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第二話 目を覚ますとみんな呪われていた

主人公、外見は美少女。性格は男前。

 呪い解呪屋と名乗ったフルーは予想道理だが、日本人ではなかった。

 と、言うか地球人では無かった。

「まず、説明しますが……ここは、あなた方の住んでいた世界ではありません」

「……だろうな」

 フルーの言葉に俺はそう言って外を見る。

 空には輝く赤と青と紫色のオーロラ。

 そもそも、日本でオーロラが出る事は無くオーロラは写真でしか見たことないので詳しくないが、赤と青と紫と言う毒々しいオーロラなんて聞いた事ない。

 女になった以上で気付かなかったが、大きな窓ガラスがある台所からだと外がよく解る。空を飛んでいるのも、鳥だけではなく翼の生えた蜥蜴が見える。

 フルーが言うには、この世界……まあ、呼び名と言うのは無いらしい。とは言え、この世界には魔法が存在する。その分野に呪いと言う分野がある。

「呪いというと、あれか? わら人形に釘を刺すと相手を殺せるやつ。

 あと、吉成! お前、人の胸を見て鼻血を出しているなよ! 流れている血が紫色で気持ち悪いを通り越して怖いんだよ!」

 フルーの説明を聞きながら俺は自分の胸を凝視して鼻血を出血死を心配したくなるほど、流している吉成にチョップをいれる。

「そう言う呪いもありますが、それは危険ですし滅多に使い手はいません。基本的に生きた状態で苦しめるのが呪いです。そして、呪いを解くための職業もあります」

 そう言うフルーはその呪いを解く専門家である呪いの解呪屋なのである。

 そして、この世界には十五年前に倒された呪いを統べる魔女王ウィッチ・クイーン・オブ・カースと言う存在がある。強力な呪いをまき散らす魔女は、数多の魔法使い、魔女や戦士たちと戦い敗北した。

 だが、その肉体が滅んでも呪いは残っており、残された呪いを封印した。だが、突如としてその呪いが爆発した。その結果、封印されていた呪いの威力がたまたま世界を飛び越えてしまい、俺たちが住んでいた町に命中した。

