第六話 諦めたらそこで試合終了です。ただし、試合なんてしていない。
ようやっと逆はレーム要素をいれる事が出来ました。野郎に囲まれるハーレムと女の子に囲まれるハーレムを同時に味わう主人公。
盗賊には出会ったが、魔物には出会わずに街にとたどり着いた。
「おお。異世界の街だな」
と、俺はそう呟く。本当なら、もう少しテンションが上がりそうなのだが……。盗賊での騒動のおかげで、テンションはやや低めだ。
ちなみに、街に入る前にフルーの服が治ったので俺はローブを返してもらっていた。
俺は異世界の街並を見る。どちらかと言うと、西洋系だがあまり文明レベルは高くないらしい。外灯もなく石畳みの道もあまり無い。馬車が通っているが、ろくに整備されていない道だとしたら馬車はさぞかし揺れるだろう。
と、失礼な事を少しだけ考える。
家はレンガと漆喰などで作られている西洋建築。屋根も瓦ではない様子だが、かといって藁などで作られているわけではない。服装は、フルーのような魔女スタイルは居ないがファンタジーゲームなどの村人のような服装と言えば、大体はあっているだろう。
とは言え、さすがは異世界! と、言いたくなるような光景もある。
たとえば、ペットのようにつれて行かれている耳が羽根のような形をしている額に宝石がついたウサギとハムスターを足して二で割って可愛らしくした動物。背中にトンボのような羽根の生えた手の平サイズの小人達。
耳が長いエルフやメイドさんに、人間と動物を足して二で割った獣人と呼ぶべき存在。時たまに、俺たちのような旅衣装を身に纏っている剣士や魔法使いに神官に巫女。
一部、異世界云々とは無関係のものに興奮していたような気がするが……。
まあ、さすがは異世界だ。と、納得させるような要素もあったのだ。
とは言え、
「やあ。そこの魅力的なレディー。
この街は初めてかな?
僕が案内してあげよう」
「よお。お嬢ちゃん。旅人かい。
なら、宿屋はうちでどうだい。君ならば、お金なんていらないさ。
むしろ、永住して欲しい」
なんだか家と言うか元居た街に居たときよりも、やたらとナンパされる。背中にハリセンを背負って顔を隠す仮面をつけた女なんて怪しいとしか言えないのに……。
異世界だと、このくらいはちょっとした個性レベルなのだろうか?
しかし、フルーも薫も美人だと言うのに俺を無視して話しかけるなよ。フルーはともかく、薫からの視線がメチャクチャ痛いんだけれど……。
ちなみに、フィリも女性なのだが相変わらずの男装スタイルなので口説かれないのは自業自得なのだ。当人も自覚はしているらしくなにも反応はしていない。
つか、俺を見て頬を染めるな! 口説くな! と、怒鳴りたい。一部、なにやら俺を見て何か財布を確認しているが……。絶対に貢ぐなよ。野郎共!
「……さっさと行くぞ」
と、俺はすたすたと歩き出す。
「なんか、街に居たときよりも口説かれていない?」
「同感だ」
「大丈夫です。気のせいではありません」
薫の言葉に俺が頷けば、相変わらずのフルーの何が大丈夫なのか解らない大丈夫が帰ってくる。
「まあ、あの街は呪いの飽和状態だからな」
と、フィリが言う。
「呪いの飽和状態?」
妙な言葉に俺はフィリを見る。
「あの街の住民は全て呪われています。それは、ご存じですよね」
「よく、知って居るよ」
元々、住んでいるんだし街を歩いていて呪われていない人間を見るほうが珍しいほどだ。
「呪われている人間は他者の呪いの影響をやや受けにくいんです。
あくまでややでして、まったく影響を受けないわけではありません。それに本来ならば微量ですが、あの街では住民の一人一人が自ら呪いのエネルギーを発しています。
それがぶつかり合って、呪いへの影響を微量に下げていたんです。
街の住民を一カ所に集めているのも、その理由もあります」
「なるほど」
ようするに、呪いにたいして効果が麻痺しているというわけか……。
と、俺は納得してみる。
「けれど、この街ではそうではありません。
そのせいで、呪いの魅了が強化されたのかと思います。
それに、あの世界ではまだヨシキさんは未成年と言う判断ですが……。
この世界では結婚も可能で成人している扱いですから」
「あー」
