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 第一話 退屈は時に波乱を呼ぶ

久しぶりの更新です。

子どもが生まれてから地獄のように忙しい日々です。

現在、引っ越しの準備中です。


「何これ?」

 学校の図書館。その図書館でフールが見つけたのは一冊の本だった。

 呪いに対する問題も一通り……まあ。うまい付き合い方や折り合いを見つけていってどうにか起きた日々。そんな中、図書館で本を読んでいた。

 ほとんど流通が止まったしまった以上、どうしても遮断されたものがある。

 それがマスメディア。サブカルチャーだ。

 特にアニメや特撮、ドラマ、漫画にラノベなどと行ったサブカルチャー。

 日本はサブカルチャーが発展している。

 世界に誇る文化ともいえるかもしれない。

 ところがこの世界ではそれは手に入らなくなった。

 まあ。当たり前と言えば当たり前だ。

 元の世界で流通しているそれが通じるようになればそちらの方が驚きだ。

 今までサブカルチャーに慣れしたしんでいた日本人は新しいそれらに飢えていた。

 オレも飢えており図書館で新しい本を手に入れようとしたのだ。

 そしてフールも本に興味を持ったらしい。

 持ってきたのは、

「不思議の国のアリスだな」

 一般的な童話の類だとされている話だ。

 とはいえ、実際のところは原作とも言うべききちんとした話はかなり複雑な物語。

 そもそも即興で子供に話した物語なのだから支離滅裂だ。そもそもオチが夢落ちなのだから当然と言えば当然だ。

 実際にオレも子度向けにダイジェストにした感じのしか呼んだことがない。

「不思議の国?」

「まあ。端的にいうとアリスという女の子が不思議の国と言われる異世界に迷い込んだ物語……かな?」

 厳密に言えば違うのかもしれないが……。

 あいにくとそこまで詳しくない。

「へー」

「ちょっと難しいと思うが……。

 大丈夫か?」

「うん。読んでみたい」

 オレの言葉にフールが言う。

 そこまで言うならばいいだろう。

 オレは不思議の国のアリスとあとは何冊かの本を借りたのだった。

 そしてその日の夕方。

 夕食を作っていく。

 いい加減にこの町にあった食材はつき始めている。

 幸いにもこの街にも味噌や醤油を作る工場があったことだろう。原料となる品々はあったりしたのでそれを使って新しく作っている。

 むしろその調味料が異世界的にも興味を抱かれているらしい。

 そしてこの世界にも豚肉や鶏肉に牛肉もあった。

 あいにくと内陸なので魚はなかなかに手に入らないが。

 それでも美味しく食べることができる。

 異世界産の豚肉を使った生姜焼きをオレは作り上げる。

「異世界の料理って変わった味付けだよな。基本的に黒いのにいろんな味がする」

「悪かったな。黒くて」

 ローイの言葉にオレはそうつぶやいた。


 謎の異世界産豚肉だが普通に豚肉だ。

 どちらかというと猪の肉に近いが……まあ。たいした問題ではない。

 この世界では畜産はさほど力を入れていないのか……。それともまだそんなに発展していないのかもしれない。

 そもそも日本の畜産はすごいのだ。特に肉は……。

 まあ。とはいえ、

「文句があるなら食べなくていいぞ」

「そうは言っていないだろ。

 純粋にすごいと言いたいんだよ」

 オレの言葉にそう反論するローイ。

「まあ。ローイの気持ちもわかるな。

 この世界の食べ物はなんというかすごすぎる」

 そうフィリが言う。

 言いたいことはわかる。

 この世界はだいだいとしては中世の西洋に近い。

 国通しが時に戦争をしたりしているような世の中だ。

 端的に言うと食事に関してはさほど重要視していない。

 いや。もちろん食べることが必要とわかっている。

 だが、食べることは生きるためということであり楽しむという余裕はない。

 王族や貴族と言った特権階級の人間ならば違うかもしれない。

 けれども日本は違うのだ。

 いや。これは日本以外でもいえるかもしれないけれど……。

「オレたちの世界では戦争はもう……少なくとも日本ではあまりしていない。

 だから食べることを楽しむためにいろいろと研究をしてきたんだよ。

 特に日本人の食への探究心はすごいぞ。

 ふぐだって食べようとするぐらいだ。

 ふぐの肝も食べようとするぐらいだし」

「「「ふぐ?」」」

 オレの言葉にフールにローイ。フィリが首をかしげる。

 三人ともふぐを知らないらしい。

 この世界ではふぐがいないのか……。はたまた内陸なので魚の知識があまりないのか……。それともふぐが違う名前で呼ばれているのかは謎だ。

 閑話休題。

「ふぐというのは魚の一種。

 ちょっとの毒で大量殺人が可能な毒を盛っている肝がある」

「それを食べるの?」

 オレの説明にドン引きした様子のフィリ。

「日本人は食べれないと思われている品の食べ方を見つけるのがすごいんだよ。

 青梅も食べれるようにしているぐらいだからな」

 青梅もそのまま食べれば有毒だが砂糖で漬け込み梅シロップにすれば美味しい。あるいは梅干しにするという手段もあるほどだ。

 中国人は四つ足ならテーブル以外、空を飛ぶなら飛行機以外を食べる。そういう話があるが日本人も負けていないと思う。

 まあ。それはさておいて醤油。日本の料理ならば否応なく使われるそれは確かに黒い。実際に日本の家庭料理を茶色、あるいは黒と評する人間は珍しくない。

 とはいえ、

「美味しいだろうが……。それにそっちにあわせた料理ばっかり作ってやる筋合いはない」