 その結果、俺たちが住んでいた町はこの世界に飛ばされて俺たちは呪われたのだ。

 ちなみに、呪われたのは俺だけではないらしい。

「え? じゃあ、元の世界じゃどうなっているんだ?」

「さあ? 基本的に世界を飛び越える魔法なんて神様ぐらいの力が無いと不可能ですし……。あの腐れ外道婆の魔力が異常なんだよ。

 失礼、その結果と言いますか……おそらくですが、何かの爆発などであなた方は町ごと吹っ飛んでしまったと思われているんじゃないんですか?」

「なあ。お前って実は口が悪いんじゃないのか?」

 途中から聞こえた酷く、口の悪い悪口に俺は思わず尋ねると、

「いえ。そんな事はありませんよ」

 と、にっこりと柔和に笑う。……まあ、良いか。

「それで、呪いを解くのが専門なら俺たちの呪いを解いてくれ」

「無理です」

「即答して否定か!」

 にこやかに言われて俺は思わず怒鳴る。

「迷惑なんだよ。弟は蜥蜴人間で兄は喋る木! 更に両親は魚。どんな家族構成だよ! しかも、俺は男なのに女になって居るし」

「たしかに、あなたの呪いが一番、厄介ですわね」

 俺の言葉にフルーがそう言うが……

「俺の呪いが一番、厄介?」

 その言葉に俺は怪訝な顔をした。……ちなみに、未だに吉成は俺の胸を見ていた。


「呪いにはいくつかの種類にわけられます。

 あなたのご両親、そしてご兄弟にかけられた呪いは異種族化と呼ばれる呪いです。

 人間ではない生き物に変化する呪いです。ポピュラーなのでは、カエルにされたり鳥にされたりする呪いがあります」

「あー」

 その言葉に俺も納得する。おとぎ話でも何度も聞いたことがある。白鳥にされたり、カエルにされたりする話は俺たちの世界でもある。

「じゃ、俺も異種族化なのか?」

「あなたの場合は、一見すると肉体の変化。肉体変化と言う呪いに思われます。

 肉体変化とは、老化、若返り、あるいは性別の変化。体の一部が異形に変わる。

 けれど、あなたの呪いはそれによく似た傾国の美女と言う呪いです」

「けーこくの美女?」

 その言葉に俺は怪訝な顔をする。

「はい。傾国の美女。その呪いにかけられた者は、絶世の美貌を持つ美女となります」

「それがたとえ男でも美女になるというわけか?」

 と、俺は半眼で尋ねる。

「ええ。その通りです。たとえ、男でも老婆でも赤ん坊でも絶世の美女となります。

 その上、一定以上の年を取らないようになっています」

「俺が男じゃなかったら、むしろ幸福に感じたんだろうな」

 フルーの言葉に俺はため息混じりに言う。

「いえ。そうとも言えません。その美貌は種族、年齢を問わず男性を魅了する美貌です。その美貌に魅入られた男たちは、争いを繰り返します。その結果、幾つもの国を滅ぼし希代の悪女として名を残す結果となります」

「なるほどね。だから傾国の美女と言うわけか……」

 だとすると、吉成の奇行も説明がつく。

 いくら俺が美少女の外見とは言え、兄貴だと理解している相手を口説くわけない。

「そして、その美貌で望むと望まざると幾つもの国を滅ぼします。そして、幸せを得られず波乱の人生で悲惨な末路を味わうのです」

「……迷惑な」

「そんなあなたの人生と言う名の運命をそのまま大きく狂わす。

 それを運命変動の呪いと呼ばれます。呪いの中でも得に悪質な呪いです」

「……まあ、それはよいと……したくはないが、わかった。で、なんで呪いを解くの我無理なんだよ! あと、なんで兄貴は俺に惚れてないんだ?」

「その呪いの核がわからないから、今の状況では呪いを解く方法がわかりません。その説明は、長いので二番目の質問のほうをします。

 ……あなたのお兄様は、知恵のある木。この場合は、自立植物ドリアートになったようですね。ドリアートは無性なので、男性ではないんです。あと、精神まで動物になっていると、影響はうけませんのであなたのご両親も大丈夫ですよ。

 ……精神まで魚となっているので、自分が人間だったことも忘れていますが……」

「それは、それで困るな」

 フルーの言葉に俺はそう呟くがフルーはかまわず話を進める。

「それでは、話を戻します。暴発した呪いの数は九十九個あります。その呪いはあなた方の世界に飛び散り、そしてこの世界に戻って来てどこかへと行きました。その呪いの核の影響で、あなた方はその姿になりました。あなた方の呪いを解くには、呪いの核を見つけ出す必要があるんです」

「で、その呪いの核は?」

 フルーの説明に俺は納得して尋ねる。すると、フルーは、

「わかりません」

 と、即答したのだった。


「おい!」

「しょうがないじゃないですか! あの魔女の呪いは凶悪危険。呪いの核がどこにあるのか解らないのよ。まったくもってあの性格ブス魔女」

 と、呻くように言う。

「ですが、必ず呪いを解除します。そのために、私はここに来たんです」

 そうフルーは言ったのだった。

 その瞳に妙なまでに悲痛なかつ強い決意を感じさせたのだった。

 その後、この世界の魔法使いの偉い人が現れて、俺たちの町全体に巨大な映像として現れて、事情を説明した。

 謝罪をする中で、俺たちの事は保護と言う名の扱いがされている。とりあえず、しばらくの間は衣食住が困らないようにしてくれるらしい。

 そして、この世界について説明する者も現れるらしい。

 呪いを解除するためにこちらも行動しているらしい。

「けれど、呪いを解呪するのは簡単じゃないんですよね」

「どう言うことだ?」

 フルーの言葉に俺は尋ねる。

「呪いの魔女の核を見つけ出す事も難しい。それに、呪いの核を取り出すのも難しい。それを解呪できる者なんて……居ない」

「おい!」

 フルーの言葉に俺は突っ込みをいれる。

「それじゃ、お前だって無理なんじゃないのか?」

「大丈夫です! 手段は考えて居ます!

 たとえ、新米の呪いの解呪屋で呪い解呪課程の勉学で劣等生で落第ギリギリで卒業したとは言え、これさえあれば解呪できるはずです」

「……落第ギリギリ……」

 フルーの言葉に呆れたように兄貴が呟くが俺としても同感だ。

「わたしは、それを手に入れる為に向かっていたんです」

 そう言うとフルーは箒を取り出す。

 その様子を見ていて、

「俺も着いていく」

「え?」

 俺の言葉にフルーが驚いた表情をする。

「少なくとも、人の家に飛び込んでくるお前が心配なんだよ。

 それに、本当に呪いを解く事が可能ならば……俺はとっとと男に戻りたいんだよ」

「……解ったわ。念のためにこれを持って居てちょうだい」

 そう言ってフルーが懐から取りだしたのは、右目を隠すような特徴的なデザインの仮面だ。眼帯……と、言う訳では無い。どちらかと言うと仮面武道会などで顔の半分を隠すような豪華なデザインの仮面だ。

