだが……。
そうだった場合は、盾にして逃げよう。と、俺は決意する。
この男尊女卑の人間ならば女である俺たち(俺をいれるのは不愉快だが)を殺すのは、躊躇しないだろうが男ならば躊躇する可能性もあるし……。
それに、自分からこう言う荒事に入って来たのだ。多少の怪我は諦めて貰おう。薄情とは言うこと無かれ、男は自分よりイケメンの野郎には冷たいものなのだ。
「ふっ。なるほど」
と、なにがなるほどなのかは知らないがそう言ってシャルフは不敵に笑う。
なんで、こうも一々と行動にかっこをつけるんだ。ドラマや漫画のキャラクターなら面白いですむが、実際に目の前に実在するとなんというか、後ろから蹴りを入れたい。
衝動的に崖から突き落としてしまいたくなりそうな人間だ。
ここで、裏切ったら瞬時に殴り飛ばして人間盾にしてやろう。と、俺は決意する。
「確かに、呪いを統べる魔女王と言う美しくも邪悪な……そう、さながらトゲだらけであり美しさから人を引き寄せ魅せてその血を吸うと言う給血地獄薔薇のような魅力と危険性を持っていた女性と言います」
美人だったのか……。と、俺は思いながらフルーを見る。
まあ、たしかにフルーを見る限りだとけしてブスでは無かっただろう。
つか、この男はどうしてこうも無駄に話が長いのだろう。
「その怨念に囚われた哀れな少女の話は聞いたことがある。ですが、皆さんに私は問いたい。だからといって、彼女がなにをしているというのだ?
彼女は被害者だ。そして、か弱い女性だ。たしかに、本当に美しくも恐ろしく残忍な呪いを統べる魔女王になったのならば、その時は剣を持ちその心臓を止め、その人生を美しくも死を与えるべきだろう。
だが、見たところ彼女はまだ彼女であって呪いを統べる魔女王ではない。それを、殺すと言う事は美しさもない行動だ。そのような行動は許す事が出来ない。
世界を美しく染め上げるのは慈悲と許しと愛と正義だ。
君達には、愛と慈悲と許しが足りていない」
「正義はあるのか?」
シャルフの言葉に俺はそう突っ込みをいれる。
いや、巨悪が復活する可能性を潰すというのは正義だろうが……。
これを、正義と名乗るのは日曜の朝の特撮ヒーロー物の時間が許さない気がする。
しかし、この男……顔だけの行動がメチャクチャ痛い男だと思っていたが……。まともな論理観念を持っている男である。
イケメンなので点数をつけるのが辛いが、これは高得点です。と、思っていたら、
「それになにより、我が愛しの花嫁が守ろうとしているご友人。
それを守ってなにがおかしい」
と、俺の肩を掴んで言うシャルフ。
はい。減点です。プラスマイナスで零です。
「誰が花嫁だ。お前は、俺の名前すら知れねえだろうが!」
びすしと、俺はその頭にチョップを入れるが、
「ふん。ならば、ここで死んで貰おう」
と、言うアーロイドが宣言する。
「ふん。この僕に勝てるとでも?」
「お前、なんでこの人数差でそうも強気なんだ?」
シャルフの言葉に俺はそう呆れ混じりにツッコミを入れた。




