第四話 放課後のムカつくイケメン魔法使いと合法ロリ老女
タイトルはギャグ。だが、内容はどちらかと言えば、シリアスより。
何というか……そう、甘いお菓子と思ったら実は辛い料理だったような気分。
落ち込みながら学校の外へと出ると、
「見つけたぞ。フルー」
と、言う声がしてそちらを見ると一人の人物がいた。うちの学校の関係者ではない。と、言うか俺たちの世界の住民ではないだろう。
栗色の髪の毛にエメラルドのような瞳。身に着けている服装は、魔法使いのような服だが、漆黒の服の上にローブと言うかマントを羽織っている。さらに、飾りなどが多種多様に着いており、派手というわけではないが威圧感を与える。
目つきは鋭く眼鏡をかけており、知的で美形な眼鏡男子と言う感じだ。
フルーが町中を走り回る見習い魔法使いなら、こっちは熟練の魔法使いに見える。
「……ローイ」
「知り合いか?」
フルーが名前を呼んだので、俺は確認しながらやはりフルーの世界の出身者かと納得する。そもそも、フルーの存在を知って居る俺たちの世界の出身者は少ない。
そして、髪や瞳の色……まあ、呪いで髪の毛の色が変になったやつもいるので、一概に確信を持てないが……。来ている服装が、フルーと似ていたのだ。
「……同業者ですよ」
「お前、やっぱり勝手な事をしていたな」
と、フルーが俺の質問に答える中でローイと呼ばれた人物は近づく。
「お前、まだ自分一人でどうにか出来ると思っているのか?
いや、私としてはお前がまだ自由に行動している事、事態が信じられない」
冷たい眼差しでそう言う。
「私が何かをしたわけじゃありません。
そもそも、ここでの騒動を解決するのは大半の呪い解呪屋はすぐにするように言っています。だから、呪いの解呪屋である私が解呪をしようとしていて、咎められる必要はありませんわ」
「ふん。きさまなど、存在している事で迷惑をかけているようなものだ」
「おい。待てよ。兄ちゃん」
鼻で笑うローイの言葉に俺はさすがに口を挟んだ。
どう言う関係か解らないので、黙っていてが先ほどの発言で俺はフルーの敵と判断した。もちろん、フルーの敵だからと言って悪人とは限らない。
だが、
「存在している事で迷惑をかけている。と、言う言い方はなんだよ?」
そう。その言い方だけは無視できなかった。
たしかに、人によってはあいつが邪魔だ。と、思うようなやつがいるだろう。たとえば、ものすごく野球を努力していて高校で野球部のレギュラーを夢見た。だが、偶然にも同じ高校で同じ同級生で十年に一人の天才とかのレベルのやつがいた。
野球の凡才しか持たない人間にしてみれば、そいつは自分が野球部のレギュラーになるための邪魔でしかない。だが、存在している事すら否定するのを、当人の前で言い放つ根性は気に入らない。ついでに、女と男、どっちの味方をするか? と、聞かれれば、大抵の場合、男なら女の味方をするはずだ。
たとえ、肉体が女になろうと俺は男である。
俺はそう言うと、ローイと言う奴の前に立ちふさがる。
「なんだ? お前は? ……呪われているようだな」
「ああ。そうだよ。呪われている。それよりも、事情はわからないが、少なくとも女の子に存在すら否定する言葉を投げかけるとは、それでも男かよ」
「……女の体をしているやつに言われる筋合いは無い」
俺の言葉にローイはそう言い切る。
「……てめえ」
今、人が一番、最も気にしている事を……。
俺の中で相手は嫌な奴と言う印象が固まっていく。
「人にそんな事を言われる筋合いは無い。
少なくとも肉体はさておき、性根は俺の方が男らしいと思いたいね」
と、俺は相手を見据える。
「とにかく、お前がフルーの行動を否定する権利は無いはずだ」
と、俺はそう言って相手を見据える。
「ふん。さすがというべきだな。
男を誑かす才覚がある様子だな。フルー」
「私は精神が男だろうと、外見が女の人間を口説くほど倒錯的な性格はしていませんわ」
ローイの言葉にフルーは顔色一つ代えずに反論する。