 白と金でデザインされた仮面は右目の部分だけを隠すようになっている。

「なんだ? これ?」

「異性に嫌われる呪いの仮面よ」

「お前、呪いの解呪の専門家じゃないのか?」

「呪いを解呪すると言う事は、呪いをかける事も出来ると言うことよ。

 まあ、傾国の美女の魅了を相手にしたら完全に打ち消す事は出来ないわ。

 けれど、多少は弱める事ができるはずよ」

「身に着けたら、外せないとかは無いよな」

 男に戻ったら異性に嫌われるのは嫌だと思う。

「大丈夫よ。そんな悪質な呪いはかけてないわ」

 と、俺の質問にフルーはそう言ったのだった。


 とにかく、服を着替えることにした。本音としたら今までの普段着を着たいのだが……あいにくと、俺の私服は男の服だ。……当たり前と言えば、当たり前だ。

 普段着に女の服があった方が悲しすぎる。

 かといって普段着はサイズが合わなかった。何しろ、体は縮んでいるのだ。ズボンはぶかぶかでシャツもぶかぶかとなっている。

 しょうがなく俺は弟のズボンを借りて、母親の下着を借りる。絶対に女物の下着なんて身に着けたくないが、ノーブラで行動するつもりは無い。

 ……異性を無駄に引きつけるのに、ノーブラなんてとんでもないだろう。

 だが……、

「合わない」

 無駄に大きな胸は……どうやら三人の息子を育てた母親より大きかったらしい。

 無理矢理、押し込むが圧迫感が半端ない。

「なんで、女はブラをつけるんだろう。と、言うか男に生まれてどうしてブラなんて……」

 いろいろと悲しくなる中で、どうにか着替えを終えて鏡で自分を見る。

 流れるような金髪に自分の顔だと言うのに、見ほれてしまいそうな顔立ち。男物のシャツに、ズボンと言うボーイッシュと言う言葉よりも男のような服装だが、それでもぞくりとする色気を感じさせる。

 そこに、白と金の片目を隠すような仮面。

 妖しいがそれでも、見ほれるような魅力を感じさせる。

 俺は、長い髪の毛を近くの文具用のハサミで髪の毛を切る。

 いっそ、ショートヘアーにしたいのだ。

 ジョキジョキと適当にショートに切るのだが……

「どんな髪になっているんだよ?」

 と、俺はため息をつく。

 斬っても斬っても伸び続けて乱雑な髪の毛ではなく美容院でカットされたばかりのような整った髪型になっている。

 しょうがないので、髪の毛をゴムでまとめ上げて一つにまとめる。

 どうやら、その程度の自由は許されているらしい。……一つにまとめ上げたら余計にボーイッシュな美貌が際立っているはずだった。

 あと、シャツの胸元が破けそうで怖い。

「ああ。兄貴……魅力的だ。ドキドキするよ」

 と、興奮した様子の吉成。ちなみに、吉成はズボンしかはいていない状態だ。あと、ズボンの下半身部分にハサミを入れて尻尾が出るようにしている。

 兄貴は変わらずの素っ裸だが、……あの状態では気にしない。

「兄貴。その馬鹿の見張りをお願い。

 それと、学校は……多分、休みだと思うから……。

 父さんや母さんをよろしく」

「ああ。解った。何かこちらの世界の人たちが着たら、対応をしておく。

 ついでに、食料も調達しておく。……電気が通らなくなっている」

 カバンに缶詰や乾パンやおにぎりと言った簡単な食料と懐中電灯。絆創膏や消毒薬と言った薬をカバンに入れる。それと、念のためにスマホをいれてみたが……電波は通ってなかった。まあ、電波が通じるとは思ってなかったが……。何かに役に立つだろう。少なくとも、時計とアラーム機能は使えるのだ。

 ……充電が斬れたら役立たずの重しにしかならないだろうが……。それと、念のためにロープもいれている。それと、缶切りもある。あとは、ライターとマッチ。ついでに水筒に水も入れている。

「本当に行くんですか?」

「足手まといと感じたら見捨ててもかまわねえよ」

 俺は肩をすくめてフルーに言ったのだった。

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