4 ファッションコーディネート
「『夜の帝王』とまで言われたわてに任せてもらえれば、この町の、いや都会の流行関連はバッチリや!!」
「光ちゃん、デートじゃないのだから、『夜の帝王』じゃダメじゃん…。」
関西弁のイケメン『光ちゃん』のセリフに瀬利亜がツッコミを入れている。
『光ちゃん』は非常に気のいい青年らしく、ニコニコとタブレットを操りながらあちこちの詳しい説明をしてくれる。
ただ、コノハには光ちゃんの説明の半分もわからないのが、非常に申し訳なく悔しい。
レジウスの方はコノハよりはわかっているようだが、表情が微妙だ。
なにかに『非常に戸惑っている』感じだ。
瀬利亜はコノハにこまめに声を掛けながら非常に気遣ってくれるのがわかる。
こんなに親切にして貰っていいのだろうかと戸惑っていたコノハは、二人の若い女性がこちらに歩み寄ってくるのが目に入った。
「あれ、瀬利亜さん?!『ダブルデート』ですか?」
「遥ちゃん、沙奈っち!!…そうなの♪『ダブルデート』なのよ♪」
「うわーー!!可愛らしい女性と、背が高いカッコいい男性ですね♪」
おっとり系の女性がコノハとレジウスを見やって、嬉しそうに笑っている。
「遥ちゃんも十二分にかわいいのだから、いつでも彼氏位できるわよ♪
ところで、沙奈っちは眼鏡をしなくなったのね。コンタクトかしら。雰囲気が以前よりさらに優しくなったから、めっちゃかわいくていいわ♪」
沙奈っちと言われた凛々しい感じの女性は瀬利亜の褒め言葉に真っ赤になった。
「そ、そんな『めっちゃかわいい』だなんて…。」
「実はコンタクトではなくて、魔法で近視を修正したので、裸眼なんです♪」
「遥ちゃん!『魔法』の話はおもてではまだNGだから!」
遥がはっとして口を押えている。
「コノハさん!今の話は『オフレコ』でお願いします!」
瀬利亜が人差し指を口に当てながら『しーっ!』というジェスチャーをする。
なるほど…。コノハは納得した。さすがにみんながみんな魔法を使うのかと遥の言動に驚愕しそうになっていたのだ。
「ところで、遥ちゃんも沙奈っちもおしゃれには詳しいわよね。」
瀬利亜のセリフに何事かと二人は顔を寄せてくる。
「実はね…。」
瀬利亜はコノハを見やりながら遥と沙奈絵にいろいろと説明を続けた。
(…えーと、われわれはこの文明を詳しく知るためにこの街に来たのではなかったのでしょうか……。)
遥と沙奈絵の着せ替え人形になりながら、コノハは半ば呆然としている。
コノハのメインの衣装は非常に良く似合っているので、サイズなど全然合わない靴とその他の衣装をさらに合うものにしようと、女子三人は『全力サポート』を始めたのであった。
せっかくだから、下着もおしゃれにしようと、デパートのランジェリーコーナーに入った時、遥と沙奈絵の動きが止まった。
痙攣するような感じで動かなくなってしまっている。
「日本人離れしたサイズだわね…。」
瀬利亜がうんうんうなずいている。
「身長一六二センチ。体重五四キロ。九一 六〇 八八か…。なかなかやりはるね…。」
『光ちゃん』のセリフに遥と沙奈絵はさらに固まり、言っている言葉の意味がわからないコノハは目を白黒させている。
この男は『着衣の上からでサイズを見ぬく魔眼』を持っているという話だ。(BY瀬利亜)
「ちなみに遥はんと池内はんは…。」
「「錦織先生!言わなくていいです!!!」」
「コノハさん、『これ』を生かさない手はないわ!!
『勝負下着』も買ってしまいましょう!!クリスマスなんかにすごく『威力を発揮する』から!!」
まるで『体験した』かのごとく瀬利亜が力説する。
(下着で『勝負』て?何の勝負をするのだろう…?)
