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第二話 傾国の美女になったり、アリスになったり、俺は本当に呪われている


 目を覚ましたらエプロンドレスを身につけていた。

「いや。なんで?」

 起き上がって周囲を見ればそこは森だった。

「なんでだよ」

 思わず言いながら立ち上がり周囲を見渡す。

 可能性としてはいろいろと考えられる。

 何しろ先日、誘拐されたばかりだ。

 不安を抱くのは当然と言えば当然のはずだ。

 そう思いながら周囲を見渡していると、

「…………」

 みょうなものをみた。

 それは少なくとも地球の日本ではみることがない。

 だが、見る事が出来る光景。

 服を着て時計をもった白ウサギが二足歩行で走って行った。

 たとえ、絵本を読まない人でも表紙ぐらいはみたことがあるだろう。

 その表紙に書いてある可能性が極めて高い。

 時計もった白ウサギ。

 不思議の国のアリスに出てくる時計ウサギだ。

 そして気づく。

 この服装は、

「……不思議の国のアリス……」

 その主人公であるアリスの服装……だと思う。

 アリスは原作がある心理学者が子どもにした即興の物語だったと聞く。

 又聞きなので真偽は怪しいが……。

 そのためか服装の設定もほとんどない。

 作品によってイラストが違う。

 場合によっては場面毎に服装が変化するという話すらあるほどだ。

 そもそも夢落ちの物語なのだ。

 夢に合理性を求めてはいけない。

 つまり、

「これも夢……」

 そう考えて頬をつねるが普通に痛みが走る。

 だとしたら、

「誰かの呪い?」

 この世界に来てからの騒動を思い返せば、全て呪いがきっかけであり引き金だ。

 原因というか根本的な問題は違ったとしても……。

「とりあえず時計ウサギをおいかけないでおこう」

 そう言ってオレは時計ウサギが向かわなかった方へと向かう。

 ここで時計ウサギの後をおいかけるのはよくないと思ったのだ。

「まあ。そうしないと悪いという可能性もあるが……。

 そのときはそのときだな」

 そう言ってハリセンを確認する。

 アリス衣装でも相変わらずあるのがハリセン。

 おそらく呪いの影響をうけないようになっているのだろう。

 まあ。当然と言えば当然だ。

 これで剣とか……せめて大槌とかそういった武器らしいのなら良かったのに……。

 なぜにハリセンにしたのか?