「……なあ。ひょっとして、この世界の人間と言うのは失礼なものなのか?」
二人して失礼な事を言っている二人に、俺は思わずそうツッコミを入れる。
このままだと、この世界限定の人間不信になりそうだ。
「ふん。そもそも、お前は……」
だが、俺の言葉を無視してローイは何かを言おうとしたが、
「そこまでにしときな。ローイ」
と、言う声がした。
その声をした方が見ると、
「また、出た」
「幽霊かなにかのように言わないで欲しいね」
俺の言葉に新しく現れた幼女はそう言った。
白銀色の髪の毛をツインテールにしており、輝く緑色の宝石はキラキラと輝いている。 来ている服は黒と緑色の二色カラーの服を着ているマントにフード。さらに宝石の輝きもある豪華な魔女の服だ。
大魔法使いと言う印象を与える印象の服装だが、年の頃はどう考えても小学校低学年。あるいは、幼稚園児にすら見えるほどだ。
だが、口調は大人びたと言うよりも老婆のようなしゃべり方をしている。
「誰だ?」
「「ラフェレア様?」」
俺の疑問に答えたわけではないだろうが、フルーとローイが声を上げる。
「……昨日、自己紹介をしたと思うんだがね?」
「昨日は町を離れていたんだ」
と、ラフェレアと呼ばれた人物の言葉に俺はそう答える。
「……ああ。なるほど……だから、それを……。
まったく、フルーも暴走ぎみだね。まあ、フルーの気持ちもわからないわけではないが……。では、名乗ろうかね。この世界の魔法協会の精神系魔法の長だよ。
精神系魔法は、呪ったり呪いを解呪と言った魔法の事よ。
今回は、呪いが関わっているので私がこの街の担当を関係しているね」
と、ラフェレアが言う。
「……つまり、偉い魔法使いと言う事か?」
「ああ。その認識で良いよ」
「……こんな子供が?」
俺が確認すれば、ラフェレアが言うが思わずそう尋ね返してしまう。
「失礼だね。私はある事故で成長しなくなっただけで、年はすでに成人しています」
「マジで?」
「本当ですわ。正確に言えば、呪いで若返る呪いを受けているんです」
俺の言葉にフルーがそう言って肯定した
「ちなみに、年齢は八十を超えています」
「八十?」
フルーの言葉に俺はすっとんきょんな声を上げる。
「女性の年齢を大声で宣言するもんじゃないよ。
フルーも年齢まで言わなくていいんだよ。ま、年齢を言われて怒るほど若くはないんだけれどね。精神は」
と、ラフェレア……さんが言う。
一応、年上ならさん付けをするべきだろう。と、俺は思いながら俺は改めて相手を見る。やっぱり、年上とは思えない。
まあ、それを言えば俺だってとても野郎には見えないだろう。
「とにかく、ローイ。あんたの意見も間違っているとは言わないよ。ただし、暴論でしかないよ。この現象には、フルー自身は責任がない。
そして、フルーがこの現象をどうにかしようとするのを止める権利も義務もない。
あんたが、この街で呪いを解呪するためにこの街に来ることを許可されてるしね」
そう言って、ラフェレアさんはローイと言う男を見る。
「そして、あんたが言おうとしていたのは勝手に口に出して良い要素じゃないよ。
それを口にした時点であんたを罰する必要が出てくるんだよ」
と、ラフェレアさんに言われて、ローイは黙る。
「解ったかい? とにかく、それが解ったなら、黙っておきな。
それと、あんた。名前は?」
そう言ってラフェレアさんに見られて俺はすっと息をのむ。
「えっと……逆井由紀と言います」
「ヨシキ・サカイね。サカイと言えば、あんたの兄が自立植物になっていないかい?」
「あ、そう言えばフルーが兄貴はそんなのになって居る。と、言っていたな」
ラフェレアの言葉に、俺はそう言って頷く。
「あれは珍しいからね。覚えていたよ」
「珍しいんですか?」
「そもそも、自立植物と言うのは珍しいからね。
ランダムで呪いをかけられるとはいえ、あんたの家はよっぽど変な呪いを多種多様にかけられたんだね。ま、そりゃ街全体に言えるんだろうけれどね」