たしかに、俺たちの世界じゃ二十歳が成人の扱いだ。まあ、女性は十六才。男性は十八歳で結婚が可能なのだが、最近では晩婚化が進んでいる。……この晩婚化が少子高齢化の拍車をかけていると言うのが、俺の推測なのだが……。それは、政府が考える事でありすくなくとも、異世界に渡ってまで考える内容ではないだろう。
だから、結婚は二十代後半からでも別に珍しく無いほどだ。
だが、この世界もそうだとは限らない。
「そうなのか?」
「ああ。十五歳となればすでに成人していて、自活するのが普通だ。
まあ、高等な学習をする者もいるが……。基本的にはそうやって自活を始めるものだ。
貴族などにいたっては、十五歳になればすぐに結婚と言うやつらもいる」
と、フィリが言う。
つまり、俺たちもこの世界では成人している大人の扱いなのだろう。とは言え、学校に通い続けている俺たちをこの世界の住民であるフルー達空みたら、さぞかしのんびり者かもしれない。まあ、世界が違うのだから文化や風習が違うのは当たり前なのだ。
と、俺は勝手に自己完結をする。
だが、それなら理解する。俺の年齢は、世間では結婚適齢期でもある年齢だ。それならば、異性として魅力的に見えるのだろう。
とは言え、俺としては野郎に口説かれて喜ぶ性癖はない。
そんな中、
「やあ」
ばっと突如として薔薇の花束が俺の前に現れた。
「えっと……」
と、俺は突如として薔薇の花を差し出した男を見る。
その男は、一言で言えばイケメンだった。ムカつく。と、言うのが第一印象だ。
やや癖のある金髪は軽くウェーブがかかっている。瞳は青色で目鼻は整っていて、背は高い。俺たちの世界じゃ、ジャニーズとか言われるイケメンアイドルグループのようだ。
その男が、薔薇を唐突にプレゼントする。なんのドラマだ? と、言いたくなるようなシチュエーションだが、プレゼントされた俺としては鳥肌ものだ。
「君の美しさの前ではこの薔薇もかすんでしまうだろう。
だが、君の心を少しでも引き留めたくこんなありふれた手を使った僕を許してくれ」
「興味無いから持って帰ってください」
「もったいないですよ。薔薇は食べれるんですから」
男の言葉に俺がそう返そうとすれば、フルーがややずれた事を言った。
「ふっ。恥ずかしがって可愛らしい人だ」
フルーの言葉を頬を引きつらせながら、スルーしたその男はそう言うと俺のあごを掴むと自分に無理矢理、目線を会わせる。
少女漫画にでも出そうな、シチュエーションだが……。されているのが、俺(精神的性別は男)だと、思うと何というか悲しくなる。
「あなたのその仮面から覗く瞳は、どんな高価な宝石よりも輝き。
そして夜空を照らす星よりも魅力的だ。
どうか、その仮面の下にある素顔を見せてください」
「断る。それに、予定があるんだ。
どこかへ消えろ」
「ふふふ。美しい薔薇にはトゲがある。
あなたのその言葉は鋭いトゲだ。
それでも近づいてしまう魔性の美しさがあなたにはある。いつか、その茨をかき分けてあなたの中に眠る姫君から祝福の口づけが欲しいものです」
格好いい事を言っているのだろうが、大半が意味不明だ。
つか、口づけなんて冗談じゃない。人工呼吸なら我慢するが、何が嬉しくて野郎とキスをしなければならないのだ。俺は、まだファーストキスもまだなのだ。
人工呼吸と言う救命活動ならば、俺も我慢するだろう。(出来れば、それでも美人が良いと言うのが願望だが……)だが、何が嬉しくてそんな理由もなく野郎とキスなんてしなければならないのだ。
「ははは。まあ、いきなりすぎたかな。
だが、この薔薇を見る度に、この僕。シャルフ=マニーロ=カスケイドを思い出して欲しい。そして、僕に会いたくなったら、あの星に向かって僕を呼んでくれ。
必ず君の元へとかけつける」
「……今、昼間だぞ」
男……シャルフの言葉に俺はそう突っ込みをいれる。
星に呼んで本当に来るとは思えないとか、呼ばねえ。と、言うツッコミだけではなく、根本的な事を突っ込む。
だが、俺の意見を聞いてないのかやたらと煌めく白い歯を輝かせながら立ち去る。あの真っ白な歯なら、間違いなく歯磨き粉や歯ブラシのCMにでれそうだ。
と、どこか呆れた部分が言う。
「あれが、噂の銀薔薇のシャルフか」
「誰だよ」
フィリの言葉に俺がそうツッコミをいれる。つか、銀薔薇ってなんだ?
