12 親子
背中から『強烈な殺気』を感じた美佐が振り向くと同時に、二つの人影がお店の窓ガラスを破って飛び込んできた。
「美佐ちゃん!!」
異常に気付いた五月雨が美佐の方に駆け寄ろうとした時、二発の銃声が聞こえてきた。
振り返ると、五月雨の制服に二カ所大きな穴が空き…五月雨は倒れた。
「五月雨さん!!」
叫んだ美佐の後頭部を鈍痛が襲い…美佐は意識を失った。
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「瀬利亜!助けてくれ!美佐がさらわれた!!」
スマホに出るなり、アメちゃんが叫んだ。
黒ずくめ達があのままで終わらないかもしれないとは思っていたが、まさか美佐ちゃんをさらうとは想定外だった。
ただの魔法少女の一人をわざわざモンスターバスターに追われる危険を冒してまでさらう理由が見当たらない。
もしかしたら私たちの知らなかった理由があるのだろう。自分のうかつさが悔やまれる。
「了解!すぐに救出に向かうわ!アメちゃんは美佐ちゃん家で待機しておいて!!」
「それと五月雨と月野の姉ちゃんが撃たれた!!全然動かないんだがどうしたらいい?!」
「二人の様子を詳しく見たの?まずは状態を確認したら、美佐ちゃんちに行って!
私は美佐ちゃんに付けてある発信機をたどって、ちーちゃんと二人で救出してくるわ!!」
私はそれだけ伝えると、タブレットで美佐ちゃんの現在地をタブレットで推測し、ちーちゃんと一緒に単身用小型高速移動システムを装着した。
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気が付くと、小さな事務室のような場所で、私は座った状態で椅子に縛り付けられていた。
そして目の前には軍服を着た人影が5人と、白衣の男性が一人立っていた。
「気分はどうだね?」
サングラスをかけた40代くらいの男性が低い声で言った。
「よくないわ!どうして私をさらったの?それから五月雨さんたちは無事なの?」
銃声があって、五月雨さんが倒れたのを思い出し、私は叫んだ。
「二人は邪魔しようとしたので、撃ったが、急所は外してある。死にはしないはずだ。」
サングラスの男の傍の男が答えた。
「なんてことするの!!そしてどうして私をさらったの?!」
この人達は暗黒魔王の近くにいた人達だ!それにしても酷い!!
「君の『お父さん』と少しお話する必要があってね。
水守美佐さん。いや、ミサ・クノウさんと言った方がいいかな?」
…サングラスの男は顔色一つ変えずに淡々と言った。
私の顔色が変わったのを見て、男はさらに口を開いた。
「安心したまえ。我々は元々仲間だ。君もお父さんも殺すつもりはないよ。
ただ、『変心』してしまった、お父さんとじっくり話をする必要があってね…。」
……お父さんの『仲間』?一体どういうこと??、
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タブレットを駆使し、どうやら美佐ちゃんが囚われている『隠れ家』を発見することができた。東京湾の一角の港の海沿いの倉庫である。
さらわれた理由が不明であり、元米軍でどんな非道なことをされるか予想もつかない状態なので、できれば一刻も早く助け出してあげたいところだ。
しかし、例の黒ずくめ、多分『怪人ダークファントム』と何人かの仲間がいると推定され、私とちーちゃんだけでは救出するには残念ながら戦力不足だ。
一応本部には状況を伝えてあるが、高速移動&隠密移動能力と戦闘能力を両方持っている『大魔女』アルさんと『最強陰陽師』の美夜さんが『神隠し』に遭ったモンスターバスター達の救助に行っている状態で不在なのが非常に痛い。
しかも、行方不明になっているのが最強メンバー『一〇星』のカイザスとアナスタシアというのがさらに痛い。
なんでも、『異世界に勇者として召喚された』のではないかという話だ。
この非常時にうちの主力メンバーから二人も引き抜くとくそ迷惑な召喚者だ!!
……いつまでも怒っていても仕方ないので、コーザルでも強引に呼び出そうかと思っていると、スマホにメッセージが入ってきた。
!!!そうか!『彼ら』がそう来たか!五分後に突入決定だ!
ちーちゃんが神那岐の太刀を抜き、私がシードラゴンマスクに変わって、建物に突入した。当然彼らは我々の侵入に気付いているはずだ。
しかし、美佐ちゃんについている『アルテアさんお手製の魔術式発信機』には気づいていまい。これはほぼ同レベルの魔術師でないと見破れないはずだ。
だからレジウスならともかく、元米軍さんでは美佐ちゃんの正確な位置を『我々全員』がしっかりと把握できていることはわかっていまい。
無人の倉庫を扉を何枚かぶち破って疾走した後、広い部屋に出た。
そこには『例の黒ずくめ』と暗黒魔王たちと一緒にいた『人型』が一〇体、そして……軍服姿の巧さんが立っていた。
!!!巧さんがどうして?!
「驚いたな!侵入者がまさかシードラゴンマスクとは?!」
サングラスの男、声から前回の黒ずくめが、私を見て叫んだ。
「巧さんがどうしてここにいるの?!」
ちーちゃんが叫ぶ。
「なるほど、神那岐の御嬢さんも一緒かね。それは、彼タクミ・クノウ元大佐は私の元部下だからなのだよ。
『娘さんと一緒』にこの場所に招待したのだよ。
そうだよね。クノウ元大佐…いや、『怪人ダークファントム』と言った方がわかりやすいだろうね。」
……この男は…いったい何を言っているの?両親の親友で、私を心から慈しみながら育ててくれた巧さんがダークファントムのわけがないじゃない!!
「ああ、私かね?私はラスニール元米軍准将だ。情報部を統括していた。そしてクノウ元大佐は『魔術情報部隊』を率いてくれていた。
さて、クノウくん。モンスターバスター達にここをかぎつけられた以上、『我々』は撤退しなければなるまい。
邪魔な二人の御嬢さん方を私や『人型』と一緒に葬ってくれないかね?
『娘さん』と一緒に過ごしたいのだろう?」
ラスニール元准将は淡々とした口調で『あり得ないこと』を口に出していた。
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目を覚ますと、縛られて椅子に座ったままだった。
目の前には例の軍人の一人が立って私を見張っている。
たくさん衝撃的な話を聞かされた。
まさか、パパがそんなことを…。
そして、瀬利亜さんのご両親がそんなことに…。
これから私とパパはどうなるのだろう?
そんなことをぐちゃぐちゃの考えていると、目の前の扉から何かがすり抜けて来ようとしている。
そして、軍人はそれに気づいていない。
壁をすり抜けてきたのは…アメちゃんだった!!
アメちゃんは口に人差し指を当てて、にやりと笑った。




