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町ごと召喚で呪われ 呪われて美少女になった俺は高校生男子です  作者: 茶山 紅
第二の呪い 呪われてない学校で呪われた学校生活
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第三話 行く意味があったか解らない学校内容と迷惑な呪い


 授業内容は、あまり大差がなかった……わけではない。なんでも、とりあえずは今までの世界の授業を続けるが、近いうちにこの世界での教師たちがやってくるそうだ。

 なんでやってくるか? と、言うとこの世界の言葉の読み書きなどを覚えるためだ。

 いつまでも魔法道具を借りて言葉しかわかりません。と、言う状態にするわけにもいかない。教師陣もその授業を受けたりしたりして、この世界に順応して貰おうと言うのが、この世界のお偉いさんの考えらしい。

「ようするに、元の世界には帰れないと案に言っているんじゃないの」

 と、鹿目が不機嫌そうに言うと、

「えー。まゆ~。困る~。明後日の~、コンサート~。楽しみに~していたの~」

 と、甘ったるい……生クリームに苺のソースとチョコレートにあんこ、さらに練乳を注いで砂糖を振りかけたような甘ったるい声がした。

「櫻木……なんだよ。そのしゃべり方と声」

 と、俺は思わずその声の主である櫻木を見る。

 櫻木真由。

 鹿目の友人である。

 ショートヘアーの髪の毛に引き締まった体つきで陸上部に所属している。短距離のみならず長距離も得意であり、女子陸上部のエースとして有名だ。

 中学までは伸び悩んでいたのだが、高校に入ってから一気に記録が上がり始めた。大学もその推薦で狙えると言われて居る。ボーイッシュなスポーツ少女と言う感じだ。

 趣味はスポーツと音楽であり、ランニングの時には必ず音楽を聴きながら走っているらしい。人気があるため、男子からコンサートに誘われるが興奮していて音楽しか覚えて貰えないと言う事で、彼氏は居ない。

 サバサバした格好いい系列の女子だったのだが……。

 口から出てきた、甘えん坊の……異性からは人気があるが同性からは嫌われるタイプの女の子と言う感じのぶりっこ系のようなしゃべり方だ。

「それが~、まゆ~。呪いで~こんなしゃべり方に~、なっちゃったの~。

 まゆ、困っちゃう~」

 何というか両手の拳を握りしめて口元に当ててふりふりと腰を揺らしながら言いそうな言葉。それを、たんたんと肩をすくめてボーイッシュな女の子がやれやれとため息混じりに言う仕草。

 何というか、違和感がすごい。

 すごすぎて、何というか気分が悪くなるほどだ。

「フルー。解説」

「おそらく言語障害の呪いですね。精神変動の呪いの一種です。

 まあ、これも軽傷の方ですよ。

 中には、自分が動物だと思い込んでしまう人もいますし……」

「あんな風に?」

 フルーの解説に鹿目が指さした先には、素っ裸で四つ足で走り回る中年男性。それを、奥さんらしき人が叫びながら追いかけている。

 大変だな。あの奥さん。

「そうですね。あの人は、精神まで犬になっている様子です」

「どうせなら、美人が裸で走って欲しかった」

 フルーの言葉に心底、残念そうに言う厳左右衛門。瞬時に鹿目の蹴りが厳左右衛門の後頭部に命中する。盛大に床にたたき付けられる厳左右衛門。まったく持って自業自得過ぎて慰められない。男として、たしかに中年男性の裸よりも美女の裸の方が見たいのは解る。解るが、そこは隠して胸の内で修めるべきだ。……せめて、女子が居ないところで言えよ。と、俺は呆れるのだった。


 授業……と、言ってもこの世界での基礎知識や、この世界で生きていくための方法を簡単に説明されたら、授業はあっさりと終わった。

 先生方も忙しいのだろう。

 おそらく、授業の方もどちらかと言うと今回は友達がどうなっているか? 心配だろうだから顔見せと言うのが目的っぽい。

 俺はというと、

【呪いの相談、受けます】

 と、この世界と俺たちの世界の言語、両方で書かれた文字を書いたノートの紙切れを貼り、廊下に座ってとりあえずの呪いの分析をしていた。

 相談料無料と銘打っているが、相談を聞くだけで解決できないので無料なだけだ。それに、この世界でのお金なんて今は誰も持って居ない。

 情報収拾が出来るだけでも十分だ。

 ついでに、自分の呪いに対して愚痴りたいのが人情らしい。

 そりゃ、そうだろう。と、俺は思う。

 俺だって朝起きたら、女になっていたのだ。なんで、女なんだ? と、文句を言いたい。さらに、そのまま続けざまにハリセン所持と言う変な呪いにまでかけられたのだ。

 とは言え、俺にまけず劣らず……と言うか、俺以上に変な呪いをかけられたやつと言うのはかなり多い。

 獣耳が生えたり、動物になってしまった。あるいは、子供や大人、老人に赤ん坊になってしまったと言うのはまだマシなほうだ。

 いや、女子にしてみればいきなり老婆と言うのは人生真っ暗闇だろう。青春時代、これからの美貌がこれまでの美貌どころか、もう美貌がないだ。

 文句も言いたくなるだろう。

 とにかく、俺とフルーはどんな呪いになったのかを話を聞いてメモを取る。まあ、メモを取るのは俺の仕事でありフルーはそれがどんな呪いかを説明するぐらいだ。

 とは言え、フルーの余計な一言を俺はフォローしたりしている。

「ねえ。あんまりだと思わない?