紅薔薇とか白薔薇と言う言葉は聞いたことがあるが、銀薔薇ってなんだ?
「銀色の薔薇なんてあるの?」
俺の疑問の代わりというわけではないだろうが、薫が尋ねると、
「? 普通、薔薇は赤、銀、金色だろ」
なに、当たり前の常識を聞いているんだ? と、言いたげな顔をして言うフィリ。
「俺達の世界じゃ、薔薇は赤、白、黄色が基本なんだよ」
と、俺がフィリに言う。
「大丈夫です。それより、見えてきましたよ」
と、フルーが何が大丈夫なのかは解らないが、そう言って指さした先には待ち合わせ場所であるお店があった。
それなりに、上等なお店なのだろう。だが、多人数がいるお店であり、名門とか名家と呼ばれるような家の連中が待ち合わせにするのはやや下のお店に見える。
まあ、八割方勘当したような娘との待ち合わせならこの程度で十分。と、思っているのか……。それとも、俺の建てた仮説の中でも最悪の結果があるのだろうか?
俺は嫌な予感を覚えながら覚悟を決めて、ドアを開けた。
飲食店と言うお店は、まあ。オシャレなカフェに近い場所だった。フローリングの床にカウンター席と丸いテーブルが複数ならんでいる。
窓からの日当たりは良く、天井にはランプがいくつか並んでいる。
周囲には花などが飾られている。
レストランとは言えないが、オシャレな少し古めかしい印象のカフェ、あるいは喫茶店と言う印象を与える。
この世界の店のレベルが解らないので、何とも言えない。
そう思っていると、
「お客様。ご予約はされていますか?」
と、店員らしい人物が尋ねる。真っ白な服に漆黒のエプロンとこう言う所は、俺たちの世界と同じなウエーターの衣装だ。
ただし、生地が少しだけ違う。つーか、ウエイトレスさんじゃないんだな。と、俺は少しだけ残念に思う。俺を見てウエーターが頬を染めたのは、無視する。
「フィリアだ。アームストロング家の者に呼ばれている」
と、フィリが言えば、
「畏まりました。こちらでございます」
と、案内された場所には数名の人たちがいた。
なるほど、フィリの親戚だけはある。と、俺は思う。顔立ちなどはフィリに似ていて、美形だ。まず上座に座っているのは、フィリに似たやや中年に近い男性。年の頃は、少なくとも三十代前半。下手したら五十代かもしれない。
少なくとも、フィリの父親と言う事から三十を超えているのは間違いない。だが、そんな俺たちからみたらおじさんと、呼べるような年齢にしては体は鍛えられている。
漫画やアニメに出てくるマッチョのような鍛えられた体ではない。アクション俳優とかスポーツ選手みたいな無駄のない筋肉。不必要な筋肉はつけずに必要な筋肉だけをつけた体つきは、武道をしている人間からしたらほれぼれとする。
両隣にいる二人もそうだ。おそらくフィリの兄とかあるいは、親戚なのだろう。フィリとよく似た整った顔立ちに鍛えられた体格。
まあ、武道をやるものとしては憧れる体着きだが……。フィリの身の上を聞くと、心の底から尊敬は出来ない。
「お久しぶりです」
「……そうだな」
と、フィリの言葉に久しぶりの娘と言うのに冷たい言葉を言う父親。
「初めまして。逆井由紀と申します」
「東南薫です」
「フルーです」
続いて俺たちが名乗るが、なにも言わずに俺たちを品定めするように見る。
……俺を見て、父親の両隣の二人が頬を染めたのは……。もういい加減に面倒なのでスルーしよう。だが、父親は顔色を変えない。……まあ、子持ちの旦那に口説かれた日には俺は、発狂できる自信がある。
……そんな自信なんぞドブ川に捨てたいが……。
「しかし、遅かったな。女とはこれだから」
「失礼ですが、約束の時間に送れたのは男女は関係無いと思います」
かつてのフィリの口癖のような事を言い出したフィリの父親に俺は反論する。つーか、俺たちが名前を名乗ったのに、名前を名乗らないとは武道をする者としていかがなものか? 武道家としては、名前を名乗った相手に名乗るのが礼儀作法のはずだ。
「送れた理由も盗賊に襲われたと言う事です。たとえ、撃退をするにしても多少の時間のロスがあるはずです。一日、二日と送れたならいざ知らずにこの程度に送れたとは……。どういうつもりですか?」
俺が静かに言うと、フィリの父親は俺をすっと見据えた。
次回、謎解きが始まる? かもしれない。