『異次元の言語』が飛び交う中、コノハは目を白黒させており、レジウスは完全に内容が理解できずにいるようで、半分呆然と立ちすくんでいる。
「女性陣の皆様。そろそろ『全体のコーディネート』に戻らはった方がいいかと…。
それと、コノハはんがそろそろ『いっぱいいっぱい』みたいやから、ほどほどに…。」
『光ちゃん』の誘導で女性陣はようやく我に返った。
「よし、これで『どこに出しても恥ずかしくないレディ』が完成です!!」
瀬利亜がニコニコしながら宣言するのを聞きつつ、デパートの姿見で自分の姿を見ながらコノハは呆然としていた。
「わてもそれなりにコーディネートできる自身があったんやが、やっぱり女性の方がさらに見せ方を知ってはるね。素晴らしいわ♪」
『光ちゃん』もうんうんうなずいている。
「それでは、コーディネート完成記念に軽く夕食を取って解散しましょか♪」
「こっちが関西風の豚玉、こっちが広島焼きや。ちなみに広島の人に『広島焼き』言うと怒られることもあるから注意が必要や。『広島焼き』やのうて、『お好み焼き』言わんといけんみたいやで♪」
お客が自分で焼くお好み焼き屋さんに入って、『光ちゃん』が次々と見事な手際でいろいろな種類のお好み焼きを焼いている。
「今の時期はこういう風に牡蠣やお餅を焼いて入れてもおいしいんやで♪」
「お好み焼きって、こんなに奥が深かったんですね…。」
沙奈絵が興味深そうにいろいろな焼き方を見ている。
「食べる時は箸で食べてももちろんかまへんけど、ヘラを使うのが通ちゅうもんや♪
ちなみに仕上げの際に好みでマヨネーズ、青のり、胡椒とか使うとええで。
あと、ソースもこっちの『広島の甘辛いおたふくソース』が全国的にもメジャーになってきてるんやけんど、甘いのが苦手やったら『こっちの辛いソース』使うてや♪」
『光ちゃん』の解説に女性陣は目をキラキラ輝かせ、『異次元の言語』を聞いているコノハとレジウスは目を白黒させている。
「じゃあ、これで解散しまひょか♪」
「またねー♪」
「『うまくいくように』祈ってるね♪」
楽しい食事時間が終わった後、コノハの耳元で瀬利亜は囁くとそのまま『光ちゃん』の腕を取って去っていった。
(あんなふうに私もレジウス様と腕を組めたら…はっ?!そんなことを考えている場合では!!)
「コノハ、少し疲れているようだな。少し休むか?」
「いえ、大丈夫です!それより、あの瀬利亜という女性とお知り合いのようですが、どんなふうにお知り合いになられたのですか?」
「そうだな…。モンスターバスター達の話はいろいろしたよな。」
「はい!レジウス様の行動を邪魔した憎っくき敵ですね!」
難しい顔をして話すレジウスにコノハは顔を真剣なものに変えて答える。
「あの瀬利亜嬢なのだが、今回の計画の最大の障害になるモンスターバスター一〇星の一人で、しかも前回最前線で妨害したシードラゴンマスクなのだよ。」
腹が立つとういうより、ただ、淡々と話すレジウスの話の内容にコノハは目を飛びださんばかりに驚く。
「そして、他の三人も気配からして全員ただものではない。おそらくモンスターバスターの一員と考えて間違いなかろう。」
コノハの顔に緊張が走る。すでに戦いのプロとしての顔に戻っている。
「全員プロだということですね!それでは彼らの目的は…。」
「…それがさっぱりわからないから困っている。」
「…はい?」
「前回の作戦で最大の障害の一人だった瀬利亜嬢は私の正体が誰だかわかりつつ、しかも、そのことを『仲間に伝えないまま』結果的に私の部下のコノハに私の前で親切にする行動を取り続けてきた。
我々を『懐柔するのが目的』ならば、仲間に私の正体を伝えてからそのように振る舞うはずだ。
しかし、行動だけを見たのであれば、瀬利亜嬢は『自分の恋人』と『友人たち』に私の正体を告げず、なおかつコノハと私に非常に親切に振る舞った。しかも、最初にコノハに親切にしたときには『たまたま困っていたコノハ』を私の知り合いと知らずに助けたようにしか見えない。」
「…待ってください!それでは、彼ら四人は私も感じたように個人としては非常に善良だとレジウス様も判断しておられるのですか?」
「私もそう感じているよ。『この世界に不案内な我々に適切な知識を伝えよう』という意図と、『コノハが私に持っている好意を成就する手伝いをしよう』という意図以外にどんな意図があったのかが全く読めないのが非常に悩ましい。」
(えええええええ!!!!)
淡々と語るレジウスの爆弾発言に、コノハは他のことが全く考えられなくなった。
(どうしよう?!!気付いておられたんだ!!どうしたらいい???!)
顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えていたコノハはふとあることに気付いた。
「レ、レジウスさま!スマホか携帯を持ったら、よかったらこっちに連絡をくれと、瀬利亜…さんからこんなものを渡されました。」
コノハが懐から瀬利亜からもらった名刺を取り出しすと、そこにはこう書いてあった。
「さまざまな『超常トラブル』解決にお気軽にお問い合わせください♪
A級モンスターバスター石川瀬利亜 事務所 東京都◎◎区XXXX 携帯:090(◎◎XX)◎◎△△ アドレス SeadoragonMask@docomo.ne.jp」
コノハとレジウスは顔を見合わせた。