 そりゃ、たしかにこの外見はたしかに不気味だと思うけれど……。

 いくらなんでも、こんなキモい姿なんて最悪って別れたのよ。

 あの愛し合った日々はなんだったの?」

「若気の至りと言うやつじゃないですか? 恋愛と言う一過性の熱で浮かされていたけれど、あなたの外見でその熱が冷めた」

 びーびーと泣くのは体調二メートルはある巨大な鬼だ。浅黒い肌に、巨大な角。ボサボサの髪の毛に丸太のような腕。一応、スカート……なのだおるか、布を巻いており精一杯に可愛さを主張しようと、本来なら校則違反であるバッチや髪飾りでオシャレをしている。

 本来ならば、校則にうるさい風紀委員が文句を言うだろうが……。

 女子としてまりにもあまりな外見に文句が言えない。と、言うか今の学校に校則なんて八割方無意味と化している。鬼娘(あながち間違いではない)にフルーが言うが、慰めになってない。余計に泣き出す鬼娘。

「お前、すこしは慰めろよ」

「あいにくと、人の恋愛を慰められるほど異性に縁のある人生を送ってないので……」

 俺の言葉にフルーはそう言う。

「まあ、元気出せよ」

「あんたのような美人に言われても元気なんて出ないわよ!」

「いや、俺……性別は一応は男。本当は男。まあ、なんだ。外見で振るような男なんてどうせ、いつかは別れていたさ」

「……そりゃ、そうかもしれないけれど……」

 分析をするフルーに対して、俺は呪いで悩む人たちのフォローをしながらメモを取る。地味に忙しく、一通り終わったときにはすでに普通に学校が終わる時間だった。


「俺と同じ呪いのやつは居なかったな」

「呪いにも珍しい呪いやよくある呪いがありますからね。

 運命改変の呪いは最悪で、そして最も最悪の結末がまっています。けれど、その分だけ呪いがそれほどないんです」

 ノートに書いたデータを読んで呟いた俺に、フルーがそう説明する。

「まあ、大半の人の呪いは対した事がない呪いですね」

「……対した事のない呪いか?」

 老人になっていたり、子供になって居たり、動植物や昆虫に異形の姿になって居る。十分にとんでもない呪いだと思うが……。

「少なくとも、すぐに死ぬような呪いはありませんでしたよ。

 まあ、時限式や遅効性の呪いはその可能性がありますが……」

「お前って、友達がいないだろ」

 フルーの言葉に、俺は呆れたように言う。

「あいにくと、友好関係を気づけるような幸せな環境では無かったので……。命を狙われたり、利用されそうになった過去しかないんですの」

「お前さ。少しはスルーしやすいことを話してくれよ」

 フルーの言葉に俺はため息をつく。

 あっさりと世間話のように語る内容にしては、重すぎる内容だ。

 しかも、フルーはあくまでさわりの所しか話していない。

「どう言う意味です?」

「ここで、お前の過去について聞いた所で教えてくれないんだろ」

「はい。あいにくと、そう簡単に話せる事情を背負っていないので……」

 俺の質問にあっさりと肯定するフルー。

 語るつもりはないと断言されてしまえば、もはやなにも言えやしない。

 なにしろ、出会って昨日今日の付き合いなのだ。

 誰にだって、そう簡単に言えない事はあるだろう。

 腹を割って話せる関係なんて、そうそうない。そして、昨日今日の付き合いでそこまで仲良くなれるなんて簡単ではない。

 そもそも、俺とフルーはあくまで協力関係にすぎないのだ。

「なら、そう言うふうに過去を臭わせる事はなるべく言うな。

 反応に困るから……」

 俺はそう言ってため息をつけば、

「すみません。

 あまり人付き合いはしなかったんです」

 と、フルーが言う。

 本気で悪かったと思っているのかはわからないが、おそらくフルーは人付き合いが不器用なのだろう。……不器用と言う言葉ですませて良いのかは、わからないが……。

 経験が浅いとも言えるかもしれない。

「まあ、お前の過去がなんであろうと……。

 俺は共に行動するさ」

「まあ、あなたの呪いをどうにかするには、呪いを解呪する者が必要ですしね」

 俺の言葉にあっさりと頷くフルー。

 ……普通、ここで勘違いするところだろう。と、俺は内心で呆れる。

 いや、自分自身で言っておきながら言う言葉じゃないかも知れないが……。言っておいて、俺も勘違いや誤解が生まれそうな発言だと思ったのだ。