 いや。間借り間違って人を殺してしまう可能性は無いのだが……。

 オレはそう思いながら周囲を見渡して歩くのだった。


 不思議の国のアリス。

 イギリスの数学者が『アリス』と言う実在する少女に語って聞かせた物語だと言う。

 言葉遊びが無数にあり混乱させる単語が多いと言う特徴がある。

 主役にとってその物語が安全な物語というわけではない。

 とはいえ、

「まあ。それはどの物語でも同じだけれどな」

 そう俺はつぶやく。

 桃太郎は鬼と戦い、一寸法師も鬼と戦う。

 白雪姫だって狩人に命を狙われ、毒林檎を食べる。

 そもそも物語の原文はわりとホラーというかエグいのだ。

 一時期、『本当は怖いグリム童話』という物語を読んだことがあるので知っているのだ。

 白雪姫の王子は『死体愛好家』だし、白雪姫は自分を殺そうとした継母を熱した鉄靴を履かせて一生、踊らせるという拷問をした。

 シンデレラの継母と、その連れ子である姉たちは鳥に目玉をくりぬかれた。

 単に物語の流れで残酷な描写をそぎ落としていった結果だ。

 今では日本の物語でもさるかに合戦でカニが死なず、かちかち山の狸は死なずに謝罪することで許されているのだ。

 閑話休題。

「ただ……気をつけるのはハートの女王だな」

 不思議の国のアリス。

 有名なキャラクターといえば主役のアリスや時計ウサギなどあるが……。ハートの女王も忘れてはいけないキャラクターだ。

 端的に言えば悪役のようなポジションであり、かんしゃく持ちで我が儘。

 口癖のように首をはねるという処刑方法を主張するというキャラクターだ。

 物語の細かい展開は知らないが、最終的にアリスの首をはねるように言い出す。

 それだけは俺も知っているのだ。

「下手をしたら首をはねられるということだよな」

 かの有名な映画会社作品でもとにかくハートの女王は悪役(ヴィラン)として数えられている。しかも今の俺は傾国の美女。

 独裁者の女王とは相性が悪いと言う自覚があった。

「問題はこの状況の原因だな」

 俺は考える。

 おそらく何らかの形での呪いが原因だろう。

 そう思っていると、

「遅刻だ! 遅刻だ! 遅刻だ!」

 そう言って走って行く白ウサギ。

 ちなみにどうみても二足歩行するウサギ。

 うさ耳生えた知り合いというオチではなかった。

 となると……俺の記憶を奪ったというわけではないということだ。

 てっきり俺の記憶を元にしてアリスの世界ではない。

 だとしたらアリスの世界へ俺を取り込んだという可能性もある。

 だが、

「俺の行動に制限をかけているというわけではないようだな」

 本来、アリスならばウサギを追いかける必要があるだろう。

 もしかしたら俺の意思に反して強制的に身体を動かそうとする。

 あるいは思考誘導の可能性もあったが、

「ついて行く気にならないな」

 そうつぶやく。

 しかしそれではこれからどうするか? だ。

 ついて行かないでいた場合、物語という枠組みから外れる。

 物語通りに進めばハートの女王に会うだろうし、それ以外にも頭がおかしい不思議の国の住民に関わる。

 だが、相手の行動や何が起きるかという予想は立てやすい。

 そして現況というか原因解決が物語の完結という可能性もある。

 そう言ったリスクがあるというのも事実だ。

 それに、ここが物語の世界ならば物語の道筋から離れた場合どうなるかわからない。

 そう言ったリスクもあるので、

「とりあえず追いかけるしかないか……」

 俺はそう言うとウサギを追いかける。

 しかし問題がある。

「……ところで……アリスって具体的にどういう話だったっけ……」

 何しろマザーグースの詩と支離滅裂な夢物語。

 起承転結もあまりしていない。

 俺が知っているのはアリスがウサギを追いかけて不思議の国に行く。

 頭のおかしい帽子屋と三日月ウサギと眠りネズミの変なお茶会。

 ハートの女王が行う裁判で裁判にかけられる。

 アリスはハートの女王に首をはねられそうになる。

 そう言った感じの話だが……。

「たぶんいろいろと要点が抜けていると思う」

 俺はそうつぶやいたのだった。


 アリスの物語はようやくすると要点がない。

 起承転結がほぼほぼ無いような物語らしい。

 物語……特に子供向け絵本ならば起承転結ははっきりとしている。

 桃太郎ならば、お爺さんお婆さんが拾った桃から子供が生まれる

 子供は桃太郎と名付けられて鬼退治に向かう

 お供に犬、猿、キジをつれて鬼と戦い勝利する

 宝物を手に入れて桃太郎は凱旋する。

 端的に言えばこうだ。

 最近では桃太郎と鬼が戦わずに話し合いで解決する。

 そんなのがあるらしいが……。

 なんともつまらないと思う。

 それではヒーロー物で悪者を戦うヒーローの立場がないだろう。

 閑話休題。

 対してアリスの話はよくわからない。

 そもそも、

「夢落ちだからなぁ」

 支離滅裂というかまとめるのが難しい。

 そう思いながら向かっていると、

「由紀?」

 アリスではなく名前で呼ばれた。

 その言葉に俺がそちらを見ると、

「……フール?」

「はい。フールです。

 どうしましたか? なんか可愛らしい格好になっていますね。

 私はどういうわけかこんな格好です! 

 なんでしょうか? この格好?」

「……おそらく千枚皮じゃないかな?」

 無数の獣の毛皮を使われている毛皮に身を包んでいる。

 その姿には心当たりがあった。

 確かかなりマイナーなグリム童話だ。

「どんな話ですか?」

「すっごくマイナーな話だし……。

 正直、これも支離滅裂だな。

 アリスに比べたら物語にはなっているが……」

 ちなみに俺がこのマイナーな物語を知っているのは夏休みの自由研究だ。

 グリム童話の歴史というので調べてみたという過去があったから知っているのだ。 

千枚皮姫というのは本当にあるおとぎ話です。

グリム童話集で読んだ話です。

近親相姦やらなんやらあるためか最近では子供向けとしては語られない話です。

そのためかストーリーに矛盾点が多い。

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