と、ラフェレアさんは言うと肩をすくめる。
「ま、あんたがそれを手にしてしまったのもしょうがないね。
必然として受け止める事にするよ。
ただ、これを持っておきな」
そう言われて俺が手渡されたのは、何かのペンダントだ。
「これは?」
「魔法使いじゃないけれど、特例で近い立場を与えるのだよ。
あんたが持って居るそれは、あの忌まわしい呪いの主を崇める連中も狙ってくる。
呪いを解呪する役目がある以上は、特別な立場を与えようと言う証拠だよ。
近いうちに、魔法協会に来る事があったらそれを見せな。
どんな場所でもフルーと一緒に居るよ。ところで、フルーと本当にパートナーを組むつもりかい?」
「どう言う意味ですか?」
ラフェレアさんの言葉に俺は首をかしげて尋ねる。
「フルーは訳ありだよ。その過去を語ってやる事は出来ないが、その事情を知っても一緒に行動すると誓えるかい?」
「解りません」
ラフェレアさんの言葉に素直に答えれば、なぜか全員が転けていた。
「普通、こう言う場合で解らないと答えるかい?」
「解らないものは、わかりませんよ。
一緒に居ることが裏切りになることだってある。相手のために成らない事だってある。そもそも、知り合って数日の人間を過去も知らないで信用出来るか? と、聞かれても困りますよ。しかも、誓うとなれば無茶だ。
誓えないし約束は出来ない。けれど、噂や嘘に惑わされずにフルーを見るよ」
ラフェレアさんの言葉に俺は肩をすくめて言う。
「すくなくとも、過去になにがあるかは知らないけれど……。
俺はフルーの人となりをみて考えるよ」
「……ま、そりゃそうだね」
俺の言葉にラフェレアさんはそう言うと、
「その言葉で及第点と言っておこうかね。
それじゃ、私は帰らせてもらうよ。ローイ。あんたもおいで」
「な、なんで?」
「違反行為をしようとした。
未然で止まったとはいえ、こんな所で口に出そうとしたことは問題だよ。
場所によったら、多目に見ていただろうがこの場所だと多少の処罰が必要だ。わかったら、着いておいで」
「……わかりました」
どうやら、あからさまに身分が上の人間には従順らしい。
いかにも不服と言う事を隠してもない顔だが、反論はしない。
ぶわりと出て来た絨毯に乗ったラフェレアさんと箒に乗るローイ。
そして、そのまま空を飛んでいく。
「……じゃ、帰るか」
と、俺はため息混じりに言う。
なんだか、今日一日だけで随分と濃い人間と出会って来たような気がする。
いや、出会った人間の大半は俺と同じく平凡に普通に学校に通う高校生だったんだが……。なんだか、呪いの所為でずいぶんと濃い集団と化している気がする。
まあ、それは俺も人の事は言えないか……。
そう思いながら俺は疲労を感じながら歩いて居ると、
「聞かないんですか?」
と、ついて来ていたフルーが言う。
「なにが?」
「私の過去をです」
「言いたくない過去を無理に聞き出せるほど、話術に自信はないんだよ」
フルーの言葉に俺はそう言う。
「人間、誰だって言いたくない事の一つや二つがある。どうしても言わなくちゃいけないときは、言わなきゃいけないだろうが……。別に今は、そこまで知りたいと思うわけじゃない。それに、知らなくちゃいけないと思うわけでもない。
なら、無理に話さなくて良いよ。
嫌でも話して貰わなくちゃいけないと、おもったらお前を傷つけてでも話して貰うかもしれないけれどな。それじゃなければ、自分から話そうと思わない限り着ないよ」
「普通、言いたくない事は聞かない。と、言いませんか?」
「人間づきあいが希薄と言っておきながらそう言う言葉はあるんだな。
……なにしろ、こんな非常事態だ。何が起きるか解らない。朝、起きたら女になっているんだ。俺はできもしない約束はしない主義だ。
ま、約束を破ってしまう事もあるんだけれどな」
「……変な人ですね。あなたは」
お前がいうなよ。と、フルーの言葉に俺はそう思ったがそこは黙っておいた。