 慌てて誤解を解こうと思ったやさきに、この発言だ。

 もう少し、こう頬を染めて欲しい者である。……とは言え、考えて見れば俺は今は怪しい美少女の姿をしているのだ。これで、たとえ女を口説いたとしてもまともな神経の女性ならば、口説かれている気がしないだろう。俺は現在の俺の姿に涙したのだった。


「つか、俺の呪いって本当にどうにかならないのか?

 男だって言っても、口説くやつがいるぞ」

「常に魅了の状態ですからね。

 まあ、一生女の子のままだったら恋人になってよ。と、まだ冷静ですよ」

「……冷静かなぁ?」

 中には恋人と共に来ていて、俺を口説いて修羅場となっているやつが数名ほどいたが……。一人なんぞ、半分ほど猫となった恋人を連れて来た目が五つになった男子生徒。俺を見た途端に、恋人に別れようと宣言したのである。

 その後、俺が男だと説明した瞬間にやっぱり先ほどの発言を取り消そうとしたのだが、思いっきり恋人に顔を引っ掻かれていた。

 おかげで呪いの相談を受けるよりも、修羅場の喧嘩を止める事が大変だった。フルーの方は止めようとしているのだろうが、余計な事を言ったりして場を凍り付かせるが火に油を注ぐかのどちらかしかできなかったのだ。

 おかげで、俺は三回ほど女性に叩かれて、泥棒猫だのあばずれだのビッチだの貶された。……念のために言うが、俺は男を口説こうとかした事は無い。

 そもそも、今の俺はどうして口説かれるというのかはわからない。そりゃ、たしかに今の俺はすごい美人だ。それは認めよう。

 男なら生唾を飲んで目を奪われるような豊満な胸。かといって太っているわけではなく引き締まったウエストには無駄な肉はなく、かといって抱き心地が悪いほど細いわけではない。尻も無駄にでかいわけではないが、理想的な大きさの尻。

 顔立ちも美少女だと、鏡を見る度に思う。

 金髪の流れるような髪の毛もキラキラと輝いていて、下手なアイドルや女優も土下座して敗北を認める美人だ。ただし、それはちゃんと身なりを整えたらの話だ。

 金髪を俺は適当に乱雑に一つに結んでおり、着ている服はサイズの合っていない男子制服。そして、性別は男子なので口調は乱暴で男言葉。

 仕草は女らしさの欠片も存在しない。……存在していたら悲しいほどだ。

 しかも、背中にはハリセンを背負い顔の片目を隠すような怪しい仮面。

 冷静になって見れば、美人だろうが変な女と言う感じで遠くから見るのはともかく、恋人にしたいと願うのはわからない。

 美人でも仲良くなりたい美人と、出来れば遠くから見つめていたい美人があるのだ。

 アイドルだって、不思議ちゃんアイドルとかは、可愛いと思うが……。恋人にしたいと言うのは別問題だ。まあ、あれはある意味では演技をしていると思うので、別だろうが……。考えて見れば、実際に恋人にしたいかどうかと美人かどうかは別なのだ。

 そもそも、男が十人居れば理想の恋人と言うのは十人いるのだ。可愛い癒し系の女の子が良いと言う男がいれば、元気でそばに居てくれるだけで一緒に元気を暮れるようなスポーツ少女が理想と言う男もいる。

 多種多様な女を侍らしてハーレムを夢見る男もいるかもしれないが……。あれは例外だ。うん。そもそも、女をハーレムにするのは無謀なのだ。

 過去に、なん股もかけていた兄を見て俺はそう悟った。

 同系統な女同士でも、女は序列を作るがこれで自分と違うタイプだと仲良くなれる場合は、仲良くなれるかも知れないが……。犬猿の仲で仲良くなれない場合は、そりゃもう恐い。良い例が、大奥だ。

 昔は、本妻の他に妾が居ても当たり前の時代だったが……。本妻が妾に妾が本妻への嫌がらせと言うのは、熾烈を極めたらしい。事実、兄の場合は恋人同士が大げんかをした結果、兄の部屋のみならず隣の部屋であった俺の部屋まで被害を被り、結果として刀傷沙汰になったと言う騒動である。

 おかげで俺は大切にしていた漫画がお釈迦となってしまった。今では手に入らない限定版だったのに……。とにかく、その修羅場で俺は女に嫌われてしまったのである。

 ……ああ、恋人が居ない歴が長くなってしまう。と、俺は涙した。

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