 わずかな期間ならともかくずっとだ。そちらの都合でこちらに来たのだから食生活はこちらの好みぐらい貫きたいのが本音だった。


「けれどそんな毒の魚を」

「これはかなり特殊な例だよ。

 知識さえあれば大丈夫だが知識と技術がないやつは裁けない。

 そういう法律がある」

 昔はそれでも食べていたそうだが……。

 今はそんなことはない。

 そう指摘しておく。

「とりあえず料理な。

 まあ。日本人は食事にはこだわりが強いが……。

 他国の料理を受け入れるのも早いから」

 ただし魔改造する。

 そう付け足しながら言う。

「そうなの?」

「肉じゃがだって元は違う料理だからな」

 肉じゃがはフール達も喜んで食べるレシピの一つだ。

「違う料理?」

「ビーフシチュー」

「「「え?」」」

 オレの説明に驚く三人。

 それはそうだ。

 確かに基本的な材料は一緒だ。肉とジャガイモとにんじんとタマネギ。

 日本人はどんどんと魔改造をする。

 羊羹だって羊肉を使った料理だったのをどうアレンジしたのか謎だがあんこを使ったお菓子へと変貌させた。

 つまり日本人にとって料理とは美味しければよい。なのだろう。

「とはいえ、異世界の料理にも興味があるけれどな」

 そういってオレは料理を作る。

 兄の一人は植物。もう一人は人間ではなくなった。

 その環境ではオレが料理を作るのが基本だ。

 フールは料理を作らせるのは危なっかしい。

 フィリは料理の技術力がない。

 ローイは貴族育ちだからか料理を作ったことが無い。

 よってオレが手料理を作るのだ。

「けれど、あいにくとオレは食べたことも見たことも無い上にレシピもない。

 そんな料理を作れるほどの技量はないんだ」

 先ほど言った肉じゃがもビーフシチューへの注文。

 食べたことも見たことも無い料理を作るように言われた料理長が必死で作ったのが肉じゃがだったそうだ。

 つまり肉じゃがの肉は牛肉が正しいと言うことだ。

 けれどオレは豚肉を主に使う。

 そんな事を思いながらオレは肉じゃがを盛り付け終えた。

「それよりも不思議の国のアリスはどうだ?」

 料理に関してまずいとか食べ慣れない。そんな注文を言われても困るし話していてもらちがあかない。そう思ってフールにオレは本の感想を尋ねる。

「なんというか……摩訶不思議な話ね」

「まあ。否定はしない」

 オレも原作を読んだことは無いが……。

 基本的なあらすじを聞いても支離滅裂という印象がある。

 謎かけやら詩が入り交じっているらしいが……それ故に難しいという印象だ。


「異世界の物語。全てこんなの?」

「有名な児童文学でもあるが……。

 癖が強いな。

 どっちかというともっとわかりやすい物語……。

 アンデルセン童話やグリム童話のほうがこっちだとわかりやすいかもしれない。

 ひょっとしたら似たような物語が異世界にもあるかもしれないし……。

 日本らしい物語を望むなら別のタイプだけれどな。

 基本的に子どもに読み聞かせするから教訓めいた物語が多いな」

 そういう意味では不思議の国のアリスは教訓もよくわからない。

 意味不明と言っても過言ではない。

 けれども世界一、有名なネズミの王国でも映画化された物語だ。

 けれどもわかりに口と言えば、わかりにくい。

「あ。一応は言っておくが……。

 物語の中には魔法とか奇跡とか妖術とか……。

 そういうのがあるが実在するわけではないからな。

 だから作者や物語によって設定やら論理が違うからな」

「そういうのはさすがにわかる」

 オレの言葉にローイが言う。

「こっちの世界でも架空の存在という物語はあるからな。

 実在しない奇跡やら神の加護というのもある。

 本当に神の加護があるかないかまではわからないのが本音だな」

 そうローイが言う。

「まあ。魔女王の話も物語にはなっていますが……。

 やや大げさに伝わっていますね。

 それに倒されているのが殺されたとか……。

 そんな正しくない話になっていますね」

「子どもに読み聞かせするからなぁ。

 まあ。そっちはどっちかというと歴史の偉人をテーマにした物語な気がするが……」

 そうつぶやく。

「それでも面白そうだから読んでみる」

 そう言うフール。

「ま。どんな本を読むかはそいつの自由だよな」

 そうライもうなずく。

 本は読みたいから読むものだ。

 読みたくないのに読めと言う。

 逆に読みたいのに読むな。と、言うのは基本的に違う。

 まあ。中には表現力の問題で却下されるのもあるだろうが……。

 それらを言っていたらきりが無いのは事実だった。

「まあ。もしも難しかったら今度はもうちょっと読みやすい本を選ぼうか。

 それこそ文字や言葉を覚えるならもうちょっと初心者向けの本もあるからな」

 オレはそう答えておく。

 もう少しストーリーがわかりやすいもの……起承転結がはっきりとした物語。桃太郎や一寸法師、ネズミの嫁入りなんかはハッピーエンドだしわかりやすい。

 世界観を考えると赤ずきんやシンデレラ、ヘンゼルとグレーテル……はやめておこう。親に捨てられた兄弟の話はさすがにフールへと話すのは躊躇する。

 そんな事を考えながら俺達は眠りについた。

 ……それがまた新しい騒動の皮切りになった。

 とはいえ、それは今更とも言える話だ。

 呪われてから騒動が起きない日々はないのだから……。


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